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更新日:2024年1月1日

株式会社Wewill

バックオフィスから中小企業をサポート
“新しい事務の形”が日本を変える

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代表取締役である杉浦直樹氏。日本オラクルにて営業マネージャーを勤めた後、外資系スタートアップに転職するも3カ月で退職に。地元浜松で税理士資格を取得し、企業のバックオフィスのDX化に邁進。熱い思いを胸に、浜松地域のスタートアップコミュニティを牽引する人物のひとり

 

株式会社Wewill

「世界を、もっと面白く、美しく」をミッションに掲げ、バックオフィスリモートサービス、SaaS導入サポート、業務改善コンサルティングを行う。浜松を代表する企業からスタートアップまで、さまざまな人が交流できるコミュニティスペース「The Garage for Startups」を運営。企業のDX支援を行い、クライアントの成功を通じ、地域の活性化に貢献する専門家集団

事務の属人化を解消し、企業の成長を促進

——2016年に税理士法人を設立。その後、バックオフィス業務のDX支援を行う株式会社Wewillを立ち上げられました。2022年には「浜松市ファンドサポート事業」に採択され、スタートアップ企業として注目を集めていますが、この数年、どのような心情の変化があったのでしょうか。

 

浜松を代表するスタートアップ、リンクウィズ株式会社の吹野豪さんとの出会いが大きいです。税務顧問をさせていただきながら、経理の仕組みづくりなど、深い部分から事業を支援してきました。出資を受け、成長されていく過程を目の当たりにして気づいたのが、中小企業、スタートアップが成長するためには、税務以外の課題解決のサポートが必要だということ。その後、地元信用金庫のビジネスコテンストや、始動 Next Innovatorに参加したことで、スタートアップ的な企業に変化していきました。

 

——そして、バックオフィスのインフラ化を促すクラウドサービス「SYNUPS(以下、シナプス)」を開発されるわけですね。

 

中小企業、スタートアップの困りごとは、会計を作成する前の仕事、いわゆる経理などの事務です。1人しかいない事務員さんが退職する、信頼していたのに不正が行われていた、事務部門が既存のやり方を変えてくれないなど、問題はさまざま。スタートアップも成長局面に入ると事務が滞り、経営が不安定になってしまうケースも少なくありません。

 

——なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。

 

1つには、事務の属人化です。そこでシナプスで事務業務を可視化し、弊社オペレーションスタッフと分業することで、属人化からの脱却を図ります。中小企業の業務を集約することで知見がたまり、最適化され続けることで、1社でできる限界を超えた事務の効率化、高度化が実現できます。いずれは事務だけでなく、士業、特に税理士を巻き込んだUXを実現したいと開発を進めています。効率化はもちろん、特定の税理士への依存がなくなるため、企業にとっては税務のノウハウが蓄積し、会社としての強度が増すとともに、成長に合わせて必要なスキルを持つ優秀な税理士を雇うことが可能になります。また、税理士にとっては顧問先の事務レベルが上がることで確認工数を大幅に減らすことができ、より専門的な知識の獲得に時間を割けるようになります。バックオフィスがインフラ化するというのは、おそらく今までにない概念なので、理解するのは難しいかもしれません。Wewillは、事務のインフラ化を突き詰めているスタートアップなのです。

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同社が運営し、オフィスを構えるコミュニティスペース「The Garage for Startups」でインタビューが行われた

 

「何者か」になる、新しい事務のキャリアパス

——シナプスを導入するメリットを教えてください。

 

実は、事務の仕事って事務員さんも苦しんでいます。これまでの事務仕事は分業できず、事務員さんは定型業務に閉じ込められていたと言えます。30年間事務をしていてもキャリアにならなかった。事務の仕事をデジタル化してインターネット経由で他者と協業することで分業が可能になります。定型業務からの解放は職を失うことではなく、専門業務や設計業務などへスキルアップできることを意味します。事務職は、税法のような法律の専門家や、業務設計を行うプロジェクトマネジメントの道につながっているのです。

 

——シナプスには教育という側面もあるのですね。

 

シナプスを通じて、自分が今どれくらいの仕事ができるのか、足りない知識が何なのか分かるだけでなく、シナプスプラットフォームの中にいる人が、互いの仕事を組織を超えてフィードバックし合うことで、育て合うこともできます。最終的に開発したいと思っているのが、シナプスメディアというオンライン学習。人口が減り、自動化が進み、事務という仕事が減っていくと言われる時代に、一人一人がどうナレッジワーカー化していくかが重要です。失業した僕が「何者か」になりたくて税理士になったように、シナプスを通じて「何者か」になれる仕組みをつくっていきたいですね。

 

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「僕たちはあくまでもサポート企業。クライアントが実現したい世界をかなえるためにサポートすることが使命です」

 

——インフラ化するために何が必要でしょうか。

 

一つは、バックオフィスから解放されることで企業の経営管理レベルを上げるということ。もう一つは、バックオフィスに縛られていた事務員をいかに解放するかということ。この両面があって社会インフラとしての事務は変わっていきます。本来、事務は企業のあらゆることに関わり、まるで血流のように流れるものです。人間も血液を診れば多くのことが分かるように、事務は企業の戦略にとって欠かせないものなのです。僕たちがしていきたいのは、これまでと全く異なる「新しい事務の形」です。いずれはアジアへの参入も視野に入れていて、まずは浜松で仕組みと型をつくり、日本発で世界にチャレンジしたいと本気で考えています。

歴史、知識、人材、資金がそろうスタートアップの最適地

——事業の立ち上げ時にはとても苦労されたのではないでしょうか。

 

意外とそんなことはなくて(笑)。甲子園を目指す高校生がめちゃくちゃ練習しても苦ではないように、僕たち経営陣も休みなく働きましたが、それ自体が楽しかったというか。目指すものがあることも理由ですが、やはり、仲間の存在も大きいですね。浜松にはまるで村のような距離感のスタートアップコミュニティがあり、志を掲げチャレンジしている人が数多くいます。互いの知識や人脈を共有するエコシステムがあり、みんな本当に仲が良く、めちゃくちゃディスカッションしていますよ。

 

——浜松はスタートアップに適した場所と言えそうですね。

 

浜松にはこれまで、大企業からスピンアウトしたエリジオン、アルモニコスなどの第1次スタートアップブームがあり、現在は第2次ブームで、その第1世代としてリンクウィズの吹野さん、スプライザの土井さん、パイフォトニクスの池田さんたちがいらっしゃいます。1.5世代が僕やモリロボの森さん。第2世代はマジックシールズの下村さん等々。浜松にはチャレンジし続ける歴史があり、各世代の先輩方が陰に陽に支援してくださる。この歴史の積み重ねは、マネできるものではありません。

 

また、浜松の企業構成比を見ると全国平均とほぼ同じです。これが意味することは、地方都市でありながら大企業がちゃんとあるということ。そのため、監査法人や証券会社があり、IPOや上場に関わる人たちがすでにいるのは大きく、浜松の底力になっています。スタートアップが成長するたびに一流の会計士や弁護士、司法書士などとのつながりが生まれ、地域がアップデートされていきます。知識の裾野、ネットワークの裾野が広いのは浜松の強みと言えます。

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企業の構成比図。「スタートアップにとってどこでPOC(概念実証)するかは重要。資本やノウハスなどが蓄積した浜松は、ビジネスのトライアルとして申し分ない」と語る杉浦氏

 

——今後の浜松のスタートアップシーンについてどのようにお考えですか。

 

浜松を中心とした静岡県西部には100年企業や、スズキ、ヤマハをはじめとした世界に名だたる企業が多く、中小企業も含めて資本が蓄積しています。今は目に見えていませんが、マグマだまりのようにフツフツとしている状態。今後は、中小企業がスタートアップ化していくことが予想され、純粋なスタートアップと、スタートアップ化する中小企業とが結び付いていくはずです。地殻変動を起こすような大きな可能性を秘めている場所が、この浜松であり、多くのチャンスが広がっています。

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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