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更新日:2024年1月1日

株式会社スプライザ

「浜松×起業×スポーツテック」の掛け算で、
週の7分の7ワクワクできる毎日を実現

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代表取締役の土井寛之氏。ソフトウエアのエンジニアを経て、2011年、2人の仲間と共に株式会社スプライザを設立

 

株式会社スプライザ

アマチュアスポーツおよび教育現場向けに、「考える力を育む」をコンセプトとした映像解析アプリケーションを提供。主力製品である「SPLYZA Teams」は学校のサッカー部など約900チームに導入され、ユーザーは3万人を超えている。また近年では浜松市の協力を得て近隣の小学校で実証実験も実施。今後は2026年~27年の上場を目指していく

スタートアップに「ちょうどいい街」浜松

――まず、創業の地を浜松に決めた理由を教えてください。

 

大学卒業後、浜松のソフトウエア開発会社でエンジニアをしていました。この頃、友人に誘われて浜名湖で初めてウインドサーフィンと出会い、すぐにとりこになりました。そして仕事を辞めてオーストラリアに渡りウインドサーフィンに明け暮れていたんです。でもあまり楽しくなかった。結局「独り」だったからなんですよね。1年ほど

で帰国したのですが、ある時、車ごとウインドサーフィンの道具が盗まれて。買いそろえるお金もなくすべてを失いました。そしたらウインドサーフィンへの思いが吹っ切れて、起業を真剣に考えるようになりました。

東京や名古屋なども候補に挙がりましたが、浜松はすべてが「ちょうどいい」んですよ。必要な都市機能がそろいながら、ランニングコストが安い。家賃も安く会社の近くに住むことができるため、多忙な中でも家族との時間をとれる。大好きなウインドサーフィンを存分に楽しめる浜名湖もある。そして何といっても一緒に挑戦できる「仲間」がいる。すべてが私に「ちょうどいい」だったんですね。

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自分たちにもユーザーにも「ワクワク」を

――実際に起業していかがでしたか。

 

私は「7分の7ワクワクしたい」がモットーです。人生は1週間(7日間)の連続です。だから週の7分の7ワクワクしていたい。私にとって起業もワクワクするためのもの。目標を共有している仲間となら、仕事をしながらワクワクできると思ったんです。

起業に向けて1年ぐらいは何をやろうか仲間とアイデアを出し合いました。全員コンピュータエンジニアなので、つくるのは何でもできる。問題は「何をやりたいのか」でした。たまたま3人ともスポーツが好きだったのでスポーツに関係することを…となり、アマチュアスポーツマンの「もっと上手くなりたい」をかなえるためのツール開発を行うこととしました。

プロ向けのハイエンドなモノやサービスはたくさんありましたが、アマチュア向けにはなかった。だからアマチュアスポーツマンの「上達したい」という気持ちに応えたかったんです。上達することもまた、ワクワクすることに他なりませんから。

 

――その後はスムーズに進められたのでしょうか。

 

3人ともエンジニアですからね。営業やマーケティングには苦労しました。だから私は2015年に開発からいったん抜けて、市場調査やネットワークづくりを行い、マーケットをセグメントして課題を発見・解決する業務にあたりました。そこで気づいたのは「顧客が欲しいモノ」ではなく「自分たちが売りたいモノ」を売ろうとしていたということ。そこで1000人を超えるスポーツ関係者の意見をくみ上げ、その後の製品開発にフィードバックしていきました。

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現在の主力製品「SPLYZA Teams」。試合やゲームの様子を動画で撮影するだけで、最適な動きやコース取りなどについてチーム全員で考えることができる分析ツール

 

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全国の学校体育授業でも導入が進む「SPLYZA Motion」。運動している姿を動画で撮影すると、AIが顔や腕など体の部位を自動で認識し、画面上に点と線で示される

必要なのは課題発見と課題解決の力

――教育においては従来のインプット型からアウトプット型へと変革し、御社が開発したツールが役立っていくだろうと伺いました。

 

そうですね、文部科学省の学習指導要領が変わり、新たに思考判断、表現、アクティブラーニングなどの要素が盛り込まれました。これまでのインプット型では教師が用意したことを生徒はひたすら暗記するだけ。考えるというより暗記する。対してアウトプット型では生徒それぞれが自分で考える。私はよく「スポーツは正解のない問題」と言うのですが、その問題に自分から取り組んでいく。正解のない問題だから解決策は無数にあるわけです。

体育や副教科などでは基本的に正解のない問題に取り組みますので、アクティブラーニングで主体的に学び考える力を身に付ける、つまり課題発見力と課題解決力の養成に非常に向いているんですね。今これこそが社会に出て必要とされる力だと考えています。

 

――そのアウトプット型の力を引き出すために、御社の育成ツールはどのように活用できるのでしょうか。

 

たとえば体育でいえば、運動が「できる」「できない」だけの評価なら、思考判断や表現、考える力は関係ありませんよね。私は観察力とか言語化能力、「なぜできる人はうまくできるのか」を説明してアドバイスできる能力に目を向けることも重要だと考えています。

ある小学校で実際に「SPLYZA Teams」を使って体育の授業をしたところ、運動が苦手な子がほかの子たちに的確にアドバイスする姿が見られました。運動が苦手というその子は「今まで体育は好きじゃなかったけれど、こういう授業なら好き」と楽しそうでした。これはスポーツ庁の「スポーツ人口を増やしたい」という目標に合致すると思います。スポーツ人口とは「スポーツをする」人口だけではなく「スポーツに関わる」人口でもいいわけです。「SPLYZA Teams」を使った事例から、たとえスポーツが苦手でも「好き」になれる可能性があり、スポーツ人口の増加に貢献できるのではと感じています。

浜松だからこそ「できる」「やれる」ことがある

――すでに「SPLYZA Teams」はこれからの体育の授業には欠かせないツールになっているように感じます。

 

「SPLYZA Teams」はもともと高校のサッカー部から広がり始めました。実は私たち創業メンバーの3人、いや初期のメンバーの8人くらいまでは誰もサッカーの経験がありません。しかしサッカー向けの製品を販売できている。地元の企業や金融機関などからサッカー関係者を紹介していただき、多くの指導者の話を聞けたことでプロダクトソリューションにこぎつけました。

 

――浜松市としてもスタートアップの支援に注力しています。その浜松市で起業して良かったと思われる点はどんなところでしょう。

 

まだまだ浜松にはスタートアップ、特に私たちのようなスポーツテック企業は非常に少ない、というよりほとんどありません。だから何かと取り上げていただける、これは広報的にとてもありがたい。東京だったらこうはいきません。

また、今後はICTを使った新しい体育の授業で教育領域に参入したいと考えていたところ、浜松市の協力により近隣の小学校でアプリの実証実験を行うことができています。これも非常に助かっています。

 

――現在、浜松市が推進しているファンドサポート事業についてはいかがでしょうか。

 

ファンドサポート事業で採択されるためには、ベンチャーキャピタルからの出資を

受けられる企業であることが前提になります。端的に言えば上場を目標に掲げ、成長への確固たる意志と計画が必要です。つまり浜松に産業と雇用を生む可能性が高い企業を集中的に支援してくれるのがファンドサポート事業なのです。

当社は2021年に採択され、現在の主力製品である「SPLYZA Teams」と昨年リリースした「SPLYZA Motion」を教育現場にも広げていくためにご支援を有効活用していきます。加えて、まだ弱いと感じている営業やマーケティング部門の人材確保にも役立てたいと考えています。

起業には不安や苦労はつきものです。もちろん私もそうでした。しかし浜松は環境も良いし支援策も充実している。今、起業を考えている皆さんにも、ここ浜松でワクワクできる毎日を送っていただきたいと願っています。

 

 

  • 本記事のインタビューは2022年12月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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