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更新日:2024年1月1日

サグリ株式会社

「衛星データ×AI」で土壌解析
アグリテックで農業従事者の暮らしを変革

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MIT Technology Reviewが選ぶ、未来を創る35歳未満のイノベーターにも選出された、代表取締役CEOの坪井俊輔氏。2018年にサグリ株式会社を設立

 

サグリ株式会社

衛星データ×AI×区画技術で、世界の農業関連の団体や農家を支援するアプリケーションを開発。農地の生育・土壌環境をわかりやすく見える化する「サグリ」、耕作放棄地が一目でわかる「アクタバ」、圃場の作付け状況を把握・記録できる「デタバ」の3つのサービスを展開する

宇宙への興味から、子どもたちが夢を描ける未来へ

――まず、サグリの事業スタートの経緯を教えてください。

 

幼い頃、東京ディズニーランドのトゥモローランドに魅了されて宇宙に興味を抱き、宇宙に関わる仕事を夢見ていました。その後、中学校の校外プログラムで、宇宙飛行士の毛利衛さんにお会いする機会にも恵まれ、宇宙研究への想いは募るばかり。大学時代は宇宙工学の研究に没頭しました。そして大学在学中の2016年には、小学生向けに宇宙をテーマにした教室を開催する「株式会社うちゅう」を創業しました。

 

しかし、発展途上国のルワンダに赴き教育活動を行う中で衝撃を受けたのが、夢を持ちつつも、夢を諦めて家業の農家を手伝うしかない子どもたちの存在でした。実際に農地を見に行くと、田植えや収穫など手作業が中心で、決して効率的とはいえません。子どもが「夢を見られる」未来を作るために、農業状況を改善し、農業を営む親たちの所得を向上させられたら、この“当たり前”の諦めが変わるのでは? 子どもたちが自分の夢へ翔ける環境を作りたい――。

そして、宇宙から農業へと視点が転換し、自分にできることを考え抜いてひらめいたのが、衛星データの活用から、農業を支援することでした。そこで、株式会社うちゅうの一事業としてサグリ事業を立ち上げ、2018年に分社化しました。

 

サグリが提供するのは、これまでアナログに足を運び、時間と手間、お金をかけて行われていた土壌分析を、AIによる衛星データ解析で、効率よく、そして正確に解析できるサービスです。海外だけではありません。日本でも経験や勘に頼ることが多い農業ですが、状況をデータ化し、正しく解析できれば、大幅な効率化が進みます。

 

――衛星データを活用したAIの解析では、どこまでのことがわかるのでしょうか。

 

衛星からは、赤外線やマイクロ波といった、人の目では見えない部分のデータまでを取得することができ、圃場に作物が育っているのか、休耕地なのか、育っている作物は何なのか、土壌に含まれる炭素や窒素、pHの数値はどうなっているのかなどがわかります。

そしてAIに衛星データの特徴を学ばせるとモデルデータが蓄積され、AIが最適値を予測できる環境が作り出せるのです。さらに実際の農地の一部分の土と比較検証することで、よりAIの精密なデータが蓄積されていきます。農耕地の状況を正しく把握でき、農薬や肥料の最適な量やタイミングがわかれば、農業は生産性の高い産業へ進化し、儲かる事業になるはずです。

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農作物の生育情報がひと目で確認できるアプリ「サグリ」の画面。衛星データを取得した日付ごとにさかのぼれ、作業が必要な場所・程度が一目瞭然

環境問題や労働問題など、地球の課題解決に

――日本国内と海外とでの事業展開の比率はいかがでしょうか。

 

圧倒的に海外での事業比率が高く、96%が海外での展開です。インドやタイ、ケニアなどにも、日本でいう農業協同組合のような組織があり、そういったところが主要なクライアントになっています。世界中の農家さんの数は、世界人口の約3分の1もいらっしゃいます。その方々にサービスを届けることで、世界の仕組みを変えていきたいと考えています。

一方、耕作放棄地の問題を多く抱える日本でも、耕作が行われているかいないかが迅速にわかるとして、弊社のサービスをお役立ていただくシーンが増えています。

 

――土地の利活用や環境、労働といった、社会問題の解決にもつながりそうですね。

 

世界的に気候変動が大きな問題となっていますが、脱炭素に向け、CO2を吸収してくれる木を見分けて増やす、といった林業への活用も視野に入れています。

もちろん、農業の効率化から、労働環境の改善や子どもの教育に注力できる余裕が生まれるといった、当初期待したメリットが第一。我々のノウハウで、農家を儲かる産業にし、農家に生まれた子どもたちがやりたいことをできるように、そしてそれが社会の発展へつながったら、こんなに嬉しいことはありません。

また、優良な農地を次の世代に残し、かつきちんとデータ化して土壌を管理することで、未来の農業を守っていきたいとも考えています。

 

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農地の耕作状況を見える化できるアプリ「アクタバ」を使えば、タブレット一つで農地パトロールができ、調査工数の9割削減が可能になる

アクセスのよさ、家賃の安さ、受け入れ態勢…
スタートアップに開かれた浜松

――浜松市ファンドサポート事業への参画に至った経緯をお聞かせください。

 

研究開発型スタートアップのエコシステム「テックプランター」にエントリーしたご縁で、浜松市の充実したスタートアップ支援を知る機会に恵まれました。その後、浜松市実証実験サポート事業、ファンドサポート事業に採択いただき、事業開発に大いに役立てさせていただいています。ファンドサポート事業費交付金は、今や弊社の主力サービスともいえる「サグリ」「デタバ」のアプリ開発費に活用しました。

 

――事業所を、兵庫、東京に続き、浜松に置かれていますが、浜松の魅力はなんでしょうか。

 

農業分野で事業を行う者として、静岡県は農業が盛んという魅力がありますが、浜松にはその他にも数々のメリットを感じています。

例えば、東京や大阪から新幹線で最短90分というアクセスのよさ、家賃の安さ、行政の方がとても協力的なこと、数々のスタートアップが集まっている刺激的なネットワークなど……。

浜松の言葉で“やらまいか精神”というチャレンジングな精神を指す言葉がありますが、まさにその通りです。地元の方も、ものづくり産業に長けた町の歴史によるものなのか、新しい産業の変革を起こそうと、参入してきたスタートアップへの受け入れ態勢が整っています。

行政の方がスピード感と熱意を持って、スタートアップを支援してくださるのも大きな魅力。首長がいくらスタートアップ推進を掲げていても、現場がついていけていないケースも多数ある都市が、残念ながら日本には多いんです。しかし浜松市は、首長と現場の両方がスタートアップエコシステムの構築に積極的。本気で起業に挑む場所として、大きな価値を感じています。

 

挑戦があふれる浜松なら、失敗も怖くない!

――最後に、浜松市に興味を持つ起業家へのメッセージをお願いします。

 

人生の中で、チャレンジできる時間は限られています。自分は、大きな壁が立ちはだかったとしても、動くことで未来が切り拓かれていった感覚があります。

浜松に集まるスタートアップは馴れ合いではない、刺激的な情報交換ができる仲間たちばかりです。つまり、浜松は挑戦にあふれている。何もないところで1つの失敗をしたら、ダメージを大きく感じてしまうかもしれませんが、たくさんの挑戦にあふれたここでの失敗なら、さほど怖くない。挑戦が上塗りされ、産業が進化していきますから。僕にはそう思えます。スタートアップ向けのイベントもたくさんやっているので、まずは一度足を運んで、この気概に満ちた空気を味わってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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