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更新日:2024年1月1日

パイフォトニクス株式会社

浜松における大学発スタートアップの先駆け
地域のスタートアップコミュニティの牽引役として活躍中

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LED照明装置「ホロライト」を持つ代表取締役の池田貴裕氏。光産業創成大学院大学在学中の2006年、パイフォトニクス株式会社を設立

 

パイフォトニクス株式会社

「新しい光の使い方を追求して、地球の未来を拓く」を理念に、圧倒的な明るさや高い視認性を持つLED照明装置「ホロライト」で独自色を打ち出す。工場内の安全を確保するクレーン向けホロライトシリーズを主軸に、光を使った社会貢献やエンターテインメント事業などを展開

ヤバい、スゴイのができちゃった!

――まず社名に込められた意味と、起業当初の様子について教えてください。

 

当社の中心となる価値観は「融合」です。社名である「パイフォトニクス」の「パイ」は「π」、数学でいえば数列の掛け算を表し、光技術の融合を意味しています。つまり、光技術に特化したシーズ型のスタートアップです。

当初は「光を使って生きている細胞を可視化する」という、いわゆる顕微鏡ビジネスをやっていこうと考えていました。しかし実際にスタートしてみると、「たった一人でどうしよう」「こんなんで将来100億円規模のビジネスになるのか」等々不安だらけで

したね。けれどもとにかく前を向いてやるしかなかった。

 

――不安の中、「これはビジネスになる」と手応えを得られた瞬間は?

 

現在の主力製品である「ホロライト」を試作した時ですね。たまたまホログラムのマニアの方から「最近、明るいLED光源が出たらしいけど、ホログラム用に何かつくれないか」と言われ、即座に「やります」ということでLED照明を作製しました。過去にホログラフィック・ヘッドマウントディスプレイの研究開発をしていたのですが、その時の構造の一部が試作したホロライトの構成と一緒だったのです。当時は深く考えていませんでしたが、こうしてホロライトの原型ができたわけです。

在籍していた光産業創成大学院大学は山の上にあります。で、ホロライトの光を飛ばしてみると、レーザー光線でもないのに1キロ先の山まで届く。これは衝撃的でしたね、「ヤバい、スゴイのができちゃった。これはイケるぞ」と。それで展示会に出しまくって、少しずつ売れていった…というのが本当の意味でのスタートでしたね。

この頃は浜松市や金融機関などから支援を受けながら、一人でやっていました。その後、市内にある大草山のライトアップという仕事に携わることとなり、300台のホロライトの光で山をドット・マッピングしました。すると見た人がみな感動してくれた。この時、「人の価値観を超えるモノを提供すれば人は感動する」と実感しました。そうするとビジネスも成功する。それが私の理念でもあります。

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ホロライトとともに走り続けて

――そこからどうやって会社を軌道に乗せたのでしょうか。

 

その後、ホロライトが進化を遂げました。「光のパターンを出す」という技術で特許を取得し、LED光源も進歩して明るくなってきた。で、この特許技術でつくった製品群を発表したところ、業界紙に取り上げられて引き合いが倍増、12期目にやっと営業チームを設置しました。まぁ、とにかくがむしゃらにやっているうちに伸びてきた、そういう感じでしたね。

ホロライトは高輝度なLED光源から出た光を大きなレンズのようなものに集めて、そのレンズの形状によってラインであったり、リングであったり、アーチであったり、いろいろな光のパターンを出すことができます。現在は主に工場内で使用されています。

工場の中には安全上クレーンやフォークリフトが入ってはいけないエリアがあるのですが、それが可視化されていないことにより労働災害が発生しているんですね。これを未然に防ぐために、非常に視認性の高いシャープな光を遠方まで出せるというホロライトの特性を利用して、工場内のルールを可視化したわけです。2015年頃に工場内の安全対策に関する新しい光の使い方を発見し、現在では売上の8割を占めるまでに成長しました。これは当社のオンリーワン製品であり、日本はもちろん、米国、欧州、中国で特許を持っています。

しかし、工場内の天井クレーンへの導入率はまだ 0.1%ぐらい。今後はこれを1%、10%、さらに標準化して100% にまで持っていきたい。現在、実績の多い自動車業界や鉄鋼業界以外への参入も進めており、まだまだポテンシャルは高いと感じています。

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ホロライトを用いたフォークリフト周囲の危険ゾーン明示

 

――ホロライトの応用事例があれば教えてください。

 

イルミネーション人気の中、エンターテインメント系で広がりを見せています。地元の事例ではコロナ禍に入り、医療従事者への感謝を示すために浜松駅ビルに「アリガトウ」の文字と虹とハートを照射しました。これは非常に反響が大きかったですね。

ほかには独自の光のパターンでムクドリを追い払う機器も製作し、高い効果を上げました。社会貢献の意味もあり、全国の自治体へのレンタルも行っています。こうした成功事例を通じて、光の新しい可能性を感じました。

 

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浜松駅ビルに照射された医療従事者への感謝のメッセージ

支援制度を活用しながら成長でき、
仲間とつながれるコミュニティの存在も浜松の強み

――スタートアップにとって、どんなところが浜松市の魅力や優位性だとお感じでしょうか。

 

私が起業した10数年前は今のようなスタートアップという概念はなく、「ベンチャー」という呼び方が一般的でした。大学発スタートアップの先駆け的な存在でしたね。

当時は補助金や融資を受けてモノをつくり、それらを展示会に出してはお客様からフィードバックされた意見の中から課題を見つけ、次の計画を立てる。それでまた製品開発を行う。そんな感じで10年間やっていました。こうしたことを積み重ねていって徐々に製品の種類が増えていった。市や県の支援制度が充実していたからこそ、できたことですね。

そして2015年に、経済産業省の始動プログラムに当社とリンクウィズさんが選ばれて、翌年、市長を表敬訪問しました。そしたら市長が「僕も昔、ベンチャーをやっていたんだよ」と非常に前向きで、「ベンチャーを応援したい」ということになったんですね。それから私たちの中に「本気で勝負するヤツでチームをつくろう!」という機運が高まり、民間のスタートアップコミュニティ「浜松ベンチャートライブ」が誕生、市長もハッパをかけてくれました。これによりそれまでバラバラだった起業家のコミュニティができたわけです。お互い言いたいことを気軽に何でも言える、こうしたコミュニティを持っていることが浜松の強みであり、国からも評価を受けています。

続いて市のファンドサポート事業の採択を受け、工場内における新しい光技術応用製品の開発を進めています。今後は2030年までに上場を実現し、さらなる成長を図っていくつもりです。

「人生とは経験に基づいた運命と夢や希望で変わる未来がある」、これが私の哲学です。今、起業を考えながらも躊躇されている皆さん、せっかくの人生、自分にしかできないことをやってみてはどうでしょう。浜松の間口は広い。ぜひ飛び込んで来てください。

 

 

 

  • 本記事のインタビューは2022年12月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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