閉じる

ここから本文です。

更新日:2024年1月1日

株式会社おてつたび

“季節労働”をリブランディング
人のシェアから地域のファン創出へ

おたつたびトップ

三重県尾鷲市出身の代表取締役CEOの永岡里菜氏。自身の出身地のように「そこ、どこ?」と言われがちな、知名度の低い土地の魅力にスポットライトを当てたいと、2018年に株式会社おてつたびを設立

 

株式会社おてつたび

「おてつだい×たび=おてつたび」として、繁忙期の労働力が欲しい地域事業者と、経験に価値を見出す旅行者を結ぶ、マッチングプラットフォームを提供。農家などの一次産業や観光業をはじめとする地域事業者は人手不足の解消に、旅行者はお手伝いで稼ぐバイト代が旅の資金に、とwin-winの関係を築ける画期的なサービス

 

少子高齢化、働き方の多様性……
今こそ、季節労働者や住み込みバイトが活きる時代

――まず、起業の経緯を教えてください。

 

前職で日本各地を飛び回る仕事をしており、地方に足を運んでみて初めてわかる良さを知るにつれ、地域ならではの潜在的な魅力を人々に伝えるきっかけ作りをしたいと考えていました。そこで、会社員を辞め、半年間、日本各地を高速バスなどで巡りながら、自分にできる事業をとことん探究。地域の実情を知るためにも、農家さんなどの手伝いをしながら旅を続けたわけですが、そこで改めて気付いたのが、少子高齢化や過疎化による人手不足の問題です。収穫期の農家さん、ハイシーズンの宿などでは、若い働き手を確保できず、運営に困難をきたしている実情がありました。人手不足の産業と、観光旅行では得られない充実感に価値を感じる人とをつなぐ。「これだ!」と事業を走らせることに決めたのが、マッチングプラットフォームの「おてつたび」です。

「出稼ぎ」「季節労働」「住み込みバイト」では、普段出会わない人や産業と出会うことでユニークな「コト体験」が可能です。しかし、その体験価値を訴求しきれていない現状もあります。「働く価値と旅行体験のアップデートをしたい」、その想いで「おてつたび」という造語をつくって、ポジティブにリブランディングしたのです。

 

 

おたつたび2

 

――マッチングはどういう仕組みになっているのでしょうか。

 

労働力を求める地域の方には「おてつたび先」としてマッチングプラットフォームにご登録いただき、サイトで求人募集ページを掲載します。登録料や掲載料は無料としました。

おてつたびに興味を持たれた利用者には、簡単な自己紹介やスキル、興味のあることなどをマイページに登録いただきます。そして、行きたい日や地域から希望するおてつたび先を選んで応募してもらいます。

利用者の情報がおてつたび先に届き、マッチングが成立したら、利用者はサイト内のチャットで受け入れ先と連絡を取り、実施当日を迎える流れです。ここで、おてつた

び先からマッチング料をいただきます。

利用者の交通費は自己負担ですが、宿泊先はおてつたび先にご用意いただくので(※一部例外あり)、利用者はお手伝いの報酬を受け取れて、同時に宿泊先の確保もかないます。旅のボトルネックとなるコスト面のメリットがあるだけでなく、かけがえのない経験ができ、地域の方との交流を通じて関係性を築け、この機会がなければ訪れることはなかった地域の魅力を知ることができるなど、利用者からは予想以上に多くの喜びの声が寄せられ、順調に業績を上げることに成功しています。

とはいえ創業当初は、地方に住む受け入れ事業者と、都心部から訪れる利用者の常識の違いがネックになったこともありました。地域には「誰が来るかわからないから怖い」と思われる方もいますし、その一方、コンビニまでの距離が遠い生活に慣れていない利用者も当然います。ここはアナログに、泥臭く実績作りと信頼関係の構築を重ね、“当たり前”のすり合わせを行っていきました。

おてつたび3

利用者はサイト上に紹介されている「おてつたび先」を一覧から選んで応募する。行った先での困り事などは運営者にLINEで随時相談できる

 

――リピーターも多そうですね。

 

4〜5回利用されている方が多いですね。最も多い方では、なんと22回という強者も! 車で旅をしながら生活する「バンライフ」で各地を転々とされる中で、おてつたびを利用し、お小遣い稼ぎされている方もいらっしゃいますよ。登録者はその数、3万人を超えました。

 

――地域のおてつたび先は、どのように開拓していますか?

 

多くはご紹介などの口コミ、メディアで目にされた方からの問い合わせ、そして浜松市のような自治体との連携です。47都道府県、約900カ所のおてつたび先との取引があります。

 

ファンの愛で地域経済が回り続ける未来へ

――人材不足の問題解決に役立つサービスという印象を受けますが、おてつたびが目指す日本の未来は?

 

おてつたびは、地域の労働力の確保、利用者の旅費の削減の他に、地域のファンを作ることを目指しています。地域にとって人手不足の解消はもちろん大切ですが、ここで培われた関係性が終わらないことも大きな価値にしたい。利用者がおてつたびを終えて帰った後も、おてつたび先の産地の農産物を購入したり、旅でまた訪れたり、ふるさと納税の納税先として選んだり…その後の経済効果をも生むサイクルを作りたいのです。

さらに、ファンがSNSで「♯おてつたび」の経験を発信してくれることで、地域の魅力が人の目に触れる機会が増え、自然発生的にファンマーケティングのような作用も生まれています。

私たちは「誰かにとって“特別な地域”を作る」をミッションに掲げ、一過性ではない、持続可能な関係創出を目指しています。おてつたびがきっかけとなり、その地域に移住したり、おてつたび先に就職される方もいたりして、とても喜ばしいことです。ただ、人口減少の一途をたどる中で、人の取り合いになっては本質的な解決にはなりません。必要なときに人をシェアし、一人が二役、三役、四役……と活躍できる仕組みが、これからの日本には必要であり、誰でもそれが簡単にできるシステムで支えていきたいと考えています。

 

おたつたび4

岐阜県飛騨市の「おてつたび」先、飛騨古川池田農園でのミニトマトの収穫の様子

豊富な産業、自治体の寄り添い力、
自由度の高い交付金がスタートアップに最適な浜松

――東京で事業をスタートし、2つ目のオフィスを浜松に構えられていますが、浜松にされた決め手はなんでしょうか。

 

大きくは3つです。

1つめは、浜名湖などでの観光業があり、三ヶ日みかん、お茶といった農作物が豊富なため、「おてつたび」先になりうる地域産業が多いこと。実際に、おてつたび先数の全国ナンバーワンは静岡県です。

2つめは、浜松市の協力体制が素晴らしいこと。浜松市役所の方はスタートアップへの理解が深く、どうすれば私たちの活躍の場を増やせるかを考え、おてつたび先を増や

すために連携してくださり、説明会を開催するなどビジネスの機会を創出いただけるのが心強いです。このような自治体はなかなかないのではと思います。

そして3つめは、ファンドサポート事業による資金面での補助。弊社の場合は、おてつたび先の利用料、宿泊先環境のフォローアップに活用させていただきました。

 

私たちの目指す世界は、交付金や補助金がなくても10年、20年続く持続可能性が高いサービスです。今回の交付金はそのための検証に利用させていただきました。

この交付金の活用のルールがちゃんとスタートアップに特化したものになっている点、ここが他の補助金にはない部分だと思います。というのも、0→1、1→10へ築き上げていく、未知へ向かうスタートアップにとっては、仮説検証をする中で、資金の最適な用途は変化しがちなものです。他の補助金は用途変更の融通がなかなか効かないものですが、浜松市のファンドサポート事業の場合は、仮説検証から判明した方向性へフレキシブルに舵を切ることができ、手段が目的化してしまうことがありません。スタートアップが活躍できる環境が整えられている特長の一つです。

 

――浜松市のファンドサポート事業について、制度を活用する中で感じられた魅力はありますか。

 

ファンドサポート事業の採択を受けられたことが、地域での深い信頼につながりました。まだまだ実績のデータが足りていないスタートアップにとって、自治体の後ろ盾がある。そのことが、地域のマーケットとのスムーズな架け橋になってくれたことは間違いありません。

そして、浜松市役所の方をはじめとした、地域を盛り上げるキーパーソンたちのサポートにより取引先も増えました。そういったご縁から、静岡エフエム「モーニング ラジラ」とコラボレーションしたコーナーを半年間担当させていただくことに。ラジオ放送でのPRの機会に恵まれるなど、ご縁の連鎖が生まれています。

手厚い“寄り添い力”がスタートアップの追い風になる、チャレンジングな気概にあふれた浜松市の環境に感謝しています。

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

浜松市のベンチャー支援制度に関して、ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください。

ご相談・お問い合わせ窓口はこちら

ページの先頭へ