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更新日:2024年1月1日

KUROFUNE株式会社

独自開発した外国人労働者向け生活支援アプリで、
日本を「安心して働ける、ずっと住み続けたい国」へ

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代表取締役/CEOの倉片稜氏(左から3人目)。東北大学経済学部を卒業後、外資系メーカーに勤務。営業として働きながら、東南アジアを中心に世界20カ国を観光で訪問。現地の人から「日本で働きたくない」と言われたことに衝撃を受け、外国人が「働きたい」「住みたい」と思える国にならなければ日本の将来はないと考え、2018年に在日外国人向けの生活支援サービスを提供する「KUROFUNE株式会社」を創業

 

KUROFUNE株式会社

真の意味で日本を開国することをミッションとして、人材紹介・定着事業および生活支援事業を通じて、外国人が働きやすく住みやすい日本社会の実現を目指すスタートアップ。現在、在日外国人労働者向けの生活支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」の開発・運営をメイン事業としている

「もう一度日本を開国しよう」をコーポレートスローガンに、KUROFUNEを出航

――2018年にKUROFUNE株式会社を設立していますが、起業の経緯と目的をお聞かせください。

 

起業する前は、外資系のメーカーで非常に楽しく仕事をしていました。外資系の会社ですので基本的に成果主義で、成績が良ければ給料も上がり休みも取りやすくなり、時間とお金を持て余してけっこう頻繁に海外旅行をしていました。

東南アジアを中心に年間12カ国ぐらい訪問していました。特に日本人があまり行かないようなローカルな場所が好きでよく行ったものです。その際、現地の人と話す機会を積極的に設けていたのですが、そんな折、興味本位に「将来日本で働いてみたいと思うか」とか、「日本に住みたいと思うか」といったことを尋ねてみると、旅行なら行きたいけど、日本で働くとか、長く住むのはちょっとイヤだよね、みたいなネガティブな答えが数多く出てくるんです。

一方、日本国内を思い返せば、日本って素晴らしい国だというようなことをテレビなどで喧伝しているし、日本政府も外国人の方に向けて、魅力あふれる日本にもっと来てほしいなどとアナウンスしているわけです。

 

こうした海外と国内との日本に対する認識の相違を行く先々で思い知らされ、すごいショックを受けました。同時に、外国人の方に日本は働きやすく、住みやすい国だと思ってもらい、就労の場、生活の場として日本を選んでもらわなければ、少子高齢化で人口が減っている日本に将来はないと痛感したんです。

そこで、もう一度日本を開国し、外国人が労働者・生活者として活躍できる社会を実現するために起業を決意し、2018年、社名に企業ミッションを込めてKUROFUNE株式会社を設立した次第です。

 

――「日本には旅行なら行きたいけど、働くのはイヤ」という思いは、実際に日本で働いていた人が母国に帰って、日本での厳しい就労経験を伝えたことに起因しているのか、それとも漠然と日本に対しそういうイメージを持っているのか、どちらでしょうか。

 

残念ながら前者が多いですね。良好とは言えない労働環境の中、ネガティブな思いを抱えたまま母国に帰り、「日本って働くにはあまり良い環境じゃないよ」といった経験談が広まり定着してしまった話を聞くこともありました。このままでは本当に日本は就労先として選ばれなくなってしまう。そんな危機感を強く覚えたことが、KUROFUNEの出発点となりました。

外国人労働者に寄り添ったアプリで日々の生活をサポート

――御社では外国人労働者の支援としてどんな事業を展開しているのでしょうか。

 

我々には2つの事業がありまして、1つが人材紹介・定着事業。もう1つが生活支援事業です。起業した当初は、企業への人材紹介および入社後に安心して長く働いて定着できるよう、働きやすい環境を整える人材紹介・定着事業でスタートしました。その後2期目の時、アクセラレータープログラムに参加して、何十人、何百人という数の外国人労働者にヒアリングしたことがありました。その結果、労働環境の問題で悩んでいる方も多いのですが、どちらかというと日常生活の問題で悩んでいる方のほうが多いということが分かったんです。しかしながら、その問題をケアする事業体がない。だったら我々がその役割を担おうということで、生活支援事業に注力することにしました。

 

――具体的にどういうかたちで困りごとの解決策を提供しているのですか。

 

はい、我々は外国人の方々の利便性を最優先して、多言語に対応できるスマホ用のアプリを独自開発しました。それが外国人生活支援アプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」です。これはもう、この1つのアプリで、外国人の方の日本での生活を便利で豊かなものに変えるスーパーアプリと呼べるもので、現段階(2023年3月現在)では、無料サービスが4つ、有料サービスが3つ実装されています。

このうちの「24時間生活相談サービス」は、チャットボットを活用したサービスで、日本の生活での困りごとについて24時間相談することができ、チャットボットの自動応答機能によって、個々の相談内容に応じた最適な解決策を記載した記事を紹介するものです。

また「オンライン薬局サービス」は、日本語をまったく使わずに母国語のみで一般用医薬品をオンラインで購入できるサービスです。外国人の方が体調を崩したりケガをしたりした際、病院に行かずに市販薬で治したいけれど、何という薬を買ったらいいか分からない場合に、当てはまる症状を選んでいくだけで、その症状に適した薬を提示するというチャットボットになっています。例えば頭痛の場合、「あなたにはロキソニンがお薦めです」といったレコメンドが出てくるので、ロキソニンの使用上の注意を読んだ上で、最終的に購入ボタンを押すとロキソニンが自宅に届くというシステムです。

 

 

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外国人の方の日本での生活を便利で豊かなものに変えるアプリ「KUROFUNE LIFE SUPPORT」

 

前述の4つのサービスは無料のフリープランで利用できますが、有料のフルサポートプランでは、さらに3つのサービスを利用することができます。まず、病気やケガのために一定期間働けなくなった場合に保険金が支給される「セーフティーネット保険(所得補償保険など)」の提供、次は低額の手数料で本国に送金することができ、送金額証明書の発行も可能な「低額手数料の海外送金サービス」、3つ目が24時間いつでもオンラインで受講することができ、母国語で受講することも可能な「オンライン日本語教室サービス」です。

さらに当社では今後も随時市場調査を行うことでニーズを把握し、在日外国人向けの新たな生活支援サービスを順次追加していく予定です。また、アプリの対応言語も、現在の日本語、英語、タガログ語、ベトナム語、中国語、インドネシア語、ウズベキスタン語に加え、ネパール語、ポルトガル語、ミャンマー語、タイ語も追加する予定です。

 

――浜松のファンドサポート事業で採択されたレポーティングシステムもアプリに追加する機能の一つだと聞いています。それはどういうものでしょうか。

 

レポーティングシステムは、アプリ会員のサービス利用状況を雇用企業にレポート(報告)することで、外国人労働者が抱える生活や仕事での困り事を企業が把握し、企業内の労働環境の改善や、労働者本人のモチベーションアップにつなげるシステムで、労働者、雇用企業双方にメリットをもたらすものです。

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浜松市の的を射たスタートアップ支援に感謝

――ファンドサポート事業で受けた交付金は主にどのようなことに使ったのでしょうか。

 

主な使い道としては2つありまして、1つがアプリ開発です。フィリピンのセブ島にアプリの開発拠点を設けているのですが、アプリ開発の追加費用として交付金を使わせていただきました。もう1つは、レポーティング機能を追加実装するにあたって、企業に対して営業活動できる人員を確保するための費用です。

 

――浜松に支店を設置した目的をお聞かせください。

 

浜松市は外国人を受け入れてきた歴史が長く、現在もブラジル人を中心に2万6000人もの外国人が住んでいます。そのため、多くのコミュニティがありますが、どれも外国人同士でまとまっていて、日本人との接点が薄いという特徴もあると思います。その点は愛知県と似ている感じですね。ですから当社の外国人労働者生活支援アプリを導入していただくことで、浜松にはどんどん労働および生活環境を改善していく余地があると考えたわけです。それは浜松市としても望んでいることだと思います。

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

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