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更新日:2024年1月1日

株式会社はままつメディカルソリューションズ

地域の医工連携の要として
「ものづくりのまち」へ新風を吹き込む

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代表取締役の折本正樹氏(左)と、チーフ・メディカル・オフィサーとして地域の医工連携を牽引する山本清二氏(浜松医科大学副学長)

 

株式会社はままつメディカルソリューションズ

2019年、「浜松医科大学発ベンチャー企業」の称号を取得。浜松発の医療機器を国内外に普及させ社会貢献を図ることを経営理念として創業。今後も浜松医科大学が持つ知財と、浜松地域の企業が持つ技術を合わせた医療機器開発で、浜松地域の発展に寄与することを目指している

患者にも執刀医にもメリットが大きい
世界初の立体外視鏡を開発

――代表の折本さんは、以前は東京の医療機器メーカーでエンジニアをしておられたと伺いました。そこから浜松でスタートアップを起業されるまでの経緯を簡単にお聞かせください。

 

折本氏:以前の会社に勤めていた時の話になりますが、2006年に山本先生から「浜松医大と一緒に国の補助金を使って新しい医療機器を開発しないか」とお声がけいただきました。それでナビゲーションシステムや立体内視鏡の開発などに取り組んできたのですが、会社の経営者が替わった時点で手を引くこととなり、「それなら新たに医大内に会社を立ち上げ、これまでやってきた研究開発を続けて販売につなげよう」となったわけです。

 

――そこで諦めたりせずに、立体内視鏡と立体外視鏡の開発に取り組み続けたのですね。

 

山本氏:もともと国のプロジェクトとして開発に取り組んでいました。そして、医療現場のニーズをより高いレベルで満たすために、臨床研究で有用性と操作性を検討し、開発したのがこの立体内視鏡と立体外視鏡です。

 

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豊富な臨床経験から立体内視鏡、立体外視鏡開発の経緯を語る山本氏

 

これまで脳や脊髄などの手術では、手術用内視鏡または手術用顕微鏡を使用していました。私自身が脳神経外科医ですのでよくわかるのですが、内視鏡の場合は小さな孔からカテーテルを入れるので傷も小さくて済み、患者さんにとってはやさしい手術(低侵襲顕微鏡手術)ができるといえます。しかしながら、われわれ執刀医にとっては、内視鏡では深い部分まで立体的に見えないという弱点を抱えていました。そのため、特殊なメガネを装着し、3D表示モニタの画面上で立体視しながらの施術となり、疲労が大きくなってしまうことが課題でした。

 

一方、細かい手術では顕微鏡を使用していましたが、顕微鏡だと立体視はできても機器自体が大型のため、どうしても執刀医は大きな機器の外側に回り込んで施術しなくてはならない。そうすると手元が暗がりになったり、無理な姿勢を強いられたりなど負担が増え、患者さんの傷も大きくなります。

 

傷を小さくし、なおかつ細かい手術が行える顕微鏡というのは世界中のどこにもなかった。そこで「安全かつ負担の少ない施術ができ、患者さんの傷も小さく済ませられる機器が欲しい」という考えから、これらの開発がスタートしたわけです。結局、立体外視鏡の方が早く完成し、これが「浜松医大発ベンチャー」の第1号製品となりました。

 

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医療現場のさまざまな意見を反映し完成させた立体外視鏡

 

――機器自体はどちらで製造されているのでしょうか。

 

山本氏:当社はいわゆる「ファブレス製造業」といって「製造工場を持たない製造業」です。そのため、部品や筐体の製造・組立はそれぞれの専門メーカーに委託しています。医療機器は製造販売業の資格がないと医療現場に出すことができませんので、折本さんが苦労をして第一種製造販売業を取得されました。第1種を持っているのは県内では9社、浜松市内では当社と浜松ホトニクスさんだけですね。

 

折本氏:資格を取得したことで、浜松医科大学はもとより、地域の医工連携拠点の薬事支援も行うことができるようになりました。

 

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機器の設計や製造管理から薬事法対応まで幅広く活躍する折本氏

ファンドサポート事業に採択されて
市の支援の手厚さを実感

――2020年12月に浜松市のファンドサポート事業に採択されています。採択されて得られたメリットとはどのような点でしょうか。

 

折本氏:もちろん交付金がありがたかったですね。最初に完成した立体外視鏡は「クラス1」といって医療機器の中では人体へのリスクがいちばん低いクラスに属します。製品化の認可を取るにはPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に届け出をするだけで良いのですが、そのためにはまず現物を3台つくって試験に出さなくてはならない。医療機器の安全性を担保するための試験です。この現物をつくるにも費用が必要ですし、試験を受けるにもコストがかかる。ここに交付金の一部を充てました。

そしてこれから申請する立体内視鏡についてですが、これは「クラス4」という最も高いカテゴリになります。この申請先もPMDAです。クラス4の場合、審査には時間も、そして何より審査費用として膨大なお金を払う必要があります。この申請にも活用させていただく予定です。

 

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立体内視鏡のビューワ内のモニタ画像(右目側)。メガネ不要で自然な立体視を実現

 

山本氏:浜松市のファンドサポート事業で受けられる交付金は、とにかく使い道が広い。研究開発でなくても、たとえばこうした申請のための資金としても活用できる。これは助かりますね。スタートアップ企業にとって市の支援策はとても手厚いものだといえるでしょう。

産官学が緊密に連携
スタートアップなら浜松で

――スタートアップするにあたって浜松市の魅力や優位性はどんな点にあるとお考えですか。

 

山本氏:2002年から文部科学省の「地域知的クラスター創成事業」を受けて、浜松市では知の拠点である大学が有する有望なシーズと、輸送用機器、楽器、光、IT、医療といった多様な分野の産業が持つ技術開発力を融合させた共同開発を推進しています。これは浜松だからこそできる取組であると考えています。

さらに、浜松市が東京や大阪、名古屋などと並び「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に選ばれていることで、今後スタートアップの数はますます増え、より新規性とバラエティに富んだ「ものづくりのまち」としての発展が期待できます。

また、私の立場から申し上げると、今後はさらに多くの医療系のスタートアップ企業が浜松に集まり、浜松が一大医療集積地になればいいな…と。そして当社が医療機器関連産業クラスターを形成する核となり、地元企業の高度な技術力を活用して新たな機器の開発を促進することで、地域産業のさらなる活性化に貢献できればと考えています。

 

折本氏:私もスタートアップの環境としては、浜松はとても魅力的な地域だと感じています。「スタートアップなら浜松」「浜松ならスタートアップ」と思っていただけるといいですね。

 

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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