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更新日:2024年1月1日

Co-startup Space & Community 「FUSE」

未来の浜松への投資として、地域金融が手がける
スタートアップ支援のシェアスペース

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浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部 新産業創造室 の渡邉迅人氏(左)、石塚昇平氏(右)。渡邉氏がFUSEの運営、石塚氏がスタートアップへの投資をメインで担当する

 

Co-startup Space & Community 「FUSE」(運営:浜松いわた信用金庫)

浜松市中心部にあるザザシティ浜松中央館内の、会員向けシェアスペース。コワーキングやイベントスペース、造形機器を備えたファブスペースやキッチンを設置。スタートアップや新規事業支援に取り組み、新たな人材のコミュニティが形成されている

 

スタートアップ支援を通じて地域活性を

――FUSE誕生のきっかけと、スタートアップ支援における理念を教えてください。

 

渡邉:2016年に市長が「浜松バレー構想」を提唱し、ベンチャースピリットを盛り上げてスタートアップ支援を進めようという話が出てきました。スタートアップ育成のエコシステム構築のため当社役員がシリコンバレーを視察。戻ってきて新しいことを始めようとなったとき、シリコンバレー駐在員の社内公募があり、私が手を挙げました。

2017年から2年間、現地で起業や育成に携わる人と数多く会うなかで、浜松で起業を考えるいろんな人が集まって我々がそれを支援する、そんな拠点を作ろうと考えました。

 

金融機関には、起業の計画がある程度かたまった時点で相談に来る人が多いのですが、その前段階から支援しようというコンセプトです。シリコンバレーと同じことはできなくても、浜松版エコシステムの核となるようなことを体現しようと。それがFUSEの始まりです。

背景には浜松での危機感があります。我々の主要なお客さまは自動車産業、特にエンジンに関わっている方が多いのですが、ガソリンから電気への大変革が起こるなかでお客さまをどうフォローするのか。また、人口減でビジネスの種が減るなか、土壌を育てて発芽する仕組みを作る必要があるんじゃないかという。

 

石塚:企業の成長によって地域を活性化させる、広い視点でそれをやっていこうと。浜松発で世界の市場にチャレンジしていく企業が1社でも生まれれば、FUSEを作った意義があると思います。

 

渡邉:スタートアップ支援と信用金庫って親和性が高いと思うんです。地域のお金を集めて地域に還元するというのが我々の使命なのですが、今まで融資という方法で地域を応援していたものを、直接金融などの仕組みを取り入れて、新しいアイディアを持つ起業家を応援していく。飲食店をやりたい、理髪店をやりたいというような、一人または数人で始める事業の相談って我々がずっとやってきた得意分野なんですよね。スタートアップとして急成長したいという起業家を支援するのも、我々がやることは実は同じなんです。

 

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イベントスペースではセミナーやワークショップを開催

単なる場所の提供ではなく、
つながり、出会い、きっかけが生まれる拠点に

――シリコンバレーへの人材派遣を継続することでどんな影響がありましたか。

 

渡邉:シリコンバレーへの派遣としては、初代の私に続いて、二代目、そして現在は三代目が駐在しています。シリコンバレーで痛感したのは、既存組織のなかで新しいものを作るというのはハードルが非常に高く、トップダウンでどんどん進める体制にしないと新規事業はすぐつぶれてしまうということ。その構想を受け持つ組織として、駐在経験者や若い駐在候補者を入れた「新産業創造室」というチームを作ったのが2019年、FUSEオープンが2020年です。

シリコンバレーでの駐在経験がなければ生まれていない発想でしたね。これまでも、創業スクールやビジネスコンテストは既存組織のなかでずっとやってきた。でもそれは場所さえあればどこでもできる話なんです。シリコンバレーで活動して、実際に見て感じたことがあるからこそ、場所だけではなくつながりを提供する拠点としてのFUSEをやろうということになった。 

シリコンバレーには、投資会社や金融機関、拠点を作ってスタートアップを成長させる専門家が大勢います。彼らは、彼らが持っているネットワークや知識をスタートアップに叩き込む。今ほしいと思っている人をどんどんつないでいく力がすごいんです。それと、シリコンバレーには世界中の企業が集まっていて、そこから世界に拡大していく流れがあります。だから我々も日本だけではなく、浜松から世界へ拡大していく道筋を描いています。

 

――FUSEの強み、スタートアップにとってのメリットは?

 

渡邉:現在、新産業創造室の職員9名がFUSEに常駐しています。大学出向者、海外駐在者、経産省出向者など多様な経験をもつ顔ぶれがそろい、個別にアドバイスできることが強みです。現時点でのFUSE会員は約200名で、中小企業、スタートアップ、フリーランス、大企業、学生、大学、行政などさまざま。他業種の方を我々が紹介してつなぎ、実際に会えることが大きなメリットですね。

 

石塚:会員さんに寄り添いながら伴走型で相談に乗る。雑談のなかからヒントをもらって仲介役になれますし、事業計画を見せてもらって直接的にファンドの検討もします。ジャッジするというより、職員それぞれが得意分野を持って一緒に作り込んでいくスタンスですね。FUSEが、チャレンジが起こるきっかけの場所になれば、我々のやり方も間違いじゃなかったといえるんじゃないかな。

 

渡邉:最初は批判も多かったんですよ。この拠点でどれだけ儲かるの?っていう。でもそういう短期的な話ではない。FUSEは未来への投資なんです。この地域の、金融機関としての。

 

石塚:スタートアップだけでなく大企業の新規事業担当者も意見交換やネタ探しにいらっしゃいます。大企業も中小企業も「何か新しいことをしたい」という思いは一緒なんですよね。そしてFUSEがなければ接点がなかっただろうという出会いが確実に増えている。それは大きな成果ですし、将来的に必ず目に見える利益につながると思います。

 

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レーザー加工機や3Dプリンタなどのデジタル造形ツールをそろえたファブスペース。会員は無償で利用できる

 

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メニュー開発やフィードバックの場として活用できるトライアルキッチン

いつか浜松を、スタートアップの憧れのまちに

――FUSEの現在の課題や今後の展望を聞かせてください。

 

渡邉:FUSEはスタートこそしましたが、我々自身、実際に起業した、イグジットした、失敗したという経験はまだ持っていない。そういう人がチームにいて情報を提供できるのが一番いいと思うので、そのあたりの知見や経験をもっと入れていきたいですね。

 

石塚:スタートアップとFUSEとで一緒に成長し、共創していくっていうことですね。自治体や大学も含めて。それがうまくいけば地域の活性化が見えてきますし、浜松で起業してスタートアップで上場したという事例が生まれれば、FUSEにも会員にも刺激になっていいサイクルができてくると思います。

 

渡邉:将来的には、浜松で起業して成功した人に対する憧れが生まれたり、「浜松で起業したい」というまちになったりしたら本当に素敵だなと思います。今まさにその種を我々がまいている。花が開いたとわかるのは20年後くらいじゃないかな。そんなモチベーションでやっています。

 

――スタートアップに伝えたい、浜松市の魅力は?

 

石塚:市の方針として県外の有望なスタートアップを誘致したり、事業展開の基盤を作ったりしているというのは非常にいいことだと思います。ビジネスをおこすというのは地域の一番の活性化につながるので。そういう取り組みを長くやってきた上で、大きく予算をつけてさらに展開しているのはありがたいですね。

生活面でいうと、物価が手頃、気候が温暖、病院も多いし、東京・大阪へのアクセスが非常に便利。拠点にするにはこんなにもいい場所はないと思います。

 

渡邉:1時間あれば市内のどこにでもアクセスできるのも魅力。大企業が多くてリーチしやすく、大学との連携もできる。それから、地域のキーパーソンに会いやすいというのも感じます。なにより、スタートアップ支援を前向きにやっている信用金庫があるっていうのが大きいですよ。

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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