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更新日:2024年1月1日

DORONE FUND株式会社

黎明期のドローン・エアモビリティ産業を
ものづくりに強い浜松で育てる

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住友電気工業株式会社でのエンジニアを経て、公認会計士の資格を取得し、キャピタリストとしてDORONE FUNDにジョインした芳賀英樹氏。現場視点を伴ったハンズオン支援を行う

 

DRONE FUND株式会社

2017年に創業した、世界で唯一のドローン・エアーモビリティに特化したベンチャーキャピタル。「空の産業革命」の実現を目標に、まだまだ小さい市場において協業・競争しながら、ドローン・エアモビリティ前提社会に向けた社会実装を推し進める

 

ガラ空きの地上150mに可能性を見出し、
起業家育成に力を入れたエコシステムを形成

――はじめに、VCとしての御社の特徴を教えてください。

 

2017年の創業から長らくハードウエア中心の投資に力を入れてきたノウハウと専門性の高さが弊社最大の強みです。ドローンやエアモビリティが活躍する地上150mはガラ空きで、鳥しか飛んでいないようなもの。渋滞緩和などの社会問題解決の可能性が多分にあり、インターネットとハードウエアを接続すれば、新たな産業革命を起こせる。そんな未来を目指しています。そして設立から約5年となり、ビジョンのアップデートを行う中で、空だけでなく陸上や海中へも範囲を広げ、ロボティクスが活躍する未来も描くようになりました。

 

――支援の形で注力している部分はありますか。

 

専門性の高さを生かしたエコシステムの形成に力を入れています。業界特化型VCとして出資企業・投資家を含めたコミュニティづくりも弊社の特徴です。ドローンやエアモビリティは、公共政策活動の分野でも活用でき、官公庁、地方自治体からのニーズも高いため、官民一体型産業創出ファンドといえると思います。実際に「過疎」「高齢化」「災害把握」「インフラの老朽化」「農地の活用」「配送の利便性」といったキーワードでの官民協働事例を積み重ねているところです。ディープテックを求めるリミテッドパートナーとの連携も深め、スタートアップが活躍できる環境づくりに努めています。

 

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ドローン・エアモビリティに特化したファンドとして、行政や大企業からのニーズや相談も集まりやすい点がDORONE FUNDの強み

 

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DOLONE FUNDのビジョンに共感し、出資を決めたリミテッドパートナーも多数

 

投資先をつなぐ合宿の開催も大きな特徴です。起業家同士が集まるコミュニティの中でも、弊社に集まるのはドローンやエアモビリティ、ロボティクスに特化したスタートアップ。情報交換もより具体的で、即使える情報が集まるわけです。半期に一度、弊社が開催する合宿は、CEO限定で30〜40人が集まります。事前に弊社の合宿運営担当からアンケートで議題を募集し、起業家たちの要望を吸い上げた上で内容をデザイン。これまでの反響で「価値あり」との声が高かったのは、苦難をどう乗り越えたかの“しくじり共有”でしたね。栃木県の那須高原などで、散歩をしながら、足湯に浸かりながら意見交換をする、といった心身からのオープンなコミュニケーションが好評です。

 

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那須ハイランドパークでの合宿風景。産業革新を目指す仲間たちとのドローン撮影が合宿の恒例に

大手メーカーとの連携を視野に入れた「空の産業革命」

――浜松市ファンドサポート事業の認定VCになった経緯を教えてください。

 

自治体、地方との連携が深いVCとして、各地の産業とその可能性を探る中で、浜松市はいち早くマークしていた自治体です。というのも、ヤマハやスズキといった大手メーカーとのマッチングの可能性、スタートアップ支援を積極的にされていることなど、弊社にとって魅力的な部分が多くありました。ウェブサイトで今回の浜松市ファンドサポート事業を知り、その内容を見ると資金援助もかなり太っ腹な金額。空の産業革命への近道になる!我こそは!と手を挙げさせていただいた次第です。

 

――制度を活用される中で感じられた魅力はなんでしょうか。

 

浜松市のスタートアップへの対応がクイックで的確。問題解決への意識が本当に素晴らしいと感じました。また、浜松いわた信用金庫さんなど、地元の金融機関とも迅速につなげてくださるなど、スタートアップにとって恵まれた環境づくりに尽力いただいています。

 

――浜松市ファンドサポート事業に採択された、御社の投資先スタートアップについて教えてください。

 

制度を活用させていただいた投資先は3社です。

まずは、ドローン管制プラットフォームを活用した災害対応インフラの開発を行う、トラジェクトリーから。

 

2018年の設立というかなり早い段階から社会課題へのピン立てを行っていた点と、ドローン活用のアイデアが確立できていること、NTTコミュミケーションズで空港管制のマッピングに携わっていた実績の信頼性などから投資を決めたスタートアップです。公共政策に大いに役立つ事業でありながらマネタイズが難しい領域で、ひと山越えられれば……というタイミングでの採択でした。おかげさまで浜松市の踏み込んだサポートの下、実証実験を行える運びにもなり、これから間違いなく必要になる産業として成長できています。

 

2社目は、みかん農家向けの作業効率化電動運搬キットや、VR技術や自動運転技術などを用いたハウス作業ロボットの開発を行うCuboRex。「ハードウェアの民主化」を掲げるアーリーアダプターです。創業から5年で、新たな突破力が必要なタイミングでの採択。創業者の出身地である和歌山名産の農産物、ミカンの存在があってこその事業として、制度を活用して同じくミカンの名産地である浜松市へ2021年に進出したわけです。今や販売台数は1000台を超え、大手メーカーとの技術共有も進むなど2022年は飛躍の年になりました。ちなみに創業者の寺島瑞仁さんは弊社の合宿でのMVP獲得者です。学ぶ姿勢や行動力が他の起業家たちの刺激にもなっています。

 

3社目のANSeeNは静岡大学発のディープテックスタートアップです。高解像度で被ばく量が少ないイメージセンサを開発しており、この技術を使えば医療現場のより正確な診断のほか、人が入れないエリアの点検や、空港などでのセキュリティ強化にも応用できます。ドローンに載せて、崩壊したトンネルの内部構造を調査するといった、スタートアップ同士のマッチングによる活用も期待しています。ファンドサポート事業の交付金は機器の量産化に活用し、検査業界の課題解決と、幅広い応用への可能性に向けて走り出しています。

 

「補助金を使ったら終わり」じゃないのが浜松

――浜松市のファンドサポート事業はスタートアップの成長に存分に役立っているのですね。

 

ここで起業家の方へお伝えしたいのが、たとえ採択に至らない結果になったとしても確かなメリットが見込めることです。実際、弊社の支援先で不採択になったスタートアップもあります。ですが浜松市との関係ができ、取引先が拡大したり、マッチングの可能性が広がったり……といったステップアップがありました。

採択を受けたスタートアップも、交付金を使って終わり、にはなっておらず、その後も事業課題などに対するサポートを継続してくださっています。自治体からの持続的なサポートは何かしらのチャンスに結びつくはずです。

マニアック性を伸ばし、地方に眠る個別ニーズを吸い上げる

――業界特化型のVCとして、これからのスタートアップの成長に必要と考えることは何でしょうか。

 

地方に目を向けることが大切です。事実、ドローンに関連する企業の所在地の割合は64%が東京で、残る36%は地方。40%近くが地方で事業を展開しています。ドローンの利活用の可能性は全国に遍在するということです。地方には、地域に根付くことで発見できるニーズがあります。弊社の支援先でも、酪農地でのドローンを使った運搬や宅配など、地域の社会問題に役立った事例がありました。雇用増加の意味でも地方での活躍には社会的な意義があります。

だからこそ、汎用性を追い求めずに、ぜひマニアック性を伸ばし切ってください。その尖ったところを世の中のニーズにどう当てはめていくかは、ニッチなノウハウを持つわれわれと、浜松市の充実したサポート体制でストーリーを考えさせていただきたい。中長期的な視点を持つ浜松市のスタートアップ支援環境から、きっと新しいチャンスが生まれるはずです。

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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