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更新日:2024年1月1日

株式会社CuboRex(キューボレックス)

農業現場での経験を原点に、
「不整地のパイオニア」としてスタートアップに挑戦

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自身もかつてミカン栽培に従事していた芦川和希浜松支店長。手にしているのが「E-Cat Kit」、手前が「クローラユニット」

 

株式会社CuboRex(キューボレックス)

不整地産業において、利用者自身が必要とする物を作り、利用することが当たり前になる社会の実現を目的に2016年に新潟県内で起業。その後、東京本社、和歌山支店、浜松支店を開設。「不整地のパイオニア」として、JAや展示会を通じて全国に販路を拡大中

 

製品に惚れ込んで転職を決意

――芦川さんは農業現場でCuboRexの製品に触れて衝撃を受け、転職を決意されたそうですね。

 

富士市でミカン栽培に従事していた2020年に、当社のねこ車(一輪車・手押し車)用電動アシストタイヤキット「E-Cat Kit」と出会いました。実際にワンシーズン、ミカンの運搬に使ってみたところ、作業の省力化・効率化はもちろん、疲労も大きく軽減されて、これは良い製品だと確信したんです。そして「この製品の良さを全国のミカン農家さんたちにぜひ伝えたい」という強い思いから転職を決意、当社に入社しました。逆に言えば「E-Cat Kit」との出会いがなかったら、未だに苦労しながらミカンを運んでいたと思いますね(笑)

 

――「E-Cat Kit」について、もう少し詳しく教えてください。

 

「E-Cat Kit」はホイールにモーターが内蔵されていて、タイヤ、バッテリー、レバー(コントローラーユニット)で構成されています。既存の一輪車に装着すれば、誰でも簡単に電動化することができます。非常にシンプルな構造ですが、ミカン農家で使われている一輪車は規格がさまざまなので、商品化にあたって全国からいろいろな一輪車を取り寄せて、ほぼすべての一輪車に組み付けられるように試行錯誤しました。こうした苦労の末、2020年に販売にこぎつけ、「手持ちの一輪車に簡単に取り付けられた。レバーを握るだけで動き出し、『押す』というより『持って行ってもらう』感じだ」と、絶賛の声をユーザーさんから頂いています。

 

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シンプルな構造の「E-Cat Kit」。一輪車を誰でも簡単に電動化できる

 

――浜松支店の開設と浜松市のファンドサポート事業についてお聞かせください。

 

まずミカンの一大産地である和歌山に支店を開設し、その後2022年に、三ヶ日みかんで有名な浜松に支店を置き、私が支店長に就任しました。傾斜地でのミカンの運搬に苦労している農家さんがたくさんいることから、業務の拡大を考えていたとき、タイミング良く浜松市のファンドサポート事業のことを知ったわけです。

 

さらに、浜松市では施設園芸も盛んに行われているため、当社のハウス「クローラユニット」を利用した作業ロボットが施設園芸農家さんの負担を軽減できると仮定しました。この実績を「E-Cat Kit」と併せて浜松市のファンドサポート事業に申請したところ、認定を受けることができました。

「クローラユニット」はもともとテスト開発に使われる製品ですが、施設園芸農家さんで使用する場合にはカメラを搭載し、AIによってハウス内の通路や壁を認識できる、いわゆる“見回りロボット”として活躍します。駆動機能としっかりとした制御機能を備えており、遠隔操作によりカメラで作物の色づき具合をチェックしながら進みます。これまで人間が足と目で行っていたことを当社のクローラがやってくれるわけです。

さらに、ハウス内の土の消毒などにも使用できるほか、自立走行、自律走行などの分野の研究・事業開発用ユニットとしても、世界的企業から評価を受けています。

 

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業界初のテスト用電動クローラユニットとして開発。高い耐久性やカスタマイズ性も特長

これは助かる!使い道の広い交付金

――浜松市のファンドサポート事業についてはどのような感想をお持ちでしょうか。

 

浜松市の交付金の特徴は「使い道が広い」ということです。これは本当にありがたいですね。スタートアップへの交付金は研究開発費に充てられることが多いと思いますが、当社は既に製品化していますので、より広く普及させて浜松の農家さんにもっともっと使っていただいて作業の軽減に寄与したい、というのが大きな目標でした。

そのため当社の場合、市からの交付金は普及・販売促進のためのプロモーションに役立てました。また、今後は土木建築の分野にも「E-Cat Kit」で参入したいと考えていますので、量産に向けて素材の仕入れに使えることもありがたいですね。このようにスタートアップにとって、浜松市ファンドサポート事業の交付金は非常に使いやすいものになっていると感じます。

 

浜松市ならではの充実したスタートアップ環境

――ユーザーに「E-Cat Kit」が広く受け入れられた理由はどのような点にあると思われますか。

 

私は個人的に「E-Cat Kit」については「ローテクのハイテク化」と考えています。ここでいうローテクは手押しの一輪車のことです。

農家さんにとって一輪車とはとても身近な道具の一つです。しかしながら手押しの一輪車での運搬は、効率が悪く、疲労も大きい。それに対して「E-Cat Kit」を組み込んで電動化させた一輪車なら、運搬の効率は格段に上がり、農家さんの負担は大きく軽減されます。誰でも簡単に取り付けられるというのも特長です。もちろん、価格面でも手が届きやすいという大きなメリットもあります。その意味では立派なイノベーションといっても過言ではありません。ですから、まずは農家さんに使っていただいて、その良さを実感してほしいという思いが強いですね。先ほどお話した通り、ファンドサポート事業の交付金を販促活動に使うことができたため、浜松における認知度のアップも思いのほか早く進んだと感じています。

 

――スタートアップという観点から見て、浜松はどのような環境だと思われますか。

 

まずは、使い道が広い交付金をはじめ様々なサポートが受けられるファンドサポート事業。そして、新製品や新たなサービスなどを実地で試すことができる実証実験サポート事業。浜松市の場合、この2つのスタートアップ支援が非常に充実していると思います。

ファンドサポートはもちろんですが、工業、農業、光産業、医療など多様な分野に多くの企業・機関がそろっており、さらに中山間地や平野部、沿岸部など多様な地形条件を抱える国土縮図型都市ですので、さまざまな分野の実証実験が行えるというのも非常に魅力的です。マーケットとしても大きいですしね。ですからスタートアップにはとても向いているフィールドだと実感しています。

 

  • 本記事のインタビューは2023年1月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

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