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更新日:2024年1月1日

Beyond Next Ventures株式会社

想像を超える未来の実現に挑む研究者や
起業家のディープテック創業を支援

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代表取締役社長の伊藤 毅氏。2014年8月にBeyond Next Ventures株式会社を創業。15年以上大学発ベンチャー・ディープテック領域の出資・成長支援に関わる。内閣府・各省庁のスタートアップ関連委員メンバーや審査員等を歴任

 

Beyond Next Ventures株式会社

「社会課題の解決・科学技術の発展・幸福の追求」を経営理念とし、「卓越した挑戦者たちと、その先の社会を創る」をミッションに2014年に設立。医療・ヘルスケア・アグリフード・新素材・エレクトロニクス・クライメートテック・宇宙・AIといった領域にも力を入れ、運用総額220億円、73社に出資。インドのバンガロールに100%子会社を設立し、海外進出も果たす

創業前から経営・人材採用と総合的な支援を手厚く

――まず御社のベンチャーキャピタルとしての事業内容や特徴、強みを教えてください。

 

1つは会社を立ち上げる前から支援が可能な点です。研究者の方々が起業前に参加できる「BRAVE」という事業化支援プログラムを自社で持っており、外部資金調達を前提とした事業計画の構築やビジネス人材とのマッチング、助成金の獲得支援などを行っています。

2点目はディープテックの専門性と、大学や研究機関・企業・投資家・専門家の皆さんとの幅広いネットワークです。私たちキャピタリストはそれぞれ自分の専門領域を持っていて、特に医療分野など高度な専門性が必要な部分においても、外部のアドバイザーの方々をチームに擁しており、創業初期にサイエンティフィック、事業性などの評価をしっかり行うことが可能です。

3点目が創業初期の経営チームの構築支援です。創業初期において大学発ベンチャーは経営を担う人材がいないというのが共通した課題です。そこで私たちは、ディープテックに興味を持つ経営人材を増やすために、ビジネスパーソンと研究者が共に事業化に挑戦できる「INNOVATION LEADERS PROGRAM」を2017年にスタートしました。卒業生はビジネスパーソンだけで400名を超え、うち40名がその後ディープテック系スタートアップの創業メンバーとして本格的に起業・経営参画し、活躍しています。

経営者候補を探して、研究者とのマッチングを成立させたという点においては、業界の中でもかなり多い方だと思います。

このように、私たちは出資だけではなく、ディープテックのスタートアップが育ちやすい環境(エコシステム)を創るための機能も持ち合わせています。

その活動の一つとして、本社のある日本橋にシェア型のウェットラボ「Beyond BioLAB TOKYO」を運営しています。都心型のこういったシェアラボは国内初で、バイオベンチャーが創業初期に高額な機器を買わずとも実験ができ、創業のハードルを低くすることができます。

 

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研究成果の事業化支援プログラム「BRAVE」では累計120チームを支援

 

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「INNOVATION LEADERS PROGRAM」卒業後にディープテックスタートアップ経営者となったリーダーたち

浜松市の採択により事業が飛躍的に拡大

――浜松市ではALY、I‘mbesideyouの2社に出資されていますが、その2社についての事業やエピソードなどがあればお願いします。

 

まず、ALYは創業がユニークで、私たちが展開している「APOLLO」というプログラムの出身者です。「APOLLO」というのは、経営者の方に技術シーズや臨床の現場との接点作りをサポートし実際に事業づくりを目指すプログラムです。社長の中澤氏はデータサイエンティストでもあるので、医療情報を扱ったビジネスを展開していこうとしています。病院内のさまざまな情報を統合管理して、最終的には患者さんの治療効果を高めていく、病院のコストを下げていく、医療費の削減に結びつけていく。こういったことを実現するような情報基盤を病院向けに展開し、さらに病院内で使用されるソフトウェアなども個別に開発をしていこうと考えています。

 

I‘mbesideyouは私が直接担当している出資先で、コロナ後に起業した会社です。オンラインでのミーティングの情報、特に彼らの言葉で言う「感情解析」をしてさまざまなビジネスシーンに有用なソフトウェアとして展開していこうとしています。最初に出資した時は教育現場で展開していましたが、私たちが医療系に強いということもあり、メンタルヘルスの研究を長くされていた有名な先生をアドバイザーとしてご紹介させていただきました。その後に浜松市のプログラムをご提案し、そこで浜松医科大学との共同研究や現地の繋がりを活かして本格的にヘルスケア分野に参入することになりました。開発チームのほとんどがインド人で、AIエンジンを元に感情解析をして、社員のメンタルの不調の検知、予測ができるようなアルゴリズムを開発しています。

我々としても今回の浜松市のプログラムについては非常に感謝しています。

 

――ベンチャーキャピタルから見た浜松市のスタートアップに対するイメージをお聞かせください。

 

そもそもこの支援制度自体がユニークで素晴らしいものだなと思いました。いち早く市町村単位でスタートアップを盛り上げていこう、外の地域からスタートアップを誘致しようというのを明確に政策として取り組まれていると感じます。

浜松のスタートアップの特徴でいうと、自動車の世界的大企業や楽器メーカーなど、ものづくりがそもそも地域の基盤としてある。浜松出身で成功されている起業家の方も多く、よくいわれる「やらまいか精神」がベースにあるからなのかなと思います。起業家気質とはそういうところで、まずはやってみよう、うまくいかなかったら軌道修正して再チャレンジすればいいじゃないかと、そういった考えがある土地柄なのかなと思っています。

 

――ベンチャーキャピタルとしてどういう点を重視して投資先を決めていますか。

 

大きく分けて3つあり、1つめは経営者、経営陣の部分。2つめは技術。3つめが事業性です。

経営者のビジョンや人を引きつける力、物事を成し遂げるまで続けられる考え、あきらめない姿勢、その事業における経験など。経営者個人だけではなく、経営陣もすごく大事です。その会社に必要なファンクションを経営陣が有しているのか、経営陣の信頼関係がしっかりあるのか、ガバナンスとしても適切なチームなのか、こういったところも深く見ていきます。技術でいえば他社と比べた時に保有技術に裏付けされた製品として優位性があるか、参入障壁があるかなど。事業性に関しては、ベンチャー投資というのはハイリスク・ハイリターンなものを中心に投資をしていきますので、スケーラブルかどうか、狙う市場規模の大きさも重要です。

 

――御社のミッションの中にも世の中を良くしていきたいというのがありましたが、そういう理念の中身といったことも重要視していますか。

 

会社の経営理念やミッションというのは、言葉以上の力を持っていると思っています。単なる標語ではなくて、本当に考え抜いて作ったものなので、ある意味、経営者の価値観や哲学が凝縮されている。それが経営陣や社員に対して力を与えていくので、もちろんしっかり見ていきますし、そもそもなぜその考えを掲げているのかを聞くことで、より経営者に対する理解が深まっていきます。

 

挑戦者を支援する私たち自身も挑戦者でありたい

――御社の「Go Beyond, Be Brave.」について説明していただけますか。

 

私たちは挑戦者である起業家を応援する、支援する。それならば、私たち自身が挑戦者であるべきだと思っています。そこで初めて起業家からの共感を得る、起業家から選んでもらうことに繋がる。

もうひとつは、私が起業した時に最初はすごく不安を感じていて、その時に応援してくださる先輩経営者に勇気づけられて覚悟が決まったというのがあります。それをすごく感謝していますし、僕たちがそういう役割をこれからチャレンジする人に対して果たすべきだと考えています。不安の中、一歩を踏み出すところを後押しできる存在になりたい。そこで「Be Brave」、勇気を持っていろんなことにチャレンジすることを大事にしています。

「Go Beyond」というのは、単に次世代のスタートアップを育てるだけではつまらない。普通の人が想像するものをさらに超えるような、そういったスタートアップに出資していこう、次の社会を作るような取り組みを僕たちもやっていこう、それによって世の中を驚かせていこうというものです。

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――御社は今現在どういうことに挑戦しているのですか。

 

組織や企業活動をグローバル化していくのが挑戦の大きなテーマかなと思っています。海外の中で特に力を入れているのがインドでの活動で、社員も日本人だけじゃなくてインド人のメンバーも採用してチームを融合しています。それから、日本の出資先スタートアップの海外進出の支援もさらに充実させていく予定です。

 

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インドの出資先スタートアップCEOたちと

 

もう一点は、宇宙、量子コンピュータ、エネルギー関連、クライメートテック(気候テック)、カーボンニュートラルなど、自分たちがこれまでそれほど投資をしてこなかった領域にも挑みたい。

浜松のサポート事業は非常に画期的で助かる制度

――スタートアップの場所として浜松に感じる魅力やメリットを教えていただけますか。

 

自治体をはじめ地域全体がスタートアップを応援しているというのがすごく大きなメリットだと思います。日本全体でスタートアップブームになってはいますが、まだまだリスクがあるもの、大変なもの、難しいものという見られ方をするのが一般的なので、そういう空気が醸成されているというのは本当に素晴らしいと思います。

また、自治体の旗振りによって外部連携のパートナーを繋いでくれるというのが強みだと思います。浜松市は政令指定都市の中では健康寿命がナンバーワンで、今年は幸福度もナンバーワンということなので、特にヘルスケアとかウェルビーイングとか、人々の健康に資するスタートアップにとっては良い地域の一つであることは間違いないかなと。

 

――浜松市のファンドサポート事業に対する評価や成果を聞かせてください。

 

自治体でこういった取り組みをしたのは浜松市が本当に早かったですし、全額補助でしかも先払いというスタートアップの資金繰りにとっては非常に助かる制度です。もう一つは、単にお金だけではなくて、浜松市の中で共同研究をするパートナーを見つけて、実証実験のフィールドとして市が機会を作ってくれる。自治体がこうやってスタートアップと連携してくれるところはあまりないので、すごく画期的な制度だなと思います。

補助金額も桁違いで、なかなか他の自治体では真似できない、かなり思い切った政策だと思います。ベンチャーキャピタルの業界で浜松市は有名になっているので、募集がかかったら必ず案内をしています。

 

 

 

  • 本記事のインタビューは2023年2月に実施されたもので、記事中の内容・人物の肩書等は全てインタビュー時点のものです。

 

 

 

 

 

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