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トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

「排泄予測デバイス『DFree』を活用した医療・介護の質向上プロジェクト」

排せつ予測デバイスの活用で医療・介護の質を向上する

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排せつの自立支援は被介助者の病状回復や生きがいに寄与するのか?介護・介助の中でも特にデリケートで、介助者の負担が大きくなりやすいのが排せつケアです。できれば適切なタイミングでトイレに誘導し、自力での排せつをサポートできるのが理想でしょう。しかしながら、個々人で異なる排せつのタイミングを正確にとらえるのは難しく、おむつや尿とりパッドに頼らざるを得ないのが現実でした。

そんな中、排せつ予測デバイスの「DFree(ディー・フリー)」を提供しているのがトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社です。今回の実証実験では、介護老人保健施設における利用者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を検証しました。その成果と今後の展望について、同社ゼネラルマネージャーの佐田 雅弥氏(以下、佐田氏)に話を聞きました。

排せつの自立支援は被介助者の病状回復や生きがいに寄与するのか?

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DFreeの仕組み(出典:公式サイト「製品のご紹介」より)

 

ーー「DFree」は、内蔵されたセンサーが膀胱のふくらみを検知し、排尿のタイミングを予測し通知してくれるデバイスですね。2017年には量産体制に入り、2018年には個人向けに「DFree Personal」もリリースされています。本実証実験の開始が2019年12月でしたから、それ以前には市場のニーズに合致したデバイスが完成していたといっても過言ではないと思います。そんな中、どのような目的で本プログラムに応募したのですか?

佐田氏:DFreeが広く介護の課題を解決できるように、さまざまなエビデンスを取得したいと考えていました。

たしかに、DFreeはこれまでも、介護施設で多く導入いただいてきました。そうした取組みの中で、おむつ交換や排せつ介助といった現場のオペレーション効率化や、非介助者ご本人の失禁率の低減に関するエビデンスを取得できました。

今回、実証サポート事業の応募にあたっては、そこから一歩進み、排せつの自立支援が被介助者みなさんの早期回復やQOL向上にどれほど寄与できるかを、検証・エビデンス化したいと考えていました。自立排せつを実現することで、たとえば在宅復帰する時期を早められ るかもしれません。そうしたデータを取りたかったのです。

ーー自立排せつの支援は、被介助者の自立に効果を及ぼせるか。その実証を目的としていたのですね。ただ、実証実験は実際の介護施設で行いますから、協力先を見つけるのに苦労をしたのではないでしょうか。

佐田氏:そうですね、とても苦労しました。本プログラムに採択された当時、浜松市内の医療機関や介護施設につながりはありませんでしたから。協力先を探すにあたっては、浜松市の担当者さんによく助けていただきました。

ーー具体的には、浜松市よりどのようなサポートがありましたか?

佐田氏:アポイント先の選定から面談への同行まで、協力先との関係づくりをご支援いただきました。担当者さんが市役所内で調整を図り、ご協力いただけそうな施設を見つけてはアプローチしてくださったのです。

協力検討先との面談にあたっても、担当者さんが同席してくれました。今回の実証実験がいかに市内の社会課題の解決や市民生活の質の向上につながるかを、熱く語ってくださいました。

実証実験のためとはいえ、見知らぬスタートアップへフィールドを提供するのはハードルの高いこと。ですが、こうした市の仲介によって、2020年の3月には介護老人保健施設西山ウエルケアさんの協力を得られることになりました。

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ーーそこから事前準備を行い、2020年10月に実証を開始されたのですね。

佐田氏:はい、5名の入居者さんにご協力いただきました。実際にDFreeを装着してもらい、2カ月にわたって排尿に関するデータを取得しています。

ーー結果はどうでしたか?

佐田氏:装着した5名のうち4名の方に失禁率の改善が見られました。さらに、DFreeを長期的に身につけ、排尿データを取り続けることが改善のポイントだとわかりました。

いつ、どれくらい排尿するかは、個々人で異なります。排せつのタイミングを測れるようになるには、ある程度のデータ蓄積が必要だったのです。

ただ、適切なタイミングを予測しトイレに誘導できれば、それまで尿とりパッドに排尿していた方でも自立排尿できる回数が増えました。

ーーなるほど、尿とりパッドの交換回数も大きく削減されていますね(以下、実例詳細のスライドより)。これまで5回交換していたのが、1回に抑えられています。

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出典:トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

 

佐田氏:この結果により、地球環境の保全に対する使命感も感じられました。実は、日本の一般ゴミの4~5%が使用済みの紙おむつであり、この数字は2030年に7%を超えるといわれています。“紙”おむつといえども、原材料は石油化学物質です。

ーーDFreeの普及は、紙おむつの廃棄量削減にも寄与するのですね。おむつの廃棄量を減らせれば、国民医療費の削減にもつながります。

佐田氏:そうですね。さらに、今回の実証実験では、おむつ着用に対する心理的な負担や、おむつに排尿する不快感も軽減できたのではないかと思います。西山ウェルケアの職員さん より、「トイレに行けて嬉しかった」という利用者さんの声をいただきました。

また、職員さんの約8割が、利用者さんの排せつケアについてほかの職員さんと話す機会が増えたと答えてくれました。作業としてオペレーションに組み込まれていた「おむつの交換」や「トイレの介助」が、個々人に対する「排せつケア」として意識されるようになったようです。

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出典:トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

 

ーー被介護者ごとの排尿傾向がわかることで、現場のボトムアップで介助のあり方を考えるようになるとは意義深いです。今後はどのように発展していきますか?

佐田氏:実証実験の結果もファクトとして用いながらDFreeの改良を続け、この度、第4世代目の新機種がリリースできることになりました(実証実験中は第3世代目の機種を使用)。重さは26グラムと従来の約3分の1。大きさは500円玉を横に2枚並べた程度とコンパクトです。

また、今回の機種からケーブルレスとなり、水洗いできる水準まで防水性も高めました。まずは、このレベルアップしたDFreeをしっかりと社会実装していきたいと考えています。

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DFreeのプロトタイプ制作に携わった同社エンジニアの小田氏。浜松からリモートワークでプロダクト改良に携わる。「排せつに悩む大切な人にDFreeをプレゼントしてあげたい」と語った。

佐田氏:あわせて、ソフトウェア要素の改善を通じたサービスの向上にも引き続き取り組み、どのような機能があれば、より幅広い排せつの悩みごとに応えられるのかを追求していきます。また、創業当初からの目標であった排便予測デバイスの開発も進んでいます。

私たちが目指すのは、世界中の人々が健康で幸せな人生を全うできる「Live Your Life」の実現です。今回のプログラムでは、排尿の課題に対するDFreeの存在価値を確かめられました。浜松市さんとも引き続き連携しながら、「Live Your Life」の実現に向けてがんばっていけたらと思います。

お問い合わせ

浜松市役所産業部スタートアップ推進課

〒430?8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2825

ファクス番号:053-457-2283

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