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株式会社サイライズ

硫化水素の発生を抑制する先端技術で、下水道施設の長寿命化に貢献

 

貯水槽などで発生し、下水道施設の腐食原因となる硫化水素。換気の難しい場所での対策には、高価な薬剤を添加しなければならない場合がほとんどです。

 

そんな中、硫化水素の発生源にアプローチする方法で根本解決に取り組んだのが、電磁場のコントロール技術を持つ株式会社サイライズ(別ウィンドウが開きます)です。

 

硫化水素の発生がとくに促進される夏季において、10ppm以下という低レベルまで硫化水素の濃度を抑制することに成功しました。

 

同社の取り組みについて、代表取締役の柏倉保春氏(以下、柏倉氏)と同社製品の販売代理を手掛ける合同会社ジョイン代表の山形浩一氏(以下、山形氏)に聞きました。

自治体での初の実証実験、政令指定都市をフィールドに通年で取り組む

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(キャプション)柏倉氏

 

――はじめに、貴社の事業内容を教えてください。

 

柏倉氏:弊社では、交流電流を利用して電磁場をコントロールする技術の研究、開発、および技術を応用した製品の製造販売を行っています。

 

とくに、新幹線や特急列車などにおけるトイレの臭気や尿石の付着を防止する装置は、これまでに1,000台以上を納入してきました。

 

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(キャプション)周波数を変調した電磁波(マイナス性質)を除去したい化学物質(プラス性質)にぶつけてまとわせ、分子を微細化し浮遊させ、水流に乗せ除去する


 

柏倉氏:山形さんは弊社の代理店パートナーですが、本事業に参画するきっかけを作ってくれ、取り組み中も立役者となってくれました。

 

――パートナー企業が参加のきっかけを作ってくれたのですか。それでは続いて、本事業への応募経緯を教えてください。

 

柏倉氏:弊社の硫化水素発生抑制技術は、民間企業では5年ほど前から採用実績があり、公共分野でも採用を広げたいという思いがありました。地方自治体向けにテスト導入を試みたこともありますが、前例のない先端技術であるために導入に至らず、そのときは実績を外部使用することも叶いませんでした。

 

そんな中、山形さんが「浜松市が硫化水素の低減技術を募集している」と本事業の存在を教えてくれたのです。政令指定都市をフィールドに弊社の技術の有効性を立証し、地域との連携を強化する足がかりを作れる機会と考え、応募を決めました。

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(キャプション)山形氏

 

山形氏:硫化水素は危険性が非常に高い化学物質です。サイライズ社の技術を用いることで、下水道施設の長寿命化や作業員の安全性確保に貢献できる可能性を感じ、柏倉代表に本事業を提案しました。

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(キャプション)硫化水素の温床となるスカム(腐敗した浮遊物)やヘドロに、装置から電磁波を照射し発生源自体を消滅させる
 

柏倉氏:しかし、山形さんから提案を受けた時点で応募締め切りまで1週間……。自治体向けの提案がはじめてだったので、どうしても自社商品のアピールに終始してしまい、応募期限まで提案書の内容を何度も書き換えました。

 

提案書もプレゼンも改善点が多々あったと思います。それでも採択いただいたのは、弊社の技術が市の課題解決に繋がると考えていただいたということ。何としても実証実験を成功させようと決意しました。

 

――具体的にはどのように実証実験を行いましたか?


柏倉氏:まず、2022年10月からの2カ月間で、フィールドを探索しました。浜松市の担当者さまからいただいたリストをもとに事前調査を行い、12月9日に実施が決まりました。その後、装置のテスト稼働を経て検証を開始。1月27日から3月24日の冬季と、5月26日から8月4日の夏季のデータを計測しました。

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(キャプション)貯水槽における装置の設置イメージ

 

柏倉氏:計測項目は、硫化水素の濃度と水温のデータです。貯水槽内と、その約2キロメートル先にあるマンホール内に計測器を設置し、30分おきに計測しました。そして目標は、マンホール内の硫化水素濃度を10ppm以下に抑えることとしました。

 

山形氏:この10ppm以下という数値は、作業現場などにおいて作業員の硫化水素中毒の発生を予防するために厚生労働省が提唱しているものですが、硫化水素の濃度を抑え込むレベルとしては、非常に厳しい目標といえます。それでも、将来的な実装を見据えるなら、この基準をクリアすることが必須だと考えていました。

フィールド探索と装置の台数変更で苦心、浜松市のサポート体制が成功に繋がった

――年内にフィールドが決まり、2シーズンにわたり実証実験を行ったそうですが、総じて順調に進んだということでしょうか?

 

柏倉氏:いえ、実はフィールド探索に苦労しまして、2回見送りになっています。候補地の1カ所目は次年度に改修を控えていたため、通年での実施が不可。2カ所目は、施設が大規模過ぎるために、実証実験には不向きと判断しました。

 

ですが、浜松市の担当者さまが迅速に次の候補地を案内してくれたおかげで、素早くフィールドを検討できました。

 

山形氏:実証実験中の変更点としては、設備も増強しています。開始当初に設置した装置は2台でしたが、水温が高くなると、硫化水素は発生しやすくなります。そこで、より効果をもたらすよう、夏季の実施時には装置を1台追加しました。

 

実証実験の途中で計画を変更する際は、慎重な判断が必要です。しかし、浜松市の担当者さまがともに成功を見据えて取り組んでくださったおかげで、臨機応変な対応ができました。

 

――浜松市から必要なサポートを得られたのですね。そうした取り組みの結果はいかがでしたか?


柏倉氏:より条件の悪い夏季において、計測器を設置してから31週目と32週目の2週にわたって硫化水素の10ppm以下を実現でき、期待していた成果を残すことができました。

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(キャプション)硫化水素の平均濃度も、装置の非稼働時と比べ最大で6分の1程度まで低下した

 

山形氏:一方で貯水槽内は、外気温によって水温が上下し、また流水量も日によって変わる環境だったため、硫化水素の濃度には日ごとに波がありました。それでも、装置を稼働した2カ月間で見ると、ゆるやかな低減傾向が確認できます。これは、硫化水素の発生源自体が徐々に消滅していったためだと考えられます。


柏倉氏:硫化水素の発生する温床を微細化して分解することで、内壁の汚れの除去や、圧送管などの防錆(さび)の効果も得られます。薬剤と異なり効果が表れるまで一定の時間が必要な手法ではありますが、長く使った分だけ効果が持続するという傾向が見られたことは有意義でした。

メンテナンス性を含めて改良を重ね、自治体経営に貢献できる製品へ

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――将来的な実装を見据えたとき、今後の課題は何でしょうか?

 

柏倉氏:硫化水素の濃度を恒常的に10ppm程度に抑えられるよう、条件の探索や技術の確立が必要だと考えています。実験装置1.の設置場所(角落とし用スペース付近)によっては浮遊物が固着してしまうことが分かりましたので、メンテナンス性の向上も視野に入れています。

 

なお、装置は買い切り型とし、ランニングコストを年に1回の保守点検代と稼働にかかるわずかな電気代だけに抑え、自治体経営に貢献できる商品を目指します。

 

山形氏:貯水槽の既存設備に、汚水の滞留を防ぐための曝気(読み方:ばっき、攪拌すること)装置があります。曝気装置にサイライズ社の装置を取り付けて稼働させると、硫化水素の発生の抑制効果がより高まることが分かりました。

 

お問い合わせ

浜松市役所産業部スタートアップ推進課

〒430?8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2825

ファクス番号:053-457-2283

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