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サグリ株式会社

AI解析の難易度が高い浜松市で、耕作放棄地診断アプリの精度向上を実現

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近年、発展の兆しを見せている日本の宇宙産業。スタートアップの増加とともに、インフラ(ロケット・衛星)の開発や打ち上げサービス、地上設備、観測データの利活用、宇宙旅行など、宇宙ビジネスの事業領域は拡大しつづけています。

 

そんななか、AI解析による衛星データの利活用で、農業の課題解決に向き合っているのがサグリ株式会社(本社:兵庫県丹波市)です。衛星から取得するデータをAIが学習し、グリッド(区画)単位で農地の状態を把握するサービスを展開しています。

 

今回サグリが目指したのは、国内有数の農業地帯である浜松市で、耕作放棄地診断の高い精度を実現すること。平野部から台地、中山間地域まで広い市域に、田畑のみならず果樹園や茶畑といった多種多様な農地が広がる浜松市は、“AI解析の難易度が高い”まちだそう。

 

そんな浜松市で繰り広げられた同社の実証実験について、取締役COOの益田周氏(以下、益田氏)に聞きました。

 

全国展開のために欠かせない浜松市での実証実験、AIの解析精
度をどこまで改善できるかがカギ

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益田氏

 

ーーまず、今回の実証実験で農地の状況把握に使用した、農地パトロールアプリの「アクタバ」について教えていただけますか?

 

益田氏:はい。アクタバは、人工衛星画像をもとにAIが農地の利用状況を診断し、農地1筆ごとに耕作放棄率を診断できるアプリケーションです。作付けが行われていないと判断した土地を、PCやタブレットの画面上に赤いグリッド(区画)で示します。

 

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引用:サグリHP

 

 

ーーなぜ、耕作放棄地を見分けるITツールが必要とされているのですか?

 

益田氏:毎年1回の実施が各自治体に義務づけられている、農地利用状況調査(通称:農地パトロール)の効率化が求められているためです。農業委員会や行政職員の方が目視で行うようルールが決められていますが、そもそも到達するのが困難な農地があったり、多大な労力を必要としたりといった課題がありました。

 

耕作放棄地の発生防止や解消をするには、農地の状態をタイムリーに把握し、対策を考えなければいけません。しかしながら浜松市は、日本で2番目に市域が広く、農地の数は約万筆にのぼります。それらを37名の農業委員会のが見に行くことには、困難もありました。

 

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農地パトロールは、台帳や地図を持ち歩き、農地の判定結果を手書きでチェックして回る。アクタバは、撮影した写真や調査結果もタブレットやスマホから入力でき、農地データの管理がしやすい。 引用:サグリHP

 

 

ーーアクタバはすでに50市町村で使用されており、海外進出も果たしています。浜松市では、どんな内容を実証するために本事業へ応募したのですか?

 

益田氏:日本有数の農業地帯である浜松市でもアクタバを使用して、その実用性を確かめたいと考えていました。市域が広く、米や野菜のほかにもミカンや茶など農地が多様性に富んでいるからこそ、じつはAIによるデータ解析の難易度の高いのが浜松市だからです。

 

AIを用いる以上、100パーセントの精度で耕作放棄地を判定することはできません。現地確認が必要な耕作地も10~20パーセント程度は残りますが、それでもすでに導入のある市町村では80~90パーセントの精度が実現されています。

 

ここからさらに全国の自治体で使っていただけるサービスにブラッシュアップするためには、浜松市で通用するモデルに仕上げていくことが必要だと考え、本事業に応募しました。

 

ーー実際に浜松市でアクタバを試験運用してみて、結果はいかがでしたか?

 

益田氏:あえて判定難易度の高い農地に挑戦したこともあり、実験当初はほかの地域と比べて低い判定精度になりました。それだけ浜松市には、多種多様な農地が点在していることの裏返しでした。

 

たとえば、今は農地も多くありましたし、気候によっても植物の活性度合いが変わりますので、鮮度の高いデータを収集する必要がありました。

 

そして、耕作放棄地の意味づけをAIに教示する作業からやり直し、AIの解析モデルを抜本的に改修していきました。

 

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ーーそれは大変な作業でしたね。結果はどうなりましたか?

 

益田氏:十分に精度を高められました。それでも果樹園や茶畑などの解析精度は、さらなる改良を続けたいレベルだと感じています。じつは果樹園などは3年ほどかけてAIの解析モデルを構築し、やっと精度が出てきたような状況です。

 

そうした背景から、アクタバの“浜松市モデル”の確立には、長期的にデータを収集、分析していきたい旨を浜松市にもご報告。会社としても浜松支店を構え、腰を据えて浜松市の課題と向き合うことに決めました。

AIの精度向上にはリアルなデータが必要、浜松市職員との協業だからこそできた529筆分ものデータ収集

ーーAIの解析モデルを改修するのに、要した期間は6か月ほど。一体どのようにして、この短期間でAIの精度を高めたのですか?

 

益田氏:実は、浜松市の農業担当職員さんが、実際の農地へ現地調査に行き、詳しい現状をアクタバに入力してくださったのです。今回の分析用に、農地のなかでも、現地への到達や判定が難しい箇所を選んでいただいたことも要因です。

 

「草木が豊富にあるから耕作地と判断しているけれど、これは雑草だから耕作放棄地と判断してよい」「」などの情報がたくさん入手でき、AIの精度向上に非常に役立ちました。

 

ーーとくに中山間地域など、到達の難しい農地も多くあったと思います。浜松市の職員はなぜ、多くの労力をかけて529筆分もの現地調査に出向いてくれたのでしょう?

 

益田氏:国内最大級の農地面積を有し、その将来性を心配してこられた職員さんの心ある行動だったのだと思います。農業委員会のの多くは、農業従事者の方から選ばれているので本業もあり忙しくされています。さらに農地パトロールを行うのは、7月~10月。酷暑日も増えているなか、現地調査は困難になりつつあります。域内の農地すべてを安全に把握できる手段が潜在的に求められており、協力いただけたのだと感じます。

 

そうした現状を知って、一方では政府への提言も進めてきました。ついに2022年6月、農地調査の実施要領が見直され、衛星やドローンを用いた遠隔での農地把握も可能に。農地パトロールにかけていた労力をテクノロジー活用により削減し、耕作放棄地の発生予防や解消に振り分けてもらえるようになったらうれしいです。

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AIのすぐれた解析モデルにより、アクタバは比較的安価な衛星データを用いながら高い精度を実現している。利用料金は農地面積に応じた年額60万円からのプラン。持続可能なサービスを目指す。

 

 

ーー素晴らしい進展ですね。それでは今後の目標をお聞かせください。

 

益田氏:本事業をきっかけにアクタバの認知度を向上し、全国に1,700ある自治体を支えるサービスになっていけたらと思います。近年は、作付け品種や作付け面積の分かる「デタバ」や、農地の生育・土壌状態を見える化し、作業が必要な場所・程度の判断に役立つ「サグリ」もリリースしました。

 

多様な農地を有する浜松市で、1つひとつの農地に対応していくことが、AIモデルの精度向上に繋がりました。そうして全国のどこでも使えるサービスへとアクタバを進化させ、自治体みなさまの課題解決と農業の未来に貢献できたらうれしいです。

 

お問い合わせ

浜松市役所産業部スタートアップ推進課

〒430?8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2825

ファクス番号:053-457-2283

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