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株式会社Cien

LINEを通じた啓発プロモーションで若年層の子宮頸がん検診受診率を向上

 

がん治療にはがんの早期発見が重要なことから、国は5つのがん検診を推奨し、対象者が一部の自己負担で受診できるよう地方自治体へ働きかけています。

 

5つのがん検診の中で、多くの自治体において20歳から受診対象になるのが子宮頸がん検診です。しかしながら、20代における子宮頸がん検診の受診率は非常に低く、国が目標とする50%を大きく下回るのが現状です。

 

どうすれば若年層の子宮頸がん検診受診率を高められるでしょうか?コミュニケーションアプリ「LINE」の活用で受診率向上の成果を得た株式会社Cien(シエン、以下:Cien)の取り組みについて、同社のヘルスケア事業部長 横垣祐仁氏(以下、横垣氏)に話を聞きました。

読まれない“がん検診のお知らせ”をどのように届けるか?

――貴社は、コロナ禍で事業自体をピボットした1社だとお聞きしています。

横垣氏:従来は「たびらく」という会社名で旅のコンシェルジュサービスを展開していまし

たが、コロナ禍にみまわれ継続が難しくなりピボット。2020年3月にチャット接客サービス「ChatSeller(チャットセラー)」を開始しました。

チャットコマースやCRM(顧客関係マネジメント)の一環として、多様な業界でChatSellerをご利用いただけるようになりました。ヘルスケア領域への応用を考えはじめていた折、かねてからお付き合いのあった静岡放送株式会社(以下略称、SBS)さまに浜松市実証実験サポート事業(以下、本事業)を勧めていただき申し込みました。

 

――本事業では、「子宮頸がん検診」の「若年層」の受診率を向上するとのことで、このターゲットは本事業の採択前から決めていたのでしょうか?

横垣氏:いえ、我々としては、国が推奨している5つのがん検診すべてが対象だと考えています。対象である子宮頸がん、乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんのうち、浜松市では子宮頸がんだけが20歳から受診対象となっています。

しかしながら、若年層ほど自治体から郵送される手紙を読まない、受診に至らないといった課題がありました。そのようなお話を浜松市の担当者さまからお聞きする中で、ターゲットを絞り込んでいきました。

 

――若年層が子宮頸がん検診を受けない課題をどのように分析されましたか?

横垣氏:若年層が普段からよく使用している媒体を使い、浜松市の補助で子宮頸がんの検診が受けられることを直接知らせる必要があると考えました。住民票を実家に置いたまま一人暮らしをしている学生・社会人もいますので、手紙では情報が届きづらいですし、若く健康なのでがん検診そのものに興味がない人も多いからです。

そこで、国内の利用者数が8,600万人(※)と多く、40代未満の約85%が利用しているLINEを通じ、子宮頸がん検診の受診率向上に向けた啓発活動を行うことにしました。

LINE上に「浜松市がん検診」アカウントを作り、友だち登録を募った。 出典:株式会社Cien

2020年9月末時点 参照:LINE Business Guide V1.0

行動科学にもとづく呼びかけで、受診率は前年比258%超えに

――具体的にはどのようにLINEによる啓発活動を行ったのでしょうか?

横垣氏:受診に至るきっかけとなるコンテンツを期間中に約20本配信しました。子宮頸がんがどんな病気で、なぜ検診を受診しなければいけないかといった基礎情報を分かりやすく、若年層向けのデザインやイラストに載せて届けています。

東京大学医学部附属病院の中川 恵一特任教授がYouTubeを通じて配信している内容をLINEコンテンツに編集して配信したほか、子宮頸がん検診を受診できる市内の病院をLINEのトーク上で探せる機能も付けました。

配信コンテンツには読者の行動を促すナッジ理論を取り入れた 出典:株式会社Cien

 

――友だち登録はどのように増やしましたか?

横垣氏:浜松市や静岡新聞社をはじめ、他団体から多大なご協力をいただきました。中でも大きな推進力となったのが、聖霊クリストファー大学によるご支援です。浜松市さまのご紹介により、看護学部の学生有志による「婦人科検診啓発企画(SGEプロジェクト)」と連携させていただきました。

プロジェクトメンバーのみなさん自ら「浜松市がん検診」アカウントに友だち登録してくださったほか、友人に声をかけたり、実際に検診を体験した動画を発信してくれたりしました。

LINEの運用面については、婦人科がんの経験者による自助グループ認定NPO法人オレンジティを静岡新聞社よりご紹介いただきました。LINEのチャット機能を通じてユーザーから個別具体的な相談が寄せられたときのために協力を仰いでいます。

 

――各方面から協力を得られたのですね。実証実験の結果はどうでしたか?

横垣氏:受診率向上に一定の成果が残せたと思います。友だち登録数は、目標1,000名に対して1,156名となりました。構成も若年層が過半数を占め、そのうち個人情報を登録してくださり、かつ検診の受診資格がある方(対象者)は379名にのぼります。

出典:株式会社Cien

 

浜松市がん検診アカウントへの友だち登録を募集して約半年後の2021年11月末時点で、LINE登録者のうち子宮頸がんを受診した人の割合は20.1%を記録。前年比で258%の増加となりました。本実証実験は2022年3月末まで継続し、2021年12月以降の受診結果の取りまとめはこれからなので、実際にはもう少し数字が伸びると思います。

 

出典:株式会社Cien

 

対象者379名の意識変容についてもアンケートを取りまとめた結果、対象者の74%が子宮頸がん検診に対する意識が向上したと答えています。

そのうち34%の方が、以前は浜松市の補助で子宮頸がん検診を受けられることを知らなかったそうです。そこから浜松市がん検診アカウントに友だち登録いただくことで、浜松市の補助で子宮頸がん検診を受けられることを理解した人の割合は77%に達しました。

 

――すばらしい成果ですね。実証実験は総じてスムーズに進められたということでしょうか。

横垣氏:そうですね。遠隔地からプロジェクトマネジメントを行う難しさは感じましたが、定期的にミーティングの機会を設けてくださるなど、浜松市さまに実証実験に取り組みやすい環境を作っていただいたお陰でスムーズに取り組めました。

強いて言えば、アカウントの友だち登録者数はもっと伸ばしたかったですね。この母数をより増やせるよう、改善を続けたいと思います。

 

――それでは、今後の展望について教えてください。

横垣氏:女性のがん検診の受診率向上に貢献したいと考えています。2021年度の子宮頸がん検診に続いて、2022年度は乳がん検診を対象とした実証実験を実施できればと思います。本事業では、検診を実施している医療機関を調べる機能に終始しましたが、LINE上から受診を申し込める機能も追加したいところです。

いずれにせよ医療機関との連携が必要な取り組みなので、一足飛びに推進できません。そんな中、浜松市が認定した商品・サービスを優先的に導入いただける「トライアル発注認定事業」にも応募させていただきました。引き続き浜松市さまとよく連携しながら、市民のみなさまの健康増進に努めていきます。

お問い合わせ

浜松市役所産業部スタートアップ推進課

〒430?8652 浜松市中央区元城町103-2

電話番号:053-457-2825

ファクス番号:053-457-2283

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