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更新日:2022年3月31日
地域全体で見守ることが必要だと思うんです。(PDF:335KB)
「光明小学校の校門前に”いかのおすし”ができたらしい」との噂を聞いた。しかし、寿司屋さんができたという話は一度も聞いたことがない。
興味を抱いた私は、小学校を訪れた。校門についたものの、どこにも寿司屋さんは見当たらない。代わりに目に映ったのは、大きな大きなタワー。
色とりどりのひらがなで「いかのおすし」と書かれていて、大部分は木でできていた。高さはおよそ3mほどで、手足のように取り付けられたパーツと頭部の冠が、まるでいかのようだ。
後から詳しく聞いてみれば、いかのおすしとは「いかない」「のらない」「おおごえをだす」「すぐにげる」「しらせる」という、子供たちが不審者に遭遇したときの心得を、頭文字をとって覚えやすく標語にしたものであった。
巨大なタワーに圧倒された私は、タワーを作成した警察協助員の会長を務める岡部博忠(おかべひろただ)さんに話を伺うことにした。
岡部さんは、光明小学校のすぐ近くに住んでいて、普段から警察協助員としてボランティアで子供たちの登下校の見守りをしている。
「光明小学校の子供たちは特に元気ですから、大きな声であいさつを返してくれますよ」
警察協助員は天竜区内に20人。
ある日の話し合いで「いかのおすし」のタワーを作ったらどうだろうか?という案が出たそうだ。
「ちょうど光明小学校周辺で不審な男に子供が声を掛けられることがあったし、光明小学校の校門前に作ったらいいんじゃないかという話になってね」
それから、警察協助員の皆さんの力を結集して、タワーの制作が始まった。材木業をやっていた岡部さんが木を調達すれば、板金業のメンバーが板金を調達。
時間があれば岡部さんの家の倉庫に集まり、少しずつ作業を進めていった。
「大変だったこと?うーん、思い浮かばないですね。みんなで楽しんでつくりましたから。デザインも決まりがないから、みんなで意見を出し合ってね」完成したのは、発案してから2、3カ月が経過した12月。
光明小学校では、完成発表会が開かれた。
「完成発表会では、代表の児童から『いかのおすしを見て、何かあったときには落ち着いて対応したい』と言ってもらえたんです。とても印象に残っていますよ」
「子供たちには、とにかく事故や事件に巻き込まれずに、安全にすこやかに育ってほしいですね。うちの窓からは、光が丘中学校が見えるし、家の前は昔、登下校の道だったから、地域の子供たちには愛情が沸いてね。地域全体で子供たちを見守ることが必要だと思うんです」
子供たちの話をする岡部さんの目は、とても優しい。子供たちが少しうらやましく思った。
子供たちが元気に通う光明小学校の前には”いかのおすしや”さんではなく、子供たちに対する優しい思いと、地域の人たちの知恵がつまった、味のある”いかのおすしタワー”ができていた。
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