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更新日:2025年11月19日
「適応策」とは、第1章でも記載されている、気候変動対策の一つです。
温室効果ガスの削減などの「緩和策」を行ったとしても、少なくとも今世紀半ばまでは温暖化が進行すると予測されており、災害の発生頻度と強度の増加や、熱中症などの増加、食糧生産量の減少など、これまで以上に深刻な影響が生じると言われています。
こうした気候変動による影響を回避・軽減する「適応策」と、温室効果ガスを削減する「緩和策」を組み合わせて実施することが重要です。
2015(平成27)年にCOP21で採択されたパリ協定において、各国に対し適応の推進や適応計画の立案が求められました。こうした動きを受けて、国は、2018(平成30)年に「気候変動適応法」を施行、2021(令和3)年に「気候変動適応計画」を策定し、科学的知見に基づき、気候変動適用に関する施策を総合的かつ計画的に推進することとしています。
特に熱中症については、昨今の熱中症搬送者数の増加を受けて、国も対策を加速させており、「熱中症対策実行計画」を2023(令和5)年に策定するとともに、「気候変動適応法」の一部改正、「気候変動適応計画」の改定を行っています。この改定により、「気候変動適応計画」に熱中症特別警戒情報の発表や指定暑熱避難施設の指定などの熱中症対策が盛り込まれています。
また、静岡県では、「静岡県の気候変動影響と適応取組方針」において、国の適応計画に加えて、静岡県内における影響が大きい特産物など、地域特性に応じた影響と適応策をまとめ、気候変動影響による被害の回避・軽減を図るとともに、気候変動のリスクや適応に関する情報を収集・発信し、県民や事業者の理解や行動を促進することを目指すこととしています。
本市では、国、静岡県の影響評価及び将来予測を参考に、市域の特性などを踏まえ、懸念される影響とそれらに対する適応策を整理した「浜松市気候変動適応計画」を2021(令和3)年に策定しました。これは「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)[2021]」の一部に組み込む形で策定しており、以降「浜松市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」の改定に併せて、「浜松市気候変動適応計画」も改定してきました。
本市においても、気候変動による影響を回避・軽減する「適応策」を重要な施策と位置づけ、本計画に基づき、温室効果ガスを削減する「緩和策」との両輪で推進していきます。
また、「浜松市気候変動適応計画」を踏まえ、2022(令和4)年には、「健康」分野の適応策として「浜松市熱中症対策行動指針[2022]」を策定しました。以降、国の動向に呼応して改定を重ね、市、事業者、及び市民が一体となり、熱中症の予防策などに取り組んでいます。
本市では、国、静岡県の影響評価及び将来予測を参考に市域の特性などを踏まえ、「農業・林業・水産業」、「自然生態系」、「水環境・水資源」、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「市民生活」の7分野に分けて「懸念される影響」及び「適応策」を示しています。
気候変動による各分野への懸念される影響とそれらに対する適応策を整理し、各適応策について、事業者・市民・市のうち実施主体となるものに”○“を付け、市は直接実施しない場合も推進・周知の役割を担う際には実施主体としています。
1.農業
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 水稲 | 品質低下、収量減少 | 高温耐性を付与した品種の普及・栽培 | 〇 | 〇 | |
| 暑さ対策事例の紹介・活用 | 〇 | 〇 | |||
| 生育期間が早まり、登熟期間前後の気象条件変化による影響 | 高温不稔に耐性のある品種の普及・栽培 | 〇 | 〇 | ||
| 出穂期の冠水によるコメの減収、品質低下 | 気候変動に対応した新品種の導入促進 | 〇 | 〇 | ||
| 果樹 | ウンシュウミカンの着色遅延、浮き皮発生、品質低下、貯蔵性低下 | 浮皮果の発生を軽減させる技術、生産安定技術の普及・活用 | 〇 | 〇 | |
| ぶどう、もも、おうとうの高温による生育障害 | 気候変動に対応した新品種の導入促進 | 〇 | 〇 | ||
| 大豆・麦・茶 | 気温上昇による減収 | 気候変動に対応した栽培技術の普及・活用 | 〇 | 〇 | |
| 気温上昇に伴う茶芽の生育、一番茶の萌芽期・摘採期の早まり | |||||
| 野菜等 | 施設野菜・露地野菜の収量、品質の低下 | ||||
| 気温上昇による果実の大きさや収量への影響 | 気候変動に対応した栽培技術及び設備の普及・活用 | 〇 | 〇 | ||
| 畜産・ 飼料作物 |
搾乳牛の乳量低下と受胎率低下、肥育豚、肉用鶏の増体率低下、低下の程度増加 | 畜舎内の温度上昇対策の普及・実施 | 〇 | 〇 | |
| 病害虫 ・ 雑草等 |
病害虫被害の拡大 | 病害虫の発生予察や注意報の迅速な提供及び活用 | 〇 | 〇 | |
| 高二酸化炭素受胎や気温上昇による発病増加 | |||||
| 農業生産基盤 | 小雪化や融雪の早期化、融雪流出量の減少による春季の渇水、湛水時間長期化の懸念 |
機能が低下した農業用排水施設などの整備 関係機関と連携した農業用水利施設の戦略的更新整備 |
〇 | ||
| 豪雨の頻発・激甚化などの自然災害への影響 | 国営・県営・団体営土地改良事業による防災減災・老朽化対策の実施 三方原・天竜川下流・浜名湖北部用水の防災・減災・老朽化対策の推進 |
〇 | |||
2.林業
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 木材 | 害虫被害の増加 | 被害の未然防止、早期発見及び早期駆除に向けた、林業事業者・地域住民協力による被害木などの情報収集 | 〇 | 〇 | 〇 |
3.水産業
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 海面漁業 | 漁獲量の減少 | 藻場再生の推進 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 回遊性魚類の分布範囲及びサイズの変化 | 国・県の動向把握及び漁業者への情報発信 | 〇 | |||
| 海面 養殖業 |
水温上昇による適地減少及び時期遅れ | 高水温耐性品種の普及・養殖 | 〇 | 〇 | |
| 海水温上昇に関係する赤潮発生による二枚貝のへい死リスク上昇 | 赤潮発生予測や防除などの技術開発・推進 | 〇 | |||
| 県との連携による早期情報把握と漁業者への伝達 | 〇 | ||||
| 海洋酸性化による貝類養殖への影響 |
二枚貝の酸性化への影響予測 予測に基づいた対策技術の普及・活用 |
〇 | 〇 | ||
| 内水面漁業 | 海洋と河川の水温上昇によるアユ遡上時期の早まり | 生息環境改善の手法や放流効果の高い種の生産技術などの普及・活用 | 〇 | 〇 | |
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 水環境 | 湖沼における水温上昇や栄養塩類の流出特性の変化に伴う富栄養化および溶存酸素の低下 | 事業場への立入検査実施 湖沼保全区域内事業場からの排出水における汚染状態の定期的な測定 |
〇 | 〇 | |
| 湖沼における富栄養による有機汚濁負荷量(BOD,SS)の増加 | |||||
| 水資源 | 渇水の発生 | 節水の呼びかけ・実施、地下水の利用 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 融雪期の河川水量の変動、年降水量の変動幅増大と渇水の発生、無降雨の継続 | 水資源の重要性への理解醸成に向けた市民に対する各種啓発活動・広報活動 | 〇 | |||
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 陸域 生態系 |
気温上昇によるニホンジカの生息頭数増加と生息域拡大 | 防除資材の設置に関する支援及び防除 | 〇 | 〇 | |
| 森林の減少による生物多様性の損失、スギ人工林の脆弱性増加 | 森林保全による地球温暖化の防止及び生物多様性の保全 | 〇 | |||
| FSC森林認証取得による持続可能な森林経営・管理 | 〇 | ||||
| NbS(自然の恵みを活用した社会課題の解決策)の視点を取り入れた事業実施 | 〇 | ||||
| 生息環境の変化による、生物の絶滅及び、一部の侵略的外来種の侵入・定着など、生物多様性の損失 | 市民の主体的な行動の促進に向けた気候変動や生物多様性に関する環境教育の実施 | 〇 | |||
| 淡水 生態系 |
温暖化の影響による一部の外来水生植物の生息域拡大及び生態系への悪影響 | 外来植物の生息状況の把握及び防除 | 〇 | ||
| 分布・個体群 | 絶滅が危惧される動植物を含む貴重種の減少 | ギフチョウなど市内に生息する絶滅が危惧される動植物種の生息・生育場所保全 | 〇 | ||
1.河川・沿岸
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 河川 ・ 沿岸 |
洪水・内水被害を起こす大雨の増加、浸水被害の増加、海面上昇に伴う高潮や高波など異常気象による洪水リスクの上昇 | 洪水氾濫などによる被害軽減に向けた、国県市の関係機関と連携した流域治水対策の推進 | 〇 | ||
| 浸水被害の増加 | 排水機場施設の耐震化・耐水化、洪水ハザードマップの作成、緊急排水計画の策定、水位情報の伝達 | 〇 | |||
| 内水排除対策(排水路・水門などの系統的な整備促進、ポンプ排水設備の維持) | 〇 | ||||
| 雨水流出抑制(雨水の調整指導、雨水貯留や浸透施設の設置普及) | 〇 | ||||
| 農業排水施設の運転 | 〇 | ||||
| 洪水ハザードマップの周知・確認・利用 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| 避難経路・避難所の確認、防災訓練の実施・参加 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| 気象情報・避難情報の提供・確認、備蓄品の用意、太陽光発電・蓄電池の設置 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| 海岸防災林などの能力不足 | 森林所有者である国・県と地域コミュニティなどの協力による経営・管理の推進 | 〇 | 〇 | ||
2.山地・強風
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 山地 |
土砂災害の被害拡大、 山腹崩壊や土石流等の発生 |
傾斜地崩壊防止施設の整備 | 〇 | ||
| 土砂災害警戒区域における警戒避難体制の整備・確認 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| 山地災害区域等における治山施設の整備 | 〇 | ||||
| 山地災害危険地区にかかる監視体制の強化・情報提供 | 〇 | ||||
| 林道の計画的な危険個所の改良 | 〇 | ||||
| 倒木による電力供給網への支障 | 予防伐採等による予防保全、災害時の復旧迅速化に向けた相互の連携・協力拡大 | 〇 | 〇 | ||
| 山地災害の増加 | 保安林の機能の維持 | 〇 | 〇 | ||
| 林道における落石などの危険 | 林道の計画的な危険個所の改良 | 〇 | |||
| 強風 | 強い熱帯低気圧の発生割合増加 | 風水害に関する情報提供及び利用(新聞等、ラジオ放送、テレビ放送、緊急情報放送、有線ファクシミリ、インターネット、道路情報提供装置、広報車、防災行政無線) | 〇 | 〇 | 〇 |
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 暑熱 | 熱中症搬送者数の増加 | 熱中症対策の周知・実施 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒アラートの情報提供・活用方法の周知 | 〇 | ||||
| 教育現場などにおける熱中症対策 危機管理マニュアルの指導、熱中症警戒に関する通知発出 |
〇 | ||||
| 農作業中の熱中症対策について、農業団体などを通じた農業者や農業法人などへの発信 | 〇 | 〇 | |||
| 夏季に人が集まるイベント主催者向けの「夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン」(環境省)の周知 | 〇 | ||||
| 熱中症対策普及団体、クーリングシェルターの指定 | 〇 | 〇 | |||
| エアコンの適切な利用、住宅の高断熱化、すだれ・サンシェードなどによる日射遮蔽 | 〇 | 〇 | |||
| 水分や塩分の補給、クールビズ(衣類の軽装化)の実施、外出時の日傘・帽子の使用 | 〇 | ||||
| 災害時のエアコン未設置の避難所へのエアコンの供給などの対応 | 〇 | ||||
| 感染症 |
ヒトスジシマカの分布可能域の拡大 ※直ちに疾患の発生数の拡大につながるわけではない |
定期的なヒトスジシマカのウイルス保有状況調査(デングウイルス及びジカウイルス)及び調査結果の公表 | 〇 | ||
| 蚊媒介感染症及び予防方法について市民への情報提供・注意喚起 | 〇 | ||||
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
| 観光業 | 災害時における外国人を含む観光客の安全確保、正確な情報提供の必要性 | 災害時において、外国人を含む観光客の安全確保が図られるよう、市町や観光事業者に対し、必要な情報提供や助言などの適切な支援 | 〇 | ||
|
経済活動 |
自然災害に伴う被害・損害の増加 | 大規模な経済危機や局地的豪雨による自然災害などに直面した場合に中小企業者の資金調達を支援するため、市制度融資などの拡充や見直し | 〇 | ||
| 冷房によるピーク電力の上昇 | 太陽光発電・蓄電システム、マイクログリッドモデルなど自立分散型電源の導入 | 〇 | 〇 | ||
| 小項目 | 懸念される影響 | 適応策 | 各主体 | ||
| 事業者 | 市民 | 市 | |||
|
インフラ、ライフライン |
短時間強雨や渇水の増加、大型台風の増加によるインフラ・ライフラインなどへの影響 | 「Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)」及び「グリーンインフラ」の取組推進 | 〇 | ||
| 被災地での食料・飲料等、生命に関わる物資供給の長期停止 緊急輸送路等の断絶により救急・救命活動や支援物資の輸送ができない事態の発生 |
市民の緊急物資備蓄の促進、事業所の緊急物資備蓄の促進、緊急物資備蓄の促進、配水池緊急遮断装置設置、配水池の耐震化、上水道基幹路の耐震化など | 〇 | |||
| 道路防災対策の実施、道路橋の耐震化、道路施設の老朽化対策 | 〇 | ||||
| 豪雨などの自然災害による交通インフラの被害・復旧費用・運休の増加 | 異常気象時の列車の運転停止、被害の早期復旧 | 〇 | |||
| 道路冠水の増加、渡河部の道路橋の流出や河川に隣接する道路の途絶の増加 | 道路の冠水を防止するため、排水施設及び排水設備の補修などの推進 | 〇 | |||
| 道路の途絶による孤立などの長期化を防止するため、洗堀防止や橋梁の架け替えなどの対策推進 | 〇 | ||||
| 災害廃棄物の発生 | 自然災害に強い廃棄物処理施設の整備、「地方公共団体における廃棄物・リサイクル分野の気候変動適応策ガイドライン」の活用促進 | 〇 | |||
| 災害廃棄物処理計画に基づく事業実施 | 〇 | ||||
|
暑熱による 生活への影響 |
ヒートアイランド現象による気温上昇 | 法制度を用いた、市街地の住宅地の緑化推進や市街地に残る樹林地の保全 | 〇 | ||
| 一定規模以上の事業所における法令などに基づく緑化推進 | 〇 | 〇 | |||
| 緑被率の高い公園の整備 | 〇 | ||||
| 市街化区域内の農地の生産緑地地区指定 | 〇 | 〇 | |||
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