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天国へ行った先生へ

No.4793
小学校5年生

 「ピーポーピーポー。」
そろばんじゅくの前に救急車が止まった。数分前、そろばんじゅくの先生がとつ然、体全体をがたがたとふるわせ、たおれてしまった。いつもうるさい男子は、だまってしまい、わたしも、口をポカンとあけ、ただ見ているだけだった。とてもこわかった。めがねで顔がきずついて、ぴくりとも動かない先生が担架で救急車に運ばれるなんて思いもよらぬ出来事だった。
 そろばんじゅくの先生は、いつもきびしく、大きな声でどなり、こわいイメージがあるけど、みんなを笑わせたり、豆まきをやってくれたり、やさしい所もあった。
 数日後、そろばんじゅくに行くと、先生はいつものいすにすわって、丸付けをしていた。もう、退院したんだと思った。いつものように、大きな声でどなっている様子を見て、わたしは、ほっとした。
 しかし、日に日に、先生の体はやせていき、声も元気がなくなっていくように感じた。わたしは、とても心配になった。そして、先生は、1ヶ月ほどそろばんじゅくにすがたを現さなくなった。
 「そろばんの先生が亡くなったよ。」
母が新聞を見て言った。わたしは、あわてて見た。母と姉といっしょに行ったお通夜には、じゅくの友達がたくさん来ていた。ひつぎの中の先生は、やさしい顔でねているようだった。
 先生には、もう会えない。けれど、そろばんを教えてもらったこと、先生のことをこれからも忘れないでいたいと思った。みんなのそろばんの音が天国までとどきますように。

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