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更新日:2023年12月1日
毎年6月に、新人職員研修の一環で、私が1時間講話をします。今年も初々しい職員の皆さんを前にして講話をしましたが、その折ふと「後世畏るべし」という言葉が頭に浮かびました。
「後世畏るべし」とは、若者の無限の可能性を考えれば、将来どんな大人物になるかもしれないから、畏敬(いけい)の念を持って接しなければならないという格言です。
多くの新人職員の皆さんを前にして、この中から将来の浜松を背負って立つ人物が出てきてくれることを、期待しながら話をしました。
私が新人の皆さんと同じ20代前半の頃は、松下政経塾の塾生でしたが、研修をかねて、松下政経塾報という新聞をつくっていた時期があります。研修とはいえ、ただ新聞をつくるだけではつまらないので、自分が興味を持った人を取材するという企画を勝手にたてて、気になる人々に会いに行っていました。
そのひとりに「ビッグトゥモウロウ」という、当時一大ブームを巻き起こした人気雑誌の編集長がいました。20歳そこそこの若造が、超多忙なベテラン編集長に質問するのですから、ずいぶんイライラしたと思うのですが、顔色ひとつ変えず、こちらが恐縮するくらい丁寧に応対してくれました。今までそんな経験をしたことがなかったので、率直に尋ねてみると、その理由を教えてくれました。
駆け出しの若い頃、ある経済誌の記者をしていて、取材で多くの経営者の方にお会いをしたが、不思議と大経営者の方ほど、腰が低いという印象を持った。そこでひとりの経営者の方に、勇気を出して質問をしてみた。するとその方が「君はまだ若いが、将来大編集者や大マスコミ人になるかもしれない。そう思えば、君の可能性に畏敬の念を払わずにはいられないじゃないか」と言われたそうです。
以来、編集長はその言葉を胸に刻み、自分が出世をしてからも、若い人だからといって、軽々しく接しないことにしたということでした。
同じ企画で、創業まもないソフトバンクの孫正義さんも取材しました。理由は、私と同じ年齢の若者が、起業したことに興味を持ったからです。東京・市ヶ谷の小さな倉庫が創業時の事務所でした。6畳ほどの事務スペースの中で、折りたたみのパイプ椅子に座っての取材でした。
最近、孫さんと再びお会いするようになったので、市ヶ谷で取材した時のことを話してみると、大変驚いていました。まさに創業したばかりで、その時代のことを知っている人はほとんどいないそうです。「ご縁ですね」と言われる孫さんの笑顔を見て、ふと「後世畏るべし」という言葉が、脳裏をよぎりました。
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