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更新日:2023年12月1日

市長コラム(2021年11月号)

政令指定都市から特別自治市へ

先日、私は指定都市市長会の会長に選出されました。浜松市は平成19年に政令指定都市に移行しましたが、この機会に改めて制度について考えてみたいと思います。政令指定都市は、「政令」という内閣の命令で指定された特別な市のことで、通常は指定都市という略称が使われます。

指定都市というと、県並みの権限を持ち、県から自立した自治体と言われますが、本当にそうでしょうか。確かに他の市町村に比べれば、多くの権限が移譲されていますが、残念ながら県との基本的関係は、他の市町村と変わりません。1番分かりやすいのは「税」です。指定都市の市民も他の県民同様、県民税を負担しています。本当に指定都市が県から自立しているのであれば、県民税を負担する必要はなくなるはずです。

歴史的にみると、指定都市は昭和31年に「妥協の産物」としてできた制度と言えます。それ以前は、戦後間もなくの昭和22年に成立した地方自治法で生まれた「特別市」という制度がありました。これは人口50万人以上で、府県から自立できる力を持つ市は府県の枠から外し、独立させるというものです。戦後は民主的な日本国憲法の成立と併せて、戦前の中央集権的な自治制度を見直し、基礎自治体優先の原則で、住民に身近な市を府県から自立させようという方針がありました。74年前にこうした先進的な考えがあったことは画期的なことです。

しかし、当時特別市の対象になったのは、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸という旧5大市で、これらの大きな市が、独立されては困ると考えた府県の猛反対が始まりました。その結果、市の住民投票で特別市になるかどうかを決めるという当初定められた手続きが、府県全体の住民投票にすり替えられてしまいました。結局、特別市は1つも実現しませんでした。こうした経緯の中で、昭和31年に妥協の産物として生まれたのが、指定都市制度です。従って多少の権限移譲はあったものの、県の枠内で他の市町村と同様に税負担もし、県の方針に従うという従来どおりの構造が残されてしまいました。
指定都市制度ができてから65年が経ちます。発足当初5つだった指定都市は20にまで数が増え、浜松市や静岡市、新潟市のように、平成の大合併を経て都市部と農山村部が混在する指定都市も増えました。そこで、指定都市市長会では、再び府県から指定都市を自立させる「特別自治市」制度の創設に向け、取り組みを進めています。私は会長として、今後指定都市以外の人口50万人程度の市も含めて、基礎自治体が府県から自立する制度として実現を図り、明治以来変わらない国、県、市町村という縦構造に風穴を開けていきたいと考えています。

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