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更新日:2025年11月5日

弥生時代の集落遺跡としては市内最大級となる伊場遺跡。遺跡が発見された76年前は大きな注目を集め、発掘調査には市民や地域の学生なども参加しました。時を経て、伊場遺跡と周辺の遺跡群から出土した土器など605点が重要文化財に指定されました!
ここでは出土品の特徴を紹介し、発掘調査の歩みを振り返ります。
伊場遺跡は、一人の中学生が弥生土器片を発見したことがきっかけとなり、のちに大規模な集落遺跡であることが明らかとなりました。
そして今年度、伊場遺跡とその周辺の鳥居松遺跡や梶子遺跡などから出土した土器や木製品、ガラス製品など605点が「伊場遺跡群出土品」として重要文化財に指定されました。浜松市博物館の収蔵品では初めて、また、考古資料としても市内で初めての指定となります。出土品の中でも特徴的な4点を、このコーナーで紹介します。11月下旬から博物館で開催する特別展では、この4点を含む多くの出土品を展示しますので、ぜひお出かけください。
伊場遺跡群出土品には、細やかな文様の木製品や、他の地域から影響を受けたと考えられる土器、銅鐸や鏡を模した土製品など、当時の生活や文化を物語るものがたくさんあります。「何のために作ったのかな」「どんな人が使っていたのかな」と想像してみると、展示をより深く楽しめます。
【重要文化財(考古資料)とは】
有形文化財のうち国が重要とみなして指定するものが重要文化財です。その中で、遺跡から出土する土器や石器などの遺物が考古資料に区分されます。
| 時代 | 伊場遺跡でのできごと |
|---|---|
| 旧石器時代~縄文時代 | ー |
| 弥生時代(およそ2800年前~1750年前) | 集落が営まれ、水田でコメづくりが行われる |
| 古墳時代 | 集落が営まれ、カマドを持つ住居がつくられる |
| 飛鳥時代~奈良時代 | 敷智(ふち)郡の役所が置かれる |

儀礼に使われたと考えられる木製のよろい。細やかな文様が彫刻され、赤と黒に着色されている。背中側には翼のような突起がある。国内で他に例のない形や装飾をしている。(伊場遺跡出土)

装着イメージ(レプリカ)
博物館学芸員のひとこと
当時としては貴重な顔料で着色されています。他の地域で作られた木甲が伝わってきたのでは。

魚のひれのような装飾が縦方向に4本、横方向に1本付いていることから「鰭付壺」と呼ばれる。鰭付壺は全国でも珍しい。(伊場遺跡出土)
博物館学芸員のひとこと
この壺は76年前に出土したもので、長い間「伊場遺跡の土器といえばこれ!」と言われるくらいよく知られています。

台座の部分に木の葉形または円形の透かし穴がある伊場遺跡群の特徴的な土器。また、そうした特徴を忠実に表現したミニチュア土器も発見されている。(伊場遺跡出土)

建物の形をした足付きの器。弥生時代に田んぼのあぜだった場所から出土した。(鳥居松遺跡出土)
博物館学芸員のひとこと
柱の特徴から、穀物倉庫や神殿をまねた可能性があります。例えばこの土器に種籾(たねもみ)(イネの種)を入れて豊作を祈ったのではないか、などと想像できます。
弥生時代の研究者で伊場遺跡群出土品の再整理にご協力いただいた禰宜田佳男さんに、伊場遺跡の特徴を伺いました。
伊場遺跡は有名でしたので40年以上前の学生時代以来、弥生文化博物館で木甲のレプリカ作成のためなど公私にわたり訪れてきました。遺跡は弥生後期の3重の環濠集落跡ですが、首長の居宅を取り囲む事例は全国的に稀少です。今回重要文化財指定された遺物はここから出土したものです。伊場遺跡は列島の弥生社会を知る上で欠かすことのできない重要な遺跡なのです。

大阪府立弥生文化博物館
館長 禰宜田佳男(ねぎたよしお)さん

弥生時代の伊場遺跡の想像図。集落は、3重に掘られた環濠(かんごう)に囲まれていました。

伊場遺跡は、JR浜松駅から西へおよそ2キロメートルの位置にあります。およそ1900年前、この場所で弥生時代の人々は、温暖な気候を生かして稲作を行い、集落をつくって暮らしていました。
伊場遺跡群出土品から分かる弥生時代後期の社会や文化、地域間交流を紹介します。九州や中国地方などの各地からも、関連のある出土品がやってきます!
場所:博物館(中央区蜆塚四丁目22-1)
会期:11月22日(土曜日)から2026(令和8)年1月18日(日曜日)まで
休館日:月曜日(休日の場合翌日)、12月29日~1月3日
開館時間:9時~17時
観覧料:大人800円、高校生500円、小中学生300円
未就学児、各種障害者手帳所持者とその介添者1人は無料
※常設展も観覧可
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/hamahaku/index.html
| 年代 | できごと |
|---|---|
| 1949(昭和24)年 | 土器が発見され、國學院大學が発掘調査開始 |
| 1954(昭和29)年 | 県指定史跡に指定 |
| 1964(昭和39)年ごろ | 遺跡の一部が国鉄東海道線の貨物駅と留置線の移転予定地となる |
| 1968(昭和43)年 | 貨物駅と留置線用地の発掘調査開始 |
| 1973(昭和48)年 | 貨物駅と留置線の移転のため県史跡指定が解除 |
| 1974(昭和49)年 | 伊場遺跡公園整備開始 |
| 1975(昭和50)年 | 伊場遺跡資料館が開館(現在は閉館) |
| 2002(平成14)年 | 伊場遺跡群から出土した古代の木簡・墨書(ぼくしょ)土器が県指定有形文化財となる |
| 2025(令和7)年 | 伊場遺跡群から出土した弥生時代後期の遺物が重要文化財指定 |
伊場遺跡は埋め戻された今も地下に眠っています。市では、遺跡を後世に残していくために、現地の保存に努めるとともに、遺跡公園や出土品を活用したさまざまな取り組みで、市民の皆さんへ遺跡の価値や魅力を伝えていきます。
![発掘調査前の伊場遺跡(1971[昭和46]年ごろ)](/images/170162/1feature-01-10.jpg)
発掘調査前の伊場遺跡(1971[昭和46]年ごろ)
![発掘調査(1972[昭和47]年ごろ)](/images/170162/1feature-01-11.jpg)
発掘調査(1972[昭和47]年ごろ)
中学生時代に伊場遺跡で土器を発見した小林豊明さん(市内在住)に、当時の様子と伊場遺跡への思いを教えてもらいました。
中学生の頃、田んぼで親の手伝いをしていた時に土器が足に当たったり、戦時中の艦砲射撃の跡が池になっている場所で土器を目にしたりしていました。それを当時通っていた西部中学校の先生に伝え、見つけた場所へ先生と友人を連れて行くと、田んぼのあぜ道で「鰭付壺(ひれつきつぼ)」と後に呼ばれる土器を見つけました。
それを先生が國學院大學の教授に見せたところ、間もなく発掘調査が行われ、弥生時代の集落遺跡であることが分かりました。

見つけた土器が遺跡発見のきっかけとなり、今回、重要文化財に指定されたということで、当時のことはとても良い思い出となっています。
これまでも多くの人々が関わって遺跡や出土品が残されてきましたが、これからも後世に永く伝えられていけばうれしく思います。
最初の発見以降も伊場遺跡の発掘調査が続けられました。周辺にも同じ時代の遺跡の存在が分かり、遺跡群全体で大小含めると100回を超える発掘調査が行われています。
こうした調査の積み重ねにより、弥生時代の人々のさまざまな生活の様子が次第に明らかになり、今回の605点の指定につながりました。
地上や浅い土の中では、多くの場合、微生物の活動によって木は分解されてしまい残りません。
しかし、低湿地の遺跡である伊場遺跡群は、水分を適度に含んだ厚い粘土層に覆われており、微生物の活動に必要な酸素が遮断されていたため、木製品が真空パックのような状態で残っていました。
![木製品(井戸の筒)が出土した時の様子(梶子遺跡・1982~1983[昭和57~58]年)](/images/170162/1feature-01-12.jpg)
木製品(井戸の筒)が出土した時の様子(梶子遺跡・1982~1983[昭和57~58]年)
ベンガラと朱という2種類の顔料が使われています。その2種類のうち朱は、原料となる鉱物が限られた場所でしか採れない、貴重なものでした。

特別展のギャラリートークや講座などで出土品の解説をします。興味のある人は、参加してみてはいかがでしょうか。


最初に土器を発見した小林豊明さんの母校の市立西部中学校(中央区鴨江二丁目)では、1996(平成8)年に、創立50周年を記念して伊場遺跡発見を題材にした演劇が催されました。小林さんや先生が土器を見つけた当時の様子が描写された台本が残っています。(博物館蔵)

市立県居小学校(中央区東伊場二丁目)の学区内に伊場遺跡公園があり、毎年3年生が総合的な学習の時間「県居大好き」で探検に出かけています。また3、4年生は遠足でも訪れ、公園で弁当を食べたりミニウオークラリーをしたりして楽しく過ごしています。

50年前の伊場遺跡グッズ(木甲をかたどった文鎮)
県立浜松西高等学校50周年記念館 落成記念品(1974[昭和49]年)

見学会の様子
2026(令和8)年1月10日(土曜日)10時~14時
会場:市立城北図書館(中央区和地山二丁目)および博物館
申込:【窓口・電話】12月8日(月曜日)から城北図書館(【電話】053-474-1725)へ
2026(令和8)年1月12日(月曜日)9時30分~14時30分
会場:市立西図書館(中央区西伊場町)および伊場遺跡公園
申込:【窓口・電話】12月3日(水曜日)から西図書館(【電話】053-456-3379)へ
伊場遺跡に親しめる公園や、弥生時代の出土品を観覧できる施設を紹介します。
伊場遺跡の一部が公園になっています。細長い園内には往復1キロメートルの散歩道があり、弥生時代に集落を囲っていた環濠や、奈良・平安時代の建物(復元)などが並んでいます。当時の景色を想像しながら歩いてみてはいかがでしょうか。

中央区東伊場二丁目(駐車場あり)
※常時開園
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/hamahaku/09annex/iba_park.html
近隣地域から出土した銅鐸のほか歴史民俗資料を展示しています。銅鐸は弥生時代を代表する青銅器であり、農耕に関わる祭祀(さいし)に用いられたと考えられています。

浜名区細江町気賀1015-1
【電話】053-523-1456
開館時間:9時~17時
休館日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/hamahaku/09annex/hakubut03.html
2026(令和8)年2月1日(日曜日)まで開催中の企画展「はままつの文化財20年のあゆみ」で、伊場遺跡群の一つである梶子遺跡の出土品(壺など)を展示しています。

浜名区引佐町井伊谷616-5
【電話】053-542-3660
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分)
休館日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/bunkazai/maibun/index.html
この特集に関する問合せは、博物館(【電話】053-456-2208)へ。
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