高校生とSDGs ~市内高校生のかがやく取組を紹介~/浜松学芸高校 社会科学部地域調査班

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写真後段右から:伊藤さん、鈴木さん、杉山さん
写真前段右から:和田さん(部長)、宮司さん(部長)、川合さん(副部長)、松本さん(副部長)

 

浜松学芸高校 社会科学部地域調査班は、地域の魅力にスポットライトを当て、ポスターやCM制作などを手がけてきました。その活動が評判を呼び、2021年、地域の魅力を発信する広告代理店を発足。

 

静岡県立森林公園や浜松注染そめ浴衣、天竜浜名湖鉄道、浜名湖パルパルなど、地元企業や自治体から依頼を受け、制作を行っています。今回は、社会科学部地域調査班を代表して7人の生徒から、活動のきっかけや地域に対する思い、今後の展望など、お話を伺いました。

 

【SDGs達成に向けた取組のポイント】

  • 独自の視点で、「いつか戻ってきたいと思える街」として地域や地場産業の魅力を発信し、高校生の力で地域を盛り上げている。
  • 自団体の活動のみで完結するのではなく、地域企業や他校の生徒との協働・連携を通じてシビックプライドの醸成に貢献している。

 

暮らしのそばにある宝を見つけ、未来につなぐ

多彩な取り組みで地域を盛り上げる

──広告代理店とのことですが、どのような体制で活動しているのでしょうか?

 

和田さん:設立は2016年で、部に昇格して3年になります。部員は現在36名です。地域の魅力を衣食住の観点から発信し続けてきました、例えば、「衣」なら、地場産業である浜松注染そめを使ったシャツの市販化を目指したり、浜松注染そめの浴衣を着てダンスパフォーマンスをしたりしています。「食」では、摘果みかんなどを使ったおにぎりの販売、「住」では、観光という側面から地元企業や自治体のポスターなどを制作しています。

 

宮司さん:依頼が増えたことをきっかけに、広告代理店を立ち上げ、「食品」「広告」「イベント」「アパレル」「観光」の5つの部門に分かれて活動しています。観光部門と広告部門が連携して企業ポスターやプロモーション動画を作成したり、アパレル部門とイベント部門がチームになって、浜松注染そめの浴衣をPRするアイドルグループを結成し、活動したりしています。全員で一つのことをするのではなく、それぞれの興味や得意分野を生かして分業するスタイルを採用しています。

 

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着ているシャツは、浜松注染そめを使って制作。同校の夏服の準制服としても採用されている

 

──みなさんの入部のきっかけを教えてください。

 

宮司さん:私がこの部活に興味を持ったのは、先輩たちが作ったポスターがきっかけです。企画からモデル役、撮影まで、全て生徒で行っていることに驚き、私もこの活動に参加したいと思い、入部を決めました。

 

川合さん:私は中学から学芸に通っていて、高校の先輩がプレゼンやダンスの練習をしている姿をずっと見ていました。浜松注染そめ浴衣をPRするアイドルをイチから立ち上げるなど、普通の高校生ではできない活動に憧れ、自分もその一員になりたいと思ったのが入部の理由です。

 

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天竜浜名湖鉄道をPRするため全39駅にちなんだポスターを制作

 

──実際に、どのような活動をされているのですか?

 

和田さん:活動は多岐にわたりますが、イチオシは、浴衣アイドル「Tint²(ティントティント)」です。地域イベントでダンスパフォーマンスを行い、浜松注染そめ浴衣の魅力を発信しています。振り付けはもちろん、三ヶ日みかんや浜名湖の夕日、遠州灘などをイメージした浴衣の配色も自分たちで決めました。私たちの卒業後も活動が継続できるよう、人ではなく、浴衣の色で応援してもらえるシステムにしました。

 

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ダンスパフォーマンスなどを通じて浜松注染そめ浴衣の魅力を発信する取組「Tint²(ティントティント)」

 

松本さん:浜松注染そめ浴衣を着てダンスを披露することで、小さな子どもたちに夢を与え、次世代の浜松注染そめ浴衣ファンを増やしていきたいと考えています。これまでに、市内のイベントをはじめ、法多山や青森、京都など、全国各地から招かれて公演し、たくさんの方々に応援いただいています。

地元で見つけた新たな出会い

──活動をするうえで大切にしていることはありますか?

 

川合さん:2016年の地域調査班設立当初から大切にしている4つの活動ポリシーがあります。「1知っている場所から行ってみたくなる場所への変化を促す」「2いつか戻ってきたいと思える街の魅力を発信する」「3中高生には共感を、大人には懐かしさを感じる青春を演出」「4地元の企業や団体と協働する」です。これらの活動ポリシーは、代々受け継がれていて、このポリシーに当てはまらない仕事の依頼については、残念ながらお断りしています。

 

和田さん:3年生になると、浜松いわた信用金庫さんが主催する「ビジネスマッチングフェア」に参加し、過去の制作物などの展示やお客さまとの商談をします。アパレルや食品、金融機関など、さまざまな業界からの依頼を受け、去年は3件、今年は2件のCMを受注しました。

 

──普段の活動や、地元企業や地場産業と関わることで浜松の見え方は変わりましたか?

 

松本さん:私は浜松注染そめ浴衣にすっかりはまってしまいました。プリントの浴衣と比べると少し価格は高いですが、裏表なく染め上がるので光に透かすととってもきれいですし、手作業で作られるから、世界に一つしかない浴衣を着られるという特別感も魅力です。

 

和田さん:今まで、「浜松の魅力って何?」と聞かれても答えられませんでしたが、この部活を通して様々なことを知り、「あ、これも浜松の魅力だな」と気付くことが増えました。

 

宮司さん:有名な観光地や浜松注染そめ浴衣も魅力ですが、この部活を始めてからは、日常生活の何気ない風景も、私たちの地域の大切な一部だと感じるようになりました。

 

川合さん:私は「うみぽす甲子園(全国高校生海のポスター甲子園)」に参加し、浜名湖を舞台にした高校生の日常を撮影しました。ポスターの制作を通じ、浜名湖の観光名所だけでなく、身近すぎて気付かなかった浜名湖の風景をいくつも発見できました。

 

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浜名湖岸を題材にポスターを作成、撮影地をマップに落として可視化した

 

──同級生や周りの反応はいかがですか?

 

川合さん:ポスターやマップについて、同級生だけではなく友だちの親から連絡をいただくこともあります。浜名湖岸の撮影スポットをマップに落としてインターネット上で公開(※)したり、弁天島観光協会などでマップを配布したりしているのですが、その際には多くの方から反響をいただきました。

 

※可視プロマップ

https://celala99.github.io/kasipro_map3/(別ウィンドウが開きます)

 

松本さん:活動していると、「素敵な浴衣だね」とか「楽しそう」といった声をかけていただけるのが、すごくうれしいです。私たちが思いを込めて取り組んだことが、ちゃんと伝わっていると感じる瞬間で、この活動をしていて本当によかったと実感します。

誰もが地域を照らす人になれる

──SDGsへの取り組みについて教えてください。

 

和田さん:SDGsには17のゴールがありますが、私たちは特定のゴールのための活動はしていません。私たちの活動を通じて、自然とそれぞれのゴールに貢献できるのではないかと考えています。SDGsの前文には、「誰一人取り残さない」そういう社会を目指すとあります。17のゴールや169のターゲットだけを見ると、自分とは関係ない課題であるとか、難しそうと感じるかもしれませんが、「誰一人取り残さない」という視点で見ると、いろいろなアクションをイメージしやすいと思うし、関わりやすくなるのではないかと思います。

 

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SDGsの取組には「誰一人取り残さない」という意識が大切だと語る

 

松本さん:SDGsという言葉は知っていても、授業で習うだけだと、ちょっと遠い存在に感じてしまう人も多いと思います。でも、実際に地域で活動することで、SDGsに親しみを感じるようになれるし、地域の魅力や課題にも目を向けられるようになると思います。

 

川合さん:自分が関心ある分野で活動を行い、楽しみながら地域の魅力を伝えていくことで、私たちのように「やってみたい」と思う後輩が入ってくれるのではないかと思います。高校には毎年新しい生徒が入ってくるので、絶えず活動に新しい意見や時代にあった感覚を取り入れられるという点は私たちのメリットだと思います。

 

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1年生からは、先輩の活動を間近で見られ、楽しそうな部分だけでなく、苦労しているところも見られるのが勉強になるという意見もあった。

 

 

──ポスター撮影やCM撮影のノウハウを他校と共有する取り組みもされていますね。

 

宮司さん:これまで、青森県立鰺ヶ沢(あじがさわ)高校や青森中央高校、岐阜県恵那南高校、三重県白山高校などを訪問し、生徒と一緒に「胸キュンプロジェクト」としてポスターを制作しました。地域の魅力発信は、私たち(学芸高校)にしかできない活動ではなく、スマートフォンがあれば誰でもできます。それぞれの地域の生徒が、地域の魅力を発掘し、伝えることで、より魅力的な地域、日本になるのではないかと思います。

 

──最後に、今後の活動予定を教えてください。

 

松本さん:昨年末、椙山女学園大学主催の「第11回 ビジネスプランコンテスト」で最優秀賞を受賞した「方言プロジェクト」を進めていきたいです。インターネットなどが普及して、均一化が進んで、方言がどんどん失われてきています。方言は目に見えないものですが、その地域の文化、特徴だと思います。言葉は形に残りにくいものなので、いつかなくなってしまう前に記録として、形として残しておきたいという思いからスタートしました。ポスターだけでなく、どういったシチュエーションで方言を使うのか、細かなニュアンスが分かる動画も制作しています。

こうした、文化を形にして残す活動やTint²での浜松注染そめ浴衣のPR活動、地域企業との連携などを通じて、浜松市の産業活性化や魅力発信に取り組んでいきたいと思います。

 

 

浜松学芸中学校・高等学校 社会科学部地域調査班

浜松市中央区下池川町にある私立の中高一貫校。1902(明治35)年に創設し、静岡県内の私学で2番目に長い120年を超える歴史を持つ。社会科学部地域調査班は、2016年に夏期ゼミの一環として天竜浜名湖鉄道のポスター制作を行ったところから始まり、探究活動としての取組を経て、2021年から部活動として活動している。作成した動画やポスターは公式YouTubeチャンネルとInstagramで視聴ができる。

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UChtnGajMmlugvD5rz97fVSw(別ウィンドウが開きます)

Instagram:https://www.instagram.com/hamamatsu_munekyun/?hl=ja(別ウィンドウが開きます)

 

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