高校生とSDGs ~市内高校生のかがやく取組を紹介~/静岡県立浜松商業高校調査研究部

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(左から):乙さん、石原さん、平野さん、野末さん、五味さん、服部さん(いずれも1年生)

 

設立9年目を迎えた浜松商業高等学校(以下、浜商)「調査研究部」は、浜松の活性化や課題解決を目指し商品開発に取り組むユニークな部活です。

これまでに「浜松焼そば」や「浜松ラーメン」など、地元企業とコラボレーションし、数々の商品を生み出してきました。

特にコロナ禍で高校生も地元企業も思うように活動ができない中、地域を活性化するために浜松サービスエリアでターゲットやニーズを調査・分析し、市内企業と協力して開発した「浜松焼そば」は累計10万食を販売する大ヒットを記録。地域経済にも大きく貢献しています。

今回は調査研究部の1年生のみなさんに活動内容や地元への思いについて伺いました。

 

地域をもっと元気に!浜商「調査研究部」が生み出す、浜松愛あふれる商品

自分たちのアイデアが形になる商品開発の魅力

──入部のきっかけを教えてください。

 

乙さん:商品開発という、ほかの部活にはない特別な活動に興味を持って入部しました。自分たちのアイデアが形になるので、すごくワクワクします。

 

石原さん:僕は中学生のときに、浜商の先生による体験授業で調査研究部の活動を知りました。地域の課題と関わりながら商品を作るという浜商らしさにひかれて入部を決めました。

 

──これまで先輩たちが、いろいろな商品を開発してきたのですね。

 

野末さん:はい。「浜松焼そば」はトリイソースさん、「浜松ラーメン」は加藤醤油さんと三ヶ日町農業協同組合(JAみっかび)と共同開発しました。浜松産レモンを使ったフィナンシェ「君にれもん」は春華堂さんとコラボしました。これらの商品は、浜松駅や浜名湖サービスエリアをはじめ、文化祭や吹奏楽の定期演奏会、ザザシティで開催される軽トラ市などのイベントでも販売しています。販売の場には僕たちも立って、お客さんと直接お話もします。

 

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うなぎパウダーに、3種類のソースをブレンドしたトリイソースを使った「浜松焼そば」

 

──接客や販売のときに心がけていることはありますか?

 

野末さん:お客さんと直接お話できる貴重な機会なので、商品の説明はもちろん、僕たちの思いもちゃんと伝わるように、元気良く明るい接客を心がけています。販売数を見ると「こんなにたくさんの人に私たちの思いが届いたのだ」とやりがいを感じます。

 

服部さん:私は声が小さく、接客がちょっと苦手なのですが、先輩の説明は分かりやすく、お客さんも楽しそうに聞いてくれています。そうした姿を見ながら私も接客をして、売れたときはとてもうれしかったです。

 

乙さん:普段は買う側なので、自分だったらどのような接客をされると買いたくなるのか、考えながら接客しています。また、例えば浜松産のレモンを使ったお菓子「君にれもん」なら、販売を通して「浜松でレモンを作っていること」を知ってもらえるきっかけになればうれしいです。

 

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「はままちプラス」での販売の様子

 

──販売を通じて、どんなことを学びましたか?

 

平野さん:浜松にはスズキやヤマハといった有名企業も多いけれど、トリイソースさん、加藤醤油さん、むつみ製パンさんなど、地域に根付いた企業があることを知ることができ、地元をもっと深く知る機会になりました。

 

野末さん:浜商の卒業生が買いに来てくれることも多く、浜商のつながりの強さを感じます。リピートしてくれる方や「浜松らしい商品だからお土産に」と言ってくれる方もいて、そういった声を直接聞くことができるのは本当にうれしいです。

 

商品開発を通じて見えた、地域の魅力と役割

──1年ほど活動をしてきて、どのようなことが印象に残っていますか?

 

五味さん:やっぱり販売です。普段はなかなかできない経験ですし、先輩たちが作った商品を直接お客さんに届けられるのがすごく新鮮でした。

 

野末さん:僕は2024年12月に参加した「浜松市地方創生SDGsコンテスト」が印象的でした。僕たち1年生が2、3年生の取組を紹介しましたが、発表を通じて先輩たちがどのような商品を開発し、それが浜松にどう影響を与えてきたのかを知ることができ、自分たちの活動の方向性を考える良い刺激になりました。

 

乙さん:先輩たちの「ターゲット設定」の上手さに驚きました。「浜松ラーメン」は若い女性向けに、あっさり食べやすいよう三ケ日みかんパウダーを使った「みかんコショウ」を使い、「浜松焼そば」は濃い味を好む30から40代の男性をターゲットに、太麺に濃厚ソースがしっかり絡むように工夫されています。

 

──商品開発をする中で、SDGsは意識していますか?

 

野末さん:いきなり最初から「SDGsを達成しよう」と始めているわけではありません。素材を選んだり、地元企業と協力したりするうちに、SDGsにつながっていくという感じです。「浜松焼そば」なら、ゴール8「働きがいも経済成長も」にある「産業の多様化や技術向上、イノベーションを通じて、より高いレベルの経済生産性の達成」に貢献していると思います。

 

乙さん:「君にれもん」に使っているレモンは、もともと廃棄されるレモンでした。そのレモンの加工を障がいのある方にお願いしたと聞きました。さらに、加工の仕事は、忙しい時期と暇な時期の差が大きく、「君にれもん」の生産によって仕事の偏りも平準化したそうです。浜松産のレモンを浜松で加工・生産しているという、地元のつながりもSDGsにしっかり貢献していると思います。

 

──外国人向けに「やさしい日本語」の普及活動もされていると聞きました。

 

平野さん:浜松には外国人の方がたくさん住んでいます。そういう方たちが、もっと暮らしやすくなるには、どうすればいいかを考えたのがきっかけでした。例えば、「両親」という言葉よりも、「父と母」と言った方が、シンプルで伝わりやすいです。そういう「やさしい日本語」の普及はまだまだ進んでいないと感じて、この活動を始めました。

 

野末さん:浜松まつりの最終日、新浜松駅高架下にあるポップアップスペース「はままちプラス」を借りて、商品販売と一緒に「やさしい日本語」をリサーチしました。そこで分かったのは、やはり分かりにくい日本語が多く、困っている外国人の方がたくさんいるということです。今はSDGsのゴール10「人や国の不平等をなくそう」を目標に活動を続けています。

 

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音楽、農業、ものづくり…浜松の課題に向き合う

──プロジェクトはどのように進めていますか?

 

野末さん:まずは個人で浜松の課題を調べて発表し、方向性が似ている人とグループを組んで進めていくことが多いです。テーマとしては、音楽、農業、子どもの遊び場、ものづくり、食品ロスなどが挙がっています。

 

乙さん:現状を知ることが大事なので、調査をしたり、お話を聞いたりして、そのうえで「どうしたらいいか」をみんなで話し合いながら進めています。

 

──例えば、どんな案が出ていますか?

 

服部さん:浜松にはアクトシティのホールや楽器博物館があるけれど、「音楽のまち」として市外や県外の人にどれだけ知られているのか分かりません。もっと音楽のまちとしての魅力を発信できるイベントや、身近に音楽を感じられる取組ができたら良いと思っています。

 

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取材中も笑い声が絶えず、チームワークの良さを感じられる

 

五味さん:私は農家さんの高齢化に興味があります。商品開発を通じて付加価値を高め、生産性や効率化につなげることができると良いと考えています。また、商品にすることで食品ロス削減にも貢献できるのではないかと思っています。

 

平野さん:僕は浜松まつりの太鼓が好きで、「どこで作られているのか」「後継者はいるのか」などについて、現在リサーチ中です。

 

乙さん:浜松城公園ではボール遊びが禁止されていると聞いて、「子どもたちはどこで遊んでいるのだろうか」と気になり、調べ始めました。新しく公園を作ることは難しいと思いますが、今は子ども食堂や支援センターを訪問し、お話を聞きたいと思っています。

 

石原さん:浜松は「ものづくりのまち」として知られていますが、これから時代が変化する中で、自動車や楽器などの技術をどう継承していくかに興味があります。調査研究部ではこれまで食品開発が中心でしたが、新しくサービス開発にも挑戦できたらと考えています。

 

──今後の展望を教えてください。

 

野末さん:今はそれぞれ興味のあるテーマについてリサーチしている段階ですが、商業高校ならではの視点を生かし、大人とは違う高校生のアイデアで商品やサービスの企画・開発に携わっていきたいです。「これはいい商品!」「これはいいサービス!」と自信を持って言えるものを作り、それが地域の課題解決につながり、浜松で暮らす人に喜んでもらえたらうれしいです。

 

静岡県立浜松商業高校調査研究部

2016年に設立され、現在は46名が所属。「地元浜松の活性化や課題解決」を目標に商品開発を行う。トリイソースと協力した「浜松焼そば」は4年間で販売累計10万食以上を達成。加藤醤油と共同開発した「浜松ラーメン」、春華堂と地元レモンを再利用したフィナンシェ「君にれもん」など、地域の食材を生かした商品を次々と生み出している。現在は、遠州焼きと浜松餃子を組み合わせた「遠州餃子」を開発中。

https://www.edu.pref.shizuoka.jp/hamamatsu-ch/(別ウィンドウが開きます)

 

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