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更新日:2024年1月1日

第2章 浜松市の生物多様性の現状

市の自然環境

静岡県の西部に位置する浜松市は、東京と大阪のほぼ中間に位置し、海・山・川に恵まれた全国2番目の広さを持つ市です。市域は南北に細長く、南側は太平洋に面し、北側は南アルプスの南端部です。そのため市の北部では、南部に比べて年平均気温が3℃程度低く、積雪が見られます。また、冬には「遠州のからっ風」と呼ばれる北西の強い季節風が吹き、気温以上に寒く感じます。

市域の7割近くが森林で、そのうち約8割を人工林が占めます。広大な森林地帯にはカモシカなどの大型哺乳類が生息し、森から湧き出る清流にはアカイシサンショウウオも見られます。山のふもとの里山には、田んぼや畑が広がり、人手の入ったコナラ林にはヒメカンアオイが育ち、ギフチョウが生息しています。全国でも有数の長さと流域面積を持つ天竜川が市内を南北に流れ、回遊魚のアユをはじめ多くの魚類が生息しています。広大な河原にはヤナギの河畔林や草地が見られ、中州にはコアジサシが営巣のため飛来します。

川と海が出会う河口付近には、ワンドや湿地が見られ、海岸部は全長117kmの日本一長い砂浜である遠州灘海岸の西端にあたります。河口や海岸部の広い水域には、カモ類やシギ・チドリ類が飛来し、渡りの中継地として利用します。海岸砂丘にはカワラハンミョウが生息し、ゆるやかな砂浜にはアカウミガメが産卵に訪れます。南西部には全国で10番目の面積を有する浜名湖(汽水湖)があり、汽水域にはアマモ、湿地にはウラギクなどが生育します。湖にも干潟が見られ、多くの水鳥が訪れます。このように、私たちが豊かな生活を送るのに欠かせない様々なものを与えてくれる、そのもととなっているのが本市の自然環境なのです。本市は、様々な自然環境の特性に応じて7つの地域に区分することができます。

 

市内の希少種

本戦略では、文化財保護法や種の保存法に指定されている種、環境省または静岡県のレッドデータブックなどに記載されている種を「希少種」としています。様々な自然環境を有する本市では、多くの希少種が生息生育していて、現在確認されているのは計631種です。本市の代表的な希少種については、以下のとおりです。

 

コアジサシ

北海道を除く日本各地に夏鳥として飛来し、広い河川の中州や埋め立て地の砂さ礫れき地ちなどで集団で繁殖します。錨瀬干潟いかりせひがた や天竜川の中州などが繁殖に利用されてきました。天竜川では上流のダムにより砂利の供給が少なくなったことや、砂利採取で中州の貧弱化が進んだことから、梅雨期の冠水によって卵やヒナが流失してしまうという問題が起きています。

コアジサシ

アカウミガメ

日本で最も長い砂浜が続く遠州灘海岸は、国内有数のアカウミガメの産卵地です。近年は、河川からの砂の供給量の減少や、離岸堤や導流提などによって砂の供給が遮断され、砂浜の侵食が進み、産卵に適した良好な砂浜の減少が問題になっていますが、アカウミガメにとって、日本の海岸は北太平洋で唯一の産卵地であり、砂浜の保全が課題となっています。アカウミガメ

ヤリタナゴ

都田川流域は静岡県内で唯一の生息地です。繁殖期になると卵を産み付けるマツカサガイ(貝)が生息する水路や小川に入っていき、マツカサガイのえらに十数粒の卵を産み付けます。河川などの整備で堰や段差が設けられ、河川や水路の連続性が失われ、生息地の分断が起きています。ヤリタナゴは、国や県のレッドデータブックに選定されているほか、静岡県指定希少野生動植物にも指定されています。ヤリタナゴ

ニホンウナギ

ニホンウナギは、海でふ化した稚魚(シラスウナギ)が汽水域から淡水の河川で成長する生活史をもっています。浜名湖に遡上するシラスウナギを捕獲できたこと、また、養殖に必要な水が三方原台地の豊富な地下水から供給されたことなどから、浜名湖周辺でのうなぎ養殖が発展してきました。近年は、世界的に個体数や生息環境の減少傾向が顕著で、最新の県のレッドリストでは絶滅危惧1.B類(EN)に選定されました。

ギフチョウ

春先に見られる小型のアゲハチョウです。幼虫は落葉樹林の下に生えるヒメカンアオイ(植物)を食べ、成虫は春先まだ木々が芽吹く前の明るい林の中で花を咲かせる植物の蜜を吸うなど、落葉樹林に適応してきた種です。こうした環境は、人が利用するために適度な下草が保たれる里山に多く見られ、過去には浜名区に比較的広い範囲で生息していましたが、雑木林の衰退などにより、枯山(かれやま)が市内で唯一の生息地となっています。ギフチョウとヒメカンアオイは、市の条例によって保護されています。ギフチョウ

ヒメヒカゲ

年に一度6月に見られるチョウで、後ろの翅はねの裏面に目玉模様があるのが特徴です。周伊勢湾要素と呼ばれる特異な植生が見られる東海地方の湿地のみに生息し、静岡県内では浜松市を含む西部地域に生息地がありました。しかしながら、開発等により湿地が消失する中で、現在確実に生息が確認できているのは、雨生(うぶ) 湿地のみとされています。国や県のレッドデータブックに選定されているほか、静岡県指定希少野生動植物にも指定されています。ヒメヒカゲ

陸の貝類

貝類には、海産貝類・淡水産貝類・陸産貝類があり、カタツムリ類など陸域を主な生活空間とする貝類のことを陸産貝類と呼んでいます。移動能力が低く、乾燥などの環境変化に弱いため、それぞれの地域で独自に進化している種が多く、分布域の狭い種が多いことも特徴です。また、餌から殻のもとになるカルシウムを得るため、石灰岩地帯に多く生息しています。そのため、石灰岩質の多い地形を持つ本市には、様々な種が生息しています。ホウライギセルなど多くの種が、本市が県内で唯一の生息場所になっています。

シブカワツツジ

蛇紋岩という岩石を含んだ地帯にのみ自生する植物で、渋川周辺にのみ生育する種です。通常のツツジとは異なり、樹高が4~6m程度になり、鮮やかな紅紫色の花が3輪ずつ開花するのが特徴です。引佐町の渋川つつじ公園内には、約4,000本のシブカワツツジの群落があり、この群落は、静岡県の天然記念物に指定されています。また、国や県のレッドデータブックに選定されています。

 

市内の外来生物

外来生物とは、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動により他の地域から入ってきた生きもののことです。他の地域から入ってきたにもかかわらず、あっという間に拡がって、もともといた種がいなくなってしまったり、人や農林水産業への被害をまねいたりします。一度拡がった外来生物の駆除はとても困難なため、早く対策をとることが必要になります。本市では、環境省の生態系被害防止外来種に指定されている種として現在128種が確認されています。主なものは以下のとおりです。

アライグマ(特定外来生物)

自動撮影カメラ等の調査で、三ヶ日町や引佐町から都田町の複数の場所で確認されていて、確実に生息域が拡がってきています。他地域へ生息域を拡げないため、市では「浜松市アライグマ防除実施計画」を策定し、防除に取組んでいます。アライグマ

クリハラリス(タイワンリス)(特定外来生物)

市内でペットとして飼われていた個体などが野生化しました。市街地から細江町や浜名区尾野にまで生息域を拡げていて、在来のニホンリスが生息する市北部の山地まで生息域を拡げるおそれがあります。市では「浜松市クリハラリス防除実施計画」を策定し、防除を始めています。クリハラリス

ヌートリア(特定外来生物)

河川の岸辺の土手などに巣穴を掘って生活するネズミの仲間です。当初は浜名湖周辺での確認でしたが、現在は、中央区篠原町での生息確認や、目撃報告の増加など、生息域が確実に拡がってきています。市内ではレンコン畑での食害が出ており、ニンジンやサツマイモも食べることから生息数の増加に伴い、今後農作物被害の増加が予想されます。ヌートリア

オオキンケイギク(特定外来生物)

当初は緑化や観賞用として、日本に持ち込まれた植物です。荒れ地でも生育でき、繁殖力がとても強いため、この植物が入ってしまうと、もともとそこにいた植物がほとんど無くなってしまうこともあります。このため、市では河川敷や公園等で駆除を進めています。オオキンケイギク

 

 

市内の注目すべき場所

浜松市の生物多様性を保全・向上させていく上で、自然度が高く、かつ対策の優先度が高い場所を「注目すべき場所」として選定しました。今後の取組みを検討する「候補地」として位置づけ、情報収集を行っていきます。

(1)遠州灘沿岸砂丘

遠州灘沿岸に面した砂丘が形成されている範囲で、砂丘の内陸側にはクロマツの防風林が見られます。砂丘はアカウミガメに産卵場所として利用されています。また、砂丘に生育するカワラハンミョウなどの昆虫類や砂丘植生が見られます。

(2)浜名湖・周浜名湖低地

浜名湖と周囲の中小河川沿いの低地を含む範囲です。広大な汽水域と干潟、ヨシ原、浜名湖に流入する中小河川、水田地帯といった多様な環境が存在し、里地里海の生態系が形成されています。

(3)天竜川

天竜川の河口部から中流域(延長約95km)の範囲で、市域を縦断し、上流は長野県と繋がる水域ネットワークの基軸となっています。船明ダム、秋葉ダム、佐久間ダムが存在します。水域にはアユやアカザ、アユカケ(カマキリ)、スナヤツメ、イシカワシラウオなどの魚類が生息しています。下流側にはコアジサシが繁殖場所とする砂礫河原、ヤナギ類の河畔林などが存在し、河口付近にはワンドや干潟、ヨシ原などが形成され、多様な動植物の生息生育場所となっています。

(4)三方原台地~扇状地

三方原台地と天竜川右岸側の扇状地の範囲で、浜松市の主要な市街地が広がるほか、農地や断片的な斜面林が見られます。段丘斜面に断片的に残存する樹林のほか、段丘斜面から流下する細流や湧水、湧水が流入する中小河川などが見られ、市街化が進んだ地域において良好な自然環境が点在しています。

(5)引佐丘陵地~低山地

市域西側の主に山地下部から丘陵地を含む範囲で、蛇紋岩地や石灰岩地といった特異な地質が分布します。コナラなどの二次林が比較的多く見られ、二次林や農地、中小河川などからなる里地里山の生態系が形成されています。また、蛇紋岩地域や石灰岩地帯には、特徴的な動植物が生息生育しています。

(6)天竜川中流山地

山地中部から下部の範囲で、天竜川を挟み、白倉川や気田川などの支流を含み、主に天竜美林に代表されるスギ・ヒノキ植林が広がるブロックです。ホソバシャクナゲ群落などが分布するほか、主に樹林性の動植物の生息生育環境となっており、里山から奥山の生態系が形成されています。

(7)北部山地自然林

山地上部であり、標高2296mまでを含む南アルプスに隣接するブロックです。亜高山帯植生、ブナ林などの自然林が分布するほか、源流域に生息するヤマトイワナやアカイシサンショウウオなどの動物が生息します。

 

 

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浜松市役所環境部環境政策課

〒432-8023 浜松市中央区鴨江三丁目1-10 鴨江分庁舎

電話番号:053-453-6146

ファクス番号:050-3606-4345

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