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更新日:2020年5月11日

田んぼでつながる人と自然

田んぼでつながる人と自然~ヤリタナゴから学ぶ生物多様性~

実践校

年度

対象

人数

機会

時期

時間

浜松市立井伊谷小学校

令和元年度

小学校

高学年

60人

総合学習

晩春~初冬

合計18時限

※学校等の実態に合わせた構成で実施することができます。

≪主な必要物≫

◆講師謝礼
◆バス(移動用)
◆校外活動に必要なもの

ねらい

  • 都田川・井伊谷川を中心とした里地里山(中川・井伊谷地区)の機能について、講義・体験・調べ学習を通じて学び、自らを取り巻く環境を知る。
  • 生物多様性についての基礎知識と生活のつながりを理解する。
  • グループワークにおいて、市内でも希少な動植物が生息する中川・井伊谷地区の自然を総合的な学習の時間を利用して学ぶとともに、県指定希少野生動植物に指定されているヤリタナゴの保全にも関わる。
  • 一連の学習を通して、地域の環境にために自分たちでできることを考える。

取組フロー

動機づけ

1. 地域の生きものを知ろう:

 地域の生きものを挙げて、どのような場所にどんな生きものがいるか整理し、共有する。また、それらの生きものが自分たちとどのように関わっているかを話し合う。自分たちの生活と自然がどのように関わっているかというこの時点での認識をまとめて、これから学んでいく土台にする。

【生きもの】【農業・産業】【消費者行動】を知る

2. 田んぼの生きもの調査:

 田んぼには普段見ない、意識しない多くの生きものが生息し、食う・食われるという関係の生態系があることを知る。

3. ヤリタナゴの生態:
 静岡県で中川・井伊谷地区周辺にしか生息していない希少種ヤリタナゴの生態を知り、ヤリタナゴが生息できる環境を考える。

4. ビオトープの整備:
 これまでに学んだことを確認しながら、ヤリタナゴ保全のために整備されたビオトープの手入れを行う。

5. 地域の産業を知る:
 環境に配慮した農業を実践する農家の話を聞いて、農薬と生きものについて考える。地域の環境に貢献する企業を見学し、環境との間接的な関わりについて知る。

6. 環境に配慮した買い物について考える:

 エシカル消費(倫理的な消費)について学び、日ごろの消費行動が環境にも関わっていることを知る。

調べ学習・まとめ

7. 地域の未来について考えよう:
 これまで学んだ生きものと自分たちのつながりを振り返り、どのように地域の自然を守っていけばよいか、どのような行動が自然環境の保全につながるかを話し合い、地域の自然を守るために自分たちができることをまとめる。

プログラムの展開例

時限

内容

指導のポイント

1

〇地域の自然を調べてみよう【調べ学習】

  • これからの一年間で、地域の自然環境について学習していく目的意識を持つ。
  • 自分が住んでいる周辺には、どんな生きものが棲んでいるか、生きものが棲んでいる環境にはどんな場所があるかを挙げてみる。
  • グループで出てきた意見を共有する。

  • 身近な自然だが、知らないことは意外と多い。今の自分が知っていること・思いつくことをまとめて、新聞記事としてまとめ、プログラム終了時に作成するまとめと比較できるようにすることで、一年間の学びの目安とする。
  • 生きものだけでなく、田んぼや山・川などの環境を挙げていき、地域の全体像を把握する。

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3

〇田んぼの生きもの調査【体験学習】

<講師>常葉大学 山田辰美教授

  • 田んぼの水路とビオトープで生きもの観察をする。
  • 実際に田んぼのどこに生きものがいるのか、どのくらい生きものがいるかを実感する。(15~20種程度は見つかる)
  • 田んぼの希少種:ナゴヤダルマガエル、コオイムシなど

  • 生きものに馴染みのない児童たちに、実際に生きものに触れてもらう。
  • 何気ない田んぼや水路にも、多くの種類の生きものがいることを認識する。
  • 実際の田んぼを見ることで、近年の田んぼにはなぜ生きものが少なくなっているのか考えるきっかけにする。

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〇オプション:

田んぼの鳥観察 鳥トリドリな世界

Eスイッチプログラム

<講師>増田 裕(野鳥の会)

  • 鳥にとっても田んぼは重要な生息場所であり、餌を獲る場所である。
  • 普段はよく観察しない鳥たちの田んぼでの過ごし方を知る。

  • 身近な田んぼで生きもの調査をすることで、農業と生きもののつながりを実感する。
  • 田んぼには意外と生きものが多い。生きものにとってなぜ田んぼが必要なのか考える。
  • 近年、農薬や灌漑によって田んぼの生きものが減っている。どんな田んぼなら生きものが棲めるかを考える。

6

〇ヤリタナゴの生態

<講師>常葉大学 山田辰美教授

  • 中川・井伊谷地区の自然の特徴とヤリタナゴの生態を知る。
  • 田んぼの持つ生物多様性の役割を知る。
  • ヤリタナゴをマツカサガイの共生関係について学ぶ。
  • これから調べる中川・井伊谷地区の自然の特徴をつかむ。
  • ヤリタナゴの生態を知ることで、どうやって保護していくのかを考えるきっかけとする。

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8

〇地域の自然を調べよう【調べ学習】

  • 田んぼにどんな生きものが棲んでいるか調べる。
  • 田んぼの生きもの調査で見た生きもの、学んだ生きものの生態を詳しく調べてみる。
  • ナゴヤダルマガエル、ヤリタナゴ、コオイムシなどがなぜ絶滅危惧種になってしまったのかを調べてみる。
  • 生きものがどんな生活をしていて、どんな餌、環境が必要かを調べる。
  • 身近な生きものが田んぼなど人の手のかかる場所に適応していることを知る。
  • 田んぼやため池の重要性を考える。

  • 体験したことを、自分たちで再度調べることで理解を深める。
  • 田んぼの仕組み、灌漑設備の進歩(冬場の渇水)、農薬問題、水路や畔のコンクリート化など、かつては生物多様性の中心だった場所の変化を知る。
  • 農業と生きもののつながり(里地里山)を知る。

【一例】

カエルは、卵からオタマジャクシまでは止水域(田んぼやため池)、成体になってからは草むらで生活し、昆虫などを食べる。冬眠には落ち葉や石の下を利用する。一つの生きものが生活するためには多くの環境が必要で、その餌となる生きものも含めると生態系を保つためにはより多くの環境が必要になる。

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10

〇生物多様性とは【調べ学習】

  • 生物多様性とは何かを調べる。
  • 生物多様性が自分たちに与えてくれるものを挙げ、調べてみる。
  • 自然が減るとなぜ困るのかを考えてみる。
  • 自然=生物多様性が与えてくれるものを知る。
  • これまで調べてきたことを生物多様性に当てはめて考えてみる。

  • 水や空気、木材なども自然の恵みであり、生物多様性の一環であることを理解する。
  • 山・川・田畑などの景観も生物多様性の一部であることを伝える。
  • 生物多様性という言葉は難しいが、身近なものであることを認識してもらう。

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〇ビオトープの整備【体験学習】

<講師>常葉大学 山田辰美教授

  • 実際にヤリタナゴ保全のためのビオトープを見学し、ビオトープの管理作業を体験する。
  • 流水部の整備(シートの被覆がはがれていれば修復する。流水部にたまった砂利を取り除く。)
  • 周辺の草刈り(刈りすぎないように、草むらの必要性も学ぶ。)
  • ヤリタナゴの繁殖に必要なマツカサガイが生息できるように、流水部を備えたビオトープを整備する。
  • ヤリタナゴは、静岡県では中川・井伊谷地区周辺の小さな川にしか残されていないことを伝える。絶滅しないように別の場所で保護することを「域外保全」といい、この活動の重要性を説明する。
  • ビオトープを創り守っていく意味を考えてもらう。

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14

〇地域の産業を知る 環境配慮型農業

<講師>有限会社三和畜産(とんきい)

  • 「細江舞姫」など特別栽培米のブランドや水田環境鑑定などの取組を紹介する。
  • 水田環境の格付けでは、水生生物や鳥類など生きものが指標となる。水田環境「特A」を取得した取組を紹介する。
  • 環境配慮型農業とは、自然環境に配慮した農業のこと。ここまで調べてきた問題(農薬、水路、冬場の水)を解決するヒントがある。

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16

〇地域の産業を知る リサイクル事業とCSR

<講師>富士通ゼネラル(富士エコサイクル)

  • 環境に貢献する事業や、企業の取組を学ぶ。
  • CSRとしてビオトープを整備し、ヤリタナゴや地域の自然を保全している現場を実際に観察する。
  • リサイクル事業の工場見学をする。
  • 地域の環境に配慮した会社について知る。
  • CSR(企業の社会的責任)の取組を知る。
17

〇環境に配慮したお買い物(エシカル消費)

<講師>くらしのセンター

  • エシカル消費(論理的な消費、環境・社会・人にやさしい消費)について学ぶ。
  • 環境ラベルの種類、意味や取組を調べる。
  • 消費者の選択が、社会に影響力を持つことを認識する。
  • ここまで、環境に配慮した企業や農業について学んできた。ここでは、消費者として、自分たちがどのようにそれらの企業・製品と関わっていくかを考える。
18

〇地域の自然の未来を考えよう

自分が考える中川・井伊谷地区の未来を想像し、そのためにできることを考える。総括として、学んだことを新聞記事としてまとめ、プログラム最初の記事と比べることで学んできた成果を確認する。

学校の声

 田んぼの生きものや鳥の調査をしたり、井伊谷地区に生息するヤリタナゴの保全のためにビオトープを整備したりして、井伊谷の環境を考える機会になりました。また、環境に関わる地域の産業を知ることで、井伊谷地区は、ほかの地域に比べて豊かな自然がたくさん残っていることを再確認し、この自然を今後も守っていきたいと強く思う子が増えました。すべての活動に多くの方が携わっていただいたことで、より充実した活動となりました。

児童の声

  • 生きものはともに助け合っていく。だから、人も生きものも大切にしたい。
  • いろいろな活動を通して、生きものが好きになりました。生きものが生息できる井伊谷の自然を大切にしていきたい。
  • ナゴヤダルマガエルが絶滅危惧種であることを初めて知りました。ナゴヤダルマガエルがたくさんいるこの地域を誇りに思いました。

ヤリタナゴについて

 ヤリタナゴの産卵場所は、なんと生きた貝(マツカサガイ)の中です。ふ化した稚魚は1か月程度貝の中で過ごしたあと、大きくなると貝から出てきて泳ぎだします。一方のマツカサガイですが、こちらもふ化したあと、ある程度の大きさになるまでは、ヨシノボリやドジョウなどの魚類の体の表面に張り付いて大きくなります。このような「お互いに持ちつ持たれつの関係」というのは、自然界ではよくあることで、ある生きものが絶滅してしまうと、それと深く関係のあった生きものも絶滅してしまうということもあります。ヤリタナゴは、かつては天竜川以西に広く分布していたようですが、小川や水路が圃場整備に伴ってコンクリート化されたことでマツカサガイの生息できる場所が著しく減少したり、水路の落差によってヤリタナゴが繁殖のための遡上ができなくなったりして、静岡県内では激減してしまいました。現在は中川・井伊谷地区周辺にのみ生息するだけとなり、平成27年4月には静岡県希少野生動植物種に指定されています。本市では、ヤリタナゴが繁殖できる環境を再現したビオトープで保護・増殖を試みています。

生物多様性とは

 現在、地球上には名前が知られているものだけで175万種、未知の種類を含めると3,000万種もの生きものが存在すると考えられています。私たち人間を含めたそれらの生きものはすべてが関係し合い、網の目のようにつながりあった微妙なバランスの上で生きています。このようにいろいろな生きものがいること、それらの生きものが複雑に関わり合って、様々な環境に合わせて生活していることを「生物多様性」と言います。生物多様性は様々な恵み(サービス)をもたらしています。森や土壌の働きによって空気や水が供給され、衣食住には農作物や水産物、木材といった様々な自然の恵みが活用されています。また、安らぎの場やレジャーなどの楽しみの場として森や河川、里山などが利用されており、文化的な恵みも生み出します。生物多様性の恵みは私たちの世代だけでなく将来の世代のためにも、そして人間以外の様々な生きもののためにも、守り、残していかなければならないものです。

〇文化サービス

 自然や生きものとそのふれあいの中から生まれる癒しや充足、そこから見出されるわたしたちの文化的・創造的な活動を促すサービス。

<景観資源やエコツーリズム、伝統文化、郷土芸能など>

〇供給サービス

自然の恵みを受けて育まれた食材、木材・繊維・燃料などの原材料を供給するサービス。

<ミカン、お茶、ガーベラ、アサリ、ノリ、木材など>

〇調整サービス

自然環境とわたしたちの暮らしを守り、維持するためのサービス(水や大気の調整、自然災害の緩和、植物による温室効果ガス吸収など)。

<北部地域の森林や天竜川、浜名湖など>

〇基盤サービス

3つのサービスを形づくり、維持するための土台となるサービス。植物が行う光合成による酸素の生成、風化や微生物の働きなどによる土壌形成、森林などによって支えられる水循環のバランスなど。

 

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お問い合わせ

浜松市役所環境部環境政策課

〒432-8023 浜松市中央区鴨江三丁目1-10 鴨江分庁舎

電話番号:053-453-6146

ファクス番号:050-3606-4345

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