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更新日:2019年3月31日

天白井戸

「こんこんと湧き出る井戸水が生活を支える」(PDF:159KB)

井戸は、夕暮れの黄金色の光を反射させながら3段の柵を乗り越えて流れていた。洗い場には、長年使いこまれたと思われる洗濯板と掃除道具が置かれていた。

この天白井戸を説明してくれたのは、近所に住む内山さん。白髪の後ろ髪をちょいとまとめた、おしゃれなおじいちゃんである。以前は、電気工として働き、今でも自分の仕事が、発電所関係で残っていると話してくれた。この井戸の名前の由来を聞くと「すぐそこに天白神社があったからみんなそう呼んだんだ。名前なんてそんなもんだ」と軽やかに話した。

とてもきれいに整備されたこの井戸は、電源関係の宿舎が近くにあったことから、昭和30年頃に、そこの社員が作ってくれたもの。今は使われていないが、以前は井戸の水をポンプで汲み上げ近所のみんなで使っていたという。

「今でも、祭りの時は、この井戸に飲み物やスイカを冷やしてみんなに振る舞うんだ」と、にこやかに話してくれた。手を入れてみると確かに冷たいが驚くほどではない。どちらかというと心地よいさわやかさのある温度であった。

この井戸は、3段の水を溜める構造になっていて、一番上は食べ物を洗い、2段目が食器の洗い上げ、3段目は土のついた野菜を洗ったり、洗濯したりするのに使っていたという。それぞれの境に木板を入れるための溝が作られている。「汚くなると木板を外せば勝手にきれいになる。水量があるからすぐに溜まるよ。でも、使うのは女衆で俺は詳しい時間は分からんが」と話してくれた。

3段目の境に他とは明らかに違う突起が付けられている。「これに洗濯板をひっかけて洗濯をしてたんだ」と教えてくれた。きっと昔は近所の女性が集まって、文字通り「井戸端会議」をしていたのではなかろうか。当時のにぎやかな様子が目に浮かぶ。

夜使う人のためにつけていた電灯の電気も今は止めてしまったという。掃除の当番制も今はない。しかし、水自体はまだまだ現役の湧き水であるという。断水した時には、この水を沸かして飲んだこともあるそうだ。水は地下深くから湧き出ているから、大雨などで濁るということもない。また、夏に枯れるということもない。「水が出なくなったらしょうがないが、出続けているから使うし、出続けている限りは世話しにゃならん」と内山さん。今ではほとんど使う人はいないという天白井戸だが、ほうきやちり取りが置かれ気が付いた人が掃除をするそうである。水を大切に思う気持ちからか、湧き出る水の近くに小さな社がまつられ、近所の人から大切にされていることを感じさせた。

人々の生活を支えてきた天白井戸。時代の移り変わりとともに、この井戸を取り巻く環境も変わってきたことだろう。しかし、ひっそりとした佇まいのこの井戸の水は、時代の流れなど我関せずといった様子で流れ続けている。

(注意)「天竜区の水」は、滝や池なども含めた天竜区のさまざまな水資源を紹介するものであり、「飲み水」として紹介するものではありません。飲用として保障するものではありませんので、ご自身の責任と判断において親しまれるようお願いいたします。

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〒431-3392 浜松市天竜区二俣町二俣481

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