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更新日:2024年1月18日

ナイター照明の光

ナイター照明の光

地域の願いと夢を照らすナイター照明の光(PDF:317KB)

12月下旬、冷たい空気と澄み渡る星空を、夕焼けのような色彩で、辺り一面を鮮やかに照らしている、ナイター照明の光。
その光に吸い込まれるように訪れた先は、静岡県立浜松湖北高等学校佐久間分校のグラウンド。
気迫のこもった声があちらこちらに飛び交い、”カキーン”と星空めがけて打ち上げられた白球は、あたかも待ち合わせの約束をしていたかのように、グローブの中へ音をたてて収まる。
グラウンドでは、野球部員たちが夜間練習に身を投じていた。

佐久間地域の小さな野球部

佐久間分校野球部は、1年生4人、2年生8人の部員と1年生のマネージャー1人で構成された小さなチーム。
部員はほとんど佐久間地域で暮らしている。
練習時間は朝7時から始業時間まで自主活動。放課後は、佐久間の山あいに陽が沈んだ後も19時30分まで、汗と土にまみれて毎日練習をしている。
グラウンドに立つと、部員一人一人が「こんばんは!」と白い息交じりの太い声を張り上げ、被っていた帽子をとり、挨拶をしてくれた。
グラウンドを見渡していると、女子生徒がそっと駆け寄り、温かいお茶を差し出してくれた。
冷たい空気の中冷えきっていた両手は、その瞬間、息を吹き返したかのように温まっていく。

監督の想い

ベンチの方へ案内されると、若い男性が近づいてきた。学生にしては少し大人っぽい男性。どうやらこの人がコーチのようだ。
コーチはこの小さな野球チームについて細かく話をしてくれた。
聞けば、練習試合は市内の高校ではなく、愛知県の高校と行っているとのこと。愛知県との県境に接しているこの地域ならではだ。
コーチとの会話も終わりを迎える頃、グラウンドの遥か向うから、ただならぬオーラをまとい颯爽と歩いてくる一人の男性。
この人が監督だということはすぐに分かった。
ガッチリした体格は、ジャンパー越しからでも十分に見て分かる。
「こいつら、本当に野球が好きなんですよ」
監督はこの言葉を皮切りに、チームに対する想いを語ってくれた。
「山で育っているこの子たちは、素直で本当にいい子たち。そんなこの子たちだからこそ、勝たせてやりたい。夏の大会では、バックスクリーンに向かって思い切り校歌を歌わせてあげたい。それが指導者である自分の使命であり、責任だと思っている」そんな監督の熱意と勝利への執着心は、この小さなチームの可能性を今まで以上に引き出してくれているのだろう。

とにかく勝ちたい!!

練習の合間にキャプテンの山田勘太さんから話を聞くことができた。話して感じたのは、監督が言う通り、本当に素直な子供たちだということ。
彼がチームをまとめているんだと思うと、話を聞くのがワクワクしてきた。中学から野球部で活躍している根っからの野球好きらしい。
「部員のほとんどが佐久間出身だから、昔から顔見知りで仲良し。この関係は野球をするのに良くもあり、悪くもある。
お互いに言いたいことを厳しく言い合える雰囲気が、今このチームに一番必要な事だと思っています」
気づくと、笑顔だったキャプテンの顔が真剣な表情に変わっている。チームの事をよく理解し、考えていると感心させられた。
休日も練習に励んでいる部員たちだが、夏休みの時間が空いた時などは友達と川遊びに行き、中には釣りを楽しんでいる部員もいるという。
キャプテンは、地元の子供からお年寄りまでおよそ60人が集まり昼食を食べる「ふれあい食事会」という地域の行事に参加している。
「今の自分があるのは、僕を温かく見守ってくれる地域の方々のおかげです」そして続けた。
「今後はとにかく夏の大会で勝利を掴みたい。その勝利の喜びを、先輩や地域の方々、そして監督にプレゼントしたい。それが日頃お世話になっている方々への恩返しです」と、キャプテンが語ったその瞬間、取材をしていた私の胸に、熱い何かが込み上げてくるのを感じた。
幼さが残る笑顔の裏に隠された実力と統率力は、きっと計り知れないほどの力強さを持っているのだろう。
遠くで一人黙々とボールの手入れをしている女子生徒…先程温かいお茶を差し出してくれたマネージャーだ。
野球をやっていた兄に憧れて、他の部活動よりも野球部のマネージャーを選んだとのこと。彼女はキラキラした目で心に秘めたチームへの想いを語ってくれた。
「佐久間地域を盛り上げるためにも、まずは1勝して欲しい!誰よりも私が一番近くでみんなを支えているから」
手のひらをギュッと握りしめた彼女の言葉には、チームや地域への愛情がギッシリと込められていた。

地域の願いと夢を乗せて

夢を追うことに遠ざかっていた自分。ふと気づけば、彼らの姿にいつかの自分を重ねていた。
真剣なまなざしに写りこむナイター照明の光は「まず1勝!」よりもさらにその先の勝利を照らしているようだった。
一人一人が同じ夢に向かって走り続けている野球部。どうか彼らの進む先に、光が差し込んでくれますようにと心から願う。
ナイター照明の光の中、無我夢中で追い掛かける白球は、地域の願いと彼らが思い描く夢を乗せ、山あいの星空へ弧を描き続けている。

 

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