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更新日:2020年3月26日

しいたけの音

しいたけの音

五感を使ってやる仕事。それが、原木栽培。(PDF:281KB)

 

 

『しいたけの音』を求めて

「しいたけの音がするんですよ」
そんな一言が印象に残っていた。それは、春野町を訪れた時に、たまたま聞いた言葉だった。その時には何でもないと思い、それ以上は気にも留めなかったが、時がたつにつれ、そのことが気になって気になって仕方がない。しいたけから音がするとは思えない。何とも不思議な話である。

 

 

そんな訳で、その“音”の話をしていた増田さんを訪ねることにした。
増田さんは春野町の杉という地区でしいたけ栽培をしている。ここは、近くに自然体験施設があり、周囲の山を見渡せる、まさしく自然があふれる環境の地域だ。晴れた日には思わず「ヤッホー」と叫んでしまいたくなるような景色が、そこには広がっている。

 

こだわりの原木栽培

増田さんのしいたけ栽培は、昔から続く栽培方法である「原木栽培」だ。切り出したコナラの原木に穴をあけ、その穴にしいたけ菌を付着させた種駒を打ち込んでいく。そこから、しいたけ菌が原木に行き渡り、しいたけが生えてくる。簡単に言えばそういうことになるが、その間には数えきれない工程があり,良いしいたけを作るのはなかなか難しい。時間も手間も多くかかる。その分、肉厚で歯ごたえのあるしいたけができる。そんな原木栽培は常に自然との戦いである。いつも同じようにやっていれば必ず良いしいたけができるというわけではない。

 

 

「原木ってね、どこの山にでも置けばいいという訳じゃないんだ。しいたけ菌の育つ環境をこっちから作ってやらないといけない」雑菌はしいたけの天敵である。しいたけ菌が良く育つには、雑菌が繁殖しない環境が求められる。ここからが自然との戦いだ。「風通しが良い環境を作らなければいけない。そのためには、たとえば雨がどのくらい降るだとか予測して原木を並べる高さを変えるんだ。どうやって予測するかって?昔からよく『梅の花が上を向いて咲くと空梅雨、下を向いて咲いたら雨が多い年だ』っていってね」そういって増田さんは近くの梅の花に目をやる。「まぁ、梅雨の時期にはどうだったか覚えちゃいないだけんが。それでも花を見て、今年は雨が多いのかなぁ、くらいのことは思うがね」そう言って増田さんは笑う。そんな昔からの知恵がここには今もたくさん伝わっているというのだ。

 

 

 

「昔はさ、本当に自然の様子やその変化を敏感に感じ取っていろんな事が分かったんだろうね。まさに五感を使ってね。原木栽培もそう。原木栽培は『感じてやる仕事』なんだ」
自然に対して五感のすべてを働かせてやってきたのが原木栽培だ、と増田さんは言う。

 

「感じる音」

そこで「しいたけの音」のことを思い出し、増田さんに尋ねてみると、こんな話をしてくれた。「あれは、夏の夜だったね。周りは物音一つない、風もない、そんな夜だった。そんな中でしいたけの様子を見たんだ。そしたら胞子がフワッと霧のように舞っていてね。それが漂っていたんだ。その時に『音』がしたんだ。「しんしん」という風に。これはね、伝えるのが難しいんだけど、耳で聞くんじゃない『感じる音』なんだ」

 

 

この話を聞いて、聴覚ではなく五感を使って「感じる音」というものが、何となく分かるような気がした。

 

自然には敵わない

「目には見えない気配なんかを伝えていくのも大切だと思うよ」と増田さんは続ける。「遠くの山に霧がかかると、こっちは雨が降らないって言ったこともあってね。『よく、おじいさんがそんなこと言ってたっけなぁ』って、思い出すね。昔は自然に合わせて生きていたんだな。今は人間の都合に合わせていろんな事ができるようになっただけんが・・・」増田さんはそう言って、山の向こうを見つめて目を細める。「やっぱり自然には敵わないよ。しいたけ栽培だって「勘」と「五感」の世界だから、当然うまくいかないことだってある」

 

 

そんな言葉に、原木栽培の奥深さを改めて感じたのだった。

 

 

 

 

しいたけの音。

 

それは耳で聞く音ではなく『感じる音』だった。自然の中で五感を使って原木栽培を続けてきた増田さんだからこそ見つけられた“音”なのかもしれない。

数えきれないほどの原木が並んだ山の中で耳をすますと、たくさんの音を「感じる」ことができる気がした。

 

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