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更新日:2022年3月31日

玄関から聞こえる散髪の音

散髪

昔からお世話になってきたお客さん。出張するのが務めかなって感じたんです。(PDF:235KB)

 

 

シャキシャキ、シャキシャキ。

 

 

玄関から、響いてくるのは小気味よいハサミの音。覗いてみると、いすに座ったお客さんの髪を理容師さんが切っている。
手際よく散髪していく理容師さん。あっという間にすっきり、さっぱり、はい、できあがり。終わったあとは、お客さんもとてもうれしそう。やはり通い慣れたお店の人に髪を切ってもらうのは安心なんだろう。

出張で散髪する理容師

ここは、佐久間町浦川という地域にある一軒のお宅。主要道路から少し脇へ坂を登った先にある。眼下には天竜川に注ぐ支流の大千瀬川が流れ、その向こうには浦川の中心部が見渡せる。このお宅に、出張して散髪する理容師さんがいるということを聞き、やってきたのだった。

一台の軽自動車が坂の上に現れ、慣れたハンドルさばきで空き地に駐車する。理容師さんの車だ。理容師さんは、手にカゴを一つ提げて、玄関までの道を軽快な足取りで登っていった。

この理容師さんは、浦川でお店を構える乗本さん。三代にわたってこの地域で理容店を営み、この地域にはもうなじみのお店だ。この日、散髪したのは80代のお客さん。「こんにちは」とあいさつした後、手際よく準備に取りかかる乗本さん。お客さんは、車いすを利用しているから、それがいす代わり。提げてきたカゴの中から、いつもの道具を取り出せば、その玄関はいつのまにか、理容店に大変身だ。

 

 

お世話になってきたお客さんへの想い

「出張で散髪を始めてから、かれこれ10年くらいにはなるかなぁ」と乗本さんは話す。乗本さんが出張で散髪を始めたのは、これまでお店に通ってくれていたお客さんが、お店まで来られなくなってしまったという事情があってのことだ。あるとき相談を受けたことがきっかけで、初めて出張の散髪を行ったという。それ以来、依頼があればお宅まで駆けつけるということが何度かあったという。

「子供のころから、お客さんには、かわいがってもらってきたからね。出張してでも散髪することが務めかなって気持ちがあったんだよ。地域のお客さんには、いつも感謝の気持ちでいっぱいだからね」。三代にわたって理容店を受け継いできた乗本さん。お客さんには、昔からのなじみの人が多い。そんなお客さんが困っている時に、少しでも恩返しができるならば、という気持ちがあったという。

 

地域の特長をふまえて

この地域では、坂を登った先に住宅があることは珍しくない。だから、車が運転できなくなったり、移動手段を失ったりしてしまうと、お店まで来てもらうことが難しくなってしまう。「今後は、もっとご高齢の方が増えてきて、出張も増えていくのでは」と乗本さんは言う。確かに、ここでも高齢化は、深刻な地域課題の一つ。この“出張する理容師”さんというのも、高齢化を見据えた、新しい取り組みの先駆けとも言えるのかもしれない。

 

お客さんの喜ぶ顔

そうこうしているうちに、散髪は終了。「ドライヤー貸してもらえるー?」とお家の人に呼びかける乗本さんの言葉で、はっとした。ここはお家の“玄関”だった。お客さんは、とてもうれしそうな表情だ。

「やっぱり、お客さんの喜ぶ顔を見ると、うれしくなりますからね」と、笑顔の乗本さん。地域の理容師さんとして、お客さんを大切に思う気持ちが伝わってきた。

 

 

今度はどの家の玄関先で、乗本さんが奏でるハサミの「シャキシャキ」が聞こえてくるだろうか。きっと、そこにも笑顔がいっぱいあふれているはずだ。

 

 

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