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更新日:2019年3月31日

川端の家で涼む人たち

「沢から涼しい風が来るもんで、水の上に寝ているようなもんだわ」(PDF:210KB)

とっておきの場所「空き家」

人口が減少する中「空き家」の問題は、日本全体が抱える課題としてクローズアップされることが多くなっている。天竜区においてもまた、この問題は例外ではない。住み手を失った家屋の処分や活用に、住民たちは日々頭を悩ませている。

今回、水とともにある天竜区の暮らしを取材する中で「沢の近くの空き家で涼んでいるおばあちゃんがいるから、訪ねてみては」との情報提供があった。「沢」「空き家」「おばあちゃん」。少ない情報の中に、天竜区ならではの暮らしにつながるキーワードが並んでいるように感じた。直感的に面白い取材になるのでは、という期待が膨らむ。いずれにせよ、どんな取材になるかは行ってみてからの話だ。8月下旬、そんな期待を胸に、龍山町大嶺のとある集落を訪ねた。

お盆を過ぎたとはいえ、まだまだ残暑が厳しい。天竜区の夏は、全国レベルの暑さだ。空き家で涼んでいるというおばあちゃん2人と待ち合わせた午前10時。この日も朝から30度を超えて、セミは親の敵のように鳴き続けている。

「何だか知らんが、私らに話なんか聞いても大した話はできんよ」といいながら笑顔で迎えてくれたのは、力子さん(90歳)とスズ子さん(83歳)。失礼ながら、年齢を聞いて驚いた。ずっと若々しくて可愛らしい2人だった。「どうぞどうぞ」と案内された家は、古くから酒屋を営んでいた建物だという。「借り始めるまでは、中がカビだらけだったけどね。2人できれいに掃除したですよ」とスズ子さんは言った。

空き家と聞いていただけだったので、正直にいうとボロボロの家を想像していたのだが、家の中に入って驚いた。長い年月を経ているが、梁や柱は風格があり、広い土間もある。もともと商売をしていたという名残りもある立派な家だった。「明治頃の建物じゃないかな、100年はゆうに経ってるね」と2人は言った。「材料がいいんだろうね。木そのものが」と力子さん。「ここは、いい木には事欠かないところだで」と説明してくれた。土間に置かれたソファーに2人が仲良く腰を下ろす。いつもの暮らしのいつもの光景なのだろう。

自然がもたらす涼

この家の裏側には、白倉川が流れている。開け放たれた戸からは、涼しい風とともに、ザーザーという川の音が聞こえてくる。「ここの集落は川が隣にあるから、夜も寝苦しいほど暑くない。窓を開けておけば沢から涼しい風が来るもんで、水の上に寝ているようなもんだわ」と力子さんは笑った。隣でスズ子さんもうなずく。何ともエコな暮らしぶりである。しばらくして、スズ子さんが思い出したように立ち上がって、天井に下がったサーキュレーターも回してくれた。「これでもっと涼しくなるかね」。ファンがカタカタと音を立てて回り始めると、この空間にレトロな雰囲気がさらに漂い始めた。

2人がこの空き家を借りるようになったのは5年ほど前から。川に近いこの空き家は、風通しがよくて涼しいと、夏場だけ借りることにした。2人は毎日、このソファーに座って昔話に花を咲かせたり、編み物をしたりして過ごす。「私らのいい遊び場だよ」と力子さん。「カラオケの機械もあるし、冷蔵庫には冷たいものが入ってる」と2人の隠れ家の魅力を笑顔で教えてくれた。

いつもの毎日、いつもの幸せ

2人の日常はとても規則正しい。毎日のスタートは、朝7時30分の体操から。近所の人5、6人が集まって行っているのだそうだ。「毎日のことだから、誰かが来ないと心配になる。1軒の家みたいなもんだからね」とスズ子さん。現在一人暮らしの力子さんは「みんなで食べるものも持ち寄ったりね。そのおかげで今の暮らしができている」と感謝の気持ちを語ってくれた。

ラジオ体操が終わると、朝の連続ドラマを見て、8時30分からは散歩。家に帰って、家事や昼食を済ませて、午後1時30分頃に空き家に向かう。ここにいるのは、3時30分までのおおむね2時間。一日で一番暑い時間、この場所で涼をとるというわけだ。

空き家の前を通る人は、ここでひと休みしていくことも多い。時には野菜などを置いていってくれる人も。「みんな、ここは涼しくていいねって言うよ」と2人。「本当にこんないいところ、なかなかないだかもね」と顔を見合わせて笑った。

昭和30年代、龍山町は秋葉ダム建設により、多くの工事関係者とその家族たちで賑わっていた。「あの頃は、立ち飲み屋があって、そこら中でけんかが絶えず、夜もおちおち眠れなかった」と当時を懐かしむ力子さん。「今じゃあ、考えられないと思うけど、私はその頃、映画館をやっていたんだよ」と続けた。かつての60軒ほどの家があったというこの集落も、現在、3軒を残すのみ。必然的に空き家が多く残されることになった。

しかし、まちの活気こそ陰をひそめた現在だが、2人は「今はとても幸せな時代だ」という。「戦争もないし、食べるものにも困らない。一人で寂しい思いをすることもないし、ここにくれば仲間がいる」。力子さんとスズ子さんは、穏やかな表情でそういった。「できれば、1日でも長くここで元気に暮らしたい」。それが今の2人の共通の願いだ。

「幸せとは何か」という答え探しは人生の永遠のテーマだ。2人の笑顔にその答えのヒントがあるように思う。特別ではない、変わらない日常こそが幸せ。多くを語らずとも、そんなことを感じさせてくれる魅力的なおばあちゃんたち。2人がくれた笑顔に心から感謝したい。

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