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更新日:2019年3月31日

山の上で大凧を揚げる人たち

「天竜川が鏡のようじゃ、凧は揚がらない」(PDF:212KB)

標高450メートルの凧揚げ

この集落の凧揚げは、ひと味違うらしい。何が違うかを確かめたければ、その地を訪れてみるのが一番手っ取り早い。百聞は一見に如かず、というやつだ。そんなわけで「ぶか凧」と呼ばれるその凧を見るため、6月初旬、天竜区龍山町瀬尻の寺尾地区に向かった。

国道152号沿いの瀬尻の通りを抜けたところで左折し、急峻な山の中を車で走ることしばらく。一気に視界が開けた場所に差しかかる。そこには凧揚げ会場を示すのぼり旗。一見すると、凧揚げに向いた場所のようには思い難い。まして、寺尾は標高450ートルの山の中にある。凧揚げには、当然のことながら風が必要なのだろうが、その風は、どこからやってくるのかも、どんな方法で凧を揚げるのかも想像がつかない。

そんなことを一人思いながら、せっせと先ほどから凧を組み立てている男性にひとまず声をかけてみることにした。

風を読む

男性は宮澤さんといった。この行事を主催する保存会の代表だった。「今日はどうだろうね、雨は大丈夫そうかな」。宮澤さんは空を眺めながらいった。先日の天気予報は、この地域も梅雨入りした模様だと伝えていた。

「毎年6月第1日曜日にやることにしているんだけどね。今年は鮎の解禁日と重なったから、2週目にしてやったんだ。そうしたら今度は入梅。難しいもんだな」そう言って笑った。瀬尻のぶか凧揚げは、初節句を祝う伝統行事だ。5月の節句というのはよく聞くが6月というのは珍しい。これは「5月は茶摘み」というこの地域の事情があるのだそうだ。こうした事情から、年によっては雨の心配をしなければならない時も少なくはない。

しばらくすると宮澤さんは、眼下の天竜川の方を見ながら「そろそろいい風が吹きそうだ」と言った。確かに、先ほどよりも道沿いに取り付けられたのぼり旗も静かにはためきはじめている。周囲の木々もワサワサと揺れだした。

「ここは、南北に流れる天竜川がぶつかった山の上にある。だから、山の斜面を吹き上がる南風で凧を揚げるんだ。川がだんだん水面が白く波立って来るのを朝から待つ。川が鏡のように周りの景色が映り込むようじゃ、大凧が揚がるような風は吹かない」と宮澤さんは教えてくれた。誰が始めに言い出したことかは分からないが、昔から凧揚げの時には、天竜川の変化で風の動きを読むのだといわれてきたという。これが寺尾での凧揚げの常識だ。

願いは大空に舞う

年配の人に聞くと、大昔は家々で凧を揚げ、百もの凧が大空を埋め尽くしたこともあったのだそうだ。その光景は、想像するだけでも心が躍る。昭和30年代に一度途絶えたという行事が復活したのは、平成になる少し前。子どもの頃に揚げた凧をもう一度見たい、という思いを人々は持ち続けていたのだろう。また、瀬尻に住む人はもちろん、出身者も含めて、年に一度地元に集まる機会にしたいという思いも、ぶか凧復活の大きな理由となったそうだ。

その後、保存会の手で凧は毎年揚げられ続けてきた。今では、ここに住む人たちこそ少なくなったが、毎年このために、東京などからも里帰りする若い家族も多い。そして、みんなで力を合わせて凧を揚げる。今年もまた、たくさんの人たちが集まって、次々に凧が大空に放たれた。人々の願いは一つ。子どもたちの健やかなる成長だ。

瀬尻のぶか凧は、およそ20畳ともいわれる大きさや「ブーン、ブーン」とうなる音が特長とされる。しかし、何といっても最大の面白さは、凧を揚げる人たちと眼下を流れる天竜川との見えない対話にある。その日も午後3時頃になると、川は穏やかになりはじめ、川面に青々とした龍山の山々が映り込むようになってきた。

宮澤さんは「今日は、もう風は吹かないだろうな。そろそろこの辺で終わりだ」と言った。それは、あたかも天竜川がそういうんじゃ仕方がないという顔だった。その後、大空を悠然と泳いで凧は、ゆっくりと糸に引かれ、人々の手に戻っていった。

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