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更新日:2020年3月26日

山の竹を砂丘まで届ける人たち

この会はすごい。人も道具も術も全部揃ってる。(PDF:256KB)

何でもやる人たち

中田島砂丘で堆砂垣を完成させた人たち阿多古川環境保全協議会は、天竜区を代表する市民団体の一つである。平成16年の設立当初は、その名のとおり、地元の財産である清流・阿多古川の環境美化のため、パトロールや啓発活動などを中心に取り組んでいた。阿多古川が、環境省の「平成の名水百選」にも選ばれたことは、こうした住民の活動が実を結んだものである。

しかし、現在の協議会は、単なる河川美化の推進団体と呼ぶだけでは、少し物足りない。ある時は河川パトロールをし、またある時は、地元の小学校のために垣根を直す。ある時は、海岸まで行って中田島砂丘の保全に協力し、またある時は、放置竹林から切り出してきた竹で門松を作る。さて、その実態は・・・。「この団体はすごい。人も道具も術も全部揃ってる」とは、ある会員から出た言葉。まさにこの一言が、この団体の強みである。今回は、さまざまな取り組みを実践する阿多古川環境保全協議会の活動の中から、団体の強みを最大限に活かし、他地域との継続的な交流活動に発展した「砂丘の保全事業」について紹介したい。

課題解決から交流へ

10月25日、浜松市中央区の中田島砂丘で、毎年恒例となる「堆砂垣設置プロジェクト」が行われた。中央区の住民や学生たちなど参加者およそ500人の中に混じって、天竜区の阿多古川環境保全協議会のメンバーの姿があった。

このプロジェクトは、日本三大砂丘にも数えられる中田島砂丘の侵食を防ぐために中央区の地元自治会などが始めたものだ。堆砂垣の作製のために必要な竹の確保に奔走していた中央区の人たち。川沿いの環境整備のために伐採した竹の活用方法が課題だった阿多古川環境保全協議会が、数年前に材料として竹を提供したことで交流は始まった。当初は、材料のみ提供だったが、今では竹を編み上げたすだれを作って現地まで届け、現地での堆砂垣の設置作業にも協力。今回の作業には、地元の下阿多古小学校の児童4人も参加した。

田舎の人たちの生活力と手仕事の質

手作りされた堆砂垣のすだれ堆砂垣の肝となるすだれは155枚。作業は、3月に竹を切り出すところから始まり、製作にはおよそ半月を費やしたそうだ。竹を決められた長さに切って、6つ割りか8つ割りにし、節や枝をはらって、最後に針金で編んでいく。協議会の和田会長が「自分たちでなければできない仕事」と胸を張るとおり、確かに手間がかかる代物だ。竹を加工する技、藪から運ぶ労力、鉈や鋸などの道具、複数人で編み上げる連携。出来上がった成果品だけを見ても、この会の人たちの生活力や手仕事の質の高さをうかがい知ることができる。

阿多古川環境保全協議会が竹のすだれを提供する以前は、市販のアシのすだれが堆砂垣づくりに使われてきたが、竹製は耐久性が圧倒的に優れているそうだ。長い年月、風雨にさらされながら、砂を受け止め続ける堆砂垣にとって、耐久性はとても重要。実際に、耐久性は3倍ほど。和田さんは「竹製のすだれはすごく丈夫。中央区の皆さんから、これからもずっと頼まれ続けるよね」と笑いながらも「自分たちにとっても余った竹の活用は大きな課題。お互いに有効に使えることは良いこと」と話してくれた。

真剣に砂を掘る小学生たちスコップで黙々と砂を掘り続けていた小学生たちに話を聞くと「砂を深く掘るのが難しい。人のために何かをするって大変だなと思った」との感想。よく聞くと、初めて中田島砂丘を訪れた子たちばかりだった。同じ浜松市といっても、天竜区と中央区は、距離にして30キロメートル以上も離れている。普段、山に囲まれた場所に住む子どもたちにとっては貴重な体験になっただろう。作業がひと段落すると砂浜に寝転んでみたり、走り回ったりと、非日常のロケーションを存分に楽しんでいる彼らの様子を見ながら、そう思った。

山の誇り

丁寧で手際のよい作業をする人たち堆砂垣づくりには、道具の使い方や、材料を固定する手作業の上手さに加え、チームワークが求められる。この日の設置プロジェクトは、いくつかのグループに分かれて行われていたが、阿多古川環境保全協議会のグループは、他のグループよりも作業スピードが速い。これはいうまでもなく、日常の手作業や共同作業に手馴れているせいだろう。それでいて出来栄えも見事。メンバーの河合さんは「こだわる人が多いでね」と笑って話してくれたが、少しでも固定が甘いところや、ずれているところがあると「ちょっと、そこを直すか」との声が聞かれる。きっちりとした仕事をしなければ気持ちが悪いのだろう。

見事な堆砂垣が完成し、この日の締めくくりに協議会の皆さんと、一緒に設置作業をした南行政センター職員のボランティアの皆さんが記念撮影。雲ひとつない秋晴れが、作業を終えた皆さんの清々しい気持ちを代弁しているようだった。遠く天竜区から出向き、他人事ではないとばかりに、真剣にやりとげる姿を見ているだけで誇らしい。山間部は、都市部に助けられるだけの存在ではないということも、きっちりと証明してくれた一日だった。お父さんたち、格好いい。

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