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更新日:2019年3月31日

栃の実でお菓子を作る人

「生き残りをかけて、水窪独自のもので勝負したい」(PDF:214KB)

地域独自の文化を生かして

都市部では、まだまだ残暑も厳しい9月。水窪町内の門桁や西浦、河内浦の山々では、栃の実を収穫する季節が始まる。「お祭りの準備なんかで忙しくなるけど、ほんとはこっちの作業をやりたいぐらいなんだけどね」お祭り好きな地域柄と聞いていたので、その言葉は本音なのだろうかと図りかねたが、小松さんは栃の実を触りながら淡々と話した。

最近では、栃の木が高級建材として取り引きされるケースが多く、栃の実の確保が年々難しくなっているということだが、小松さんが経営する製菓店では、すべて水窪産。こだわりを持っている。「個性を出さないと淘汰される。水窪独自のもので勝負しないと」その言葉は力強かった。隣接する長野県にも栃の木は多くあるが、実を採って加工して、食べるのは水窪だけなんだと。長野県にはない文化だそうだ。

時間と手間をかけて 勘だけが頼りの仕事

今年採れたばかりだという栃の実をみせてもらったが、それは栗によく似ていた。しかし、味は栗とは違い、アクも強く、食べられるようになるまでには、時間と手間がかかるそうだ。そのため、採算が合わず、大きな会社が手を出したがらない。

水に漬け、天日干しをして、また水に漬ける。そして、硬い鬼皮をむいて、2~3週間ほど清流にさらし、さらにそのあと灰の上澄み液に1週間ほど漬ける。こうしてアクが抜けたら実をきれいに洗って、やっと、加工できるようになるのだ。何段階もの手順を踏まなければならない。

この作業は気温や水温、また栃の実の状態などで微妙な加減が必要となるため、人間の勘だけが頼りの難しい仕事でもある。地方、地方でやり方が違うけど、と小松さんは前置きをして、「やっぱり山水がいい。冷たい水がいいから山水しか使わない」と水に対するこだわりを語った。また、水以外のこだわりも教えてくれた。薪ストーブを使っている人に楢や樫の木を提供して灰を作ってもらい、その灰汁を利用するそうだ。杉やヒノキに比べ、短時間でアクが抜けるという利点があるという。

ずっとやってきたから、これを続ける

背後に冬を控えた11月になると、山水が湧き出ている場所で、栃の実をさらしている光景を見かけるようになる。自家用に、自分で栃の実を拾って、栃餅を作っている人もいるそうだ。小松さんのところでは、水の冷たい12月から翌年2月までの間に、家族総出で1年分、250キロを下ごしらえするという。しかし、もっと加工量を増やし、雇用促進につなげたい気持ちがあるそうだ。

栃の実拾いや鬼皮むきは、高齢者の生きがいづくりにもつながる仕事となりえる。また、今後展開したいと考えているインターネット通信販売サイトの開設なども、雇用を見込める。都会から人が戻ってこられる環境になるために、少しでも貢献したいという思いが伝わる。

栃の実を使った和洋菓子は15種類を超えるという。「ずっとやってきたから、これを続けてやっていく」と断言する小松さん。地域の食文化が継承されるとともに、その思いも近く実を結ぶだろう。

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