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更新日:2019年3月31日
「いい祭りだろ。もっと賑やかにできたらいいよね」(PDF:206KB)
7月下旬、天竜区春野町和泉平地区の皆さんが心待ちにしている出来事がある。お祭りだ。
この祭りが行われる新宮池は、標高500メートルの山頂付近にある。池には舟屋台が浮かべられ、祭りは神秘的な雰囲気に包まれるという。地域のつながりを語る上で欠かせない祭りだが「山頂に湧く池」と「舟屋台」というキーワードが面白い。私は、和泉平の人たちの水とともにある暮らしに興味を引かれ、新宮池の夏祭りに出向いてみることにした。
祭り当日、午後3時30分、地元の若衆は、和泉平公民館を出発し、新宮池へと向かう。手製のミニ屋台に太鼓を乗せて、楽しげに引きまわす。威勢のいい掛け声、笛太鼓の音が山々にこだまする。およそ2時間かけて山頂の新宮池に到着。いよいよ祭りの本番だ。
新宮池の傍らにある新宮神社では、神事が古式ゆかしく行われ、若衆は水面に浮かべられた舟屋台に太鼓を積み込み、舟を出す準備をしていた。
徐々に地元衆や見物客なども続々と集まって来た。絵になる光景にカメラマンが多数カメラを構える。夕暮れ時の水面に浮かぶ舟屋台を美しく撮影しようと、黙々とファインダーを覗いている。きっと腕自慢なのだろう。
セミの声に冷涼な風が体をすり抜けてゆく。池のほとりに腰を落とした私は、その一瞬の静寂に心が透き通るような感覚を覚えた。それも束の間、かじ棒を立て、舟が漕ぎ出された。祭囃子と掛け声勇ましく水面を舟が練る。皆の心が高ぶってゆく。
「昔はここにいっぱい人がいたけど、少なくなった』池のほとりで見物しているおじさんが言う。おじさんはこう続けた。
『いい祭りだろ』
「そうですね」自然と答えた。何よりも全体が醸し出す雰囲気が素晴らしい。集落の人々は、来客を受け入れる深い懐があり、一体感や安心感がある。
「もっと賑やかな祭りにしたい」地元に住む木下さんは言う。「孫が大人になる頃も楽しく祭りが出来るように、いろいろな人が祭りに来てくれるようになってほしい」と。
日が落ちた頃、花火の打ち上げが始まった。水面を這うように動く金魚花火や打ち上げ花火などが行われ、いよいよ祭りは最高潮となった。
『いい祭りだろ』
先ほどの言葉が心に響いた。
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