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更新日:2026年10月23日
子供には、誰からも差別されず幸福を追求し生きる権利、そして自分の意見を社会に表明し、それを尊重される権利があります。
浜松市教育委員会では、2023年6月に「浜松市立中学校における制服のあり方検討委員会」を立ち上げました。そして、制服について議論するなかで、既存の制服にはルールの強制や多様性を認めないなどの人権課題が存在する、ということが確認されました。
具体的には、暑かったり寒かったりする時に自分の感覚に合わせて服を脱いだり着たりするなど調整がしづらいこと、外国にルーツを持つ生徒がその国や民族に基づくアイデンティティを大切にした服を着て生活しづらいこと、トランスジェンダーの生徒(出生時に割り当てられた性別と性自認や生活している性別が違う生徒)が性自認に基づいた服を着られないこと、肌が弱かったり過敏だったりする生徒が自分が痛くない痒くない素材やデザインの服を着られないことなどです。
自分が着る服を自分自身で選択することは、全ての子供の権利です。子供の成長を支える周りの大人たちは、全ての子供が自分が着る服を自分で選ぶことができるよう支援するとともに、その選択を最大限尊重しなければなりません。
こうした議論を踏まえ、この課題を制服という狭い枠で考えるのではなく、『学校に着ていく服』という新たな定義を設定し、人権を土台として服装の選択肢を広げることとしました。そして、各学校の『学校に着ていく服』の運用方針を生徒自身が考え、それを教職員、保護者、地域、事業者、教育委員会が一体となって支援していくことが大切であるという結論に至り、検討委員会の名称を「『学校に着ていく服』のあり方検討委員会」へと変更しました。
生徒自身が人権や多様性を尊重されながら、学校という場での時間や場面に応じた服装について考え議論することは、これから社会に出ていく生徒たちにとって必要な経験であり、主体性を育むことにもつながると考えます。
『学校に着ていく服』を選択することは、子供の権利です。児童生徒に関わる全ての人たちが「『学校に着ていく服』の考え方」を正しく理解し、一人一人の主体的な選択を支えることを目指します。
「『学校に着ていく服』の考え方」では、以下のように用語を定義します。ただし、法令や公的文書、固有名詞を引用・参照している箇所においては、各引用元の意味合いで使用しています。
『学校に着ていく服』は、登下校や教育活動の場において、生徒個人が選択・着用する服装と定義しました。制服や体操服、校内着といった学校で指定された服装、学校で着用することが望ましいとされる標準服、自由服(私服)などが、『学校に着ていく服』として想定されます。

全ての生徒が安心できる『学校に着ていく服』の実現
1.『学校に着ていく服』によって、全ての生徒が安心して学校に着ていくことができる服の選択肢を増やします。
2.『学校に着ていく服』の各学校における運用方針を生徒主体で検討します。
3.『学校に着ていく服』は、生徒個人が選択するものであり、他の人から強制されたり、阻害されたりしません。
4.子供の成長を支える大人は、生徒一人一人の『学校に着ていく服』の選択に寄り添い、支援します。
5.『学校に着ていく服』を通して、自分がかけがえのない個人であること、他の人も大切な個人であることを実感できるようにします。
「今日着る服を自分自身で選択する」ということは、全ての子供が持つ権利です。そして、その選択において、全ての子供が多様であることを前提として尊重されなければなりません。
日本国憲法の第13条では、幸福追求権を保障しており、その権利には個人の自由な自己決定が含まれます。また、「児童の権利に関する条約」や「こども基本法」などの法令等では、子供の権利擁護や意見を表明する機会の確保等が位置付けられています。
学校で着用する服装においても、憲法や法令等に基づく対応が求められています。
児童と生徒、その保護者にアンケート調査を行った結果、制服の良い面を感じている人がいる一方で、価格や機能性、多様性など、様々な面で改善を求めていること、そして、児童生徒や保護者の悩みや不安の中には、制服をやめる・変えるということだけでは解決できないものがあることが分かりました。
こうした制服に対する児童生徒や保護者のニーズを受け止め、真摯に対応していく必要があります。
制服一式を新調すると4万円以上かかることもあり、保護者にとって大きな負担となっています。
アンケート調査の「制服の悪い点」を問う項目でも、保護者は「制服の値段が高い」という回答が一番多い状況でした。
制服の価格高騰は全国的な課題であり、文部科学省や公正取引委員会からは、制服の選定や見直しを行う際に保護者の意見を聴取すること、制服の販売価格低減につながる取組を進めることが通知されています。
『学校に着ていく服』の運用方針を考える上では、保護者の経済的な負担軽減が図られるかという視点も重要となります。
今日着る服を自分自身で選択することは、子供も大人も誰もが持っている権利です。制服のあり方を考える中で、「制服を着たい生徒、着たくない生徒、事情があって着られない生徒など、様々な生徒がいるにもかかわらず選択肢が制服しかないこと」や「多様性に十分配慮されていないこと」などの人権課題が見えてきました。そこで、学校で着ることができる服装の幅を広げ、生徒一人一人が自分らしく安心して過ごせる服装を選択できるよう、『学校に着ていく服』という新たな枠組みをつくりました。
『学校に着ていく服』を導入する目的は、「制服をなくす」「制服を変える」「私服化する」ことではなく、「生徒一人一人が安心して過ごせる服装を選択できる環境を整えること」にあります。そして、本取り組みを通して、生徒一人一人の人権と多様性が尊重された、安全・安心な学校づくりを進めていきたいと考えています。現在は大きな問題が生じていないように見えても、生徒たちの思いや願いを聴き、本当に困りごとがないか、見直す必要がないかを生徒自身が主体的に考える機会を設けることが大切です。これは「児童の権利に関する条約」や「こども基本法」でも求められている大切な視点です。なお、『学校に着ていく服』には従来の制服も大切な選択肢として含まれるため、制服を着たい生徒はこれまで通り選択・着用することができます。「毎朝の服選びに悩まなくていい」「気持ちの切り替えができる」といった制服のメリットを感じる声も多く、こうした思いも等しく尊重されるべきものと考えています。
『学校に着ていく服』は、単に「学校で着る服装を自由化する」ということを目指すものではありません。今日着る服を自分自身で選択することは大切な権利ですが、学校というみんなが学び生活する場所において、時間や場面に応じた服装を考えることも中学生として身に付けたい大切なマナーです。各学校の『学校に着ていく服』のきまりを生徒主体で検討(どのような服装を含めるか、着用のきまりはどうするかなど)することになりますが、この「権利」と「マナー」の両方を大切にし、全ての生徒が安心できるものとなるよう丁寧に進めていきます。
『学校に着ていく服』の考え方の土台には人権があり、「全ての生徒が安心できる『学校に着ていく服』の実現」という理念を掲げています。『学校に着ていく服』のきまりを生徒主体で検討するにあたっては、まず本取り組みへの理解を深めることが不可欠です。特に、「自分自身がかけがえのない個人であり、同様に他者も大切な個人であること」、そして「服装の選択は誰からも強要されたり、否定されたりするものではないこと」については、丁寧に伝えていく必要があると考えています。
本取り組みは、生徒に任せきりにして放任するものではなく、教職員はファシリテーション(伴走支援)」の役割を担います。教職員は、『学校に着ていく服』のきまりを生徒主体で検討する過程において、適切な助言やサポートを行うとともに、生徒一人一人の意思決定や選択に寄り添い、尊重する姿勢を大切にしていきます。
本取り組みは、家庭の経済的な負担を減らすことも重要な視点の一つとしています。そのため、これまでの制服に加え、体操服や校内着、安価で手入れがしやすい私服なども選択肢として想定しています。『学校に着ていく服』を生徒主体で検討するにあたっては、こうした「経済面への配慮や負担軽減」という視点を持つことも大切である旨をしっかり伝えていきます。
現在、本市において「こどもの権利条例」の策定が進められており、その進捗と併せています。『学校に着ていく服』の考え方の根幹には「こどもの権利」があり、その理解が最も重要であると考えています。そのため本年度は、『学校に着ていく服』の理念や目指す方向性の周知に取り組みます。
『学校に着ていく服』を導入した学校では、登下校時に制服や体操服以外の服装を目にする機会もあるかと思いますが、『学校に着ていく服』の理念や目指す方向性にご理解をいただき、学校の取り組みへのご支援とともに、生徒一人一人の主体的な選択を温かく見守っていただくようお願いします。
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