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更新日:2024年1月1日

令和3年度 第1回「浜松まちづくりミーティング」 開催記録

開催日時 令和4年2月5日(土曜日)14時30分~15時30分
開催場所 FUSE(ザザシティ浜松中央館)
参加団体 ひよこのかい(5人)
テーマ 若手従事者が考える浜松市の繊維産業の活性化

1.あいさつ

市長:

 本日は、第1回目となる「まちづくりミーティング」にご参加をいただきまして、ありがとうございます。

 この会は、いろんな分野で頑張っている市民の皆さんの活動を報告してもらうと同時に懇談をさせていただく会ですので、ぜひ皆さんの最近の活動状況や、問題意識、今後の展望など、ざっくばらんにお話をさせていただければうれしく思います。限られた時間ではありますが、よろしくお願いします。

2.自己紹介・活動紹介

参加者:

 まずは、「ひよこのかい」のメンバーの自己紹介を簡単にさせていただければと思います。よろしくお願いします。

参加者:

 私は雄踏町にあります織物会社で企画・営業を担当しています。私は浜松出身ではなくて東京都出身で、今から10年前に、専門学校を卒業してから新卒でこの会社に就職しました。浜松は、縁もゆかりもなかったのですが、10年前に単身でこちらにやってきて繊維業に携わっております。

 普段は織物の企画をしています。どんなものを作っているかというと、今日私が着ているこのワンピースの生地などを作っております。洋服の生地になりますので、普段、東京に出張に行ったりすると、たまに街中で、私が作った生地を見掛けることがあるくらい、生活に密着しているような洋服の生地を作っています。

参加者:

 私は織物工場に勤めています。3年前に全く違う自動車販売をしていたところから、父が今社長をやっている会社に入って、3年前からこの業界で働いています。

 弊社は、私も今着ている、メンズブランド向けの洋服の生地を主に作っています。ブランドは全く疎いのですが、かなり高額な商品になっている生地が多いです。

参加者:

 私は西区の織物会社に勤めています。私も繊維業界とは全く別の業界から転職をしまして、以前は浜松基地で自衛官として勤務しておりました。その後、縁があって繊維業界に携わっています。

 弊社は主に糸の販売と加工を行っておりまして、販売に関しては、原料にこだわって海外から糸を輸入しております。オーガニックの認証を取得しており、オーガニックの糸の販売にも力を入れております。

 加工については、浜松以外にも国内のさまざまな協力工場がありまして、いろいろな加工に対応しております。

 浜松で糸に強い撚りをかけた強撚糸の生地であったり、2本、3本、多くて6本の糸を合わせる撚糸や、ガス焼きの加工であったり、さまざまな加工に対応できるようにしています。そういった加工糸を備蓄販売する特殊な会社で、用途も百貨店向けのものから、海外のブランドで使用されているものまでさまざまです。

 1つ紹介させていただきますと、バーバリーのコート地の内側の生地には、うちのオリジナルの糸が使われています。

参加者:

 私は浜北区にある会社に勤めております。私はもともと他県で美容師として活動していたのですが、3年前に、父が経営している会社に転職し、工場で勤務しています。兄も10年前から勤めており、兄弟で地元の活性化と地元の企業を盛り上げていこうと働いています。

 私の会社は、通常は生地や洋服の素材に使われる細幅織物を作っています。古くからの前掛けや、浜松まつりなどでも使う、血止めなどに使われる真田紐など、いろいろなものを作っております。

 私の会社の特徴としては、「どんなものでも織れる」をモットーとしており、最近のニーズに合わせて、さまざまな天然繊維から新しい製品まで、どんなものにも対応できるような技術力を特徴としています。

参加者:

 弊社は染め物屋で、浜松注染で染め物をしています。主に製造しているのは、手ぬぐいや浴衣です。1951年創業で、父が3代目として社長をやっております。

 私も、浜松に戻って来たのは1年ぐらい前で、それまでは別の所でメーカーのサラリーマンをしておりました。戻って来て、実際に現場に入って、今は職人として技術を高めるために修行をしているところです。今日はよろしくお願いします。

 それでは、メンバー全員の自己紹介が終わりましたので、ここからは「ひよこのかい」について、簡単に紹介させていただきたいと思います。

参加者:

 「ひよこのかい」は、遠州地域の糸偏産業の若手が集まった会です。会をつくる背景としましては、私が入社した10年前は特にそうだったのですが、組合の青年部のメンバーがなんと50代で、若手がいるのかすら知らないというのが現状でした。

 ただ、ここにいるメンバーもそうですが、この5年くらいで若手が戻ってきたということもありまして、同業者の横のつながりを増やし、若手で産地全体を盛り上げていこうと集まりました。

 遠州地域は、日本の他の産地にはない特徴があります。それは、細幅織物、幅織物、色幅織物という3種類の糸偏の業種が全て集まっているということで、他の産地にはありません。

 だいたい広幅なら広幅しか織らない産地や、小幅の着物しか織らない産地が多くある中、ここまで多様化している産地はかなり珍しいと思います。

 青年部が50代という話をしましたが、私たちは青年部にも入れないもっと若手ということで、卵から生まれたひよこという意味で、「ひよこのかい」と名付けています。

 ここにいるメンバーだけでもそうですが、多種多様なメンバーが集まっておりまして、糸、織布、染色、産元という、糸偏の中でもそれぞれ業種が違い、多様性が売りの産地ではないかなと思っています。

 この「ひよこのかい」は、先ほど説明したとおり、「053 Textile Design」というロゴを作成して、いろんなプロジェクトを進めようと、部活動のような感じで有志で集まってやっております。この「053 Textile Design」の「053」は、浜松市や遠州の市外局番である「053」からとっていて、遠州を表しています。ロゴも太陽、鳥居、川、水というイメージと、「〇五三」の漢数字を組み合わせたデザインにしました。

 このロゴは、浜松・遠州産地が日照率が良くて水資源が豊富ということから、もともと綿花の栽培が盛んだったことで、この産地が成り立っていることを分かってもらうために考えました。

 「ひよこのかい」をなぜ作ったかと言いますと、業種がそれぞれ違う、やっている仕事がそれぞれ違うので、もともと横のつながりを作る必要はありませんでした。ただ、この時代になって会社の数も減っていますし、同じ世代が集まる場が今までなかったので、少なくなってきたからこそ集まってみようと考え、この会を立ち上げました。

 実際に私たちの活動の中で製作したものを紹介します。これは「enpu(えんぷ)」(遠州産地の職人が生み出す遠州の布)というハンカチで、14社の生地を同じ規格でハンカチにしました。今まで細幅、小幅、広幅で、生地を使って同じ製品を作るという発想がなかったので、ここに細幅は入れられなかったのですけれども、小幅と広幅の生地を使って同じサイズのハンカチを作って、生地の多様性をアピールする目的で作った製品です。

 この流れで現在、Tシャツを作るプロジェクトを進めています。これも同じ発想で、いろんな生地を使って普段着られるようなTシャツを作る企画です。

 また、今進めているものとしては、多様性があるからこそ、今まで知っているようで知らなかった各会社がやっていることを知ろうという活動をしています。私は織物業なので、染め物屋さんのことを知らないし、同じ織物屋さんでも、他の小幅、細幅のことをあまりよく知らないため、相互の工場の見学や勉強会なども今開催して、お互いに産地のことを知るための活動もしています。今後、細幅やテープを生産している工場に見学に行く予定です。

 わたしたちの製品や活動をPRするツールとして、11月には浜名湖パルパルでイベントに出させてもらい、いろんな製品を販売しました。また、後で見学をしていただきますが大工町にある「エントランス」を私たち「ひよこのかい」の基地にして、生地の販売もしました。

 「エントランス」は、そんなに大きくはないスペースですが、そこをリノベーションして、部分的に自分たちで塗って、手作り感があるスペースを作りました。それは後ほど見学いただきます。

 メンバーは17人いますが、それぞれ違ったことをしているので、これからも互いに交流を深め、浜松内外の人を含めてアピールしていけたらと思っております。

製品

3.意見交換

参加者:

 それでは、「ひよこのかい」の概要を知っていただいたところで、意見交換に移ってまいります。今回の意見交換のテーマは、私たち若手従事者が考える、浜松市の繊維産業の活性化です。

 みんないろいろと考えてきていると思うので、ここは活発に発言をしていただければと思います。

 まずは現状と課題について、それぞれの立場でさまざまだと思うのですけれども、意見をお願いします。

参加者:

 私が入社した10年前というのは、先ほどもお話ししたとおり、本当に同世代の20代、30代の若手がいなくて、その当時はそこまで困ることがなかったですが、この産地は今後どうなっていくのだろうというぼやっとした不安がありました。私は20歳で入社したのですが、同じ会社の一番年齢が近い人は58歳だったんです。跡継ぎもいないし、この会社どうなっていくのだろうと、20歳ながらに先行きを不安に思いながら働いていました。

 この5年くらいで、やっと戻って来る人がいて、ただ、それでも全体の数から考えると、高齢化がかなり進んでいる現状があります。今、浜松に残っている会社、工場というのは、そこの工場にしかできない技を、何かしら持っています。それがなくなってしまうのが、すごくもったいないと感じていて、そのもったいないをいかに形にしていくか、いかに次世代につなげるかということが、大きな課題ではないかなと思っています。

 そういう課題を解決したいという思いが、ここにいるメンバーの希望としてあり、それに向けて活動しています。現状、例えばうちの生地に注染で染めてもらうなど、新しい活動も始めています。今後、より地元の人や他県の人が、この産業に携わってくれる状況を、どうやったら作れるのかが一番課題に感じています。

参加者:

 私も、まさに今言っていただいたとおりなのですが、この業界は今ここにいるメンバーだけではなくて、準備工程から仕上げ工程まで、さまざまな業者が携わっています。周りを見ると70代が普通で、80代の方がやっているということがざらにあって、その方たちは、今まで培ってきた技術がものすごくあるのですけど、それを後継する人が全くいない状況です。

 高齢化、高齢化と言われていますが、もはや問題としては高齢化ではなくて、この技術を持った人がいなくなりつつあることが問題で、それをどうにかして今の世代や未来につなげて行くかということが課題で、もう本当に産地がなくなるかどうかの瀬戸際なのかなと思っています。

 なぜこんなことになっているのか、いろいろ理由はあると思いますが、そもそも、もうからないというところがあります。お金の話をしてしまうとあまりよくないと思いますが、根本はやはり、お給料を払ってあげられるほどもうけが出ないということです。1反生地を作るのにかなりの時間をかけて織るのですが、それによって得られる収入としては、本当に見合わない額しかもらえない工場が多いです。だからそれをどうやって高く売るかを工夫しています。

 私たちはブランド化に注目しています。世界の、例えば中国産の生地は安く手に入る中、高くても選ばれる生地になること。うちは本当に他社では織れないような超高密度や、強撚糸など扱いにくいものを使い、うちでしか手に入らないものを作って、価格を上げる努力をしています。その結果、社員に賃金を払えるような仕事をしていきたいと思っています。また、知名度がまだ高くないので、一般の方たちにもこういう仕事があるということを広く広めていく活動をしていきたいと思っています。

参加者:

 私自身も学生時代に、海外の生地産地を回り、国内の生地産地はほぼ全産地を回っているぐらいですが、実際に就職してみて分かったことは、遠州産地は日本一どころか、世界一の産地だということです。だからこそ私はここで10年続けられていると思うのですが、なかなか日本一、世界一の産地ということを、地元の人すら知らない現状があります。

 地元の人と話をしていた時、職業を聞かれて、機屋に勤めていると言ったら、「え、なにそれ」って。生地を織る会社だよと言ったら、「それって昔話の鶴の恩返しに出てくるようなもの?」と言われました。今みんなが着ている洋服の生地だよと説明するのですが、伝統のあるものという印象が強いらしく、伝統と身近に実際にあるものがつながらないのかなと感じています。

市長:

 どういうきっかけで今の会社に入ったのですか。

参加者:

 私は縁があって入りました。もともと綿の生地が好きで、産地をいろいろ見学していく中で、海外志向もすごく強かったので、学生を卒業したらイタリアやフランスなど海外の産地へ行きたいなと思っていました。実際いろんな産地を回ったら、日本の生地のほうがすごいかもと気付き、そこから綿の産地で就職先を探して、たまたまこの会社を紹介してくれた人がいて、縁がありました。

 遠州産地は家族経営でやっている会社が多いので、なかなか外の人を受け入れるという体制ができてなくて、私のように東京から社員を受け入れることに始めは会社も戸惑ったみたいです。

参加者:

 先ほどブランドの話がありましたが、私の場合は細幅を製造しているのですけれども、正直なところ、細幅織物を遠州の織物と思われている方は、非常に少ないのかなというのを感じています。ただ、現実的な話をしますと、浜松では広幅織物の織り屋さんよりも、細幅織物の織り屋さんの方が圧倒的に多いのが現実です。それが認知されていない状況で、どうしても広幅の生地など、ブランド化しやすいものが非常に推されています。身の回りに細幅って結構あふれていて、車関係のシートベルトですとか、普段使うバッグ、ストラップなど、さまざまなものが遠州で作ったものだよということを、1つ言えるだけでブランドになるのが現実ですが、その力がなかったり、その方法が分からなかったりするのが現状です。

市長:

 今も細幅のほうが多いのですか。

参加者:

 はい。3倍ほど多いです。ただ、正直なところ廃業する業者も多いです。家族経営や家を改造して1つ、2つだけ織機を置いてやっていた方々も非常に多いので。私も実家の仕事に3年前に入りましたが、その時の平均年齢が75歳、今はそのまま繰り上がって80歳近くになってしまっているのが現状です。そもそも高齢化というか、若者を取り入れる風土がなかったのではと、個人的に思っています。今になって焦って、このブランドを守ろうと躍起になっているところがあるのかなと思うので、そこは変えていかなければいけないと思います。作っているものにとらわれず、全ての生産者で遠州産地として盛り上げていきたいです。

参加者:

 弊社は強撚糸や加工糸を取り扱っているのですが、強撚糸は他の産地でも扱うのは難しくて、遠州産地はすごい技術があって、特殊な生地がとても多いのが特徴です。他の産地ではできないけれど、遠州ではできるという企画がたくさんあります。

 浜松市内では昔、100件近くの撚糸工場があったのですが、今は数えるほどしかありません。家内工業が多く、70代、80代になって高齢で辞められる方がほとんどです。高齢化は、人だけでなく機械面でも課題となっていて、撚糸機械は今でも昭和20年代のものを使っているなど、古い機械が多くて修理して使おうにももう部品が手に入らないので、中古の部品を交換して使っているのが現状です。

 国内の工場もだいぶ減っており、弊社はそういった強撚糸を供給する責任もあると思っているので、国内のものづくりがなくならないためにも、なんとしても浜松のいいものづくりを残していきたいと考えております。

参加者:

 浜松注染でも、やはり後継者の問題ですとか、高年齢化は同じように進んでいます。

 もともと40社、50社あった注染の工場も、今は4社のみになってしまいました。

もともと注染は大阪で発祥して、東京にもたくさん工場があって、浜松で作られていることがあまり知られていないところもあるなと感じています。

 染めるにあたっても、全ての工程を浜松の中だけではできなくなっていて、1つの加工は、例えば大阪に出すといったことも実際起こってきています。

 また、現状として厳しいと思っていることが、やはりコロナの影響です。特に浴衣、手ぬぐいなどはお祭りで使われるものが多く、もちろん浜松まつりでは、各町で手ぬぐいや法被なども請け負っています。

 全国の夏祭りの盆踊りなどで着られる浴衣も、浜松で製造しているものもあり、お祭りがなくなり発注がなくなるということがここ数年続いています。今残っている4社も長引くコロナ禍で疲弊している状況です。

 なかなか新しいものを作ろうとしてもすぐに結果が出るわけではないので、そこで少し苦労しています。

参加者:

 技術が高くていろんなものができる、多様性があるというところが、遠州産地の特徴だと思います。しかし、それぞれに技術が高くて、それぞれ違うものを作ることができて、それぞれが素晴らしいというのは、なかなかアピールしづらい部分です。生地の産地で言うと今治タオルが有名ですが、あそこは産地のアピールとしては成功しているのですけれど、逆に各工場の個性がなくなってしまったという現状があるそうです。

 今治タオルでの機屋さんに聞いてみたら、各社どれだけ安く作るかという方向に行ってしまっているそうです。

 それは産地のアピールとしては成功しているけれども、結局その会社があまりよくない方向に進んでいるのかなと私自身は感じたので、遠州はそれとは違うアピール方法を考えなければいけないんじゃないかと思っています。

参加者:

 各社現状と課題、取り組みも少し話していただきましたが、抱えている問題に対して、今どんな取り組みをしているか、またこれからどういうことをしていきたいかを話していきましょう。

 先ほど、各社個性があって、それぞれ強みを出して伝えて行くことが大事ということがありましたが、弊社でもコロナ禍はやはり需要が落ちて、時間的な余裕ができたのと、私が1年前に浜松に戻ってマンパワーが入ったので、今までBtoBや、OEMが多かったのですが、自社で製品を開発して売っていくことを始めました。

 手ぬぐいというと、一般的に昔ながらの柄を皆さんイメージされることが多いです。ですが、古い用途だけではなく、若い方にも普段から使ってほしいという思いがあって、日常使いしやすいようなカラフルでオーソドックスな柄のものを作って売ったら若い方にも響くのではないかと思い始めました。

 今まで製造現場が前へ出ていろいろやったり意見を出したりすることはあまりありませんでしたが、こういうふうに前に行くことで、お客さんとの交流も増え、ニーズが分かったり、浜松注染を広く伝えていくことができたりしますので、これは続けていきたいと思っています。

参加者:

 昨年の夏休みに飯田小学校の4年生の子が、自由研究で遠州織物を取り上げてくれていて、その研究発表の成果が浜松市の自由研究で金賞を受賞しました。その中で給食着のエプロンに遠州織物を使ったら、子供たちもそうだし、洗濯で持って帰ったときに親御さんにも、遠州織物に触れてもらえるという提案がありました。本当にすごく素晴らしい提案だということで、浜松市にも動いてもらい、飯田小に給食用のエプロンなどを入れる袋を400枚寄贈させていただきました。注染の生地や、浴衣の生地、あと広幅の生地を含めて、26種類の生地を使って、子供たちの袋を作りました。

 この取り組みで、小学生に遠州織物のことを知ってもらえたのは大きな出来事だったと思います。これをきっかけに、将来遠州織物をやってみたいと思ってもらえたらうれしいです。

 提案をしてくれた子に聞いてみたら、「友達にもすごいねって言われて、うれしかった」ということだったので、一つずつではありますが、何か新しい行動が出てき始めているなと思います。

 他にも、市内のデザイナーさんが、ベビーボックスというものを提案されていて、それは何かと言うと、フィンランドでは子供が生まれたときに国から、子供が1歳になるまでに必要な洋服やタオルやおくるみ、おもちゃなどを箱にセットにして、プレゼントする制度があるそうです。

 浜松でも、プレゼントとまではいかないにしても、浜松市のいろんな織物や、天竜スギのおもちゃを使ってそれを作ってみたいという方がいらっしゃって、そこに「ひよこのかい」として今協力しています。いろんな業種が集まっているからこそ、注染でタオルを作ってみる、広幅のものでおくるみを作るなど、そういう取り組みを今進めています。

参加者:

 私の会社では、コロナ禍以前は、カーテンテープというカーテンに金具を付けるときに通すための具材を主に作っていました。旅行会社のバスのカーテンの受注が非常に多かったのですが、コロナ禍でそれも今年はかなり減ってしまい、受注だけではやっていけないということに気付いて、ホームページでオンラインの見積もりを始めました。

 今まではどうしても細幅というと、一度のロットが非常に多く、何万メートルで扱うものが多いので、こういう製品が欲しいと思ってもなかなか対応できる会社がなかったので、その需要に目を付け、少ないロットでも生産を始めました。

 今の目標としましては、会社名をブランドにすると言いますか、町工場でも織っているものは良質なので、ブランドにできるチャンスはあると考えています。

 最近、ECサイトでのオンラインの販売もまだ不慣れですが始めてみました。いろいろと試行錯誤しています。今まで下請けがメインの町工場でしたが、うちに頼みたいという人が増えればいいなと思い取り組んでいます。

参加者:

 今まで先輩方は、会社の垣根を越えていろいろな情報共有とかもなかなかなかったのですが、「ひよこのかい」という同世代の集まりをすることによって、情報共有や生産に関する相談も互いに多くできるようになりました。弊社としても、こういう原料を使って、こういう加工をすればこういうふうになるよという提案もできますし、今までは糸を買って織ってという、ただの売買の関係でしたが、そういう相談を受けることによって、一緒にものづくりをすることが、だんだんできるようになってきたので、この「ひよこのかい」としての取り組みは、産地としてもいい取り組みかなと思います。

参加者:

 今皆さんに言っていただいたような世間一般に知っていただく発信活動や、社員の方の働きがいのある仕事づくりなど、やらなければいけないことがかなりたくさんあります。今、私は企画・開発・営業でやっていて、名だたるブランドから「素晴らしい生地だ」と言っていただけることが多いです。先日もそのデザイナーさんが作った洋服をセレクトショップ、お店の店頭に一緒に立って販売をしてきました。かなり高い服だったのですが、一般の買ってくださるお客さんに、「高くてもやっぱり作り手の顔が見えるとそれだけ欲しくなる」と言っていただいて、すごくうれしくてやりがいのある仕事だと感じました。

 これを現場の方たちとか、一緒に働いている方にも共有してもらって、繊維産業ってこんなに楽しい仕事だよということもしっかり伝えていきたいと常々思っております。

参加者:

 「伝える」という意味では、工場のSNSでの発信が、すごく増えていると感じています。「ひよこのかい」でも、InstagramとかFacebookなどで情報発信をしているのですけれども、弊社ももちろんやっています。

SNSを見た人から、一緒にこんなことがやりたいという問い合わせやお話を意外と多くいただきます。やはりそういうことは、外に発信して開けた工場にしないとなかなか入って来なかったことだなと思うので、SNSを活用して、相談していただきやすいような工場、組織にして、いろんなことを共用していけたらいいなと思っています。

 また、PRという面で、2023年の大河ドラマは、私自身としても会社としてもすごく期待しているところで、遠州織物をPRしていくチャンスだと思います。弊社でしたら、お土産に徳川家康をデザインした手ぬぐいを作ったり、もしくは大河ドラマ館ができたときに、施設の装飾やユニフォームに使っていただけたらいいと考えています。多くの方が浜松に来られますし、遠州織物PRのチャンスとしてしっかりと入り込んでいきたいと思っています。

参加者:

 うちの会社もInstagramを結構更新しているのですが、意外と海外の方からフォローが多いです。海外の企業の人がフォローをしてくれて、うちの工場の動画を見てよとか、画像を見てよといったメッセージや、こんな生地はありますかなどの問い合わせが英語で来ます。案外いろんな方が見てくださるので、開けているといろんなチャンスが転がっているなと思います。

 ただ、それを各社でやっている現状なので、遠州産地としての可能性をアピールできる場として、「ひよこのかい」のSNSを利用していきたいと思っています。

参加者:

 なかなかSNSだと、上の年代の方にはハードルが高いこともあるので、若い世代が一緒にカバーしてやっていきたいと思うところです。

参加者:

 今参加しているメンバーの勤めている会社は、若い人を雇う余裕が多少あるような会社ですが、雇う余裕がない会社もたくさんあります。そういう会社も、ものづくりに関してはプロフェッショナルなのですが、自分の生地をいいものだよってPRするのはすごく苦手なことが多いと感じます。だから、若い人がうまく橋渡しができればいいなと思っています。

参加者:

 年配者の技術を、どうにかして後の世代につなげていきたい。何とかしていきたいと思うのですが、具体的にどうしていいのかと悩んでいます。「この人しかできない仕事」があって、その方が高齢で近々辞めてしまうのではと冷や冷やしています。そういう方たちは、恐らく遠州産地にたくさんいるはずです。

市長:

 技術の継承には、かなり時間がかかりますね。

参加者:

 継承は、家業だけだったら覚えることは同じことの繰り返しだと思うのですが、われわれが扱っているものは天然の繊維なので、糸によってやり方を変えるなど、細かい作業が重要です。織る前に成型といって縦糸を作る作業があるのですが、それも糸によってお願いする工場を変えるぐらいです。

 ポリエステルなど化学繊維の産地だったら工場的な部分が多いと思いますが、天然繊維の産地では、長年の経験の積み重ねが重要になってくると思います。

参加者:

 まさにそのとおりで、文字どおり「適当」が重要です。職人が長年の感覚でやっていることなので、数値化が全然できてなくて、この力加減でと言われても全く分からない。何十年重ねて来たこの技術が失われつつあるこの現状を、なんとか打破したいという気持ちなのですが。

参加者:

 私の会社もニードル織機というモーターで動かす機械と、昔ながらの力織機があるのですが、力織機で働いてくださっている方は今78歳で、80歳で辞めるという話をしています。毎日、朝出勤して来て、今日は機械の調子がいいと音だけで分かったり、においをかいで、今日はここちょっと気を付けなきゃいけないなと言ったり。私には全く分かりませんが・・・。そこまでの領域に達している方が多くて、なんとかそれを若い力で数値化して、具体的に、冊子のようなものにして伝えていけたらいいなと思っています。

 機械に関しては、力織機はもう販売されていないため、今ある機械が今後変わることはないので、技術者が今まで10年、20年かけて習得してきた技術を、3~5年で習得できるような方法があれば、よりやりがいをもってできるのかなと思います。

市長:

 何かこうしたらいいという方法はないですかね。

 今、農業だと、ベテランの農業者の皮膚感覚みたいなものをとにかく全部AI分析して、それを温度管理や、肥料、水の温度など目に見える形で反映させるような取り組みをしているので、そういうのがあるといいですね。AI分析をしたことによって、そのベテランの農家がいなくても、相当高品質の農作物が作れる。ベンチャー企業が今そういう取り組みをしているのですが、繊維業界でも同様のことができないでしょうか。

参加者:

 それが本当にできればいいと思います。職人の頭の中にある知識や身体で覚えている技術などを、言語化するとか記録に残すなどの作業は、一つずつでもやっていかなきゃいけないと思っています。

 やはり自分の会社で手一杯というのが、どこの会社の現状でもあって、外注先の下請の企業を残さなければいけないのですが、そこまでなかなか手が回らないというのは、本当に今肌で感じている課題です。

 また、うちの中だけでも、弊社が使っている織機は昭和40年代の織機で、説明書も残っておらず、部品の名前も分からないので、あそこのあれみたいな言い方をよくしています。その織機をつくったメーカーさん自体は残っていても、今はもう織機から完全撤退しているので、何も資料が残ってないと言われることもありました。

 古いものをいかに長く使うかとか、言語化するということはすごく重要だと思いますが、なかなか時間がかかるというのが現状だと思います。

 イタリアの展示会に昭和40年代の機械で織った生地を持って行ったら、イタリア人のデザイナーさんが、「生地がモダンだね」「現代的だね」と言ってくださって、ヨーロッパではそれは新しいものだと感じてしまうくらい、一周しているものなんだと感じました。十分海外にも通じるものづくりだと思っているので、なんとかその部分というのは、これからこの「ひよこのかい」を中心に残していくような体制を考えられたらいいなと思っております。

参加者:

 皆さんの熱い思いは止まらないですが、そろそろ時間になりましたので、意見交換は以上とさせていただきます。

 私たち「ひよこのかい」が感じている課題や今後の展望について、大変有意義な意見交換ができたと思います。ありがとうございました。

市長:

 ありがとうございました。

ミーティング

4.おわりに

市長:

若手の皆さんの情熱がひしひしと伝わってまいりました。繊維はこの地域の3大産業の一つであって、私自身も随分と関わりがあります。私の父の実家は織り屋さんで、今は廃業していますけれども昔は結構大きくやっていました。私の妹の嫁ぎ先も、昔は大きな繊維屋さんでしたが、今はもう工場もたたんで、商社としてほそぼそとやっています。昔は、皆さんもご存じだ思いますが、ガチャマンといって、ガチャッと織れば万円単位のお金がもうかるという、とても景気のいい時代があったのですが、残念ながら、今はそういう状況ではなくなってしまいました。このまま行くと本当に繊維業界が大変だと思います。

 一方で、皆さんもいろいろご努力をされていますけれども、会社によっては海外の一流ブランドに生地を出して頑張っているような所もあります。

 もう一度、私も浜松の繊維をなんとか再生できないかということを思っています。やはりブランド化をしていく、あるいは付加価値を付けることが有効だと思います。また発信の仕方というのが出ていましたが、今はSNSを使えば一瞬で海外にまで発信できます。そういう方法をいろいろ駆使して、やはりPRにもう少し力を入れていかなければいけないのではないかと思っていまして、来年度からパリとミラノの展示会に、市として参加してくれないかと今、取り組みをしています。また浜松で今やっているいろんな取り組みの中に皆さんの作った製品を、どんどん入れ込んでいくのもいいのではないかと思います。

 例えばふるさと納税で、今すごく品目を増やしていますので、そういう所にどんどん入れてもらうと。今楽天市場に、浜松が常設のマーケットをつくりましたので、そういう所をどんどん利用いただければBtoCのいろんなチャレンジができますし、逆に消費者の皆さんには、いろんな情報も届けることができます。ぜひそういう市の取り組みも大いに活用していただければいいのではないかと思っております。

 いろいろ課題が多いので、どこから紐解いて行けばいいか難しいですけれども、でもこうやって若い皆さんが、少しずつでも繊維の業界を引っ張っていこうと取り組んでいただいているというのは、大きな前進ではないかと思います。かつてのような一大産業にするのは難しいかもしれませんが、どちらかというと付加価値のある、個性の光る、そういう産地として、十分業としてなっていけるようになればいいのではないかと思います。

 同じような衰退産業とすれば木材業界も本当に難しい状況だったのですが、これをなんとかブランド化しようと今取り組みをしていて、少しずつ林業の方も再生しつつあります。昔みたいに蔵が建つような勢いのある時代はもう来ないかもしれませんが、業として成り立つようにこれから再生していくということが大事だと思います。行政としてできる取り組みやサポートをしていきたいと思いますので、ぜひ皆さんも引き続き、頑張っていただきたいと思っております。

ひよこのかい集合写真

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浜松市役所企画調整部広聴広報課

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電話番号:053-457-2021

ファクス番号:053-457-2028

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