緊急情報
ここから本文です。
更新日:2021年3月30日
「ジェンダー炎上」という言葉を聞いたことはありませんか?近年、メディアでの女性像や男性像の表現が、価値観の変化や社会の実像とズレているときに「炎上」が起こっています。
私たちが日常よく目にするメディアは、一個人では処理できないほど大量の情報を流し続けています。その中には、性差別や性暴力、性別役割分業をイメージさせ助長するようなメッセージを含んでいるものもあります。
ジェンダー視点によるメディアへの批判は、働く女性が増えつつあった1970年代から目立ってきました。2000年代に入るとインターネットの広がりとともに、炎上するCMや動画が頻発するようになりました。
台所で料理を作ったり、乳幼児の世話をしたりするのはお母さんのみ、若い女性は職場の華、力仕事は男性の役割、男性は一家の大黒柱として働き続けるものなど、メディアでの性差を目にする機会は多いと思います。子供の頃からテレビやWEBなどでこのような偏った「女らしさ」「男らしさ」を強調するメッセージを受け取り続けると、性差別的な表現に対する違和感を感じ取りにくくなってしまいます。
消費者に目を向けさせるためなのでしょうが、CMなどを制作する側にジェンダーに対する知見がなければ、チェック機能が働くことはありません。
女性が「私、作る人」、男性が「僕、食べる人」という描写が性別役割分業だと批判
育児に奮闘する母親の日常が描かれたが「ワンオペ育児」を美化、助長すると批判
働き疲れた様子の女性を上司が他の女性社員と比較し「需要がない」と言う様子がハラスメント容認であると批判
出張中の男性と居酒屋で相席した女性とのやりとりが性的であると批判
数人の男性カウボーイが1人の女性を取り囲み泥まみれにする描写が性犯罪的だと批判
うなぎを擬人化した少女を「僕」が大切に飼育するという物語が児童ポルノだと批判
2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」では、「教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進」を施策として位置づけ、メディア分野等と連携した積極的な情報発信、メディア分野等における政策・方針決定過程への女性の参画拡大に取り組むこととしています。
また、浜松市も「浜松市男女共同参画推進条例」の中で、「公衆に表示する情報における人権の配慮」として、「何人も、公衆に表示する情報において、男女間における暴力及びセクシュアル・ハラスメントを助長し、又は連想させる表現を行わないよう配慮し、人権の尊重に努めなければならない(第10条)」と明記しています。
イラストを挿入するとき、そのイラストから特定の偏見が生まれないよう配慮することが必要です。
例えば、「男は仕事、女は家庭」など、性別で役割分担を決めつけてしまうようなイラストの使用は避けましょう。
私たち一人ひとりが、「ジェンダー平等の視点から、このCMや広告はおかしい」と気づき、指摘していくことは、メディアとジェンダーとの関係を多様性に基づいた、より良いものにしていくことにつながっていくでしょう。指摘することによって対立が生まれないよう自由な議論ができる土壌を作っていくことも求められています。加えて、CMなどを制作する側、特に意思決定に携わる立場に女性を登用し、多様な視点を踏まえたCM・広告作りをしていくことも必要です。
企業CMや自治体のPR動画の中には、ジェンダー表現が社会の価値観に合わず、批判されるものがあります。浜松市内に通う高校生・大学生にCMや動画を見てもらい、どう感じたか意見を出し合ってもらいました。
橋本(はしもと)成美(なるみ)さん
静岡文化芸術大学2年
小野田(おのだ)彩花(あやか)さん
浜松南高等学校2年
田畑(たばた)奏紀(かなき)さん
浜松湖東高等学校1年
橋本:このお母さんは仕事をしているのに家事育児も全部していてすごいですね。お父さんが家事育児に関わっていないのは、現代の家族の在り方としては理想的ではないなと思います。
田畑:家事は男女協力してやらなければいけないと思います。自分がいつか結婚すると思うと、家事ができるように、今家でしている手伝いをこれからも続けていきたいです。
小野田:私の家では父が食事を作ることが多いので、このCMには違和感がありました。
橋本:女性を下に見ているようで、不快に感じました。需要ってなんだろうと思います。
田畑:男女逆の立場で考えてみると、自分も他の男の人と比較されたら嫌な気持ちになると思います。
小野田:自分が言われたら嫌だな、と思いました。私は「人は人、自分は自分」だと思っているので、人と比べないでほしいです。
橋本:「パパ、天才!」と褒めているのはいいところですね。誰でも褒められるとやる気になると思います。
田畑:家族そろってご飯を食べる姿がいいなと思いました。
小野田:夫婦で「この家事はどちらがやる」と初めから決めておくのではなく、その時にできる方がやればいいと思いました。その方が融通が利いてお互いに助け合えると思います。
橋本:メディアを含め、社会全体の男女の役割についての考え方が変わり、個人の考えも変わっていき、私たちが大人になる頃にはもっと気持ちよく仕事ができる、生きやすい時代になっていてほしいです。
田畑:学校で「男女共同参画社会」という言葉は勉強しましたが、テレビやCMも大きな影響を与えるものなので、男女共同参画という考え方を意識したものにしてもらいたいです。
小野田:企業や制作する側に、もっと見る人のことを考えてCMを作ってもらいたいです。学校でも(男女共同参画社会基本法など)「こういった法律があるよ」と言葉を教えるだけでなく、CMなど具体的な例を紹介するなど工夫をしてもらえたら、もっと分かりやすくなると思います。
全員女性のメンバーで広告やWEB制作を行うユニット「musuvime(むすびめ)」は、2019年12月に浜松で発足しました。立ち上げメンバーであるクリエイティブリーダーの中村(なかむら)麻衣子(まいこ)さんと営業リーダーの鈴木(すずき)未来(みき)さんに話を聞きました。
中村:女性活躍の推進など女性の力が社会的にも注目されている中で、今後、クリエイティブの分野でも、女性の感性による課題解決や表現方法で多彩なニーズに応えられると考え始まりました。社内だけでなくフリーランスで働く女性にも声をかけて、現在13人の女性で活動しています。
中村:「女性の感性を活かした」とうたっていますが、「女の子らしい」をアピールするチームではありません。キッチンに立つ絵では、女性だけではなく家族で立つ絵にするなど、制作では決めつけた表現をしないようにしています。誰しも固定観念はありますが、それを前提とせず、いろいろな人に意見をもらって作るようにしています。
鈴木:属性も経験も多様なメンバーが集まっているので、勉強になることも多いです。
中村:商品開発からブランディング、店舗設計など、様々なクリエイティブな課題に、最初から最後までトータルでチームとして関わりたいと思っています。男性ばかりの会社との仕事もやりたいです。
鈴木:私たちの経験をふまえて、企業での女性活躍推進をサポートするサービスも始めました。働く女性のリアルな声を反映させた、女性目線でのキャリアプランや情報発信をWEBなどで行い、企業価値を高められるようなものを作りたいです。
左:鈴木さん 右:中村さん
「アンステレオタイプアライアンス」は、あらゆるメディアと広告コンテンツにおいて有害なジェンダーに基づく固定概念を撤廃することを目的としてUN Women(国連女性機関)が主導し、賛同企業や団体と共に国際的に活動を行う共同体です。日本においても、UN Women日本事務所により2020年5月に「アンステレオタイプアライアンス日本支部」が設立されました。
近年、広告などから偏ったジェンダー表現や、古くからの固定観念に基づいた表現をなくしていこうという動きが、日本に限らず世界中で起きています。広告は非常に大きな社会的影響力を持っています。時代遅れのステレオタイプを取り除き、ジェンダー平等を意識した広告が増えることで、メディアにおける表現と人々の意識のズレがなくなり、「炎上」も減っていくかもしれません。
イギリスには広告基準協議会(ASA)という国内すべての広告を監視する組織があります。2019年、ASAはジェンダーの偏見を助長するような「性別に基づく有害なステレオタイプ」を使った広告を禁止しました。この基準はインターネット広告やSNS上の広告にも適用され、実際に自動車メーカーやクリームチーズ会社のCMが取り下げとなっています。
性的マイノリティなどのカップルは、民法上の婚姻と異なり、お互いの関係性を証明するものがなく、周囲の理解が得られないなど、生きづらさや様々な悩みを抱えています。
パートナーシップ宣誓制度とは、性的マイノリティの人など、戸籍上の性別にかかわらず、お互いを人生のパートナーとして認め合った二人が自治体に対して宣誓し、自治体が独自に証明書を交付する制度です。
2015年に渋谷区・世田谷区において全国で初めて制度が開始されました。その後、全国に広まり、2021年1月8日時点で74自治体がこの制度を導入しています(「渋谷区・虹色ダイバーシティ全国パートナーシップ制度共同調査」より)。
浜松市では2020年4月1日からパートナーシップ宣誓制度を開始しました。性的マイノリティの人に限らず、様々な事情により、婚姻の意思はあっても、現行の婚姻制度を利用できず(または利用せず)、生きづらさや悩みを抱えている事実婚の人も対象としています。
法律上の効果(婚姻や相続、税金の控除など)はありませんが、この制度の開始により、性の多様性の理解を広め、人の生きづらさや偏見、差別などを解消し、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指しています。
宣誓した人には「パートナーシップ宣誓書受領証」、「パートナーシップ宣誓書受領カード」が交付されます。
制度開始初日(4月1日)には、市役所1階ロビーにおいて、市長から宣誓者に受領証を手渡しました。(後ろのパネルは当事者及び支援者が作成)
宣誓組数(4月~1月) 27組
宣誓の要件や手続きの方法などの詳細は、浜松市ホームページをご覧ください。
検索ワード:浜松市パートナーシップ宣誓制度
2020年は、新型コロナウイルス感染症が全世界で猛威を振るい、私たちの日常生活にも大きな変化をもたらしました。浜松市でも小・中・高等学校が臨時休校となったほか、イベントの自粛、在宅勤務、休業による自宅待機など、誰もが生活や健康不安、ストレスを感じる状態に置かれました。
全国に目を向けると、5月~6月に配偶者暴力相談支援センターなどに寄せられたDV相談件数は前年の1.6倍に増加し、以降も増加傾向が続いています。7月には非正規雇用で職を失った人のうち、6割を女性が占めていること、8月には女性の自殺者が前年比で約1.4倍増えていることが報道されました。DV被害だけでなく、非正規雇用の雇止めによる収入減、女性に過度に集中する家事・育児の問題など、今まで表面化されなかった諸々の問題がコロナ禍で明らかになってきました。
浜松市男女共同参画・文化芸術活動推進センター(あいホール)のあいホール相談室でもDVに関する相談は増加しており、「家族と一緒にいる時間が増えたことで、ちょっとしたことで暴力を振るわれるようになった」「テレワークをしながら家族の食事、子供の世話をしなくてはいけない」といった声が寄せられています。
コロナ禍は、これまでとは異なる影響を私たちの生活に及ぼしています。困った時は、ひとりで悩まず相談してください。
DV相談専用ダイヤル:053-412-0360
受付時間:毎日(12月29日~1月3日を除く)午前10時~午後4時
区役所社会福祉課 家庭児童相談室
受付時間:月~金(土・日・祝、年末年始を除く)午前8時30分~午後5時15分
発信元から最寄りの都道府県の配偶者暴力支援センターに電話が自動転送されます。
相談時間等はあいホールWEBサイトを参照
相談内容によって受付時間が異なります。
男女共同参画に関する書物が多数所蔵されている「あいホール図書コーナー」から、メディアとジェンダーに関するおススメの本を紹介します。
あいホール https://www.ai-hall.com
瀬地山 角/著 光文社新書
炎上CMになる、ならないはどこが違うのか…。そこにはジェンダーについての視点の違いが表れている。問題になったCMと、その問題をクリアしたと思われるCMとの対比、性別役割やマイノリティー問題など、CMを入り口としたジェンダー論の入門書。
林 香里/編著 亜紀書房
「理想の女性像」があふれているメディア。男性中心に作られる「ふつう」は日常生活とのズレを感じさせる。ジャーナリスト、研究者、エッセイストらが、それぞれの立場から、「みんな」が心地よいメディアとは何なのかを考える。
マスク着用、手洗い、消毒の徹底など、最初はとまどった日常生活の変化にも少しずつ慣れてきたのではないでしょうか。あいホールでも感染症対策として、定期的な館内消毒や換気を徹底しています。また三密を避けた形でのイベントやオンライン講座を積極的に開催しています。
1階の交流空間は、安心して読書や勉強に使えるようにソーシャルディスタンスを保っています。
オンライン講座の様子(2020年10月「働く女性のステップアップ講座」)
窓口受付時間は午前9時~午後9時/男女男女共同参画推進センター業務は午後5時30分まで
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください