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更新日:2026年11月4日
PDF版はこちら⇒浜松市保健環境研究所だより(第26号)(PDF:486KB)
暑さも和らぎ、ハイキングやキャンプなど、自然の中で活動する機会が増える季節になりました。その際に注意したいのが、野山や草むらに潜む「ダニ」です。病原体を持ったダニに刺されることで、重篤な感染症にかかることがあります。本号では、ダニに刺されることでかかる感染症とその対策や当所での取り組みなどについてご紹介します。
私たち
の身近な場所に生息しているダニは、分類上はクモの仲間に含まれる生き物であり、大きく「屋内に生息するダニ」と「屋外に生息するダニ」に分けられます。屋内に生息するダニは、布団や絨毯に潜むチリダニやコナダニなどがおり、死骸やフンがアレルギー症状の原因となることがあります。また、ツメダニなどの一部のダニは他のダニを捕食し、まれにヒトを刺すことでかゆみや湿疹を引き起こします。一方、屋外に生息するダニには、マダニやツツガムシなどがおり、様々な病原体を持っているおそれがあるため注意が必要です。特にマダニは、肉眼でも見える大きなダニであり、野生動物を吸血しながら幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長していき、メスの成ダニは数百から数千個の卵を産むといわれています。普段は植物の葉陰や先端などで野生動物を待ち伏せしています。潜んでいたマダニは、近くを動物やヒトが通りかかるとその体に付着し、吸血しやすい場所を探して皮膚の上を移動します。その後、皮膚に口器を刺し込み、セメントのような物質で口を皮膚にしっかりと固定し、数日間かけてゆっくりと吸血します。
マダニの大きさは、成ダニで約2~8mmのゴマ粒から米粒程度ですが、吸血後は約1~2cmの大きさになります。一方、ツツガムシは約0.3~0.5mmであり、肉眼で確認することは困難です。

病原体を保有するダニに刺されることでかかる感染症の総称を「ダニ媒介感染症」といいます。いくつかのダニ媒介感染症は医師の届出が義務付けられており、全国で発生状況の調査が行われています。主なダニ媒介感染症は、日本紅斑熱・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・つつが虫病であり、草刈りや畑仕事中に感染する事例も確認されています。これまでに市内ではつつが虫病が多く報告されていましたが、2021年をピークに減少傾向となっています。
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日本紅斑熱 |
重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) |
つつが虫病 |
|---|---|---|---|
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媒介するダニ |
マダニ |
マダニ |
ツツガムシ |
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原因病原体 |
日本紅斑熱リケッチア (Rickettsia japonica) |
SFTSウイルス |
つつが虫病リケッチア (Orientia tsutsugamushi) |
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潜伏期間 |
2~8日 |
6~14日 |
5~14日 |
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主な症状 |
発熱、発疹、頭痛、刺し口、 倦怠感など |
発熱、血小板減少、倦怠感、 食欲不振、嘔吐、腹痛など |
発熱、発疹、頭痛、刺し口、 リンパ節腫脹、倦怠感など |
近年、特に注目されているのがSFTSであり、市内では2021年に初めて確認されて以降、毎年患者が発生しています。SFTSは西日本を中心に発生していましたが、近年は東日本でも発生するようになり、発生地域・発生数ともに拡大・増加傾向となっています。これは、病原体を保有したマダニが野生動物に付着して生息範囲を拡大していることや、気候変動の影響などが原因と考えられています。SFTSの患者は高齢者が多く、60歳以上が約90%を占めており、発症すると致命率が10~30%と高いことが問題になっています。また、ネコやイヌなどのペットもSFTSに感染することが知られており、特にネコでは致命率が高く、感染したネコの血液、だ液、尿などに触れることで、ヒトへ感染する事例も多数報告されています。


ダニ媒介感染症にかからないためには、ダニに刺されないことが一番の対策になります。屋外活動時には、長袖・長ズボン・手袋の着用など、素肌を露出しないことがポイントです。DEET(ディート)やイカリジンを含む虫除け剤もある程度の効果は見込めますが、ダニの付着を完全に防ぐことはできないため、他の対策と合わせてご使用ください。屋外での活動後は速やかに着替え、シャワーや入浴で全身を確認してください。特にわきの下・足の付け根・ひざの裏など皮膚が薄い部位や頭部(髪の毛の中)を重点的に確認しましょう。

マダ
ニに刺されているのを見つけた場合、無理に引き抜こうとせず、医療機関で処置してもらいましょう。マダニは皮膚にしっかりと固着して吸血するため、自分で取り除こうとすると、口器が皮膚内に残り化膿することがあります。
野外での活動後、ダニに刺された痕を見つけた場合、2週間程度は体調に注意し、発熱や発疹が現れた場合には速やかに医療機関で診察を受けてください。受診時にはダニに刺された(おそれがある)こと、野外活動の日付や場所、発症前の行動履歴を伝えましょう。
ヒトだけでなく、ペットのダニ対策も重要です。ペットを連れて屋外へ出た際は、帰宅後ダニが付着していないか確認しましょう。ネコやイヌ用のダニ駆除剤も有効ですので、動物病院などに相談してください。
また、SFTSに感染したネコなどの血液、だ液、尿などに触れることでも、SFTSに感染するリスクがあります。屋外で活動した後に体調を崩したペットや弱った野良ネコなどに触れる場合には、マスクや手袋を着用し、嚙まれたり舐められたりしないよう十分に注意してください。
ダニ媒介感染症の症状は、発熱・頭痛・倦怠感など、他の感染症などと共通する症状が多いため、症状だけで診断することは困難です。そのため当所では、ダニ媒介感染症の疑い事例が発生した際、患者から採取された血液や皮膚検体(ダニに刺された刺し口)などを用いて、PCR法による病原体の遺伝子検査を行っています。SFTSは、発症後一週間程で重症化することがあるため、迅速な検査結果が求められています。
また、2023,2024年には市内の山間部等を対象として、旗ふり法によるマダニの生息状況調査を実施しました。旗ふり法とは、50×70cmの白い布(フランネル布)を草むらなどで引きずり、マダニが動物と間違えて布に付着したところを捕獲する手法です。調査の結果、天竜区や旧北区の山間部で複数種類のマダニが捕獲され、SFTSウイルスを媒介する種と考えられているフタトゲチマダニやキチマダニも確認されています。フタトゲチマダニは3月から6月、キチマダニは9月から12月に多く捕獲されました。

本号では、近年国内で増加しているダニ媒介感染症についてまとめました。マダニが媒介するSFTSなどの感染症は、適切な治療が遅れると重症化し、命に関わる危険性がありますが、適切な対策を行うことでリスクを大きく下げることができます。
浜松市の豊かな自然を安全に楽しむためにも、野外での活動の際はダニ対策を習慣づけてください。
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