更新日:2020年12月14日
浜松医療センターの事後評価結果
令和元年度における浜松医療センターの指定管理者の事後評価については、評価委員会における審査結果を踏まえ、次のとおり公表します。
1.公の施設の名称
浜松医療センター
2.指定の期間
平成28年4月1日~令和3年3月31日
3.指定管理者
名称:公益財団法人浜松市医療公社
所在:浜松市中区富塚町328番地
4.事後評価委員会の概要
(1)評価委員会の構成
- 委員長:大久保忠俊(大久保外科・消化器科医院:院長)
- 委員:後藤励(慶應義塾大学大学院准教授:医師・経済博士)
- 委員:大六野隆(ヤマハ株式会社:顧問)
- 委員:町田あつ子(町田進亮税理士事務所:税理士)
- 委員:松浦直樹(スズキ株式会社:監査本部国内監査部長)
(2)審査日時
- 令和2年8月6日(木曜日)午後2時00分~午後3時30分
(3)評価点
5.評価の内容
評価項目
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配点
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評価点数
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1.重要課題への対応
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10
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6.0
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2.経営の視点
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30
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24.6
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3.公立病院としての取組み
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30
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26.4
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4.前年度指摘項目への対応
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20
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15.2
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5.顧客満足度
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5
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3.2
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6.協定書の履行
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5
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5.0
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合計
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100
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80.4
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7.経営の視点からの意見・要望
- 平均在院日数が前年度よりさらに短縮し、全国平均の12日に近づいたことは評価に値する。
- 入院患者延べ数、病床利用率が減少したのは、平均在院日数の適正化促進の結果とはいえ、経営の視点からは望ましくないため、いっそうの努力をしていただきたい。
- 外来患者延べ数、手術件数が上昇していることは評価に値する。
- 昨年と比較して支出の増加の割に収入の増加が少なく、このままでは赤字に転じてしまうことも懸念されるため、原因を究明し、経営努力をしていただきたい。
- 診療科ごとに収支分析の検討を行うようにしたことは、各科の医師に経営に関する意識を持ってもらう意味でも、たいへん良いことだと思われる。
- 令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で単純な経営の視点からは厳しい状況になることが予想される。令和元年度に繰出金の減少、人件費率の減少などにより、体力を蓄える形になっていることは評価できる。
- 経営の健全化の指標として患者数と病床利用率が挙がっているが、医療のプロセスの効率化指標としては、当日報告された平均在院日数が非常に重要である。今後量の医療から質の医療が目指されている中で、重要課題への対応の指標に平均在院日数も含めた方がよいのではないか。
- 公立病院であるが、「親方日の丸」にならず、財務的に自立した経営を目指しておられることに敬意を表する。
- PDCAの強化をお願いしたい。その際、次の点をご検討いただきたい。
P:目標は病院のミッション、役割に紐づけ、これに対応した重みづけをする。
C:チェックは、結果の数字に加え、その数字をどう評価しているか、
また、実行したこと、しなかったこと、その理由を明らかにして、次のアクションプランにつなげる。
- 外来患者数の増加と合わせて、入院、外来ともに診療単価も増加した結果、収入は大きく増えている。しかし、それに伴う経費も増加したため、収支差は前年度に比べ大きく減少してしまっている。原価計算を構築されたことで、各診療科の収支を分析し、改善されることを期待したい。また、手術支援ロボットであるダビンチを導入し、今後、先進医療を提供していくことになると思うが、ロボットの維持費、またそれを扱うスタッフの教育等、経費がかさむことが予想される。実績をあげ、手術件数を増やし、収支の確保に努めていただきたい。
- 平均在院日数は12.7日と直近5期で最も短くなっており、効率の良い病院経営ができている。
- 周産期センターは、地域の産院等が充実しているため、高リスク・紹介による妊婦の受入れを前提とした体制を考えるべき。
- 手術件数、全身麻酔件数ともに増加しており、収入増につながっていると考えられる。
- 入院診療単価、外来診療単価とも増加しており収入増につながる取り組みが行われている。
- 収支状況は収入の増加以上に支出が増加しているため、収支差は直近5期で最も少ない。経営状況は直近5期で最も悪い。効率の良い経営に取り組んでいるが、ボリュームが足りていない。
- 紹介率が横ばいの状態である。紹介率向上による収入増を図るため、地域の医療機関との連携をさらに強化する必要がある。
- がん診療の先進性等の浜松医療センターの強みを地域医療に今まで以上にアピールし、外来・入院患者数の増加(収入増加)を図ったらどうか。(本当に地域住民が理解しているか)
8.公立病院としての取組みに対する意見・要望
- 救急患者受入数が、ここ数年減少傾向にあることが心配である。昨年はインフルエンザ患者が少なかったこともあるが、公立病院としては救急医療にいっそう力を入れていただきたい。
- 分娩件数が減少の一途をたどっているのは、個人病院に流れていることもあると思われるが、公立病院としての利点をもっとアピールして、対策を考えていただきたい。
- 初診時紹介件数が増加しているのは評価できるが、紹介率が80%を超えるようさらに努力していただきたい。逆紹介率が上昇していることは評価できる。
- 不採算である住民検診については、件数は徐々に減っているものの受診者数は増えており、今後も増やすように努力していただきたい。
- 入院・外来満足度調査において、「満足」+「やや満足」の比率が前年度よりやや減少しているのが気になる。これは施設の老朽化、新病院建設に向けての駐車場の問題などが大きいと思われるが、その分患者さんへのサービスを充実させ、満足度アップの努力をお願いしたい。
- 地域の医療機関と緊密な連携を行い、逆紹介率が大きく伸びていることは高く評価できる。
- 分娩件数は浜松市全体のトレンドからも今後減少することが考えられるが、公立病院としての周産期医療としての役割は重要である。単なる分娩件数以外の公立病院が果たすべき産科医療に関する指標(低出生体重児の分娩件数や市内でのシェア、産科診療所からの紹介件数など?)も可能な限り取り入れることが必要ではないか。
- 患者満足度調査は特に外来について回収率が低く、数値の変化にとらわれることは不適切な可能性がある。今回院長より簡単な説明があったが、個別の意見とそれに対する対応も評価委員会である程度共有して頂けると患者のニーズがより理解できると思われる。
- 公立病院のミッション、役割に基づいた活動を精力的に実施しておられる様子をうかがうことができた。
- 新型コロナウイルス感染症対策について、積極的な取り組みをしておられることに敬意を表し、一市民として感謝申し上げる。質、量ともに十分な体制を整備し、今後の対策に万全を期すとともに、他の医療活動に支障をきたさぬよう、市とともに必要な対応をお願いしたい。
- 新型コロナウイルス感染症の患者の対応で、公立病院として大きな役割を担っていることを再認識させられた。これからも続く状況にいかに対応していくか、行政とも連携していく必要があると思う。また、紹介率及び逆紹介率が増加していることから、地域の個人病院とのすみわけもさらに進めていただきたい。
- 浜松地域の新型コロナウイルス感染症患者の受入れ・治療の要としての活動は心強い。
- 救急搬送患者応需率は計画の90%に未達。計画達成の取り組みをお願いします。
- がん診療の推進に向けた取り組みは評価できるが、地域住民に周知させる取り組みが不足しているのではないか。
- 紹介率が横ばいの状態である。紹介率向上のため、地域の医療機関との連携をさらに強化する必要がある。逆紹介率が改善していることは評価できる。
9.来年度の病院運営事業に対する意見・要望
- 新病院の建設が本格化するため、駐車場の問題など特に外来患者さんの不便をできるだけ少なくするよう努力していただきたい。
- 第二種感染症指定医療機関として、新型コロナウイルス感染者の受入、治療を積極的に行っていただきたい。そのことによる風評被害も予想されるが、患者対応に最善を尽くしていることを広報活動でアピールし、外来および入院患者数が減少しないよう努力していただきたい。
- 「The Best Doctors in Japan」に3名の医師が選ばれたことなどを積極的にアピールし、広報活動にもっと力を入れていただきたい。
- 今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で入院患者数や外来患者数の全体の数値は減少することが予想される。一方、診療科や疾患別では減少幅がかなり異なる可能性がある。外的な要因によって医療需要が変化しないものは必需品でありそのようなサービスは公的病院として必ず供給する必要がある。今年度の影響の詳細な分析を行うとともに、今後どのような部門に力を入れていくべきか等について検討を行って頂きたい。
- 財務状況改善のため諸経費の管理強化を進めておられる。その内人件費については、経費削減の観点に加え、職務に見合ったフェアな水準を目指し、職員のモチベーション向上や求人競争力につなげるよう、ご検討いただきたい。
- 病院運営上の重要事項として、いわゆる内部統制やリスクマネジメント、特に医療安全、医療の質の向上についても、課題認識や取り組み状況等ご説明いただきたい。(今回は、当日口頭でご説明いただき、熱心に取り組んでおられる様子をうかがうことができた)
- 事務局に対する要望
病院運営事業に対する理解を一層深めるため、次の点をご検討ください。
・事業計画書を資料として添付する。
・評価資料は、当期、前期の実績に加え、目標も記載する。(PDCAの一環)
・監事の監査報告書、会計監査人の会計監査報告書を資料として添付する。
- 新型コロナウイルス感染症の患者への対応が今後も続くことが予想される。また新病院建設も進めているため外来患者が来院するための駐車場の確保が難しいという問題もある。活発に行われている広報活動を継続し、市民講座等を通して市民に情報提供をすることで信頼を獲得し、スタッフ960名が一丸となって高度医療の実現と財務状況の改善を図っていただきたい。
- 新病院完成後は収支が厳しくなります。
これに対応するため、新病院完成までに、次の2点の取り組みをお願いします。
・収入増加のため、新病院の特徴(強み)を地域の医療機関だけでなく地域住民にまで浸透させる取り組みをお願いします。
・支出の適正性を検証するためにも、減価計算システムの構築をお願いします。
- 手術支援ロボット(ダビンチ)を使用した手術件数を増加させて下さい。
- 入院・外来患者の満足度を上げる取り組みを継続して下さい。
- 医療事故を発生させないための取り組みを継続して下さい。