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更新日:2026年6月2日

浜松市では、地域幸福度を見える化する「Well-Being指標」を活用し、幸福感あふれる持続可能なまちづくりを官民連携で進めています。ただし若い世代のまちづくり参画を促すことについては、少なからず課題がありました。
Well-Being指標を共通言語として若年層に根付かせながら、いかに具体的なアクションにつなげられるか。そんなテーマに挑戦したのが、石川県を拠点に活動する教育系スタートアップの株式会社LODU(別ウィンドウが開きます)(読み方:ロデュ)です。
地域の学校や部活に取り入れられる仕組みの構築を目指すなかで見えてきたのは、コンテンツ開発の先にある「地域コミュニティへの溶け込み方」の重要性でした。
同社の取り組みについて、代表取締役COO・亀田樹氏(以下、亀田氏)に伺います。
――ゲーミフィケーション(ゲームの楽しさ)を応用した、教育コンテンツの開発が強みと聞きました。はじめに、貴社の事業内容についてお聞かせください。
亀田氏:弊社は2021年6月に、私が金沢工業大学の在学中に同級生5人で立ち上げた、金沢工業大発スタートアップです。LODUという社名は、「Love」と「Education」を掛け合わせた造語。人々の情熱や「好き」という気持ちを育てる教育を通じ、持続可能な社会をつくる次世代の人材育成に貢献したいという思いを込めています。

亀田氏:これまでに40種類以上のボードゲーム教材を開発し、全国の企業や学校で延べ3万人以上の学びを支援してきました。ワークショップ開催数は350回以上、受講生同士のコミュニティも広がっています。
自治体向けには石川県内の野々市市や白山市と連携し、サステナブルなまちづくりを推進しています。
――今回、浜松市において、若年層へのWell-Being指標の浸透や、Well-Beingを生かしたまちづくりの推進に取り組んだ理由は何でしょうか?
亀田氏:そのテーマ自体が、弊社の事業目的にピッタリと合致したことです。ゲームを通じてWell-Beingの本質を学んでいただきながら、まちづくりへの意識変容や行動変容につなげていく。そのことに県外で、かつ若年層に展開できるかを検証したいと考えました。
弊社では、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート、金沢工業大学、東京海上日動火災保険株式会社と、Well-Being指標の活用を促す「コレクティブ・インパクトゲーム」を共同開発し、2024年7月に製品として提供を開始しました。
これは、チームが連携してウェルビーイングなまちの実現を目指すという協力型のゲーム。ゲーム内で楽しみながらWell-Being指標を活用でき、立場を超えて協力していきます。これにより、参加者のまちづくりへの関心を高められたり、セクター横断の関係性を作れたりといった効果が期待できます。

亀田氏:私たちは、このコレクティブ・インパクトゲームを通じ、Well-Being指標を地域の「共通言語」にしていきたいと考えています。そして、地域の皆さんから生まれる意見が市政に生かされる仕組みを作ることが目標です。
なかでも浜松市は、Well-Being指標の活用を全国に先駆けて進めている印象で、まさに私たちの目標に合致したフィールドだと感じました。
――当初はどのような実施計画を描いていたのでしょうか。
亀田氏:私たちが描いていたのは、宿泊を伴うキャンプ型の教育プログラムでした。いずれ事業化することを見越し、参加費でのマネタイズを想定したビジネスモデルです。
検証の具体的なスケジュールは、3カ月1クールで組み立てました。まず、2024年の秋にプログラム開発を行い、冬にプロトタイプでテストを実施。そのフィードバックを受け、春にはプログラムを改良し、最終ゴールとして学生ファシリテーターを育成して、キャンプ自体を地域に根付かせていく、という流れです。
実装方法としては、とくに若年層への普及を目指し、学校の授業枠や部活動に組み込んでもらうことを想定しました。

――理想的な計画だと思います。実証フィールドとなる教育機関とは、どのように調整を行ったのでしょうか。
亀田氏:これは浜松市の実証実験サポート事業ならではの強みだと感じた部分ですが、市から地元の中学校・高等学校に働きかけていただきました。たとえば、市内にはSDGs関連の部活がある高等学校もあり、生徒の皆さんが積極的に活動していることもわかりました。
そうした学校に対し、浜松市の担当者さまが私たちの計画や目標をていねいに説明してくださったおかげで、事前のヒアリングや調整の機会をいただけたのです。
――現地の調整も非常にスムーズだったのですね。
亀田氏:はい。ただし、ここで「学校現場の年間スケジュール」という最大の壁にぶつかりました。実際にヒアリングを進めてみると、学校の年間行事はすでに固まっており、外部のプログラムを組み込む余地がほとんどなかったのです。積極的に連携を検討してくださった学校でも、タイミングを合わせるのが困難でした。
また、浜松市は創業支援が充実しており、すでに民間でも類似のコミュニティやイベントが多数開催されています。若者向けのコンテンツ供給も豊富で、私たちのプログラムが既存の取り組みと競合してしまう恐れが出てきたのです。
――そこからどうしたのでしょうか?
亀田氏:既存のコミュニティやイベントが充実しているからこそ、皆さんと連携する形に切り替えました。地域のスタートアップコミュニティの協力を得て、2025年3月にテストワークショップを実施。少人数でしたが、コレクティブ・インパクトゲームを体験した参加者がその場でまちづくりのアイデアを考え、応募できるところまでプログラムを作り込みました。
その過程で、宿泊を伴うキャンプ形式ではなく、既存の組織や、コミュニティで活動している人も対象にして体験してもらうことに。そこからまちづくりに興味を持った参加者が、自身のアイデアを発表できる「ウェルビーイング アイディアコンテスト」につなげる流れにしました。

(既存の学生向けアントレプレナーシップ醸成コミュニティ「Doer Tribe Hamamatsu(ドゥア・トライブ・ハママツ)」などと連携した)
――仕組みを変えてみて、いかがでしたか?
亀田氏:大きな変更でしたが、結果的に成功だったと思います。なぜなら、ゲームを通じて学んだ「理論のあるまちづくり」が、次世代の市民の方にしっかりとインストールされたことを実感できたためです。
それをとくに実感できたのは、中学生の参加者の方が、ワークショップから最終発表まで進んでくれたことです。その生徒さんが提案してくれたのは、市民同士が協力して植物を育てる「苗木駅伝」というアイデアです。「緑道を充実させたい」という想いを、具体的な計画に落とし込んでくれました。ピッチに必要な投影資料やビジュアルは、生成AIで仕上げつつ、地域の起業家コミュニティの前で堂々とプレゼンしてくれたんです。
まちづくりで大切なのは、アイデアの核となる参加者自身の想いです。それを形にするための、一連の流れを作れたこと。親御さんからも「素晴らしい機会をありがとうございます」と言っていただき、手ごたえを感じることができました。
――1年間の取り組みを経て、どのような学びが得られましたか?
亀田氏:今回の実証実験で、プログラム自体の有効性は確認できました。しかし同時に、「ワークショップへの参加者をどう募るか」「生まれたアイデアをどう実装につなげるか」という、仕組み化の課題が浮き彫りになったと感じています。
そのとき連携していきたいのが、浜松市で行っている既存の活動の数々です。たとえば民間の取り組みを表彰する「はままつWell-Beingアワード」が毎年開催されています。そうした枠組みに、コレクティブ・インパクトゲームの体験ワークショップを組み合わせていただきます。そうすることで、まだWell-Beingになじみの薄い層の理解を深めたり、若年層の参加を促せたりする可能性があります。
このように恒例行事として定着させたり、既存のコンテストと組み合わせたりなど、仕組み化を見据えた検証にも取り組みたかったですね。既存の素晴らしい取り組みやコミュニティといかに接続し、シナジーを生み出せるかがコンテンツ普及の鍵だと実感しました。
――地域にWell-Beingを根付かせていくための大きなヒントが得られたのですね。今後はどのように発展していきますか?
亀田氏:事業上、コレクティブ・インパクトゲームは普及期を迎えており、これからもワークショップの開催を全国に広げていきたいと考えています。そのなかで、弊社のスタッフから地域の皆さんへと実施主体を移していくことも必要です。
そこで今後は、学校の先生や地域の若者をファシリテーターとして育成することも並行していきます。地域の皆さんが主体となり、コンテストやワークショップを継続的に開催できるようなエコシステムを作ることが大きな目標です。
――最後に、浜松市での実証実験を検討している企業へメッセージをお願いします。
亀田氏:浜松市は、地域にとって必要なソリューションを常に考え、その検証に取り組むスタートアップに伴走してくれる土壌がありました。私たちと同様にウェルビーイングやサステナビリティの分野で、地域と連携した実証を行いたい企業には、本事業への応募をおすすめしたいです。
弊社としては、この1年で得た「地域に溶け込む」ためのヒントを、次の機会に生かしていきたいと思っています。地元の石川県や浜松市での継続的な活動はもちろん、Well-Beingの市民浸透に悩んでいる自治体があれば、ぜひ一緒に取り組ませていただきたいです。
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