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更新日:2026年6月2日

日本のごみ焼却率は約80パーセントで世界トップレベル(※)。なかでも燃えるごみの約4割を占める生ごみは、多くの水分を含んでおり、焼却に膨大な燃料とCO2排出を伴うことが問題視されています。
この解決に挑んでいるのが、バイオ系スタートアップの株式会社komham(別ウィンドウが開きます)です。独自に開発した微生物群「コムハム」により、生ごみを最大98パーセントまで高速分解する「スマートコンポスト®」を活用し、大規模地方都市では同社初となる拠点回収モデルの検証に取り組みました。
浜松市実証実験サポート事業(以下、本事業)では、市民モニターとの実証を成功させ、新たな販路の可能性を見出しました。プロジェクトを推進したkomhamの宮内友子氏(以下、宮内氏)に、1年間の取り組みを聞きます。
出典:OECD Environmental Performance Reviews: Japan 2025 (EN) (別ウィンドウが開きます)
参照:ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を 井出留美の「食品ロスの処方箋」【4】:朝日新聞SDGs ACTION! (別ウィンドウが開きます)
――まずは貴社の事業概要について教えてください。
宮内氏:私たちは、生ごみなどの有機性廃棄物を高速で分解する微生物の研究開発を行っているスタートアップです。弊社が保有する独自の微生物群「コムハム」は、通常は数週間から数カ月かかる生ごみのたい肥化を最短1~3日ほどで処理。最大98パーセントという高い処理能力が特徴です。
この微生物コムハムを内在させた電源不要の処理機「スマートコンポスト®」を使い、焼却処理に代わる環境負荷の少ないリサイクルシステムを社会実装することが私たちのミッションです。

(北海道札幌市で創業したkomham。「コムハム」の由来はアイヌ語で、「枯葉・枯草」の意味)
――今回の実証実験に応募したきっかけは何でしたか?
宮内氏:私たちが目指しているのは、住民の方が自分の手で生ごみを持ち込む「拠点回収モデル」を地域に根付かせることです。焼却場までの運搬コストやCO2排出を削減するためにも、生活圏内で処理が完結する仕組みを作りたいと考えています。

(スマートコンポスト®の運用イメージ、出典:komham公式ホームページ)
宮内氏:これまで東京都渋谷区や沖縄県竹富町で実証実験を行ってきましたが、浜松市のような大規模な地方都市での検証はまだでした。車社会でもある地方都市のまちなかで、拠点回収モデルがどう機能するのか確かめたいと考えていた矢先、浜松市の関係者から本事業を紹介いただき、応募を決めたのです。
応募の背景には、すでに浜松市が「Go!みんなで404チャレンジ」という取り組みを進めていたこともあります。これは、令和10(2028)年までに、家庭系ごみ排出量を「一人1日あたり404g」まで減らすことを目指す活動の総称です。
市が家庭用コンポストを無料配付するなど、市民を巻き込みながら生ごみ削減に取り組んでいることを知り、私たちの技術で貢献できる部分があるのではないかと考えました。
――単なる技術検証ではなく、市民の生活動線に組み込んだ際の運用モデルの確立を目指されたのですね。
宮内氏:そうですね。ごみ焼却場までの運搬コストや排出されるCO2の削減まで含めた、ごみ収集のサステナブルな形を実現するためにも、人々の生活圏内で処理が完結する仕組みを作りたいと考えていました。
ただし、生ごみの種類や住民の方の生活習慣は土地ごとに異なるため、まちなかに設置してみてうまく機能するかは、実際にやってみないと分かりません。市民の方の反応を含め、生活動線に組み込むためにどんな課題が出てくるかを検証したいと考えました。

――実際の取り組みはどのように進めましたか?
宮内氏:取り組みの核としては、スマートコンポスト®を市内の適切な場所に設置し、モニターの方に実利用いただくというものでした。そのため、はじめの3~4カ月は浜松市のご担当者さまと一緒に、地元の協力先や設置場所を探していました。
浜松市さまから複数の候補を紹介いただくなか、生活関連企業のサーラグループさまから、複合施設「サーラプラザ浜松」をフィールドとして提供いただけることに。あわせて運用方法の検討やモニター募集、たい肥の循環先開拓などを並行しました。
そして、2025年の6月から8月にかけ、サーラプラザ浜松の駐車場にスマートコンポスト®を1台設置しました。近隣住民のモニター約40世帯に参加いただき、プログラムの終了後は、モニターアンケートと事業評価を行っています。
――全体的に順調に進んだ印象ですが、フィールドはどのように決まったのでしょうか?
宮内氏:サーラプラザ浜松に設置場所が決まった理由は、フィールド条件への適合性と連携のしやすさです。
グループ内でも複数ある施設のなかからサーラプラザ浜松を提案いただいた理由は、周辺住民のアクセスのしやすさでした。大通りに面した住宅地にあり、車でも歩いても来やすい。日当たりもよい場所なので、設置条件としても最適だったのです。
ただしフィールドが決まっても、筐体を置いただけでは生ごみを持ち込んでもらえません。その点、サーラプラザ浜松は地域のコミュニティとしても展開されており、モニター参加を促しやすいことが決め手になりました。
設置場所の確定はこの実証実験の成否に関わる部分だと思っていたので、スムーズに決まって本当によかったです。サーラグループさまは浜松市と包括連携協定を結ばれており、「生ごみのたい肥化に市民が手軽に参画できる仕組みづくりをしたい」という市の考えや私たちの事業について、深く理解をいただきました。

(設置の様子。太陽光パネルの搭載により電源は不要。生ごみの許容量を超えた場合は筐体にロックがかかり、付随するごみ箱を利用してもらう運用とした)
――実証実験を行ってみて結果はいかがでしたか。
宮内氏:まず、主たる検証テーマだった運用フローについては、住民の生活に溶け込む形で「生ごみを持ち込み、分解・堆肥化し、それを回収する」という一連のサイクルをトラブルなく回せました。24時間いつでも生ごみを持ち込める仕様でしたが、大きな混乱や苦情もなく、スムーズに完了しています。
生ごみの分解状況もかなり良好でした。分解率は70〜80パーセントを維持し、生成されたたい肥の質も上々でした。チャットアプリを活用したサポート体制を作ったことで、生ごみの持ち込み状況がよかったことが要因だと考えています。モニターの方から寄せられる、「トウモロコシの芯は入れてもいいか」といった質問に細やかに答えていました。

宮内氏:ただし、生成されたたい肥をどう活用するかは大きな壁で……浜松市さまからいただいた提案が素晴らしく、すぐに採用しました。それが、市が別途取り組んでいる「使用済みおむつのリサイクル事業」で制作したフラワーポットと、私たちのたい肥をセットにしてモニターの方へプレゼントするというプランです。
「自分の出した生ごみが、植物を育てる栄養に変わって戻ってくる」。この資源循環の体験を市民の方に実感いただけたことは、大きな価値があったと感じています。たい肥はほかにもサーラグループさまで有効活用いただきました。
――手応えを掴んだ一方で、見えてきた課題はありますか?
宮内氏:課題として明確になったのは、投入量が想定よりも少なかったことです。スマートコンポスト®は1日10リットルまで処理が可能ですが、実際の投入量は5分の1程度でした。モニターアンケートでも「自宅の近くにあると使いやすい」という声が多く、ごみ集積所に設置するなど生活動線に置いていくことが重要だと考えています。
ただ、そうなると台数が必要になり、筐体の製造コスト削減という課題が出てきます。製造コストを抑えるための協力先開拓が目下のテーマです。
あわせて、場所を絞って徐々に設置台数を増やすアプローチもありますので、食品工場などのBtoB事業者向けに導入を検討します。また、すでにある筐体に弊社の微生物だけを提供するような協業モデルも模索していきたいですね。
――そのなかで、教育機関と連携するアイデアも生まれたそうですね。
宮内氏:はい。実は、浜松市の担当者さまと検討を進めるなかで、小学校や給食センターなどでスマートコンポスト®を活用するアイデアが生まれました。
もともと他の自治体の小学校で、給食の食べ残しや調理残差を処理している実例があり、環境啓発としても活用できるのではないかという話になりました。浜松市を通じて教育委員会も前向きに受け止めてくださり、現在も検討が進んでいます。
――事業の方向性を考える有意義な機会になったようでうれしく思います。浜松市のサポートで印象的だった点を教えてください。
宮内氏:事務局だけでなく、原課の担当者さまも伴走してくださったことが印象的でした。私たちは浜松市の土地勘があまりないなか、ごみ削減に対する市の考えや過去の取り組みをレクチャーいただいたほか、進め方へのアドバイスも手厚かったです。
そのなかで、たい肥の活用まで共に検討できたことは貴重でした。それも「ごみを減らしていきたい」「地域課題に対する明確なソリューションがほしい」という市の本気があってこそ。その姿勢に私たちも心から共感するとともに、1年間チームで進めている感覚がありました。
――最後に、浜松市での実証実験を検討している企業へメッセージをお願いします。
宮内氏:はじめて本事業に参加させていただいたにもかかわらず、社会実装を見据えた本質的な実証実験ができたことに感謝しています。
浜松市では原課が中心となり、関連する他の課の方ともコミュニケーションを取りながら、共に課題解決に取り組んでいただきました。市民の生活に密着した実証実験に取り組みたい方は、ぜひ応募を検討してはいかがでしょうか。
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