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更新日:2020年6月8日
新年度がスタートしました。新たな仲間を迎え、今日ここに校長先生方と再びお会いできることをうれしく思っています。
本日の校長会の開催にあたっては、ご来賓として、鈴木康友市長をはじめ、鈴木育男浜松市議会議長、市民文教委員会の飯田末男委員長、渡邊眞弓副委員長に御臨席を賜りました。年度始めのお忙しい中、御臨席賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、4月7日に入学式、始業式が行われ、各学校とも順調にスタートが切られたことと思いますが、その影には、当日の春の嵐ともいえる悪天候の対応を含め、直前まで新学期の準備に追われた教職員が少なくなかったのではないかと心配しております。教職員の皆様の真摯な取組に感謝申し上げるとともに、管理職の皆様には、職員の心身の健康の把握について、御配慮いただけるとありがたく思うところです。
また、過日は、「授業開き」に関わってのメールを小中学校すべての校長先生あてに直接送らせていただきました。新年度準備の中で、学校は多忙を極める時だったとは思いますが、子どもたちに学ぶ意味をしっかりと伝え、学ぶことが社会とつながっていると実感できる教育活動にしてほしいという私の強い思いがありましたので、機を逸することの無いよう、あの時期に送付させていただきました。御理解をいただきたいと思います。
学校におけるすべての教育活動は授業に集約されると言っても過言ではないと思っています。授業は第3次教育総合計画においても根幹をなすものであり、皆さんには、トップリーダーとして、様々な角度から教職員に関わりながら、各学校における「授業の充実」の推進にあたっていただきたいと思うところであります。
優れた学級経営をする担任は、この4月に膨大なエネルギーを注いでいます。例えば1日も早く子どもとの人間関係を創り上げるために、自宅のトイレに学級の児童生徒の名簿や顔写真を貼って彼らのプロフィールをおぼえるとか、給食指導や清掃指導などは常に子供と一緒に取り組みながら、約束ごとを徹底していくなど、それこそ「寸暇を惜しんで」子どもと接しています。
それは、「4月のスタートが1年の学級経営を左右する。」ことを、経験から知っているからだと思っています。この土台作りが、5月以降、自分が行っていきたい教育実践、学級経営につながる…そういう思いで取り組んでいるのではないかと思っています。
弓道の言葉に「一分八間」という言葉があります。一分は一寸の10分の1、なじみの単位で言うと約3ミリです。1間は約1.8メートルですので、八間は約14.4m。弓をひいたとき、手もとのわずか3ミリの狂いが、的の方では10m以上の誤差になってしまう、という意味です。
ここにおられる校長先生方も年度当初の学校経営方針の説明、入学式・始業式の校長式辞には、膨大なエネルギーを注いだことと思います。それはとりもなおさず「自校が進むべき方向」という狙いを定める、重要な作業であったのではないかと思います。みなさんが年度当初に定めた「ねらい」に向かって、全ての小中学校が確かな歩みを始めることを期待して、あいさつといたします。
平成28年度のスタートにあたって、校長の皆さんに、大きく二点、私の思いを伝えさせていただきます。
就任直後、1月15日の臨時校長会において、第3次浜松市教育総合計画に関わる話をいたしました。それは、平成28年度には、この第3次教育総合計画に掲げた理念が、各学校において、子どもの表れ、教職員の皆さんの取組、あるいは、保護者や地域の学校への関わり…など様々な面で“芽吹き”が見られることを期待する、というものでした。
まずは、第3次教育総合計画についての理念について改めて触れてみたいと思います。
「第2次教育総合計画における、はままつの教育」で進めてきた…「心の耕し」「発達支援教育の理念を根幹に据えた教育」「三つの柱(幼児教育の充実、小中一貫教育の推進、学ぼうふるさとはままつの推進)」を大切にした教育…を継承発展しつつ、「夢と希望を持ち続ける子ども」「これからの社会を生き抜くための資質や能力を育む子ども」「自分らしさを大切にする子ども」を目指す子どもの姿として、各主体がそれぞれの責務を果たしていくことが未来創造へつながっていく…この中核にある理念は、昨年度の1年間で市内の教職員に浸透したのではないかと考えています。
このことについて、昨年のこの場で、児玉前教育長はこのように述べていました。
子供たちは「夢と希望」を持つことによって「ひと・もの・こと」に真剣に関わるようになり、これから必要な「資質や能力」を育むようになる。
「資質や能力」を育むことによって、自分の可能性を高め、新たな「夢と希望」を持つようになる。一方で、自分が持つ「資質や能力」を育みながら力強く生きる子どもは、心が耕され、正しい判断力と価値観に基づいた「自分らしさ」をその成長に応じて少しずつ築いていく。こうした学びと育ちを何度も繰り返しながら、未来を創造できる(担う)「人」に成長していく。
ここでは、第3次教育総合計画において、目指している「自分らしさ」に関わって私の考えを述べたいと思います。
昨年、教育委員会内で行われた様々な会議で、この「自分らしさ」について様々な議論を重ねてきました。言うまでもなく、「自分らしさの具現」とは、「自分勝手に生きる」という意味ではありません。一人一人の子どもが、高い志をもって、人間としてどう生きたいのか、どのような形で社会の中で貢献できるか、という問いに真剣に考え、自分なりの答えを見つけていくことだと考えています。
職業に関わって、具体例を示してみたいと思います。
「病気を治す仕事は?」と問われれば、多くの人は「医者」「看護師」などと答えるでしょう。しかし、「病気を治す」ことを、「人々を健康にする仕事」と広く考えたとき、例えば、ものづくりが得意な子どもにとってみれば、「医療機器を作る仕事」も選択肢の中に入ってきます。自分のよさを生かし、自分らしく社会に貢献していく、という姿がここに具現します。
別の例を紹介しましょう。子どもたちの職業選択のスタートとして「看護師になりたい」というものがあったとします。この「看護師を目指す子ども」が様々な学びを通して自分を成長させ、「小さな子の病気克服に寄り添える看護師になりたい」「お年寄りが元気になるような看護師になりたい」というように「〇〇○な看護師として社会に貢献する」ことが自分らしさの発揮ということになるのではないかと考えています。
繰り返すことになりますが、子どもが持つ「人としてどう生きたいか」という問いに、子ども自身が自分なりの答えを見つけていくという歩みの中で、どんな関わりを持っていくか、どう寄り添っていくかを考えていくことこそ、我々が日々知恵を絞っていかなければならないことだと考えています。
このようなことを押さえつつ、本年度の取組の課題として考えられることについて述べたいと思います。
最初に、コミュニティ・スクールの推進についてですが、モデル校として、萩丘小学校、富塚小学校、富塚西小学校、富塚中学校4校の小中学校にお願いをしました。
次に、コミュニティ・スクールの推進と併せて、教育委員会事務局主導で行われるはままつ人づくりネットワークセンターの構築については、本年度の大きな課題ととらえており、全力で取り組む所存でおります。
再度のお願いになりますが、各学校では、「市民協働」を学校経営構想に位置づけ、外部人材の活用が組織的に行われることを期待したいと思います。これに伴い、従来から活用してきた外部人材の組織化を図るとともに、新たな人材を発掘し、教育活動に活かしていくなどの工夫を引き続き進めて欲しいと思っています。
また、学習意欲の向上及び学習内容へのより深い理解を促すことを目的として、モデル校として大瀬小学校、犬居小学校、庄内小学校の3年生から6年生に対してタブレット端末を貸与するなど、情報通信技術を活用した教育の推進にも取り組んでまいります。
指導課での研究指定校を含めて、モデル校には、この1年間の取組を通じて、どんな成果があったのか、また、どんな課題が生じたのかについて、市全体に提示できることを期待しております。併せて、指定校・モデル校以外の学校においても、市の課題について「自分の学校ならこんなことができる」といったように、自校の問題として具体的な取組を進めていくことを期待しております。
政策的な話から少し離れますが、教育という営みに関わって、私なりの思いを述べたいと思います。
これまで、たびたび口にしてきたことですが、現在、学校はいわゆる教育改革の波の中にいます。小学校3年生から導入される外国語活動、今後教科化される道徳の授業で道徳的な価値をいかに子どもたちに伝え、身に付けさせるのか、等々、これら改革の内容については様々な情報が飛び交っている中、個人的には、このままでよいのか…という危惧を持っていることは事実です。私が持つ「危惧」とは、これらの改革なり、それに関わる議論の中で、子どもや学校現場の視点が置き去りにされているのではないか…という点です。
私自身の小・中学校時代の記憶をたどってみると、今になっても「このことを身に付けさせていただいてありがたかった…。」と思えるものが数々あります。そのすべてをここで紹介する時間はありませんが、ひとつ具体事例を挙げたいと思います。
その一つは「鉛筆の持ち方」です。小学校入学の年、担任の先生から繰り返し鉛筆の正しい持ち方を教えていただきました。幼かった私は、「書ければいいのではないか」と何度か思ったものの、いつの間にか担任の先生が言う「正しい持ち方」が身に付きました。いわば型が身に付いた、ということになりましょうか。このことは単に、正しい持ち方をすれば、字をきれいに書くことにつながる、ということに留まらず、学習していく中で、長時間書いても疲れない、という副産物があったことを、後に気づくことになりました。疲れないということはとりもなおさず、「学習に集中できる」ということにつながります。学習する上での基本中の基本であるが、早い段階できちんと身に付けさせておく必要性を自分自身感じたところです。
学校訪問等で教室に入り、子どもたちの筆記用具の持ち方を見るたびに、「ああ、正しい持ち方をすれば、もっと学習の効果も上がるだろうに。」と思ってしまいます。私見ですが、筆記用具が正しく持てることと、学習能力の高さには相関関係があるように見受けられます。勉強することの前に、勉強に入る前の姿勢とか構えというものが重要ではないでしょうか。そういった基本の押さえが大切だし、それをおろそかにしてはいけないと思います。
数年前、全国学力学習状況調査において、本県の小学校6年生の成績が全国最下位であったことが大きな話題になったことは記憶に新しいところです。
当時、教育委員会事務局に勤務していた私は、その結果については真摯に受け止めなければいけないという思いを持ちました。その一方で、このことは、学校で日々、子どもに接する先生方が、自分の指導方法を見直し、さらなる授業力向上につながってくれればよいと考えていました。
子どもたちには、まずは点数云々よりも、学ぶ姿勢であるとか、授業に臨む構えなどを発達段階に応じて身に付けることの方がどれだけ大切か、という思いを改めて持ったところです。
さて、冒頭述べさせていただいた「自分らしさ」の発揮とは、一人一人の子どもたちが、自分の居場所…自分が輝ける場所…を見つけ、幸せになることだと思います。
教育という営みにおいては、子供たちの「今」を把握し、そこから1ステップ前に進める視点と、子どもの10年度、20年後を見据えた視点を、バランスよく持ち合わせた上で、子どもたちに関わっていく必要があるのではないか、と考えたところです。
校長先生方にも、自身が考える「自分らしさ」とは何か考えていただきたいところですし、そのために学校としてどんな取組をしていくのか、あるいは浜松としてどんな実践を展開していくのか、御提案をいただければありがたく思います。
1月の校長会では、授業に関わる話もさせていただきました。
教職は「子どもの成長に寄り添うことができる」という点で、すべての学校種・学年に共通した素晴らしさを持っていると確信しています。そして、子どもたちの発達段階に応じたはたらき掛け… 授業や様々な活動… には無限の手法があり、工夫の仕方に際限はありません。これまで、様々な場で市内の教職員の皆さんの実践を目の当たりにしてきたが、こんなに創造的でやりがいのある職は他にないのではないかと思っています。
市内のある中学校の学校経営構想の表紙にこんな言葉が書かれていたので紹介したいと思います。それは、「教育の質は教員の質を超えられない。」という言葉です。
今述べた教育という極めて「創造的な」仕事を全うしていくためには、教育公務員特例法第21条に示された「絶えず研究と修養に励む」ことを求められますが、法の求めるところを私なりに再度解釈するとすれば、それは、自己研鑽を通した「たゆまぬ自己改革」が求められているというこのではないかと考えています。
この自己改革とは、具体的なイメージを提示するとしたら、例えば新たな課題に対して一人一人の教職員ならば、「自分ならこういうことができる」と、小さいけれども新たな取組にチャレンジしていくことであろうし、ここにいる校長先生にあてはめるならば「自校ではこんな取組ができる」などと、自分の問題・課題として取り組んでいくこと、そのことを積み重ねていくことが「たゆまぬ自己改革」につながるのではないかと思っています。
1日に行われた新規採用教職員の事例伝達式では、訓示の中に以下のような話題を盛り込みました。冒頭では、
皆さんの新たな門出を祝うように、桜の花が一斉に咲き始めました。じっくりと観て、心の奥底に焼き付けてください。
そして、今日という日を決して忘れずに、毎年、春を迎え、桜の花を見るたびに初心に立ち返ってください。
という話を、
後段では
「艱難、汝を玉にす」という言葉があります。人間は苦労を乗り越えていくことで、玉が磨かれるように人格が練磨され、立派な人間になるという意味です。
多くの試練を乗り越えて、教師である前に、まず人間として成長してください。
(中略)
教職は、子どもの学びと育ちを支えていくというやりがいがあり、夢のある仕事です。
ぜひ、皆さんの若い力を、エネルギーを、そしてひたむきな気持ちをこれから出会う子供たちのために使ってほしいと願っています。
という話をしました。
この一節に盛り込んだ思いは、新規採用教職員のみならず、中堅・ベテランの職員の皆さんにも、ぜひ共有し、再確認をしていただきたいところであります。
浜松の教職員の皆さんには、教師である前に、人間として成長を続けて欲しいと願っています。冒頭に挙げた話の中で、年度のスタートになるこの時期に、咲き誇る桜を見ながら、初心に返る機会を持ってほしいという願いを盛り込んだつもりです。
昨年来、児玉前教育長が「不祥事0」をスローガンに、様々な機会で語るとともに、今日もここに参加していただいている4名の教育委員さんが、すべての中学校区で教職員を前に語り掛けてきたところですが、この、「初心に返る」姿勢を忘れることなく、教育という営みを続けていくことが、ひいては「不祥事の根絶」につながるのではないかと考えています。
ここで、私自身の新規取組として2点ご連絡申し上げます。
一点目は、例年同様、本年度も新任校長訪問を行わせていただきます。これに加え、本年度は新任教頭訪問も行っていきたいと考えています。できるだけ多くの現場の様子を肌で感じたい、そこにいるリーダーの方々の思いや取組に触れ、ねぎらいたいという考えからです。
もう一点は(昭和22年1月25日の新聞を提示)、ここに「地方教育行政法案要綱成る」と書かれています。
この新聞記事に示された地教行法が、およそ70年の歳月を経て、今回、改正され、新たな教育委員会制度がスタートしたことは、既に御承知のことと思います。
先月送信したE通信にも関連事項が書かれていましたが、私は、浜松市の教育委員を1名増員することを市長に提言し、浜松市教育委員会委員定数条例の制定についての議案が、2月定例会において市議会の議決が得られました。
今後人選を行ってまいりますが、教育全般に精通している人材を登用し、教育委員会の機能強化につなげていきたいと考えています。
結びになりますが、校長先生方には、御自身の健康保持・増進には十分ご留意いただき、また、所属の職員の健康管理にも気を配っていただきたいと思っています。
私としても、教職員がそれぞれの職務に安心して取り組むことができる環境の整備にむけて、平成29年度からの権限移譲についても、移管準備室に最善を尽くすよう指示をしているところです。
校長職はそれぞれの学校における最高責任者であり、児童生徒の命を預かる身として、神経をすり減らす仕事です。リフレッシュする時間を十分とりながら、健康第一でお仕事をしていただければと思っています。
心配なことがあれば、早め早めにご相談いただければ、傷口の小さなうちに手当てできますし、教育委員会として適切な対応への助言も可能になると思っています。
浜松の子どもたち一人一人のために、小中学校の充実した教育活動をお願いし、年度始めの話といたします。
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