更新日:2024年3月25日
第5章 整備基本計画(1)
1.現況と課題の整理
二つの調査を行い、主に以下の事柄が分かりました。
- 石垣が立地する土地の地形、地質、樹木の生育状況等と石垣の関係について概要を把握する調査
石垣上に生育している樹木や近接している樹木が生育するにしたがい、その樹根が石垣に影響を及ぼしていることが分かりました。

- 石垣の緩み孕みなどの進行状況に基づき、崩壊の危険度を確認する調査
平成元年度の調査で「石垣の変状著しく非常に危険な箇所」と判定された箇所の一部は、既に積み直しが行われていたり、既に崩壊しており、現在、危険箇所ではなくなっていました。その他の指摘箇所も、目視による経年変化はほとんど見られず、石垣は比較的安定した状態にあることが分かりました。
2.遺構の保存・修復計画
基本方針
浜松城の石垣の保存・修復については、現実に数百年もの間、崩壊することなくその構造を維持している箇所もあり、現存する石垣を保存し、次代へ継承するため、できるだけ現状の形状を保存することを第一に考え、日常的に石垣の変状に注視していくこととします。
新たな取り組み
- 既存植物の根が石垣保存に影響を及ぼしている可能性が高い箇所は、順次伐採を行います。また、石垣を覆う枝葉から落ちる雨水が、石垣に悪影響を及ぼしていると考えられる樹木については、枝打ちなどの適切な樹木管理を検討します。
- 文化財として、また、公園施設としての石垣の適切な維持管理や修復方法を検討するため、以下の調査を継続的に実施します。
- 石垣全面を対象とした石垣の記録保存のための測量調査
- 既往調査結果をもとにした、石垣の緩み孕み等の計測継続調査
3.遺構の表現計画
- (1)天守門【復原展示】
江戸時代初期に天守が喪失してから、浜松城の特徴的な存在として維持されてきました。歴史的検証に基づいた建造物の復原を行います。
- (2)土塀【復原展示】
城跡らしい景観を形成するため、歴史的検証に基づき、天守曲輪を囲む土塀の復原を行います。
- (3)空堀
往時は本丸一帯の守りの基本となる中土手を有する空堀が存在していました。現在は地下に埋蔵されており、歴史的検証に基づいた整備を行います。
- (4)清水門
往時は本丸虎口脇の清水曲輪との境に清水門がありました。史料調査等を実施し、解説施設等の整備を行います。
- (5)富士見櫓【復原展示】
発掘調査により、富士見櫓は御殿風の構造を持つ建物であったことが推定され、富士山を眺めながら、茶の湯などが催されたと考えられます。公園内外からの眺望の対象となりうることもあり、歴史的検証に基づいた建造物の復原を検討します。
- (6)土塀【復原展示】
城跡らしい景観を形成するため、歴史的検証に基づき、残存する本丸石垣を囲む土塀の復原を行います。
- (7)天守曲輪平坦部
天守門復原に伴い、南側から天守台・復興天守閣を眺めるビューポイントや撮影スポットとして活用します。積み直し・積み足しに必要な石材の確保、資材置き場の確保などの必要性から、石組の修景池や既存樹木などの園地は撤去します。
天守曲輪の内部は、変遷過程に重要な意義があると考えられるため、必要性が生じた段階で発掘調査を実施し、その成果により遺構の表現方法を検討します。
- (8)天守台
天守閣再建に向けては、天守閣に関する詳しい資料や遺構調査が不十分であることや、整備の対象とする時期に相違があることから、十分に市民の意向を把握し、史実の検証の下に計画します。
- (9)埋門
遺構が残存していることが明らかであるため、他の遺構の調査と整備の進捗状況により、歴史的検証に基づいた復原整備を検討します。
- (10)本丸平坦部
江戸時代初めには、本丸に御殿が存在していたと考えられていますが、廃城時には存在しなかったことが明らかであり、他施設の整備の進捗状況により、整備の必要性が生じた段階で発掘調査等を実施し、その成果に基づいた整備を行います。
- (11)多聞櫓
一階建ての長大な長屋でしたが、道路の建設により既に遺構は削り取られていると考えられます。整備の必要性が生じた段階で史料調査を実施し、解説施設等の整備を行います。
- (12)空堀
往時は城の中枢である天守曲輪を防御するための空堀が配されていました。整備の必要性が生じた段階で発掘調査等を実施し、その成果に基づいた整備を行います。
- (13)土塁・土塀
他施設の整備の進捗状況により、城跡の縄張を理解するための整備の必要性が生じた段階で発掘調査等を実施し、その成果に基づいた整備を行います。
- (14)西端城曲輪
西端城曲輪は、天守曲輪の搦手側の防御のための曲輪でした。他施設の整備の進捗状況により、城跡の縄張を理解するための整備の必要性が生じた段階で発掘調査等を実施し、その成果に基づいた整備を行います。
- (15)樹木管理
石垣の保存、天守門見通し確保、南エントランスからの見通し確保、富士見櫓の石垣補強、富士見櫓の見通し確保のために、必要に応じて樹木を伐採します。
- (16)神社・記念碑等
史跡指定地内に含まれる各種の施設のうち、廃城後に設置され、城跡と直接の関係が認められず、城跡の本質的価値にそぐわない神社や記念碑等については、長期的な視点で移転又は撤去することを基本とします。
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