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更新日:2024年9月5日

令和5年度 浜松市公営企業会計決算審査意見

第1 審査の基準

この審査は、浜松市監査基準(令和2年浜松市監査委員告示第2号)に準拠して実施した。

第2 審査の対象

  • 令和5年度浜松市病院事業会計決算
  • 令和5年度浜松市水道事業会計決算
  • 令和5年度浜松市下水道事業会計決算

上記決算に関する証書類、事業報告書、キャッシュ・フロー計算書、収益費用明細書、固定資産明細書及び企業債明細書

第3 審査の期間

令和6年5月31日から同年8月2日まで

第4 審査の着眼点及び実施内容

5年度浜松市公営企業会計の各事業会計決算について、

  • 決算書とその附属書類が、地方公営企業法その他関係法令に基づいて作成されているか
  • 決算書類に記載された計数は正確であるか
  • 予算は適正に執行されているか
  • 各事業の経営成績及び財政状態を明瞭かつ適正に表示しているか
  • 各事業が企業の経済性を発揮するとともに、公共の福祉を増進するよう運営されているか

を着眼点とし、検証した。

審査手続については、試査を基礎として行い、決算諸表と会計帳簿、預金残高証明書等の証拠書類と照合し、計数の確認のほか、関係職員から説明を聴取し、上記の着眼点に基づき審査を行った。

第5 審査の結果

1 審査結果

上記のとおり審査した限り、重要な点において、決算その他関係書類が法令に適合し、かつ正確であることが認められた。
また、予算執行状況、経営成績及び財政状態に係る表示並びに事業の運営状況については、おおむね適正であると認められた。

2 決算書を正確に理解するための留意事項

決算報告書は、消費税及び地方消費税相当額を含め収入、支出の総額が記載され、損益計算書等の財務諸表は、消費税及び地方消費税相当額を控除して作成されている。

3 決算の概要

(1) 経営成績

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

営業収益

4,558,811 320,673 3,710,567 527,571 10,370,185 11,835,794

営業費用

7,645,957 2,584,324 3,988,909 1,072,723 11,485,801 15,860,608

営業損益

△ 3,087,145 △ 2,263,651 △ 278,341 △ 545,152 △ 1,115,616 △ 4,024,814

営業外収益

3,587,572 2,547,243 417,779 622,549 1,171,077 8,079,911

営業外費用

482,563 352,253 78,847 51,462 335,068 1,907,753
経常損益 17,863 △ 68,660 60,590 25,933 △ 279,607 2,147,343

特別利益

21,683 10,489 11,159 34 174,236 41,810

特別損失

68,380 44,785 20,873 2,720 16,070 26,359
当年度純損益 △ 28,833 △ 102,956 50,876 23,246 △ 121,440 2,162,794
当年度未処分利益剰余金
(△未処理欠損金)
6,165,899 6,069,555 △ 93,486 189,831 953,560 4,261,828

※詳細は、「病院事業会計」P25~、「水道事業会計」P81~、「下水道事業会計」P105~参照

経常損益の推移

経常損益の推移

ア 病院事業

  • (ア) 医療センター
    5年度は、主として医業費用の経費4億5,551万円の増加により、経常損失6,866万円を計上した。経費増加の主なものは新病院棟への移転に係る委託料である。
  • (イ) リハビリ病院
    5年度は、主として医業外収益の県支出金2,046万円の減少により、経常利益が減少した。
  • (ウ) 佐久間病院
    5年度は、主として医業外収益の一般会計負担金1億993万円の増加により、経常利益は2,593万円を計上した。

イ 水道事業

5年度は、主として営業収益の給水収益1,381万円の減及び営業費用の配水及び給水費1億3,360万円の増加により、2年連続で経常損失を計上した。

ウ 下水道事業

5年度は、主として基幹収入である営業収益の下水道使用料7,881万円の減少があったものの、営業外費用の企業債利息1億8,418万円の減少により、経常利益が増加した。

(2) 財政状態

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

固定資産

50,311,478 42,656,796 6,160,666 1,494,016 113,486,497 317,028,543

流動資産

6,482,370 4,742,794 1,037,348 714,176 9,225,412 10,489,339

(前年度資産合計)

(48,973,202) (39,309,643) (7,402,367) (2,275,351) (123,004,438) (330,947,102)
資産合計 56,793,849 47,399,590 7,198,014 2,208,192 122,711,909 327,517,882

固定負債

38,532,986 33,910,416 4,121,360 501,210 24,411,099 116,193,879

流動負債

2,618,945 1,861,013 546,056 223,823 4,752,211 17,107,500

繰延収益

1,196,250 602,021 86,767 507,462 20,301,743 129,370,888

(前年度負債計)

(34,498,703) (28,180,547) (5,009,413) (1,322,902) (49,636,277) (269,138,980)

負債計

42,348,183 36,373,451 4,754,183 1,232,496 49,465,054 262,672,267

資本金

3,639,993 2,966,080 56,685 617,227 71,979,205 58,860,947

資本剰余金

4,121,273 1,472,003 2,480,631 168,637 19,645 1,722,838

利益剰余金(欠損金)

6,684,399 6,588,055 △ 93,486 189,831 1,248,004 4,261,828

(前年度資本計)

(14,474,499) (11,129,095) (2,392,954) (952,449) (73,368,160) (61,808,121)

資本計

14,445,666 11,026,139 2,443,830 975,696 73,246,855 64,845,614

(前年度負債資本合計)

(48,973,202) (39,309,643) (7,402,367) (2,275,351) (123,004,438) (330,947,102)
負債資本合計 56,793,849 47,399,590 7,198,014 2,208,192 122,711,909 327,517,882

(注) 病院間の内部取引があるため、各病院の流動資産と流動負債の計は、病院全体の計数と一致しない。

※詳細は、「病院事業会計」P25~、「水道事業会計」P81~、「下水道事業会計」P105~参照

資産・負債・資本の構成内訳

ア 病院事業

(ア) 医療センター
資産・負債・資本の構成内訳/医療センター

(参考)指定管理者(浜松市医療公社)との連結決算
資産・負債・資本の構成内訳/(参考)指定管理者(浜松市医療公社)との連結決算

(イ) リハビリ病院
資産・負債・資本の構成内訳/リハビリ病院

(参考)指定管理者(聖隷福祉事業団)との連結決算
資産・負債・資本の構成内訳/(参考)指定管理者(聖隷福祉事業団)との連結決算

(ウ) 佐久間病院
資産・負債・資本の構成内訳/佐久間病院

イ 水道事業
資産・負債・資本の構成内訳/水道事業

ウ 下水道事業
資産・負債・資本の構成内訳/下水道事業

(注) 表中の金額は、億円未満を端数調整している。

【説明】
公営企業会計は、一般会計で採用される官公庁会計と異なり、民間の企業会計原則の考え方を取り入れているが、地方公営企業の特殊性から一般の企業会計とは異なるルールが存在する。
公営企業は、負担区分原則に基づき一般会計等から負担金や補助金を受領するが、固定資産を取得するうえで、受領した財源(補助金・負担金等)を長期前受金として計上し、固定資産の耐用年数に応じて将来に繰り延べる。ただし、繰延収益は、返済不要の財源であるため、財務指標の算定には資本金及び剰余金同様に自己資本に含めて計算する。

ア 病院事業

  • (ア) 医療センター
    新病院整備事業(新病院棟工事)に伴い、企業債の増加とともに固定資産(90.1%)と固定負債(71.5%)の割合が増加している。
  • (イ) リハビリ病院
    減価償却及び企業債の償還により固定資産(86.1%)と固定負債(56.9%)の割合が減少している。
    欠損金は5年度末で9,348万円あるものの、国からの移管時に受け入れた財源(資本剰余金)があるため、剰余金はプラスとなっている。
  • (ウ) 佐久間病院
    資産規模が小さく、病院事業の中では固定資産(68.2%)と固定負債(22.7%)の割合がそれぞれ低い値である。補助金等により取得した固定資産が多く、繰延収益の占める割合も高い。

イ 水道事業

過年度から利益処分により資本増強を行ってきたことから、自己資本、とりわけ資本金の構成比が58.7%と高い。

ウ 下水道事業

資産規模は5会計中最も大きい。補助金等により取得した固定資産が多く、繰延収益の占める割合が高い。毎年度、一般会計から約9億円の出資受入れがあるほか、近年は利益処分による資本増強が行われたことから、資本金が増えている。

※主な財務等に関する比率は、「病院事業会計」P49、「水道事業会計」P91、「下水道事業会計」P114参照。財務分析比率表は、「病院事業会計」P72~P77、「水道事業会計」P100~P101、「下水道事業会計」P124~P125参照

(3) キャッシュ・フローの状況

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

業務活動によるキャッシュ・フロー △ 196,365 △ 483,154 222,554 64,233 3,527,595 9,084,248

当年度純損益

△ 28,833 △ 102,956 50,876 23,246 △ 121,440 2,162,794

減価償却費

1,267,132 967,918 226,640 72,574 4,763,352 12,391,670

長期前受金戻入額

△ 262,740 △ 117,956 △ 100,587 △ 44,196 △ 1,097,219 △ 5,563,276

その他

△ 1,171,924 △ 1,230,159 45,625 12,609 △ 17,097 93,060
投資活動によるキャッシュ・フロー △ 22,396,333 △ 22,431,134 22,477 12,324 △ 5,553,087 △ 646,527

有形固定資産の取得による支出

△ 22,473,475 △ 22,405,661 △ 56,744 △ 11,069 △ 5,602,417 △ 2,836,075

国庫補助金等による収入

57,257 53,198 0 4,059 0 2,003,938

一般会計負担金等による収入

174,695 69,839 79,222 25,634 363,854 0

その他

△ 154,809 △ 148,509 0 △ 6,300 △ 314,525 185,609
財務活動によるキャッシュ・フロー 14,287,366 14,536,636 △ 204,090 △ 45,179 △ 188,107 △ 5,232,122

建設改良費等の財源に充てるため
の企業債による収入

15,771,300 15,736,100 35,200 0 1,777,400 5,982,900

建設改良費等の財源に充てるため
の企業債の償還による支出

△ 1,415,133 △ 1,150,412 △ 239,290 △ 25,430 △ 1,777,549 △ 12,189,027

その他

△ 68,800 △ 49,051 0 △ 19,749 △ 187,957 974,005
資金増減額 △ 8,305,333 △ 8,377,652 40,941 31,377 △ 2,213,600 3,205,597
資金期首残高 12,401,870 11,414,098 386,975 600,796 9,948,934 5,362,104
資金期末残高 4,096,536 3,036,445 427,916 632,174 7,735,334 8,567,702

※詳細は、「病院事業会計」P50~、「水道事業会計」P92~、「下水道事業会計」P115~参照

(4) 企業債

(単位 金額:千円、比率:%)

区分

病院  

水道

下水道

合計

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

借入額 15,771,300 15,736,100 35,200 0 1,777,400 5,982,900 23,531,600
償還額 1,415,443 1,150,412 239,290 25,740 1,777,549 12,189,027 15,382,021
未償還残高 37,711,058 33,084,251 4,362,076 264,730 23,929,163 127,439,725 189,079,947
支払利息及び企業債取扱諸費 380,706 312,501 63,182 5,022 296,498 1,751,846 2,429,050
利子負担率 1.20 1.16 1.42 1.56 1.20 1.34 1.30

(注) 利子負担率=支払利息及び企業債取扱諸費/平均(企業債+借入金+リース債務)×100

企業債未償還残高は、3事業全体で1,890億7,994万円である。
事業別にみると、下水道事業が最も多く1,274億3,972万円、次いで病院事業のうち医療センター330億8,425万円、水道事業239億2,916万円となっている。
借入の主なものは、病院事業の医療センター新病院整備資金157億3,610万円、水道事業の上水道安全対策事業費17億7,740万円、下水道事業の公共下水道事業費59億8,290万円である。

企業債未償還残高の推移

企業債未償還残高の推移

(5) 一般会計繰入金

(単位 金額:千円、比率:%)

区分

病院  

水道

下水道

合計

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

一般会計繰入金 2,726,161 1,706,350 390,889 628,922 571,174 5,569,903 8,867,239

収益的収入

2,544,405 1,636,511 303,411 604,483 205,425 4,695,104 7,444,935

収益に対する繰入率

31.2 56.9 7.3 52.6 1.8 22.5 18.3

資本的収入

181,756 69,839 87,478 24,439 365,748 874,799 1,422,303

(注) この表には、地方公営企業法第17条の2に基づく繰入金のほか、任意による繰入金を含む。
また、水道事業には「飲料水供給施設業務負担金」を、下水道事業には「合併処理浄化槽設置業務負担金」を含む。

一般会計から企業会計への繰入金は、3事業全体で88億6,723万円である。
事業別にみると、下水道事業が最も多く55億6,990万円で、主なものは分流式下水道等に要する経費(汚水資本費に対する公費負担)24億1,082万円となっている。次いで病院事業のうち医療センター17億635万円で主なものは公立病院運営経費11億8,347万円、佐久間病院6億2,892億円で主なものは不採算地区病院の運営に要する経費4億4,133万円となっている。
3事業全体で減少傾向にあり、主に下水道事業の分流式下水道等に要する経費の減少によるものである。

一般会計繰入金の推移

一般会計繰入金の推移

4 審査意見

(1) 総括

令和5年度は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進んだものの、国際情勢の不確実性や円安等を背景とした資材価格の高騰などにより、公営企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあった。
地方公営企業は、経済性の発揮とともに公共の福祉の増進を経営の基本原則とし、その経営に要する経費は、経営に伴う収入をもって充てる独立採算制を原則としている。人口減少等に伴うサービス需要の減少、施設の老朽化に伴う更新費用の増加などが懸念されるなか、急激な物価変動や頻発する自然災害にも適切に対処していく必要がある。
また、30年間上がらなかった物価が動き出すとともに、金利のある世界に移行するなど、取り巻く環境は大きな転機を迎えている。各企業は、策定したプランやビジョン等の計画を着実に実施することを基本としながらも、これまで以上に社会情勢等の変化を的確に捉え、計画を柔軟に見直すなど、更なる改革・改善に取り組み、持続可能な経営基盤の確立に努められたい。
次に、事業会計ごとに意見を述べる。
 

(2) 病院事業会計

ア 令和5年度の総括について

【現状及び課題】

  • 令和4年3月に総務省が示した「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」により公立病院の経営強化のための計画策定が要請されたことを受け、本市では令和6年3月に医療センター、リハビリ病院及び佐久間病院の3病院を対象に、令和5年度から令和9年度までの5年間を計画期間とする浜松市病院経営強化プランを策定した。
  • 医療センターにおいては、新型コロナウイルス感染症対策に係る国・県補助金の減など医業外収益が減少したことに加え、新病院棟への移転費用など医業費用の経費が増加したことにより、1億円の純損失を計上した。また、新病院棟整備により、企業債残高は146億円増の331億円となった。
  • リハビリ病院においては、新型コロナウイルス感染症対策に係る県補助金の減などにより医業外収益が減少したが、減価償却費や企業債利息などの減により、0.5億円の純利益を計上した。
  • 佐久間病院においては、外来収益の減などにより医業収益が減少したものの、一般会計負担金の増、給与費等の医業費用の減により、0.2億円の純利益を計上した。
  • 厚生労働省が公表する全国の病院の1日平均患者数において、入院、外来ともにコロナ禍前の令和元年度の患者数までには回復していない。

【意見】

  • 3病院においては、令和6年3月に策定した浜松市病院経営強化プランに基づき地域医療提供体制の確保や経営強化等に取り組んでいる。令和5年5月からの、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行による平常化に伴い、コロナ禍で減少した入院・外来患者数は回復傾向にあったものの、全国的傾向と同様に3病院においても患者数はコロナ禍前の水準には戻っていない。
  • 地域医療提供体制の確保に当たっては、医療人材の確保や医師の働き方改革への対応、更には人口構造の変化等を踏まえた医療ニーズへの対応の取組が急務となっている。各病院は、引き続き中長期的な観点から不断の経営改善を進め、持続可能な病院経営の推進に努められたい。

イ 浜松市病院経営強化プランの策定と計画初年度の実績について(医療センター)

【現状及び課題】

  • 医療センターでは、令和6年1月に新病院棟が開院し、先進医療への取組として集中治療室(ICU)病棟の新設、救命救急センター機能強化など高度急性期医療を中心とした医療サービスを提供できる体制整備や新興感染症対策の強化が図られた。一方で、新病院棟の整備に伴う減価償却費の増加により、指定管理者である医療公社との連結による経常損益では、計画期間中において毎年度10億円の赤字を見込んでいる。
  • 令和5年度は、経常収支比率など経営強化プランの計画値を上回る指標があったものの、収入確保に係る指標である病床利用率、1日当たり入院患者数、入院診療単価、1日当たり外来患者数及び外来診療単価については、いずれも計画値を下回った。

【意見】

  • 浜松市病院経営強化プランでは、令和5年度から令和9年度までの計画期間において、新病院棟整備に伴う減価償却費等の増加により、100%を上回るべき経常収支比率がこれに満たない状況が続くことを見込んでいるなか、計画初年度である令和5年度から各経営指標の実績が計画値を下回った。病院管理課は、この原因を分析し、新病院の機能を最大限に活かし、収益向上と安定した病院経営を図られたい。

ウ 地域における診療体制と医師の確保について(佐久間病院)

【現状及び課題】

  • 浜松市病院経営強化プランでは、今後、佐久間、水窪及び龍山の各地区の人口減少に伴い、入院及び外来患者数は減少を見込んでいる。また、令和5年度は、前年度から常勤医師が1人減の5人体制となったものの、同プランでは、在宅医療の強化等により収益の向上に取り組むため、常勤医師6人を確保することを目標としている。
  • 佐久間病院は、佐久間地区において、浦川及び山香の2か所の附属診療所での外来診療や、巡回診療、訪問診療及び訪問看護等の在宅医療を行っている。
  • 山香診療所は、週1回2時間程度の診療で、令和5年度の1日平均患者数は6.5人であり、コロナ禍前の令和元年度の1日平均患者数11.0人と比較すると減少傾向にある。
    また、建物は築54年を経過し老朽化している。
  • 巡回診療は、福沢、相月、吉沢の3地区の集会所等において、各箇所月1回2時間程度、計36回(うち3回はオンライン診療)実施し、3か所の月平均患者数は15.9人である。
  • 入院及び外来患者数について、佐久間地区や水窪地区からの患者は減少しているものの、愛知県東栄町からの患者は、入院、外来ともに増加している。
  • 本市の一般会計では中山間地域における医療提供体制を支援する事業を当該地域も含め実施しており、オンライン診療の補助等を行う地域支援看護師の配置や、へき地患者の輸送などに取り組んでいる。

【意見】

  • 診療体制の維持のため、常勤医師の継続的な確保が図られるよう、市内医療機関や県等との連携、医師の受入体制の拡充等に引き続き取り組まれたい。
  • 佐久間、水窪、龍山の各地区の人口減少等に伴い、浦川診療所、山香診療所、巡回診療等の受診者数は年々減少しているなかで、東栄病院の病床廃止等に伴い、愛知県東栄町からの入院及び外来患者数は増加している。現在の診療体制や医療圏を当然視することなく、診療回数、診療時間等の実施方法や、オンライン診療等のデジタルの活用も含め、限られた医師・看護師等の医療資源を最大限効率的・効果的に活用する診療体制のあり方の検討に努められたい。
  • さらに、合併市町村の施策を引き継ぎ、民間主体、民間への委託、一般会計、企業会計という様々な形で行われてきた中山間地域の医療サービスの提供体制について、本市全体の最適化を図るため、関係医療機関、担当課等との連携に努められたい。

(3) 水道事業会計

ア 令和5年度の総括について

【現状及び課題】

  • 水道事業においては、固定資産売却による収入増があったものの、人口減少に伴う給水収益の減少や修繕費の増加の結果、2年連続で純損失を計上した。また、資本的支出では、老朽管等更新により建設改良費が増加し、資金残高は18億円減少し49億円となり、資金残高の不足が差し迫った状況である。
  • 中長期計画である現行の浜松市水道事業ビジョン、浜松市水道事業経営プラン及び水道事業中期財政計画は、令和6年度で計画期間が終了し、令和6年度中に次期計画の策定が予定されている。

【意見】

  • 経営については、次に述べるとおり、受益者負担の原則に従い、早急に料金体系の見直しを進め、持続可能な事業運営に当たられたい。
  • 水道ビジョンや中期財政計画等は、令和6年度の計画期間の終了に伴い次期計画を策定する予定とのことであるが、策定に当たっては、安全な水道水を安定供給するための強靭な水道システムを、独立採算の水道事業が将来にわたり支え続けるものとなるよう留意されたい。

イ 水道料金の見直し検討について

【現状及び課題】

  • 本市の水道料金は、消費税等の税率変更に伴う改定を除き、平成8年1月のプラス15.2%の改定以来、増額改定を行っていない。しかし、人口減少等に伴う給水収益の減少、水道管の耐震化や老朽化に伴う更新費用の増加、物価高騰に伴う経常費用の増加などの状況により、令和5年3月に、現在の水道料金の水準では持続可能な事業運営を行う事は困難として水道料金の見直しに向けた検討を始め、同年7月から、有識者及び上下水道利用者で構成される浜松市上下水道事業経営アドバイザー会議において意見聴取を行っている。
  • 上下水道部では、料金改定をしない場合、今後も赤字が続き、令和8年度に資金不足に陥る見通しであると試算している。
  • 公益社団法人日本水道協会の水道料金算定要領では、料金水準の算定に含める資産維持費について、今後の更新・再構築を円滑に推進し、永続的な給水サービスの提供を確保できる水準として資産維持率3%を標準として示しているが、上下水道部では、料金算定期間を5年間と想定し、必要最小限の資金の確保のための資産維持率を0.719%と見込んでいる。

【意見】

  • 水道事業については、令和元年度以降、料金回収率が100%を下回り、給水費用が水道料金で賄えない状態が継続している。また、令和4年度からは経常損益が赤字に転じ、2年連続で純損失を計上した。現在の試算では、料金改定しない場合は今後も赤字が続き、令和8年度に資金不足に陥る極めて厳しい見通しである。このことは、人口減少による料金収入の減少や、施設の耐震化や老朽化に伴う更新費用の増加など、水道事業を取り巻く環境に起因するものであることから、受益者負担の原則に従い料金改定により経常損益の黒字化を図ることが急務であり、早急に料金体系の見直しを進め、持続可能な事業運営に当たられたい。
  • 料金改定に当たっては、今後の更新需要、物価高騰、自然災害等に対応するため一定の資金を確保する必要があることから、市として必要な資金残高を確保できる料金水準となるよう留意するとともに、財務状況や改定内容について負担増となる市民へ十分な情報提供を行われたい。

ウ 水道管の耐震化について

【現状及び課題】

  • 水道管の耐震化は、浜松市水道事業アセットマネジメント計画に基づき、基幹管路の耐震化と老朽管の更新により進めている。基幹管路耐震化事業の財源については、令和6年度までの水道事業中期財政計画に基づき、元金ベースのプライマリーバランスを維持するなかで企業債を活用している。
  • 平成30年2月の浜松市水道事業アセットマネジメント計画策定時には、令和6年度末までに基幹管路耐震化を完了する予定であったが、地下埋設物を回避するための特殊工法の増加による工事の難航等のため令和3年12月に計画を改定し、完了年度を令和10年度末に変更している。令和5年度の基幹管路耐震適合率は80.1%の進捗となっているが、今後も特殊工法の増加等による更なる期間の延長や費用の増加、民間事業者の人手不足等が懸念されている。

【意見】

  • 令和6年1月の能登半島地震では、断水が長期間にわたり、市民生活に大きな影響を与えた一方で、耐震化済みの水道管はおおむね機能が確保されていると報告されている。水道管の耐震化が有効かつ優先度の高い事業であることが再認識されたことから、水道管の耐震化や老朽化した水道管の更新を着実に遂行されたい。
    なお、近年の企業物価や労務単価の上昇並びに人手不足と働き方改革等の影響により、建設費の膨張や工期の長期化も想定されることから、これらを見込んだ慎重かつ柔軟な対応をするよう留意されたい。

(4) 下水道事業会計

ア 令和5年度の総括について

【現状及び課題】

  • 下水道事業においては、コンセッション方式を導入している浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業(以下「西遠運営委託事業」という。)における利用料金設定割合の変更や有収水量の減少に伴う下水道使用料の減により営業収益が減少したものの、浄化センター等における動力費の減、企業債利息の減等に伴い営業費用が減少した結果、純利益は、令和4年度に比べ0.6億円増の21.6億円を計上した。
  • 農業集落排水事業(特別会計)について、令和6年4月1日からは地方公営企業法を適用し、下水道事業(公営企業会計)に経営統合した。
  • 中長期計画である現行の浜松市下水道事業ビジョン、浜松市下水道事業経営プラン及び下水道事業中期財政計画は、令和6年度で計画期間が終了し、令和6年度中に次期計画の策定が予定されている。

【意見】

  • 下水道事業は、近年、20億円以上の純利益を計上するなど経営成績は良好であるものの、人口減少に伴う有収水量の減少、農業集落排水事業の経営統合に加えて、物価高騰や自然災害などの経営上の不確実性があることに留意する必要がある。
  • 特に、令和6年1月の能登半島地震では、道路だけでなく、水道や下水道などのインフラ復旧の遅れがボランティア受入れなどを含めた復旧全体の遅れにつながったと言われている。水道事業に続き、下水道事業についても今後更新のピークを迎えることから、早期の耐震化や長寿命化等の予防的施策の推進について計画へ反映するよう検討されたい。
  • 浜松市下水道事業経営プランなど現行の各種計画の最終年度における目標達成に向け、引き続き安定的な経営に努められたい。

イ 西遠運営委託事業における利用料金設定割合の改定について

【現状及び課題】

  • 西遠運営委託事業において、運営権者は西遠処理区の下水道使用者が支払う料金総額から一定の設定割合を乗じた「利用料金」を収受し、事業運営している。
  • 市と運営権者が締結した実施契約書において、運営権者は、令和5年度、令和10年度、令和15年度に設定割合の改定を提案できるとされており、電力費をはじめとする近年の物価高騰を背景に、令和5年4月、当該契約条項に基づき設定割合の改定に関する協議書が運営権者から提出された。協議の結果、市と運営権者は、令和6年1月から令和10年3月までの期間において、利用料金設定割合を従来の23.8%から27.6%に改定する覚書を令和5年10月に締結した。
  • この改定により、令和5年度の下水道事業会計の収入は0.5億円減少した。また、令和6年度以降は改定後の設定割合が年間を通じて適用されるため、年間3~4億円程度の収入減が見込まれている。近年、下水道事業の経営状況は安定しているものの、物価高騰に加え、この改定による影響が懸念される。
  • 令和10年度以降の利用料金設定割合については、市と運営権者が協議し、令和9年度中に決定するとしている。

【意見】

  • 西遠運営委託事業における運営権者の収入である「利用料金」については、電力費をはじめとする近年の物価高騰を背景に、令和6年1月から令和10年3月までの期間において、市と運営権者の収入割合を従来の23.8%から27.6%に改定した。しかし、総平均の企業物価指数は上昇し続けているものの、電力、都市ガス及び水道に限定した企業物価指数は、令和5年1月をピークに同年9月までは大きく減少していた。
  • 令和10年度以降の利用料金設定割合については、市と運営権者が協議し、令和9年度中に決定するとしていることから、今回の改定が、期間中の運営権者の経営状況、物価変動の状況とその要因、下水道事業の経営に及ぼした影響を検証するなど、必要な情報をもって次回協議に臨まれたい。また、次回の協議に当たっては、物価変動が短期的な場合には実績に応じた一時金を支給するなど、利用料金設定割合の改定以外の方策についても幅広く協議、検討されたい。

ウ 西遠運営委託事業における改築業務について

【現状及び課題】

  • 運営権者は、実施契約書、5事業年度ごとの改築実施基本協定等に基づき、平成30年度から令和19年度までの20年間で251億円の改築業務を行うこととなっている。
  • 平成30年度から令和4年度までの第1期(5年間)においては、国補助金配分額の減額に伴い協定上の予定額である39.3億円を37.1億円に、第2期の初年度である令和5年度も同様の理由で11.3億円を10.4億円に減額変更した。その他、一部の工事で繰越しも発生するなど、当初の予定からは改築業務の進捗に遅れが生じている。
  • 近年、企業物価や労務単価が上昇するなか、工事が遅れれば遅れるほど当初契約額の範囲内で必要な改築業務が実施できるか懸念される。
  • 改築工事の状況は、運営権者のホームページで周知されているが、その情報により、西遠運営委託事業における改築業務全体が適切に進捗しているかどうかを判断することは困難である。

【意見】

  • 20年間で251億円の投資が予定されている西遠運営委託事業における改築業務の工事実績については、令和4年度までの第1期に加え、令和5年度業務においても予定額を下回った。 近年の建設資材の高騰と労務費の上昇は、官民の建設工事に大きな影響を及ぼしており、長期にわたる本事業については、当初契約額の範囲内で必要な改築業務が実施できるかが特に強く懸念される。上下水道部は、必要な工事が定められた時期に行われるよう、運営権者との連携について一層の強化を図られたい。
  • 業務が滞りなく着実に履行されるためにはモニタリングが非常に重要であることはこれまでも述べてきた。現行のモニタリングが改築業務全体の進捗に対して十分に機能を発揮しているか検証するとともに、必要に応じて情報収集体制や実施体制の強化を検討されたい。

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