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更新日:2024年1月1日

住民監査請求結果(令和元年9月19日)

浜松市監査委員告示第8号

令和元年7月29日に提出された浜松市住民監査請求書(以下「本件請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第4項の規定に基づき、監査した結果を次のとおり公表する。


令和元年9月19日


浜松市監査委員  鈴木 利享

浜松市監査委員  佐藤 雅秀

浜松市監査委員  湖東 秀隆

浜松市監査委員  和久田 哲男

第1 監査の結果

本件請求については、自治法第242条第8項の合議により次のように決定した。
浜松市北区引佐町奥山地内の株式会社ミダックが設置する産業廃棄物最終処分場(以下「本件処分場」という。)建設地における本件急傾斜地(請求人の提出した甲第1号証の図面上にピンク色で着色された部分)の崩壊による本件水路への侵害に関し必要な措置等を求める本件請求のうち、本件水路の付替えを中止すること、本件水路のうち浜松市の行政財産でない部分を適切に管理すること及び本件急傾斜地の崩壊を防止する措置を三嶽鉱山有限会社若しくは株式会社ミダックにさせ、又は自ら行うことについては、却下する。
その余の請求については、棄却する。

第2 本件請求の内容

1 請求人の住所及び氏名

(省略)

2 請求書の提出日

令和元年7月29日

3 請求の要旨(請求人の主張)

請求人の請求の要旨は次のとおりである。

(1) 本件水路の付替えを中止すること

ア 現在の立板川は、本件処分場を迂回するよう付け替える計画であるが、本件急傾斜地が崩壊することで土砂が付替え後の水路に流入すると、水流は行き場所を失い、本件処分場内に浸入する。また、崩壊した土砂は、周辺の排水溝も塞ぎ、周辺を流れる雨水も本件処分場内に浸入する。これらの河川水や雨水は廃棄物に汚染され、本件処分場域外に流下することで、下流域の河川を汚染する。

イ 浜松市は、代替水路の検討にあたり、本件急傾斜地の崩壊による危険性等を何ら考慮しておらず、これらの危険性に対する措置も一切検討していない。

(2) 本件水路を適切に管理すること

ア 本件処分場内には、浜松市が管理する普通河川の立板川が流れている。浜松市は、本件水路について所有権に基づいて登記手続を行うべきところ、その一部しか登記手続を行っておらず、その他の本件水路については、適切な登記手続を怠っている。

イ 本件水路の所有権侵害に対して、所有権に基づく妨害排除請求権等の法的措置を行う等、本件水路の所有者として適切に管理すべきところ、何ら措置を講じていないため、財産管理を怠る事実が認められる。

ウ 本件急傾斜地が崩壊することで土砂が現在の立板川に流入すると、本件水路まで崩壊する危険性が高いにもかかわらず、浜松市は、採石法(昭和46年法律第106号)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃掃法」という。)による産業廃棄物処理施設の設置許可、所有権に基づく妨害予防請求権など自ら権限ある法を駆使して、本件水路に本件急傾斜地の崩壊による土砂の流入を防止し、本件水路の所有者として適切に管理しなければならないところ放置し、財産管理を怠っている。

(3) 本件急傾斜地の崩壊を防止する措置を三嶽鉱山有限会社若しくは株式会社ミダックにさせ、又は自ら行うこと

ア 本件急傾斜地について、採石場廃止に伴う採石法上の崩壊防止措置がとられていない。このため、本件急傾斜地は、崩壊が始まり、崩壊範囲は次第に拡大していることから、今後大規模に崩壊する危険が高い。

イ (2)ウと同様。

(4) 監査委員に求める措置

浜松市長に対して、本件水路の付替えを中止する措置をとり、本件水路を適切に管理し、本件急傾斜地の崩壊を防止するための措置を三嶽鉱山有限会社若しくは株式会社ミダックにさせ、又は自ら行うことを求める。

第3 請求の要件審査

本件請求については、形式等において自治法第242条第1項に定める要件を満たしているとして受理した。

第4 監査の経過

1 監査対象事項

立板川(請求人のいう「立板沢」又は「立板沢川」について、本通知においては、立板川という。)を「本件水路」とし、その財産の管理を怠る事実について、監査対象とした。

2 監査対象課

土木部河川課、土木部道路保全課、土木部北土木整備事務所

3 現地調査の実施

監査委員4人が、令和元年8月19日、本件水路等の状況について確認するため、現地調査を実施した。

4 請求書の補正

請求人から提出された請求書について、場所等の特定及び記載された事実の証明の提示が不十分であったため、令和元年8月1日付け(浜監第32号)「住民監査請求書の補正について(通知)」を送付した。
通知では同年8月8日を提出期限としていたが、補正の提出があったのは同年9月10日であった。

5 請求人の証拠の提出及び陳述

自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、令和元年9月10日、浜松市役所内51会議室にて、補正の提出を行うとともに本件請求の趣旨を陳述した。
なお、請求人の陳述等の際、自治法第242条第7項の規定に基づき、監査対象課の一部の職員を立ち会わせた。

6 監査対象課からの意見聴取

監査対象課に対し、本件請求に対する意見を求めたところ、土木部長名で令和元年8月21日付け(浜土河第102号)「住民監査請求に伴う意見書について(提出)」が提出された。

第5 立板川について

1 立板川の現状及び管理

浜松市が作成した河川一般平面図上において本件処分場内をおおむね北東から南西方向に流下し、その一部は本件処分場を貫いている立板川は、浜松市が管理する普通河川である。普通河川とは、河川法(昭和39年法律第167号)を適用又は準用しない河川であり、浜松市では、浜松市普通河川条例(昭和46年浜松市条例第27号)に基づき管理している。
本件水路の一部の敷地は、平成15年3月31日に、国有財産特別措置法(昭和27年法律第219号)第5条第1項第5号の規定に基づき、国から旧引佐町に譲与されたものであり、現在は浜松市が所有し、行政財産として管理をしているものである。

2 本件水路の付替えに係る経緯

本件水路については、前述のとおり本件処分場内を貫いて流れているため、株式会社ミダックから浜松市に提出された土地利用事業の適正化に関する指導要綱に基づく指導及び助言に対する措置報告においては、本件処分場を迂回するよう付け替えられる計画である。これまでの経緯は次のとおりである。

(1) 平成29年12月7日開催の第16回浜松市土地利用対策庁内委員会幹事会において審議された結果、平成29年12月28日付け(浜都土第710号)「土地利用事業計画書に対する指導要望事項について(通知)」が本件処分場予定地で産業廃棄物処理施設を建設しようとする同社に対し通知され、本件水路について下記の事項を求めている。

2-1 普通河川立板川の付替えについて、河川管理者(北土木整備事務所及び河川課)と詳細協議を適切に行い、記録を提出してください。

-2 放流先河川(二級河川神宮寺川含む)の流下能力を検証し、報告書を提出してください。

(2) これらの指導要望事項に対し、平成30年3月2日付けで同社から浜松市長あてに措置報告書が提出され、本件水路について下記の措置内容の報告があった。

2-1 普通河川立板川の付替えについて、河川管理者(北土木整備事務所及び河川課)と詳細協議を適切に行い、記録を提出します。

-2 放流先河川の流下能力を検証しましたので、報告書を提出します。

(3) このことから、立板川の付替えの計画については、陳述が行われた令和元年9月10日の時点(以下「現時点」という。)においては、同社と浜松市との間の土地利用に関する個別の詳細協議は完了していないため、正確な配置や構造等も決まっていない状況である。

3 付替え後の水路の予定地について

現時点においては、水路の正確な配置や構造等は決定していないものの、付替え後の水路の予定地は株式会社ミダックの所有であり、浜松市の所有地は含まれていない。また、付替え後の水路の管理方法についても、現時点においては具体的な調整は完了していない。

第6 監査委員の判断

1 本件水路の付替えを中止することについて

請求人は、「現在の立板川は、本件処分場を迂回するよう付け替える計画であるが、本件急傾斜地が崩壊することで土砂が付替え後の立板川に流入すると、水流は行き場所を失い、本件処分場内に浸入する。また、崩壊した土砂は、周辺の排水溝も塞ぎ、周辺を流れる雨水も本件処分場内に浸入する。これらの河川水や雨水は廃棄物に汚染され、本件処分場域外に流下することで、下流域の河川を汚染する。
浜松市は代替水路の検討にあたり、本件急傾斜地の崩壊による危険性等を何ら考慮しておらず、これらの危険性に対する措置も一切検討していないため、本件水路の管理を怠っていることは明白である。」と主張している。
自治法第242条第1項の「財産」とは、同法第237条に規定する「財産」をいい、現に財産として所有していない土地その他の「不動産」(同法第238条第1項第1号)は、財産に当たらない。
株式会社ミダックが浜松市に提出した土地利用事業の適正化に関する指導要綱に基づく指導及び助言に対する措置報告において本件水路の付替えの計画を示している段階に過ぎず、現時点では、付替え後の水路の予定地は浜松市の所有する土地ではなく財産に当たらない。
したがって、本件水路の付替えを中止するよう求める請求人の主張は、財産の管理を怠る事実に当たらない。

2 本件水路を適切に管理することについて

(1) 本件水路のうち浜松市の行政財産部分について

請求人は、「本件急傾斜地の崩壊が拡大する結果、本件水路まで崩壊する危険性が高く、採石法、廃掃法による産業廃棄物処理施設の設置許可、所有権に基づく妨害予防請求権など自ら権限ある法を駆使して、本件水路に本件急傾斜地の崩壊による土砂の流入を防止しなければならないところ放置し、財産管理を怠っている」と主張している。

ア 採石法及び廃掃法の権限不行使の違法について

住民訴訟の対象とされる「違法な行為又は怠る事実」(自治法第242条の2第1項)とは、「公有財産の財産的価値に着目して、その維持保全する財務的管理についての違法な行為又は怠る事実をいうものと解すべき」(「戦犯記念碑設置違法確認等請求、損害賠償請求事件」東京地裁平成元年6月23日判決)とされている。また、住民監査請求において、「財産の管理を怠る事実」があるとして必要な措置を請求することができるのは、財産の管理を怠ることによって当該財産の財産的価値を損ない、「当該地方公共団体のこうむった損害を補償するために必要な措置を講ずべき」場合に限られる(逐条地方自治法第9次改訂版(松本英昭著))。
これらのことから、採石法、廃掃法に基づく権限不行使の違法又は不当を住民監査請求における財産の管理を怠る事実として直ちに主張できるものではなく、これらの権限行使の違法又は不当が本件水路の財産的価値を損なう場合に限られる。
請求人の主張する採石法、廃掃法に基づく権限不行使の違法又は不当について、本件水路の財産的価値をどのように損なうのか具体的な主張はなく、財産の管理を怠る事実の違法事由として認めることは困難である。
また、採石法に基づく権限の行使について、本件急傾斜地付近の岩石採取場の部分は、既に平成8年6月に岩石の採取を部分完了しており、その後、2年以上を経過しているから、仮に、災害の防止のため必要があるとしても、命令(同法第33条の17)の対象となるものではなく、本件急傾斜地の崩壊防止に係る権限の不行使の違法はない。
さらに、廃掃法に基づく権限の行使について、請求人は具体的に行使すべき権限を主張していないものの、現時点で本件処分場の設置に関し、同法第15条の2の7各号に規定する改善命令を行うべき事由は認められない。

イ 所有権に基づく妨害予防請求権について

所有権に基づく妨害予防請求権とは、物に対する権限の行使(使用・収益・処分)が第三者に妨害される具体的危険が存在するときに、物権を根拠として、その第三者に対し、妨害の予防を求めることができる権利である。
本件水路において、本件急傾斜地の崩落による土砂等の流入により妨げられている事実は認められず、そのことにより財産的価値が損なわれる具体的な危険は生じていない。

ウ したがって、浜松市長が上記各権限を行使しないことにつき財産の管理を怠る事実は認められない。

(2) 本件水路のうち浜松市の行政財産でない部分について

請求人は、「浜松市は、本件水路に関し、真正な登記手続を行う義務を怠っており、かつ本件水路の所有権侵害に対して、所有権に基づく妨害排除請求権等の法的措置を行う等、本件水路を適切に管理すべきところ、右行為を何ら講じていないため、財産の管理を怠る事実が認められる。」と主張している。
しかし、本件処分場区域内の本件水路は、河川管理施設等を有しない自然流水であり、その流水が本件急傾斜地の土砂等の流入により妨げられている事実は認められない上、仮に、本件急傾斜地の土砂の流入により、流水の場所や位置に変動が生じたとしても、直ちに普通河川としての効用に支障が生じるものでもない。
また、浜松市が所有権を有していない以上、財産管理を怠る事実を主張している財産そのものが不存在であるといわざるを得ず、請求人の主張は当たらない。

3 本件急傾斜地の崩壊を防止する措置を三嶽鉱山有限会社若しくは株式会社ミダックにさせ、又は自ら行うことについて

請求人は、「本件急傾斜地においては、崩壊が現在も進行しており、本件水路に土砂が流入する危険が顕在化しており、直ちに崩壊措置を予防すべくあらゆる措置を講ずる必要がある。」と主張し、「本件急傾斜地の崩壊を防止する措置」を求めている。
しかし、本件急傾斜地は浜松市の財産ではないことから、財産管理を怠る事実を主張している財産そのものが不存在であると言わざるを得ず、請求人の主張は当たらない。
また、2で述べたとおり、請求人のいう採石法及び廃掃法に基づく権限の不行使並びに所有権に基づく妨害排除請求権等の不行使は、浜松市の財産の管理を怠る事実として認められない。仮に、本件急傾斜地の土砂の流入により、流水の場所や位置に変動が生じたとしても、本件処分場区域内の本件水路は、河川管理施設等を有しない自然流水であることから、直ちに普通河川としての効用に支障が生じるものではない。

7 結論

以上のとおり、本件処分場建設地における本件急傾斜地の崩壊による本件水路への侵害に関し必要な措置等を求める本件請求のうち、本件水路の付替えを中止すること、本件水路のうち浜松市の行政財産でない部分を適切に管理すること及び本件急傾斜地の崩壊を防止する措置を三嶽鉱山有限会社若しくは株式会社ミダックにさせ、又は自ら行うことについては、却下する。
その余の請求については、棄却する。


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