緊急情報
ここから本文です。
更新日:2023年3月24日
はままつの文化財
Vol.26 平成22年5月15日
浜松市内に所在する文化財建造物のうち、昨年度までに修理を終えたものや現在修理工事を実施しているものがいくつかあります。
このうち一般の方が見学可能な社寺建築を紹介します。
平成19年度から20年度にかけて茅葺屋根の葺替が行われました。
修理前は日当たりが悪い北面の損傷が著しく建物の保存に悪影響を及ぼしていました。
茅葺全面葺替のほか、腐朽した軒付や野地の復旧なども行いました。
耐久性を向上させるため、数種類の茅材を用いるなど職人の知恵と技術が活かされています。
茅葺の色彩が周囲の景観と見事に調和し、見学する者の心を落ち着かせています。
宝林寺一之拝門から方丈を望む
平成20年度から21年度にかけて半解体修理が行われました。
単純に現在の姿に修理するのではなく、解体しながら並行して各種調査を行うことで、建立当初の形式を明らかにし復原しました。
(ただし、屋根形式は耐久性と今後の維持管理を考慮し茅葺型の金属板葺としました)。
また、建物四隅の柱にそれぞれ構造用合板を用いて耐力壁を設置する耐震補強を行うなど災害に対する備えも万全となりました。
かわなひよんどり八日堂(修理後)
補足材には、修理年度の焼印を押します
平成20年度から23年度までの4ヵ年度事業として半解体修理が進められています。
ただし、修理期間中も拝観ができることを前提としており廊下の鴬張りは存置しています。
現在の外観は素屋根(覆い屋)に覆われており、まさに“只今工事中”の状態です。
昨年度実施した解体調査により建立当初の屋根仕様が判明したため、復原の方針を決定しました。
また、耐震診断の結果を受けて「大地震時に倒壊せず、中地震時に機能維持ができる」水準を確保するための耐震補強を行う方針です。
床下沈下補正、柱傾斜補正のための建て起こし、屋根重量の軽減、ダンパー及び耐力壁の設置などの補強が計画されています。
以上、3件の事例を紹介しましたが、文化財建造物の修理は、損傷した箇所や建物そのものを新たに造りあげることのみが目的ではありません。
一つ一つの部材の痕跡やその技術、史料に残された記録やそれに関連する文化を調査・保存し、後世に伝えていくことが目的なのです。
現代的な意匠を凝らしたり、経済効率のみを追求することは、文化財建造物の価値を著しく損なう行為なのです。
このような見方のポイントを押さえたところで、新緑が目にしみるこの季節、市内に残る貴重な文化財建造物の美と技を鑑賞してみてはいかがでしょうか?
(※宝林寺・龍潭寺の拝観は有料です。)
龍潭寺本堂外観
建物傾斜補正(建て起こし)の状況
現在、浜松市博物館では、2月に発掘調査を実施した楠木遺跡の出土品の速報展示を行っています。
楠木遺跡は北区三ヶ日町岡本地区にある遺跡で、発掘調査の結果、奈良時代の瓦が大量に出土したことから、古代寺院の跡と推定されます。
速報展示は4月6日から4月25日まで三ヶ日図書館で行い、地元三ヶ日の方をはじめ、多くの皆さんにご見学いただきました。4月28日からは展示会場を浜松市博物館に移し、5月23日まで展示を行います。
今回の展示では、大量の瓦の中から屋根の軒先を飾った軒丸瓦と軒平瓦を多数展示しています。
軒丸瓦は、蓮華文と呼ばれる蓮の花をかたどった文様が施されています。
古代寺院の軒丸瓦に広く用いられている文様です。
楠木遺跡のものには蓮の花の花弁が12枚のものと16枚のものの2種類が存在します。
軒平瓦には小さな花の文様を施した小花文と、小さな長方形の区画を帯状に並べた簾状文の2種類があります。
同じような文様の瓦は、愛知県の三河地方でも見つかっており、その中でも豊川市(旧小坂井町)にある医王寺廃寺跡のものと大変よく似た特徴をもっています。
楠木遺跡の瓦は、この医王寺廃寺跡の瓦を模倣したと考えられ、古代から三ヶ日地区と三河地方との間で親密な交流が存在していたことを物語る資料と言えます。
今年は平城遷都1,300年の記念すべき年です。
ぜひこの機会に地元浜松の古代の資料をご覧ください。
4月には、こんな調査活動などを行いました。
4日 |
(日曜日) |
北区三ヶ日町 |
楠木遺跡現地見学会 |
---|---|---|---|
6日 |
(火曜日) |
南区高塚町 |
高塚遺跡工事立会い |
7日 |
(水曜日) |
南区新橋町 |
旧大通院境内遺跡工事立会い |
13日 |
(火曜日) |
南区渡瀬町 |
上組遺跡試掘調査 |
14日 |
(水曜日) |
西区坪井町 |
海岸防災林管理広場駐車場清掃 |
16日 |
(金曜日) |
東区貴平町 |
恒武遺跡群工事立会い |
20日 |
(火曜日) |
天竜区春野町 |
瑞雲院山門調査立会い |
21日 |
(水曜日) |
北区三ヶ日地区 |
分布調査(鵺代釣日比沢地区) |
23日 |
(金曜日) |
東区貴平町 |
恒武遺跡群工事立会い |
26日 |
(月曜日) |
西区入野町 |
角江遺跡隣接地試掘調査 |
30日 |
(金曜日) |
北区三ヶ日地区 |
分布調査(鵺代釣日比沢地区) |
※いずれも午前10時~正午
第4回 奥浜名湖の南北朝の城と戦国の城
5月30日(日曜日)/引佐健康文化センター
第5回 奥浜名湖の中世・近世芸能
6月13日(日曜日)/引佐健康文化センター
第6回 『井の国』ど真ん中
6月27日(日曜日)/現地見学会
県指定天然記念物「シブカワツツジ群落」
渋川つつじまつり
北区引佐町渋川(渋川つつじ公園)
ただいま、つつじが見ごろです!
土日には、よさこいや大道芸などのイベント、五平餅や渋川新茶などの物産展も行っています(つつじは平日もご覧いただけます)。
ぜひ、お越しください!
問い合わせ:渋川つつじまつり事務局
053-545-0452/FAX 053-545-0086
浜北区内野・平口から宮口を経て、尾野・根堅・天竜区西鹿島にいたる散策ルート「遠州山辺の道」沿線の史跡や文化財を紹介するガイドブックです。
浜北区の三方原台地東縁から浜北北部丘陵南縁(内野・平口~宮口~尾野・根堅・天竜区西鹿島)には、浜北人が発見された根堅遺跡や、多くの古墳が分布し、不動寺、庚申寺、岩水寺等の古刹もあります。
また、万葉集には古代の麁玉郡にゆかりのある4首の歌が収められるなど、豊かな自然風土に恵まれ、史跡や文化財が多くある地域です。
遠州山辺の道は、この地域の古い道筋を歩きながら、歴史・文化・自然に親しめるように設定した文化財散策ルートです。
沿線60 箇所(内野・平口17、宮口19、尾野・根堅・西鹿島24)の文化財を、多数の写真を交えてわかりやすく紹介しています。
巻末には詳しい地図もあり、実際に遠州山辺の道を歩く際に役立つ内容です。
本書は、文化財の紹介はもちろん、交通機関や実際の歩き方、歳時記、龍燈、浜北駅・小松駅周辺の文化財や博物館も紹介しています。
価格:
300円
規格:
A5判・64ページ・カラー
販売:
下記窓口にて取り扱っております。
浜松市文化財課:浜松市役所本館6F
浜松市博物館: 本館・姫街道と銅鐸の歴史民俗資料館
各区まちづくり推進課(中区を除く):各区役所
※浜北区は「なゆた・浜北」3F・天竜区は壬生ホール
<編集後記>
文化財保護、特に建造物の修理には、“時間”“費用”“技術”など、着手までにクリアしなければならない課題がいくつもあります。
これらを乗り越えるパワーの源は「文化財を守り後世に残し伝えていこう」という所有者・関係者の“情熱”であることをあらためて実感しました。
→「文化財情報」平成22年度バックナンバーに戻る
→文化財トップに戻る
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください