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更新日:2023年3月24日
はままつの文化財
Vol.22 平成21年1月15日
去る平成21年12月20日、2ヵ年度にわたり保存修理を進めてきた川名ひよんどり八日堂の竣工式が行われました。
当日は冬晴れの青空のもと、花森憲一静岡県副知事(当時)、鈴木康友浜松市長、立石光雄浜松市議会副議長ほか多くの来賓と地域住民の皆様が出席されました
八日堂は室町時代の応永年間(1394~1429)に井伊直貞によって再建されたものといわれていますが、現在の建物は安政5(1858)年竣工、昭和29(1954)年現在地へ移築されたもので、当初は茅葺屋根でした。
建立から150年、移築修理から50年以上経過し、床や柱の傾斜、屋根の雨漏り、部材の朽損などが著しく芸能公開及び伝承活動に支障をきたすとともに、敷地全体の排水に不具合があり建物に悪影響を及ぼしていたため国・県・市の補助事業として半解体修理を行いました。
工事と並行して行ってきた調査の結果に基づき、昭和29(1954)年の移築前の姿に復原しました。
歴史的建造物の修理に際しては建立当初の姿に復原するのが原則ですが、屋根の茅葺は将来的に維持管理が困難なため形態の復原に留め、今回の保存修理工事では茅葺ではなく茅葺型の金属板葺としています。
式典の最後には、現在ひよんどりを伝承している若衆代表と次代の伝承活動を担う小学生代表がお礼の言葉を述べ、幅広い年齢層の住民が地域一丸となって文化財を守り伝えていく意気込みを感じました。
式典終了後、正月4日のひよんどり祭礼に先立ち、順の舞・両剣の舞・獅子の舞が披露され、出席者全員が八日堂竣工を祝うとともに、生きた伝統である川名のひよんどりを浜松の宝として再認識しました。
川名のひよんどりは従来旧暦正月8日に、大禰宜5家、小禰宜5家、堂守などの世襲の家の方によって執り行われてきました。
「ひよんどり」の名称は、前日3日に執り行われる寺野と同じですが、川名の場合は行事のはじめに大禰宜、小禰宜ほか祭礼に携わる一行が大松明を灯して八日堂へ献上するために階段から堂内に上り込んで来るところを、裸の若者たちが入り口で通せんぼをして競り合いになる次第があることから付けられています。
夜空を焦がす大松明とヒドリ役の若者たちとのもみあいが実に豪壮であるため「火踊り祭り」といい、なまって「ひよんどり」と呼びならわしています。
当日は朝から祭礼に用いる道具の製作など諸々の準備や神事が行われ、世襲の家の方だけでなく地域の多くの方がひよんどりに関わっている様子が見られました。
夕方からの祭礼には全国から多くの方が訪れ、かつての姿に復原された八日堂を間近に見て感嘆の声を上げるとともに、いつもは静かな山間の里は大松明の炎に赤く染まり、祭礼に携わる方の凛とした表情や振る舞いが厳粛な空間を醸し出していました。
文化財を地域文化の象徴として地域住民がこれを守り、後世に伝えていく川名のひよんどり伝承活動は、地域コミュニティ活性化と文化創造都市確立の根幹となっていることを強く感じました。
竣工後の八日堂
大松明と若者のもみあい
ひよんどりの準備風景
両稲村の舞
天白遺跡は、北区引佐町の井伊谷地区の西側に位置する遺跡です。
個人住宅の建設に先立ち、昨年の12月14日から18日まで、発掘調査を実施しました。
現地は、平成15年から19年にかけて発掘調査が行われた北神宮寺遺跡の北側に位置し、西側にある渭伊神社の裏山には、古墳時代の祭祀遺跡として知られる天白磐座遺跡があります。
今回の発掘調査は、面積が100平方メートルほどの小規模な調査でしたが、調査の結果、主に古墳時代前期と戦国時代の遺構や遺物を発見しました。
古墳時代前期のものとしては方形周溝墓と呼ばれる周囲に四角く濠をめぐらした墓を確認しました。北神宮寺遺跡の発掘調査でも同じ時期の方形周溝墓が多数見つかっており、一連の墓地であったと推定されます。
墓は、一辺が8.7mの正方形をしており、本来は高さ1mほど盛土がほどこされ、墓の中央には死者を納めた棺があったと考えられます。残念ながら後の時代の耕作や建物建築により盛土が削り取られ、棺の痕跡を確認することはできませんでした。
周囲の濠の中からは古式土師器と呼ばれる土器が出土しました。形がよく残っているものがあり、当初は墓への供え物として置かれたものが、濠の中に転落したと考えられます。
また、方形周溝墓と重なり合うようにして、多数の小穴が見つかりました。
墓よりも後の時代に掘られており、出土した土器から戦国時代の建物の柱穴と考えられます。
井伊谷地区一帯は、戦国武将井伊氏の本拠地として知られており、今回見つかった遺構も井伊氏と関わりがあるものかもしれません。
調査区のようす
古墳時代前期の方形周溝墓と戦国時代の小穴を確認しました
出土した土器
古式土師器と呼ばれる古墳時代前期の土器
供えられた土器
1月には、こんな調査活動などを行いました。
1日 |
南区増楽町 |
畷東遺跡試掘 |
---|---|---|
3日 |
南区増楽町 |
村北遺跡隣接地試掘 |
4日 |
南区増楽町 |
増楽遺跡試掘 |
5日 |
中区元城町 |
浜松城富士見櫓現地見学会 |
7日 |
東区領家町 |
馬領家遺跡試掘 |
8日 |
西区篠原町 |
国方遺跡工事立会 |
14日 |
北区引佐町 |
天白遺跡発掘調査(18日まで) |
21日 |
南区増楽町 |
増楽遺跡試掘 |
伝統文化地域交流公演(「寺野のひよんどり」が出演します。)
<重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」のうち『寺野のひよんどり』>
午前9時30分~/西区雄踏町宇布見(雄踏文化センター)
文化財防火デー消防訓練
<重要文化財「方広寺七尊菩薩堂」>
午後1時頃~/天竜区懐山(泰蔵院)
浜松市芸術劇場「横尾歌舞伎特別公演」
<県指定無形民俗文化財「横尾歌舞伎」>
午後1時~/北区引佐町横尾(開明座)
浜松地域人づくり大学講座として「文化財の見方」講座を開催しました。
12月から1月の年末年始で慌しい時期の開講にもかかわらず、32人の受講申し込みがありました。
本年度、文化財担当では文化財保護に関する情報提供や歴史ボランティアガイドとしての活躍を期待し、3種類の講座を開講しています。
今回の「文化財の見方」講座では、なゆた浜北を会場に「1.文化財ってなあに?/2.見方のポイント(史跡・名勝・埋蔵文化財)/3.見方のポイント(天然記念物)」をテーマに全3回実施しました。
パワーポイントによるスライド形式の講義のほか、豊富な資料を用いて文化財のウラ話を交えた面白くてためになる内容のものでした。
受講された方からは「お城や古墳など個別に学ぶ機会はあったが、文化財そのものについて体系的に学ぶ機会がなかったので、非常に参考になった」との声も聞かれました。
専門的な事項が多くとっつきにくいと思われがちな文化財分野ですが、これを期に学んでみませんか?
講座のようす
1月21日(木曜日)・28日(木曜日)・2月4日(木曜日)
湖北の城 ガイドボランティア講座(※募集受付は終了)
午後1時30分~3時30分/みをつくし文化センター
2月6日(土曜日)・13日(土曜日)・20日(土曜日)
姫街道の歴史と歩き方講座
第1、2回は午前10時30分~12時30分/細江図書館
※募集受付1月22日まで。詳細は広報はままつ1月5日号を参照。
<編集後記>
毎年1月26日は「文化財防火デー」。全国的に各地の文化財施設で防火訓練等が行われる日です。昭和24年のこの日、法隆寺金堂が炎上、壁画が焼損してしまうという事件があり、これをきっかけとして制定されました。浜松市では、方広寺にて消防訓練を行います。ぜひお越しください。文化財に限りませんが、くれぐれも火災には気をつけたいものですね。
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