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更新日:2023年3月24日
はままつの文化財
Vol.21 平成21年12月20日
平成21年11月16日から12月8日にかけて、浜松城跡の整備事業にかかわる資料を得るための発掘調査を実施しました。発掘調査の対象としたのは、天守門跡と富士見櫓(やぐら)跡の2地点です。
双方とも、江戸時代の絵図に建物が描かれていますが、大きさや構造などが不明瞭であったため、発掘調査で建物の具体像に迫れるか注目が集まりました。
天守門跡
天守門地区では、4つの礎石(そせき)と、2つの礎石を抜き取った穴が見つかりました。
天守門には合計6つの礎石が用いられていたと考えられます。
南北の礎石どうしの幅は4mを超え、大きな門扉があったことがうかがえます。
また、天守門が建て替えられる中で、西側と南側に瓦を組み合わせた排水溝が作られていたことも判明しました。
西側の排水溝は雨落溝と呼ばれるもので礎石との位置関係から天守門の軒の長さが推定できます。
天守門 雨落溝
富士見櫓地区からは、京間(6尺5寸=197cm)を用いる建物の礎石が見つかりました。礎石が確認できたのは北側の3石分で、礎石の間には地覆石(じふくいし)と呼ばれる列石を備えています。
通常の櫓は土蔵造りですが、確認された基礎構造から、富士見櫓は邸宅風の建物であったと推定できます。
建物の北側には、玉砂利が敷かれていたことも明らかになりました。
北側の眺めを楽しむために、地面も飾っていたとみられます。
富士見櫓は、城郭建築の中では異質で、風雅な建物であったといえるでしょう。
この建物を使って、会合や茶の湯などが催されたとも考えられます。
出土品には、陶器や大量の瓦があります。出土陶器の中では、富士見櫓跡から出土した天目茶碗が注目できます。
この茶碗は、富士見櫓で実際に使われていたものかもしれません。
出土した瓦には安土桃山時代に遡るものが含まれるほか、浜松城の歴代城主の家紋をあしらったものもみられます。
富士見櫓
安土・桃山時代の瓦
天目茶碗
12月5日には、市民の皆様を対象にした発掘調査の現地見学会を開催しました。
当日の午後は雨模様となりましたが、412人もの見学者を迎えることができました。
見学者の中には熱心に質問をする方も多く、浜松城に対する関心の高さがうかがえた一日でした。
説明会のようす
今年もサンクチュアリNPOの皆さんに取り組んでいただいたアカウミガメの保護事業ですが、11月下旬にはふ化調査が完了し、シーズンも終わりを告げました。
昨年は過去最高数の産卵上陸が見られたことから、裏年となる今年は減少傾向となることが予想されていました。
結果は、上陸数210頭産卵巣数154巣、保護卵数15,996個(文化財指定区域実績)が確認され、急激な減少は見られませんでした。
報告書では、今年度の産卵調査の特徴として、小型のカメの産卵が多く確認されたという点が指摘されています。
浜松の海岸で保護活動が始まって二十余年、アカウミガメが親ガメに成長する期間がおよそ20年といわれていることから、保護活動が本格化した当時に旅立っていった子ガメが産卵に帰ってきている可能性も考えられるとのことです。
アカウミガメの生態はまだまた未知な部分が多く、母浜回帰説は学術的に実証されているものではありませんが、興味深い結果です。
全世界的に絶滅の危機が叫ばれているアカウミガメですが、このような調査活動を基に研究が進められ保護活動の充実につながっていくことが期待されます。
2009年11月3日付静岡新聞夕刊
ウミガメ教室オリエンテーション
卵のようす
11月には、こんな調査活動などを行いました。
2日 |
西区馬郡町 |
柳ノ内遺跡工事立会い |
---|---|---|
5日 |
西区舞阪町 |
市指定史跡「東海道の松並木」現状変更 事前確認 |
9日 |
東区市野町 |
西脇前遺跡試掘調査 |
10日 |
浜北区新原 |
東原遺跡気賀高校職場体験(3日間) |
11日 |
西区呉松町 |
県名勝「浜名湖」大草山現状変更事前確認 |
12日 |
東区笠井町 |
御殿山遺跡試掘(2日間) |
13日 |
天竜区龍山町 |
県指定天然記念物「竜山のホソバシャクナゲ群落」現地確認 |
16日 |
中区元城町 |
浜松城調査開始 |
18日 |
北区細江町 |
広岡遺跡・万斛遺跡工事立会い |
26日 |
西区大山町 |
大山寺旧境内遺跡工事立会い |
30日 |
東区市野町 |
西脇前遺跡工事立会い |
博物館テーマ展「和鏡(わきょう)の魅惑」
午前9時~午後5時 要観覧料(大人300円など)
※12月29日~1月3日・12日・18日は休館日
<重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」>
川名ひよんどり八日堂竣工式(完成を記念した式典)
午後1時30分~/北区引佐町川名
<重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」>
懐山のおくない
午後1時頃~/天竜区懐山(泰蔵院)
寺野のひよんどり
午後2時頃~/北区引佐町渋川寺野(三日堂)
<重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」>
川名のひよんどり
午後6時~/北区引佐町川名(八日堂)
浜松市では、三方原台地東縁や浜北北部丘陵の裾に点在する文化財等をめぐる散策コースを「遠州山辺の道」として設定し、さまざまな事業を行なっています。
11月21日(土曜日)には、浜北区根堅の岩水寺から同区宮口の庚申寺まで約4kmをめぐるイベント「遠州山辺の道を歩こう!」を開催し、約70人にご参加いただきました。
このイベントでは、「遠州山辺の道ワークショップ」のメンバーの皆さんが、事前に自作の案内看板を設置し、当日の説明や道案内、地場産品の提供などを分担して行ないました。
まず、岩水寺でお話を聞いた後、根堅遺跡(浜北人出土地)、石灰岩採掘関連遺構、旧秋葉街道、金刀比羅神社、高根神社、興覚寺後古墳などを、説明を聞きながらのんびりとめぐり、約2時間半で庚申寺に到着しました。
ゴールした参加者の方々は、提供された地場産品に舌鼓を打ちながら「こんなに地域資源があるとは知らなかった」「のどかな道で歩きやすかった」などと笑顔で話していました。
岩水寺前を歩きます
庚申寺で地元の方の説明を聞きました
<編集後記>
浜松城の発掘調査で、富士見櫓跡を調査しましたが、その結果、邸宅風の建物と玉砂利が発見されました(表面記事)。
発掘前は、土蔵風の建物だったのではないかと予想されていましたが、意外と(?)風流な建物だったようです。
城主は、富士山を眺めながら、茶の湯を楽しんだのでしょうか・・・?
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