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更新日:2023年3月24日
はままつの文化財
Vol.09 平成21年1月15日
浜松市は全国的にも民俗芸能の宝庫といわれています。
特に正月には特色ある芸能が行われており、深い山間から素朴で温かいお囃子の音色が聞こえてきます。
今回は1月3日と4日に北区引佐町内で行われた「ひよんどり」について紹介します。
去る1月3日(土曜日)午後2時から、北区引佐町渋川寺野の宝蔵寺観音堂(通称:三日堂)で寺野ひよんどり祭礼が開催されました。
三遠南信自動車道路の工事が進められており、一部工事用道路も整備されていますが、静かな山里は多くの見学者で賑わいました。
寺野ひよんどり(鬼の舞)
寺野ひよんどりの起源は、三日堂に残る棟札や古文書によると1570(元亀元年)年頃と推定されています。
寺野の祖である伊藤刑部祐雄が三河から入植して以来400年余の歴史を有すると考えられています。
ひよんどり祭礼は五穀豊穣などを祈る春祈祷の祭りで、かつて地元ではこの祭りのことを「三日堂」「おこない」「鬼踊り」とも称していました。
「ひよんどり」の名称は、手に松明を持って歌いながら踊る場面から、火踊りがなまってひよんどりになったといわれています。
寺野ひよんどりでは、前段は神楽系の舞楽、後段は猿楽田楽系・田遊び系の演目によって構成されています。
寺野の神楽は採物を採って右に回りながら五方に舞い、正面に戻ると左に回転して右舞に戻す舞い方が基本になっています。
これは伝統的な巫女舞の舞形で、この舞形を遵守しているのが特徴です。
田楽系の芸能は仮面を用いて、悪しきを祓って福徳を招く祝福芸となっています。その芸態や詞章には中世の面影が色濃く残っています。
特に日没後、祭礼のクライマックスで披露される鬼の舞はひよんどり祭礼全体を締めて、豪快にして厳粛な空間を醸しだしています。
堂内で松明の火花が散り煙が立ち込め、鬼の掛け声が入る場面はさながら中世に迷い込んだ感覚になります。
現在、寺野地域41戸全世帯が加入する寺野伝承保存会と自治会、そして地元の渋川小学校が一体となってひよんどりの伝承に取り組んでいます。
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左上:鬼の舞の豪快な火叩き |
1月4日(日曜日)午後6時から、北区引佐町川名の福満寺薬師堂(通称:八日堂)で川名ひよんどり祭礼が開催されました。
川名ひよんどりは、芸能が行われる八日堂本尊の薬師如来坐像が作られた1426(応永33)年にはすでに行われていたと考えられています。
川名の地は井伊家との関わりが強く、この仏像も井伊家の一門井伊直貞が願主となっているほか、ひよんどり祭礼の用具にも井伊家の紋が入っています。
八日堂の名称が示すとおり、この祭礼は昭和30年代までは1 月8日に行われていましたが、社会情勢の変化により、昭和40年からはシシウチ神事・マトウチ神事などの諸行事を含め、1月4日に全てを行うようになりました。
「ひよんどり」の名称は、夜空を焦がす大松明と若者のもみ合いが豪快な印象から「火踊り祭り」がなまって「ひよんどり」と呼びならわしているといわれています。
川名ひよんどり
祭礼には大禰宜・小禰宜・松明献納者(タイトボシ)・堂守・僧の供・ヒドリ・若連と諸役が分担されており、ヒドリ役を出す年齢集団である若連以外は世襲されています。
また、近年は堂内で行われる舞に地元の川名小学校児童も参加しており、世襲の家々・年齢集団・保存会・自治会の組織が協力して地域をあげて伝承活動に取り組んでいます。
特に青壮年層や女性(自治会女性部や小学生の母親など)が積極的に参加しており、伝統文化の継承がそのまま地域の活性化につながっています。
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左:お姥の舞 |
12月には、こんな調査活動などを行いました。
◆遺跡現地発掘調査:
鳥居松遺跡6次発掘調査 (12月1日~9日)
◆その他の調査活動等
1日 |
天竜区春野町 |
龍頭山踏査 |
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2日 |
天竜区佐久間町 |
浦川のホソバシャクナゲ現況確認調査 |
3日 |
天竜区春野町 |
若身城山城踏査 |
8日 |
奈良文化財研究所 |
鳥居松遺跡(5次)出土木簡と墨書土器の解読 |
9日 |
東区上西町 |
東浦遺跡試掘調査 |
静岡県埋蔵文化財研究所 |
金装大刀の構造分析 |
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15日 |
西区入野町 |
龍雲寺阿弥陀如来坐像調査 |
25・26日 |
西区篠原町 |
篠原地区遺跡分布踏査 |
文化財防火デー消防訓練
重要文化財「中村家住宅」
1月22日(木曜日) 午前9時30分~(西区雄踏町)
県指定名勝「摩訶耶寺庭園」ほか
1月23日(金曜日) 午前10時~(北区三ヶ日町)
市指定有形文化財「木造大日如来坐像」
1月23日(金曜日) 午前10時~ 林慶寺(北区滝沢町)
重要文化財「方広寺七尊菩薩堂」ほか
1月24日(土曜日) 午前10時~(北区引佐町奥山)
重要文化財「宝林寺仏殿・方丈」ほか
1月27日(火曜日) 午前10時~(北区細江町中川)
国指定重要無形民俗文化財「遠江のひよんどりとおくない」、県指定無形民俗文化財「滝沢の放歌踊」
第13回静岡県民俗芸能フェスティバル「はままつの芸能」
午後1時~4時30分 引佐多目的研修センターホール
市指定史跡「姫街道の松並木」
姫街道の歴史と歩き方講座
午前10時~正午 三方原公民館、現地
※募集締切:1月26日(月曜日)
※詳細は、広報はままつ1月5日 号をご覧ください。
県指定無形民俗文化財「横尾歌舞伎」
浜松市芸術劇場「横尾歌舞伎特別公演」
午後1時~4時30分 開明座(北区引佐町横尾)
<編集後記>
浜松の新春は「ひよんどり」から始まります。
普段は静かな山里に清らかな笛の音が響きわたるなか、甘酒で体を温めながら祭礼の進行を見届けました。
寒さも吹き飛ばす程の地元の人たちの熱い想いを聞きながら、地域の伝統文化継承の重要性を再認識した仕事始めとなりました。
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