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更新日:2023年9月8日

令和4年度 浜松市公営企業会計決算審査意見

第1 審査の基準

この審査は、浜松市監査基準(令和2年浜松市監査委員告示第2号)に準拠して実施した。

第2 審査の対象

  • 令和4年度浜松市病院事業会計決算
  • 令和4年度浜松市水道事業会計決算
  • 令和4年度浜松市下水道事業会計決算

上記決算に関する証書類、事業報告書、キャッシュ・フロー計算書、収益費用明細書、固定資産明細書及び企業債明細書

第3 審査の期間

令和5年5月31日から同年7月31日まで

第4 審査の着眼点及び実施内容

4年度浜松市公営企業会計の各事業会計決算について、

  • 決算書とその附属書類が、地方公営企業法その他関係法令に基づいて作成されているか
  • 決算書類に記載された計数は正確であるか
  • 予算は適正に執行されているか
  • 各事業の経営成績及び財政状態を明瞭かつ適正に表示しているか
  • 各事業が企業の経済性を発揮するとともに、公共の福祉を増進するよう運営されているか

を着眼点とし、検証した。

審査手続については、試査を基礎として行い、決算諸表と会計帳簿、預金残高証明書等の証拠書類と照合し、計数の確認のほか、関係職員から説明を聴取し、上記の着眼点に基づき審査を行った。

第5 審査の結果

1 審査結果

各事業会計の決算書とその附属書類は法令に基づき作成されており、決算諸表の計数はいずれも正確で、予算執行状況、経営成績及び財政状態に係る表示並びに事業の運営状況については、おおむね適正であると認められた。

2 決算書を正確に理解するための留意事項

  • (1) 決算報告書は、消費税及び地方消費税相当額を含め収入、支出の総額が記載され、損益計算書等の財務諸表は、消費税及び地方消費税相当額を控除して作成されている。
  • (2) 職員の退職手当の支給に備えるため、年度末における退職手当の要支給額に相当する金額を退職給付引当金として計上しているが、会計基準変更時に引当金に不足が生じた会計については、平均残余期間内の一定年数にわたり、均等額を費用処理している。水道事業及び下水道事業は4年度に解消し、病院事業のうち浜松市国民健康保険佐久間病院(以下「佐久間病院」という。)は5年度に解消予定である。
    4年度末における退職手当要支給額、退職給付引当金残高及びその差額は以下のとおりである。

4年度末における退職手当要支給額、退職給付引当金残高

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

退職手当要支給額 (A) 272,808 1,356 10,533 260,918 1,483,892 738,029
退職給付引当金残高 (B) 253,543 1,356 10,533 241,652 1,483,892 738,029
退職給付引当金不足額 (A)-(B) 19,265 0 0 19,265 0 0

3 決算の概要

(1) 経営成績

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

営業収益

4,570,734 317,726 3,715,765 537,242 10,370,406 11,840,227

営業費用

8,108,462 2,984,005 3,996,911 1,127,545 11,457,068 15,908,866

営業損益

△ 3,537,728 △ 2,666,279 △ 281,145 △ 590,303 △ 1,086,661 △ 4,068,639

営業外収益

4,291,040 3,292,720 445,192 553,127 1,187,637 8,142,563

営業外費用

373,515 236,437 83,758 53,320 370,415 2,069,365
経常損益 379,796 390,003 80,288 △ 90,495 △ 269,439 2,004,559

特別利益

33,132 31,486 1,466 180 83,335 120,982

特別損失

17,236 0 16,961 274 28,354 29,340
当年度純損益 395,691 421,489 64,792 △ 90,590 △ 214,457 2,096,201
当年度未処分利益剰余金
(△未処理欠損金)
5,776,232 5,754,011 △ 144,363 166,584 675,000 4,239,034

※詳細は、「病院事業会計」P23~、「水道事業会計」P81~、「下水道事業会計」P105~参照

参考:経常損益の推移

経常損益の推移

ア 病院事業

  • (ア) 医療センター
    4年度は、主として医業外収益の県支出金9億255万円及び指定管理者負担金7億9,789万円の減少により、経常利益が減少している。県支出金は9億4,309万円で、そのうち新型コロナウイルス感染症関連は8億7,062万円である。国庫支出金は6,480万円で、そのうち新型コロナウイルス感染症関連は3,772万円である。
  • (イ) リハビリ病院
    4年度は、主として入院収益5,431万円及び外来収益6,298万円の増加により、経常利益が増加している。
  • (ウ) 佐久間病院
    4年度は、主として医業外収益の一般会計負担金1億7,104万円の減少により、経常損失9,049万円を計上している。

イ 水道事業

4年度は、主として営業収益の給水収益1億5,500万円の減及び営業費用の原水及び浄水費1億4,981万円の増加により、経常損失2億6,943万円を計上している。

ウ 下水道事業

4年度は、主として営業外費用の企業債利息2億2,516万円が減少したものの、営業費用の管きょ費1億3,684万円及び総係費1億2,854万円の増加により、経常利益が減少している。

(2) 財政状態

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

固定資産

34,578,029 26,681,868 6,339,606 1,556,553 111,803,109 323,634,406

流動資産

14,395,173 12,627,774 1,062,760 718,797 11,201,329 7,312,695

(前年度資産合計)

(36,171,565) (26,241,262) (7,569,309) (2,370,875) (123,027,562) (339,730,512)
資産合計 48,973,202 39,309,643 7,402,367 2,275,351 123,004,438 330,947,102

固定負債

22,228,324 17,349,507 4,337,410 541,406 24,077,858 122,266,916

流動負債

11,020,495 10,207,161 570,197 257,295 5,016,896 14,030,710

繰延収益

1,249,884 623,878 101,805 524,200 20,541,521 132,841,353

(前年度負債計)

(22,092,758) (15,533,656) (5,241,147) (1,327,835) (49,445,130) (280,930,985)

負債計

34,498,703 28,180,547 5,009,413 1,322,902 49,636,277 269,138,980

資本金

3,639,993 2,966,080 56,685 617,227 71,979,205 55,846,248

資本剰余金

4,121,273 1,472,003 2,480,631 168,637 19,509 1,722,838

利益剰余金(欠損金)

6,713,232 6,691,011 △ 144,363 166,584 1,369,445 4,239,034

(前年度資本計)

(14,078,807) (10,707,606) (2,328,161) (1,043,039) (73,582,431) (58,799,527)

資本計

14,474,499 11,129,095 2,392,954 952,449 73,368,160 61,808,121

(前年度負債資本合計)

(36,171,565) (26,241,262) (7,569,309) (2,370,875) (123,027,562) (339,730,512)
負債資本合計 48,973,202 39,309,643 7,402,367 2,275,351 123,004,438 330,947,102

(注)病院間の内部取引があるため、各病院の流動資産と流動負債の計は、病院全体の計数と一致しない。 

※詳細は、「病院事業会計」P23~、「水道事業会計」P81~、「下水道事業会計」P105~参照

資産・負債・資本の構成内訳

ア 病院事業

資産・負債・資本の構成内訳/医療センター

資産・負債・資本の構成内訳/(参考)指定管理者(浜松市医療公社)との連結決算

資産・負債・資本の構成内訳/リハビリ病院

資産・負債・資本の構成内訳/(参考)指定管理者(聖隷福祉事業団)との連結決算

資産・負債・資本の構成内訳/佐久間病院

資産・負債・資本の構成内訳/水道事業

資産・負債・資本の構成内訳/下水道事業

(注) 表中の金額は、億円未満を端数調整している。

【説明】
公営企業会計は、一般会計で採用される官公庁会計と異なり、民間の企業会計原則の考え方を取り入れているが、地方公営企業の特殊性から一般の企業会計とは異なるルールが存在する。
公営企業は、負担区分原則に基づき一般会計等から負担金や補助金を受領するが、固定資産を取得するうえで、受領した財源(補助金・負担金等)を長期前受金として計上し、固定資産の耐用年数に応じて将来に繰り延べる。ただし、繰延収益は、返済不要の財源であるため、財務指標の算定には資本金及び剰余金同様に自己資本に含めて計算する。

ア 病院事業

  • (ア) 医療センター
    新病院整備事業(新病院棟工事)が佳境に入り、企業債の増加とともに固定比率※1及び負債比率※2が上昇している。
    指定管理者との連結決算も同様の構成内容である。
    ※1 固定比率=固定資産/自己資本×100
    100%以下が望ましいが、公営企業では設備の取得を企業債に依存するので大となる。
    ※2 負債比率=(固定負債+流動負債)/自己資本×100
    負債が自己資本の範囲内かを示すもので、100%以下が望ましい。
  • (イ) リハビリ病院
    減価償却及び企業債の償還により固定比率及び負債比率は減少しているが、26年度の新病院建設後、時間が経過していないため、高い値である。
    欠損金は4年度末で1億4,436万円あるものの、国からの移管時に受け入れた財源(資本剰余金)があるため、剰余金はプラスとなっている。
    指定管理者との連結決算も同様の構成内容である。
  • (ウ) 佐久間病院
    資産規模が小さく、病院事業の中では固定比率及び負債比率は低い。補助金等により取得した固定資産が多く、繰延収益の占める割合も高い。

イ 水道事業

過年度から利益処分により資本増強を行ってきたことから、自己資本、とりわけ資本金の構成比が高い。

ウ 下水道事業

資産規模は5会計中最も大きい。補助金等により取得した固定資産が多く、繰延収益の占める割合が高い。毎年度、一般会計から約9億円の出資受入れがあるほか、近年は利益処分による資本増強が行われたことから、資本金が増えている。

※主な財務等に関する比率は、「病院事業会計」P49、「水道事業会計」P91、「下水道事業会計」P114参照。財務分析比率表は、「病院事業会計」P72~P77、「水道事業会計」P100~P101、「下水道事業会計」P124~P125参照

(3) キャッシュ・フローの状況

(単位:千円)

区分

病院  

水道

下水道

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

業務活動によるキャッシュ・フロー 2,370,310 2,207,339 153,598 9,372 3,585,935 8,907,590

当年度純損益

395,691 421,489 64,792 △ 90,590 △ 214,457 2,096,201

減価償却費

1,302,230 986,122 231,376 84,731 4,782,744 12,447,494

長期前受金戻入額

△ 263,998 △ 112,564 △ 101,692 △ 49,741 △ 1,120,004 △ 5,604,530

その他

936,387 912,292 △ 40,878 64,973 137,653 △ 31,575
投資活動によるキャッシュ・フロー △ 3,124,592 △ 3,187,655 52,652 10,410 △ 4,682,259 △ 5,425,820

有形固定資産の取得による支出

△ 3,342,168 △ 3,290,898 △ 42,738 △ 8,532 △ 5,109,536 △ 7,415,289

国庫補助金等による収入

39,517 38,692 0 825 4,099 1,822,168

一般会計負担金等による収入

187,124 69,835 95,391 21,898 372,824 0

その他

△ 9,065 △ 5,285 0 △ 3,780 50,353 167,300
財務活動によるキャッシュ・フロー 6,947,313 7,222,989 △ 230,627 △ 45,048 △ 417,343 △ 5,341,623

建設改良費等の財源に充てるため
の企業債による収入

8,423,500 8,423,500 0 0 1,649,400 6,214,400

建設改良費等の財源に充てるため
の企業債の償還による支出

△ 1,456,436 △ 1,200,510 △ 230,627 △ 25,299 △ 1,914,405 △ 12,567,721

その他

△ 19,749 0 0 △ 19,749 △ 152,337 1,011,698
資金増減額 6,193,031 6,242,672 △ 24,375 △ 25,264 △ 1,513,666 △ 1,859,853
資金期首残高 6,208,838 5,171,425 411,350 626,061 11,462,601 7,221,957
資金期末残高 12,401,870 11,414,098 386,975 600,796 9,948,934 5,362,104

※詳細は、「病院事業会計」P23~、「水道事業会計」P81~、「下水道事業会計」P105~参照

(4) 企業債

(単位 金額:千円、比率:%)

区分

病院  

水道

下水道

合計

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

借入額 8,423,500 8,423,500 0 0 1,649,400 6,214,400 16,287,300
償還額 1,456,436 1,200,510 230,627 25,299 1,914,405 12,567,721 15,938,563
未償還残高 23,355,202 18,498,563 4,566,167 290,471 23,929,312 133,645,853 180,930,368
支払利息及び企業債取扱諸費 269,683 197,591 66,628 5,463 314,199 1,936,030 2,519,913
利子負担率 1.35 1.33 1.42 1.49 1.29 1.41 1.39

(注)利子負担率=支払利息及び企業債取扱諸費/平均(企業債+借入金+リース債務)×100

企業債未償還残高は、3事業全体で1,809億3,036万円である。
事業別にみると、下水道事業が最も多く1,336億4,585万円、次いで水道事業239億2,931万円、病院事業のうち医療センター184億9,856万円となっている。
借入の主なものは、病院事業の医療センター新病院整備資金84億2,350万円、水道事業の上水道安全対策事業費16億4,940万円、下水道事業の公共下水道事業費48億4,330万円である。

参考:企業債未償還残高の推移

企業債未償還残高の推移

(5) 一般会計繰入金

(単位 金額:千円、比率:%)

区分

病院  

水道

下水道

合計

医療センター

リハビリ病院

佐久間病院

一般会計繰入金 2,665,400 1,744,093 404,345 516,962 676,669 5,662,413 9,004,482

収益的収入

2,477,669 1,674,258 308,859 494,552 269,874 4,745,336 7,492,879

収益に対する繰入率

25.8 38.4 7.4 45.3 2.3 23.6 18.1

資本的収入

187,731 69,835 95,486 22,410 406,794 917,077 1,511,602

(注)この表には、地方公営企業法第17条の2に基づく繰入金のほか、任意による繰入金を含む。
また、水道事業には「飲料水供給施設業務負担金」を、下水道事業には「合併処理浄化槽設置業務負担金」を含む。

一般会計から企業会計への繰入金は、3事業全体で90億448万円である。
事業別にみると、下水道事業が最も多く56億6,241万円で、主なものは分流式下水道等に要する経費(汚水資本費に対する公費負担)24億5,709万円となっている。次いで病院事業のうち医療センター17億4,409万円で主なものは公立病院運営経費12億1,984万円、水道事業6億7,666万円で主なものは簡易水道事業統合に伴う企業債元利償還金に要する経費3億3,711万円となっている。
3事業全体で減少傾向にあり、主に下水道事業の分流式下水道等に要する経費の減少によるものである。

参考:一般会計繰入金の推移

一般会計繰入金の推移

4 審査意見

(1) 総括

4年度は、コロナ禍で続いた行動制限の緩和やアフターコロナの新しい生活様式の確立に向けた社会の変化が見られたなか、ロシアによるウクライナ侵攻や円安等を背景としたエネルギー価格等の高騰などにより、公営企業を取り巻く環境は厳しい状況であった。
経営環境が大きく変化し、将来の予測が困難な状況にあっても、各企業は社会経済情勢の変化に柔軟に対応しつつ市民生活に極力影響を及ぼさないよう対策を講じながら、堅実に業務を継続している。
病院事業では、コロナ禍における受診控えなどにより悪化した入院及び外来の患者数が影響のなかった元年度の水準に回復していない。さらに、電気及び燃料の使用料金の高騰も経営に大きな影響を与えた。このような状況においても、新型コロナウイルス感染症及び物価高騰対策などに関する国・県補助金を活用したことにより、病院事業会計全体では当年度純利益となり、安定した経営が確保できた。
医療センターにおいては、新型コロナウイルス感染症の専用病床を増床したことから、3年度に引き続き、入院患者数及び病床利用率が減少した。また、3年度に確保した新型コロナウイルス感染症の中等症以上の患者専用病床を、4年度は通常の病床としたことなどによって県補助金による補償が大幅に減少した一方で、手術件数の増加等により1人当たりの診療単価が向上し、入院収益及び外来収益が増加した。
リハビリ病院においては、新型コロナウイルス感染症のまん延に伴う職員及び患者への感染予防の観点から外来患者の受入制限を継続したものの、外来患者数は3年度より回復している。また、入院患者数及び病床利用率については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による入院制限の影響などにより減少が見られたものの、病床利用率は90%以上の高い水準が維持できている。
佐久間病院においては、主な医療圏の人口減少が続いていることから入院患者数は減少したものの、新型コロナウイルス感染症の影響による受診控えに収束傾向が見られたことから外来患者数は増加した。
3病院においては、エネルギー価格高騰などの社会経済情勢の変化による影響を受けたものの、新型コロナウイルス感染症に係る国・県補助金等の活用により、3年度に引き続き安定した経営を維持することができている。今後、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた国・県補助金等の削減も想定されることから、患者数の回復及び診療単価上昇などによる収益確保に努められたい。
水道事業及び下水道事業においては、エネルギー価格高騰による電気使用料金の値上がりにより動力費が大幅に増加した。節電や省エネルギー対策に取り組んだほか、国の交付金を活用した一般会計交付金の繰入れにより影響を抑えることができたものの、経常収支比率悪化の一因となった。また、上下水道キッズサイト「すいすいクラブ」による広報活動を行ったほか、低予算でマンホール蓋の情報収集を図るイベントを企画するなど、職員の創意工夫により積極的な取組を行った。
水道事業においては、有収水量の減少などにより営業収益が減少したことに加え、動力費などの高騰の影響によって営業費用は大きく増加した。損益計算においては、平成7年度以来27年ぶりとなる純損失を計上している。今後の資金残高の減少見込みなども踏まえ、早急に料金改定について検討し、安定した事業運営に努められたい。また、基幹管路耐震化の完了年度を6年度から10年度に延長した管路耐震対策については、発生可能性が高まっている南海トラフ地震が及ぼす被害と市民への影響を考慮し、7年度以後の実施が必要な耐震工事を先に行うなどの計画の変更を検討されたい。
下水道事業においては、動力費の大幅な増加がみられたものの、29年度以降、6期連続で純利益を計上し、安定した経営を続けている。電力消費の大きな施設を抱える下水道事業にとって、動力費の増加は経営に与える影響が大きいことから、今後も動向を注視するとともに必要な対策を検討・実施し、引き続き安定的な経営に努められたい。また、4年度においては、アセットマネジメント計画に基づく耐震化や老朽化対策、浸水対策などの重要な施策を着実に実施した。今後も良好な下水道サービスを持続的に提供するため、老朽化対策や災害対策などの必要な投資を将来に先送りすることなく確実に執行されたい。
各企業は、人口減少等に伴うサービス需要の減少、施設の老朽化に伴う更新需要の増大、近年の集中豪雨や台風等の自然災害の頻発に加えデジタル化や脱炭素化などの時代の変化への対応など様々な課題に直面している。引き続き厳しい経営環境が予想されるなかで、経営上の懸念材料となり得る新型コロナウイルス感染症やエネルギー価格高騰への対応など、目まぐるしく変化する社会経済情勢において様々な課題に適切に対処する必要がある。今後においても、公営企業の本来の役割である公共の福祉増進のため、将来にわたり安定的にサービスを提供することができるよう経営基盤の強化により一層努められたい。
次に、事業会計ごとに意見を述べる。
 

(2) 病院事業会計

ア 新病院整備事業(新病院棟工事)について(医療センター)

【現状及び課題】

  • 築後約50年が経過し老朽化した1、2号館の再整備のため、令和6年1月の開院予定で地上7階建ての新病院棟工事を行っている。
  • 4年度には、小児科病棟における血液がん患者治療のための無菌病床6床の設置やハイブリッド手術室の空気清浄度を向上するためなど、約8億円を増額する変更契約を締結し、新病院棟における建設工事費は約228億円となった。
  • 関連工事を含む総事業費約409億円の財源は企業債及び自己財源等であるが、そのうち免震工事に係る企業債償還中の1、2号館の解体費用については起債ができないことから、資産管理積立金など内部留保資金で賄えない場合は、他会計からの借入れを行うことも想定している。
  • 新型コロナウイルス感染症による影響により、2年度に入院及び外来患者数が大きく減少し、その後、回復に至っていない。
  • 国へ提出した公立病院の新設・建替等に関する調書の収支見込みでは、新型コロナウイルス感染症の影響前の水準の病床利用率の確保や上位の施設基準の加算取得、開院後の入院及び外来の診療単価の上昇などを前提としている。
  • 4年度の診療報酬改定により新設された急性期充実体制加算の取得に向けて取り組んだ入院患者の在院日数の短期化は、一方で病床利用率の低下につながったと考えられる。
  • 高度医療を推進するため、元年度以降に手術支援ロボット「ダヴィンチ」、CT、MRIなどの1億円以上の高額機器を購入している。CT、MRIなどは予約待ちの状況であるものの、手術支援ロボットは、単純な比較はできないが、県立静岡がんセンターの手術件数の5分の1程度となる年間40件程度の利用状況となっている。

【意見】

  • 建設工事費228億円を投じている新病院棟が令和6年1月に開院する。請負事業者側の問題で生じた約1年の遅れを、変更契約により感染症や高度医療の機能強化に活かした柔軟な対応は評価できる。医療を取り巻く状況は、長期にわたる人口減少と高齢者人口の増加、国の政策と医療技術の進歩による入院日数の短縮などの要因により将来像を描くことが困難な状況にあり、国に提出した収支見込みの前提も変更を余儀なくされる可能性もある。今後の医業収益について、前提とする病床利用率や診療単価を下回った場合のほか不測の事態においても自己財源で対応できるよう収益構造の強化を図られたい。
  • 高額な医療機器のうちCT及びMRIは予約待ちの状況にある一方で、元年度に導入した手術支援ロボットの利用は低い水準となっている。予約待ちの常態化は機会損失となるが、早急な改善が求められるのは投資対効果の問題が生じている手術支援ロボットの活用である。医師が習熟するために積極的な育成を行い、稼働率の向上と高水準の医療サービスの提供に努められたい。

イ 持続可能な病院経営について(佐久間病院)

【現状及び課題】

  • 主な医療圏である佐久間・水窪地域の人口減少や新型コロナウイルス感染症の影響による受診控えが収束傾向にあったものの、患者数は回復していない。
  • 県及び市による中山間地域の医師確保への取組によって常勤医師が4年度から3人増えて6人となったものの、年度末には1人が退職し、5人となった。
  • 常勤医師1人の定年は、残り5年となっている。また、市任期付医師2人及び県派遣医師2人は任期が単年度であることから、引き続き安定した病院経営に向けて今後を見据えた医療提供体制の維持が課題となっている。

【意見】

  • 市内医療機関等との連携や医師受入体制の強化など医師確保に向けた精力的な取組により県派遣医師を含めた常勤医師が増加したものの、その多くが単年度の任期となっている。医師不足による地域医療への影響を鑑み、県等からの常勤医師の配置及び非常勤医師の継続的な応援体制が受けられるよう、引き続き取り組まれたい。
  • 常勤医師だけでなく、看護師その他の医療従事者の確保は今後も困難が予想される。勤務条件について、中山間地域の事情に配慮した柔軟な対応策の検討にも着手されたい。
  • 中山間地域における地域医療の拠点である佐久間病院は、必要条件である医療提供体制の維持とともに、経営の安定が求められる。人口減少が著しいという状況ではあるが、幅広く先進的な事例に学び、専門家の意見を聴くなどして経営改善に取り組まれたい。

(3) 水道事業会計

水道料金について

【現状及び課題】

  • 水道事業における主な収入である給水収益は、給水人口の減少や一般家庭での節水型機器の普及などの影響により減少を続けている。一方で、4年度は、エネルギー価格高騰により維持管理費の動力費が増加したことなどから、27年ぶりに純損失を計上した。
  • 供給単価の給水原価に対する割合である料金回収率は、4年度に供給単価(124.72円)を給水原価(135.10円)が上回る92.3%となった。料金回収率は元年度から100%を切る状況が継続しており、給水費用を水道料金で賄えていない状態が4年間継続している。
  • 積極的な経営健全化への取組によって、水道事業では、水道水を他市町と比較して安価で提供してきた。資金残高は3年度の84億円から17億円減少し、4年度末時点で67億円となっており、資金残高の不足が差し迫った状況である。
  • 令和元年10月1日施行の水道法の一部を改正する法律に伴って国が策定した「水道の基盤を強化するための基本的な方針」において、長期的な観点から将来の水道施設の更新需要等を考慮した上で水道料金を設定すること及び概ね3年から5年ごとの適切な時期に水道料金の検証及び必要に応じた見直しを行うことが重要とされている。
  • 今後、有識者及び上下水道利用者で構成される浜松市上下水道事業経営アドバイザー会議を開催し、水道料金について意見を聴取していく予定である。

【意見】

  • 指定都市の中においても低廉な料金を維持してきた本市では、元年度から4年間、給水費用が水道料金で賄えておらず、エネルギー価格が高騰した4年度においては純損失を計上した。この状況から、今後の資金残高の減少見込みなどを踏まえ、独立採算が原則の水道事業において必要な給水収益を確保する経営手法について早急に検討し、安定した事業運営に努められたい。
  • 検討に当たっては、アセットマネジメントによる中長期的な施設の更新需要や管路耐震対策費用について客観的な予測・推計を行い、必要となる財源を料金により確保しつつ、給水人口の動態を踏まえた安定度の高い料金体系とされたい。さらに、令和元年の水道法改正に伴い示された国の方針に基づき、今後増加する施設の更新需要を考慮した上での料金の設定と、3年から5年の定期的な見直しを検討されたい。
  • 料金改定に当たっては、低所得者層への配慮を行うとともに、経営アドバイザー会議の意見を尊重し、市民に対しては十分な情報提供を行われたい。

(4) 下水道事業会計

浜松市下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業における第1期の改築業務について

【現状及び課題】

  • 浜松市下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業はコンセッション方式で実施されており、運営権者は、5事業年度ごとの改築計画及び改築実施基本協定並びに各事業年度の年度実施協定に基づき、20年間で約251億円の改築業務を行うこととなっている。
  • 30年度から4年度までの第1期においては、一部の工事で遅延が見られた。市は、運営権者のセルフモニタリング結果等に基づき工事の実施状況全般についての進捗確認を行い、工程表に基づく進捗を図るよう運営権者への助言を行っている。
  • 工事が遅延した場合、設備等の劣化による故障発生リスクの増加が懸念される。
  • 現在、運営事業の対象施設に市職員は配属されておらず、今後、年数の経過とともに現場の状況に精通した職員の異動や退職等が想定され、技術力の継承が課題となる。

【意見】

  • 20年間で251億円の投資が予定されている浜松市下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業における改築業務について、工事の遅延による設備等の故障発生リスクの増加を防ぐため、必要な改築業務が滞りなく着実に履行されているかモニタリングを通じた適正な進捗管理に努められたい。
  • 現場に精通した市職員の確保に向けて、19年度の運営事業終了後を見据えた実効性の高いモニタリングを実施することによりノウハウの蓄積を図り、モニタリングを通じた現場の状況把握及び技術の継承に努められたい。

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